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Twitch CEOがTGSで語る、AI時代に求められる「本物の繋がり」とライブコミュニティの価値
2026年9月17日 18:41
Twitchのダン・クランシーCEOは17日、東京ゲームショウ2026の基調講演に登壇し「視聴者と一緒につくる:ライブコミュニティの力」をテーマに講演を行った。コミュニティ主導のプラットフォーム設計や、AI時代におけるライブ配信の価値、ブランド企業との連携施策などを語った。
SNSの「脱社会化」とTwitchが提供する居場所
近年のソーシャルメディアは画面をスワイプする受動的な体験が主流となり、一見するとソーシャルでありながら人々を孤立させる「アンチソーシャル」な側面を強めているとクランシー氏は指摘する。
Twitchは単なるコンテンツ消費の場ではなく、人々が時間を共有し、帰属意識を育むコミュニティとして設計されている。
視聴者と配信者が同じ時間をリアルタイムで過ごすことで、フィルターのないありのままの交流から深い結びつきが生まれる。Twitchにおける平均視聴時間は72分に達しており、他のライブ配信プラットフォームと比較して非常に長い時間を記録しているという。
日本のZ世代を対象とした調査でも、タイムパフォーマンスよりもリアルタイムの共感や体験の共有を重視し、オンデマンド映像よりもライブ配信を好む傾向が明らかになった。ユーザーの3分の2が「Twitch上では自分らしくいられる」と回答しており、他のSNSの2倍以上の割合で安心できる居場所として機能している点も特徴に挙げる。
コミュニティ内で出会った視聴者同士が結婚に至る事例も紹介され、その場を共有する体験が長期的な人間関係の構築に寄与している実態が示された。
予測不能な瞬間がもたらす熱狂とショート動画へのスタンス
配信上で生まれる予測不能な瞬間や素の人間性がコミュニティを熱狂させ、インターネット全体へ広がる点もTwitchの強みだと説明。歌手のマライア・キャリーの息子であるモロッカンがゲーム配信を行っていた際、母親であるマライア本人が映り込んできた出来事は、飾らない日常のやり取りから世界的に話題となった。
日本の配信者であるスタンミじゃぱんの例では、VRChat配信でミミズのような姿のアバターを使うトコロバとの出会いも象徴的なエピソードとして紹介。予測不能でユーモラスなやり取りを通じて深まった2人の関係性は、切り抜き動画として他プラットフォームへ拡散し、大きな文化現象へと発展した。
あわせて行われたラウンドテーブルでは、ショート動画プラットフォームとの差別化についても言及された。クランシー氏は、ショート動画は新しい視聴者に発見してもらう手段として優れているとの見解を示す。一方で、視聴者との間に深い繋がりを作り出すのは、長時間にわたって時間を共有するライブ配信であり、ショート動画はあくまでライブ配信を補完する役割だと説明する。
ゲームエコシステムの拡大とブランド企業の連携事例
Twitchはゲームの魅力を多角的に伝える場として機能しており、開発者やパブリッシャー、さらにはブランド企業にとっても不可欠なパートナーとなっている。
日本のインディーゲーム「めっちゃカメレオン」のようなタイトルは、視聴者が参加しやすく配信を観ること自体がプレイと同等の楽しさを提供する仕組みを備えている。バンダイナムコエンターテインメントの「エルデンリング」では、プレイヤーの死亡数を追跡するグローバルデスカウンターを導入するなど、視聴者を巻き込む仕掛けを展開した。
ポケモンワールドチャンピオンシップス2026では、ミニポケモン図鑑を作成してバッジを集める機能を導入。ライアットゲームズの「VALORANT」ローンチ時にはTwitch Dropsを活用して視聴体験とゲームアクセス権を連動させる施策を実施した。
ブランド企業との連携においても、コミュニティの力を活用したマーケティングが有効だ。日本HPのゲーミングブランド「HyperX」がAmazonプライムデーで展開したマイク製品「QuadCast」のプロモーションでは、Twitch独自のインタラクティブ機能を活用し、大きなエンゲージメントを獲得した。
視聴者は自分が支援するストリーマーをサポートするブランドに好意を抱く傾向があり、単なる広告表示を超えた効果を生み出している。
ライアットゲームズが明かすコミュニティの「共作」と「VALORANT」の戦略
トークセッションにはライアットゲームズのウェイレン・ロゼール氏が登壇し、コミュニティを中心としたゲーム開発の重要性を語った。
単にゲームを遊ぶだけでなく、「自分はライアットのプレイヤーだ」というアイデンティティを持ってもらうことが、生涯にわたる関係性を築く鍵だという。プレイヤーをコミュニティの「共作者」と位置づけ、プレイヤーの熱意や意見をゲームの進化に活かす姿勢を強調した。
「VALORANT」の展開では、立ち上げ時からクリエイターによる「ミラー配信(Co-streaming)」を全面導入した。現在では「VALORANT」eスポーツファンの50%以上が公式番組ではなくクリエイターの配信経由で視聴しており、クリエイターがコミュニティを繋ぐハブとして機能している。
何年も遊ばれ続ける長寿ゲームとなるためには、劇的な逆転劇などの感情の波を友達と共有し、プレイヤー自身がコミュニティの一員だと感じられる設計が不可欠だと語った。
AI時代における「本物の繋がり」
ラウンドテーブルでは、生成AIの台頭がライブ配信に与える影響について質問が挙がった。クランシー氏は「Neuro-sama(ネウロ様)」のようなAI配信の事例に触れつつも、基本的にはAIはクリエイターの創造性を増幅する補助ツールにとどまると答えた。デジタル空間がAI生成コンテンツで溢れるようになるほど、人々は本物の人間同士の生きた交流やリアルタイムの感情共有をより一層求めるようになると語る。
日本市場の位置づけについては、アニメやVTuberといった日本発の文化がTwitch全体に波及している点を高く評価する。クランシー氏自身の配信アカウントでも視聴者の45%がアメリカ国外からアクセスしているといい、Twitchには国境を越えた普遍的なコミュニティ形成の力がある点を示した。
こうした議論は、クランシー氏が基調講演の結びで語った「テクノロジーがどれほど変化しようとも、『誰かと体験を共有し、出来事の一部になりたい』という人間の根本的な欲求は変わらない」というメッセージに帰結する。Twitchは今後も、クリエイターやブランド企業が人々に「参加できる居場所」を提供し、視聴者と共に価値を創出できるプラットフォームを目指していく。















