法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「ahamo」「povo」「LINEMO」、オンライン専用の新料金プランは誰におすすめ?

 政府の強力な値下げ圧力を受け、昨年12月以来、主要3社は新しい料金プランを相次いで発表してきたが、なかでも関心が高いのがオンライン専用を謳う「ahamo」「povo」「LINEMO」だ。

 発表直後は20GBで月額2980円、もしくは20GBで月額2480円というデータ通信量と月額料金ばかりが注目されたが、3月下旬のサービス開始を目前に控え、月額料金が見直され、各サービスの内容も明らかになってきた。今回は現時点でわかっている各料金プランの内容を確認しながら、どんなユーザーに適しているのか、どこを注意すべきなのかを考えてみよう。

オンライン専用で大きく変わる携帯電話ビジネス

 これまで携帯電話に関するほとんどの手続きを担ってきたのが各携帯電話会社のキャリアショップだ。

 機種変更で端末を購入するとき、料金プランを変更するとき、オプションサービスの追加や廃止をするとき、修理を依頼するとき、操作がわからないときなど、ユーザーが携帯電話を利用していく中で、何かに付け、キャリアショップを頼ることが多かった。

 本誌読者のように、リテラシーの高いユーザーはキャリアショップを頼ることがそんなに多くないだろうが、コロナ禍の影響で、オンラインでの手続きやオンラインショップでの機種変更などが徐々に増えたと言われるものの、全体から見れば、まだ少数派でしかない。

 しかし、 こうした携帯電話ビジネスの在り方は、ひとつの転換点を迎えている 。その理由のひとつが主要3社が昨年12月から相次いで発表した『オンライン専用』を謳う料金プランの存在だ。

 2020年12月、NTTドコモが「ahamo」を発表したときの記事でも触れたが、各携帯電話会社が料金プランを検討するうえで、そこには各携帯電話会社の系列店、いわゆるキャリアショップのコストが掛かっており、各社のオンライン専用プラン(ブランド)はこれらを削減することで、月額3000円を切る料金プランを実現している。

 ある程度、リテラシーのあるユーザーであれば、「別にショップ行かないし、安くなるなら、それでオッケー」と考えるかもしれないが、今回の各社のオンライン専用プランの反響次第では、これまでのキャリアショップを中心とした携帯電話ビジネスがオンラインへ移行し、回線契約はもちろん、端末販売やコンテンツ契約など、さまざまな周辺ビジネスも大きく変わっていくことになるかもしれない。

 今年1月、NTTドコモの井伊基之代表取締役社長にお話をうかがった際、「携帯電話業界は販売にコストをかけ過ぎている。加入コストが年間で数千億円になっているのはどうなのか」と説明し、ドコモショップをはじめとした携帯電話の販売ビジネスの在り方を見直すことを示唆している。

 これはNTTドコモに限った話ではなく、auもソフトバンクも同じ状況にあり、各社のオンライン専用プランは、今後の携帯電話ビジネスがどうなっていくのかを考える試金石にもなりそうだ。

オンライン専用の制限はどこまで?

 2020年12月の「ahamo」の発表後、ソフトバンクとauが同様のオンライン専用プランを発表し、今年2月以降、各社のプランの内容が見えてきた。それぞれのプランのポイントをチェックする前に、重要なキーワードである「オンライン専用」の意味合いについて、今一度、考えてみよう。

オンライン経験のあるユーザー

 まず、くり返しになるが、今回の各社が示したオンライン専用プランは、契約の申し込みをはじめ、オプションサービスの変更、解約などの手続きをすべて、オンラインで行なうことになる。

 すでに、My docomoやMy au、My SoftBankなどで手続きをしたり、主要3社のオンラインショップで端末を購入した経験を持つユーザーであれば、「まあ、大丈夫だろう」と判断ができそうだ。

オンラインショップ未経験のユーザー

 逆に、こうした手続きや購入を体験したことがないユーザーは、少し慎重に考え、周囲にこれらを体験した人たちに状況を聞いてみた方がベターかもしれない。

 たとえば、機種変更をした場合、店頭での手続きであれば、仮にSIMカードが交換されてもショップのスタッフが新しいSIMカードを使えるようにしてくれるが、オンラインショップで購入したときは、自ら開通手続きなどをしなければならない。

 開通手続きはWebページや電話などでできるが、オンラインでの機種変更がはじめてのユーザーの中には、同梱される書類を確認せず、ショップにヘルプを求めるケースもあるという。今回のオンライン専用プランでは、こうしたショップのヘルプが利用できないため、基本的には自分で解決するか、各社が提供するアプリやチャットでサポートを求めることになる。

各社のサイトの使いやすさはどうなる

 また、各社のオンライン手続きやオンラインショップは、今回のプラン提供に伴い、さまざまな内容の調整を行なうことが予想される。ただ、各社の対応状況を見る限り、本来、オンライン専用プランは2021年半ば以降の提供を考えていたようで、かなり突貫工事で準備が進められているようだ。

 そのため、実際にプランをスタートしてみたら、手続きのメニューが不十分だったり、手続きが煩雑、あるいはわかりにくくなっている可能性が十分に考えられる。

電話サポートも利用できない

 そして、意外に見過ごされがちなのが電話によるサポートだ。これまでキャリアショップと並んで、多くのユーザーが頼ってきた各社の電話サポートも利用することができない。

 おそらく、前述のオンラインによる手続きを体験してきたユーザーでも何らかの事情で問い合わせをするため、各社のサポート窓口に電話をかけたことはあっただろう。筆者も携帯電話会社側の手続きのミスが見つかったときなど、どうしてもオンラインでは解決できない問題が起きたときに、各社のサポート窓口に電話をかけている。

 しかし、オンライン専用プランではこうしたトラブルが起きた場合もチャットなどのサポートを使い、状況を伝えなければならない。チャットサポートを体験したことがあれば、わかるだろうが、チャットの文章でトラブルの状況などを的確に伝えることはなかなか難しい。

 しかも各社のチャットサポートの体制がどの程度なのかも未知数だ。チャットを利用したサポートは、他の企業でも多く採用されているが、メッセージを送ってもまったく返事がなかったり、数日後に「どうしましたか?」と返答されるようなケースも散見され、これまでの携帯電話会社のような手厚いサポートは見込めないと考えた方が良さそうだ。

各社のオンライン専用プランに適している人は?

 今回のオンライン専用プランは、政府の強い値下げ圧力により、生まれたものだが、結果的に主要3社が揃って提供することになったうえ、各社ともメインブランドの料金プランも値下げし、UQモバイルやワイモバイルといった低価格ブランドも料金プランが見直されている。

 そのため、主要3社で契約するユーザーは、携帯電話会社を変更してまで、オンライン専用プランを契約しなくても同じ携帯電話会社内で移行する方が手続きも簡単に済ませることができそうだ。もちろん、エリアなどに不満があり、どうしても他の携帯電話会社に移行したいケースをはじめ、「MVNOを使っているが、主要3社に戻りたい」というケースもあるだろうが、全体から見れば、同じ携帯電話会社内のプラン変更やブランド変更が主戦場になりそうだ。

 こうした背景を踏まえ、それぞれのオンライン専用プランの注目点や制限などをチェックしながら、どういうユーザーが適しているのかを考えてみよう。また、それぞれのオンライン専用プランについては、本誌でも注意点などをまとめた記事を掲載しているので、ぜひ、そちらも合わせて、ご覧いただきたい。

「ahamo」(NTTドコモ)

 オンライン専用プランの発表で先陣を切ったNTTドコモの「ahamo」は、3月1日にオンラインで説明会を開催し、月額料金を2980円(税別)から2700円に値下げするのと同時に、制限事項や対応機種などについて、発表した。ちなみに、「povo」と「LINEMO」がオンライン専用の別ブランドという扱いであるのに対し、「ahamo」はNTTドコモの料金プランという扱いになっている。今のところ、明確な違いはないが、今後、この違いが利用できるサービスなどに影響する可能性は十分に考えられる。

 他社のオンライン専用プラン同様、「ahamo」を選ぶうえで、まず、最初に確認しておきたいのが キャリアメール(○○@docomo.ne.jp)や留守番電話サービスに非対応 であることだ。キャリアメールについては発表当初から伝えられており、あまり利用しないユーザーが多いとされるため、「ahamo」に移行しても問題なさそうだが、留守番電話サービスはビジネスシーンでの利用を考えると、少し不安だ。ただ、Androidプラットフォームのスマートフォンは伝言メモを搭載する端末が多いため、電話に出られないときの応答は伝言メモで済ませるという考えもアリだろう。

 留守番電話サービスと同様に、通話系のサービスも非対応のものが多い。たとえば、キャッチホンや転送電話などは利用できないため、通話が多いユーザーは少し注意が必要だろう。これらのサービスは代替手段がないため、LINEやメッセンジャーなどのメッセージングサービスを利用するか、相手が主要3社のユーザーであれば、電話番号のみで連絡ができる「+メッセージ」を使うなどの対処が考えられる。

 同じく通話に関連するところでは、ドコモ電話帳も利用できない。GmailやiCloudの連絡先を利用すれば、実用上はそれほど大きな問題にならないかもしれないが、発着信時に該当する電話番号の企業や店舗の情報を表示する機能も利用できなくなる。連絡先については念のため、端末側などにバックアップしておきたい。

 ネットワーク関連ではApple Watchのセルラーモデルやワンナンバーフォンで利用する「ワンナンバーサービス」が非対応となっており、Apple Watchのセルラーモデルを利用中のユーザーは、Apple Watchのモバイル通信機能を事前に解約しておく必要がある。今後も「ahamo」の契約を継続するのであれば、次にApple Watchを次に買い換えるときは、Wi-Fiモデルで十分という考え方もできる。

 また、 もうひとつ注意したいのは、「spモード コンテンツ決済サービス」に対応していない 点だ。spモード コンテンツ決済サービスは一部の音楽アーティストやアイドルなどのコンテンツサービスの有料会員の支払いに利用されているが、「ahamo」に移行すると、決済サービスが利用できなくなり、自動退会となってしまうので、注意が必要だ。

 コンテンツサービスが対応していれば、移行前にクレジットカード決済などに変更しておこう。ちなみに、Google PlayやiTunesのコンテンツ決済サービス(キャリア決済)は、「ahamo」に移行しても継続して利用できる。決済時の暗証番号はspモードパスワードではなく、ネットワーク暗証番号が利用され、通知はメッセージRの代わりに、SMSが送信される。

 対応機種についてもすでに情報が公開されており、iPhone 6以降、2014年以降に発売されたAndroidスマートフォン(一部例外あり)が利用できる。非対応の理由は明示されていないが、仕様を見る限り、VoLTE対応がひとつの目安になっているようだ。非対応機種の場合は「ahamo」加入時に購入できる「おすすめ3機種」が割安なので、これらを選ぶのも手だろう。

 SIMカードについてはバージョン4以降のドコモUIMカードが引き続き、利用できる。ドコモUIMカードは台紙にカラーが付けられているが、バージョン4はレッド、バージョン5はピンク、バージョン6はライトブルーとなっており、バージョン3(ホワイト)以前のものを利用しているときは「ahamo」への移行時に新しいSIMカードが発行される。eSIMについては今のところ、未対応だが、対応を検討しているとのことで、今後のアナウンスを待つことになる。

 申し込みにはdアカウントが必要で、NTTドコモのユーザーは、すでに利用中のdアカウントを引き継ぐことができる。dアカウントに紐付いたポイント投資やメルカリなどの他社サービスは継続利用できる見込みだが、「dヘルスケア(500円)」は自動解約になるため、「ahamo」に移行する前に「dヘルスケア(300円)」へコース変更をしておく必要がある。「dヘルスケア(300円)」はahamoにも対応している。

 この他にもいくつかの制限事項があるが、全体的に見ると、「ahamo」への移行については、当初の記事でも触れたように、やはり、「おひとり様」がメインターゲットになる。家族が揃って、NTTドコモを契約していたり、世帯でドコモ光を利用しているようなケースは、「ahamo」に移行すると、それぞれの割引が適用されなくなり、メリットが薄れてしまう。当初からNTTドコモが想定しているように、新社会人が家族から独り立ちするようなケースが適していると言えそうだ。MNPについては、過去にNTTドコモからMVNO各社に移行したユーザーがNTTドコモに戻るケースなどが考えられるが、データ通信量が少なければ、MVNO各社の新プランを検討するのも手だ。

「povo」(KDDI/沖縄セルラー)

 主要3社のオンライン専用プランの内、2021年1月、最後発で発表されたのが「povo」だ。他の2社の発表内容を受け、最後発で発表されたこともあり、5分以内の国内通話かけ放題を切り離し、月額2480円(税別)という、もっとも負担の少ない月額料金を実現している。「povo」の発表を受け、「ahamo」も「LINEMO」も料金プランの構成を見直しており、各社の料金プラン競争をリードしているようにも見える。

 その半面、月額料金とデータ通信量、「povo」の特徴であるトッピング以外の仕様については、すぐに情報が明示されず、「povo」のWebサイトの更新で、徐々に内容が明らかになっているような状況だ。ちなみに、前述のように、「ahamo」はNTTドコモの料金プランという扱いだが、「povo」はオンライン専用ブランドという位置付けで、若干、扱いが異なる。ただし、auで支払中の端末代金の分割払いやかえトクプログラムなどは継承できたり、支払い方法も継続できるなど、auとUQモバイルの関係に比べると、少しauに近い位置付けとも言えそうだ。

 「povo」を契約するうえでの制限については、「ahamo」と同じように、キャリアメール(○○@ezweb.ne.jp、○○@au.com)や留守番電話サービスが提供されないため、auやUQモバイルから移行するときは注意が必要だ。キャリアメールはGmailやiCloudメール、パソコンで利用するoutlook.comメールなどに切り替え、留守番電話はAndroidスマートフォンの伝言メモなどで対処すればいいだろう。

 留守番電話サービス以外の通話系サービスについては、現時点で何もアナウンスされていない。「ahamo」と同じように、非対応を謳うことになりそうだが、音声通話の多いユーザーは割込通話(キャッチホン)などのニーズも高いため、少し注意が必要だ。話し中のときの連絡方法は、LINEやメッセンジャーアプリ、SMSなどを活用することになる。ちなみに、「+メッセージ」については、本稿執筆時点で対応の可否がアナウンスされていない。

 ネットワーク関連では、5Gへの対応が2021年夏になっており、他社の対応状況と違いが見られる。そのため、すでにauで5Gを利用中のユーザーが移行すると、当面、夏までは4G LTEのネットワークで利用することになる。テザリングは利用できるが、もし、データ通信量が多いのであれば、auの使い放題MAXやUQモバイルのプランを検討した方が堅実かもしれない。

 また、Apple Watchのセルラーモデルで、iPhoneと同じ電話番号を利用する「ナンバーシェア」は対応しないため、移行前に解約する必要がある。一方、Apple Watchで単独の電話番号を契約できる「ウォッチナンバー」についても非対応が決まった。

 次に、キャリア決済については、auと同じく 「auかんたん決済」が利用できるため、auから移行してもコンテンツサービスなどはそのまま利用できる 。ただし、コンテンツサービスにキャリアメールを登録しているときは、移行前にGmailやiCloudメールなどに変更しておく必要がある。契約に関連するところでは、家族割や家族割プラス、auスマートバリューなどの割引サービスが適用されない。

 もうひとつ気になるのは、au契約期間が引き継がれないことだ。契約期間は料金などに影響がないが、auの場合、「長期優待ポイント」のステージ判定などに利用されているため、継続利用時に付与されるPontaポイントが変わってくる。今回、「povo」に移行し、将来的にライフステージが変わって、メインブランドのauに戻ったとき、付与されるポイントに差が出るかもしれない。

 SIMカードについてはauと同じau ICカードが継続して利用できるが、au Nano IC Card 04 LE、au Nano IC Card 04以外を利用しているときは、交換が必要になる。au ICカードはau ICカードそのものや台紙に種別が記載されているので、申し込み前に確認しておくといいだろう。ちなみに、eSIMは対応予定だが、現時点では詳しい情報がアナウンスされていない。

 対応機種については全189機種と豊富で、auが提供するVoLTEに対応したAndroidスマートフォン、iPhoneについてはiPhone 8以降が対応機種となっている。iPhoneの対応が「ahamo」などと違う点に注意したい。

 「povo」も全体的に見ると、「ahamo」と同じように、「おひとり様」が主な対象と見られるが、まだ明確になっていないものもあり、今後、「povo」のWebページをチェックしながら、契約するかどうかを判断することになりそうだ。「povo」の特徴であるトッピングも今のところ、「5分以内通話かけ放題」「通話かけ放題」「データ使い放題24時間」「データ追加1GB」に限られている。今後、自分が利用したいトッピングが提供された段階で移行を検討するのも手だろう。

 また、キャリアメールや留守番電話サービスがないことが気になるのであれば、UQモバイルを検討してみてもいいかもしれない。UQモバイルはMVNO時代からサービスを充実させているため、留守番電話サービスだけでなく、UQモバイルドメインのメールや通話系サービスなどもひと通り、揃っており、auからの移行、あるいはMVNO各社などからの移行でもあまり制限を意識しなくても済むうえ、いざとなれば、店頭や電話でのサポートも利用できるからだ。

「LINEMO」(ソフトバンク)

 2020年12月の発表時は「SoftBank on LINE(仮)」と明示されていたソフトバンクのオンライン専用ブランドは、グループ傘下に入るLINEのネーミングを活かした「LINEMO(ラインモ)」という名称でサービスが提供されることになった。

 昨年12月の段階では基本的にNTTドコモと同スペックの料金だったが、2月18日に催された発表会で、「LINEMO」というブランド名と共に、月額料金は5分通話定額を切り離し、2480円(税別)に値下げすることが発表された。

 「LINEMO」は他社のオンライン専用プランと違い、オンライン専用の「ブランド」と位置付けられている。ソフトバンクが提供するサービスには、メインブランドの「ソフトバンク」の他に、「ワイモバイル」があるが、これと並び立つようなブランドとして、「LINEMO」が新たに加わる形になる。

 MMSによるキャリアメール(○○@softbank.ne.jpなど)が提供されないことは、当初からアナウンスされていたが、2月18日の発表会では質疑応答で、 留守番電話や転送電話といった通話系サービスも提供されない ことが明らかにされた。これはLINEを中心にコミュニケーションを図るうえで、そういった機能は不要だろうという判断に基づく。

 他のオンライン専用プランがメッセンジャーアプリや+メッセージの利用が考えられるのに対し、「LINEMO」はLINEでのメッセージでコンタクトを取ってもらえばいいという考えのようだ。ただし、コミュニケーションは相手が存在するものであり、相手が必ずしもLINEを使っている、あるいはLINEでつながっているとは考えられないため、その点を踏まえると、実際には他のメッセージングサービスも併用する必要がありそうだ。

 ネットワークの対応については、4G LTEに加え、当初から5Gネットワークを利用できるという。これはワイモバイルの新料金プランなどと同じ仕様で、iPhone 12シリーズなど、5G対応端末を利用していれば、エリア内で5Gネットワークに接続される。

 Apple Watchの対応については他社と同様で、サービス開始当初は対応していない。ただし、「今後、お客さまの声を聞いて、検討する」とも答えており、将来的に対応することに含みを持たせている。

 キャリア決済については、サービス開始当初こそ、利用できないものの、 4月中旬以降に「ソフトバンクまとめて支払い」に対応する予定 としている。家族割引などの割引サービスも非対応となっており、できるだけシンプルな料金プランのまま、提供したいという考えのようだ。

 ソフトバンクやワイモバイルのユーザーが「LINEMO」への移行を考えるうえで、注意が必要なのが Yahoo! JAPAN IDとの紐付けとYahoo!プレミアム だろう。ソフトバンクとワイモバイルで契約していると、Yahoo! JAPANなど、対応サイトへのログインを簡略化する「スマートログイン」が利用できるが、「LINEMO」はYahoo!と連携するメニューを用意していない。そのため、LINEMOに移行すると、アカウントの紐付けが切れてしまい、Yahoo!プレミアムの特典も受けられなくなる。発表会後の質疑応答では、この点について、ソフトバンクやワイモバイルからの移行ユーザーに対し、警告を表示するなどの対応を採ると説明していたが、Yahoo! JAPAN IDの紐付けは広範囲に渡るため、思わぬところで漏れが見つかるかもしれない。いずれにせよ、ソフトバンクやワイモバイルのユーザーが移行するときは、十分な注意が必要だ。

 対応機種やSIMカードについては、現時点で具体的な情報が明示されていないが、端末についてはソフトバンクやワイモバイルで利用できている端末をそのまま利用できるようにしたいとしている。

 ソフトバンクなどで指摘されているiPhoneとAndroidスマートフォンでは異なるバージョンのSIMカードが必要になる問題は、「LINEMO」だけでなく、他ブランドも含め、解決する方向で準備を進めているそうだ。ただし、対応時期はまだアナウンスされていない。eSIMについては対応する予定となっており、ワイモバイルでも導入されることから、グループ全体として、取り組むことになりそうだ。

 「LINEMO」について、全体的に見ると、他のオンライン専用プラン同様、やはり、「おひとり様」ユーザーがメインになる。LINEのトークや通話が使い放題であり、LINEが提供するさまざまなサービスにも対応していることから、LINEを活用してきたユーザーには魅力的で、移行しやすいプランと言えそうだ。

 ただし、ソフトバンクやワイモバイルからの移行については、Yahoo! JAPAN IDの紐付けなどが明確ではないため、少し注意が必要だ。特に、LINEとYahoo!の統合ははじまったばかりで、今後、それぞれのサービスがどのように統合されるのか、併用されるのかなど、方向性がわからない部分が多い。当面、Yahoo!はソフトバンクとワイモバイル、LINEはLINEMOという棲み分けになりそうだが、今後、それぞれの連携やサービス内容がどう変わっていくのかをチェックしておく必要はありそうだ。

 逆に、これまでLINEが展開してきた「LINEモバイル」のユーザーにとっては、移行しやすい環境と言えそうだ。基本的な使い勝手はこれまでのLINEのユーザーインターフェイスを継承するとしているうえ、LINEが提供するLINEポイントやLINE Payなども継続して、利用できる。

 LINEモバイルはMVNOとしてのサービス提供を継続するものの、新規受付は3月いっぱいで終了する。4月以降、データ通信量を増量する施策も打ち出されたが、基本的には終息する方向であり、NTTドコモやauのネットワークを利用したMVNOサービスをいつまで継続できるのかも今ひとつ見えない。これらの点を踏まえれば、LINEモバイルのユーザーは、適切なタイミングで「LINEMO」に移行することを検討した方が堅実と言えそうだ。

目先の月額料金ばかりに目を奪われないようにしたい

 ここ数年、携帯電話業界を騒がせてきた料金の値下げは、昨年12月以来の各社の発表を受け、いよいよユーザー自身が新しい料金プランを選ぶフェイズに入る。なかでもオンライン専用を謳う「ahamo」「povo」「LINEMO」は、ユーザーの関心も高く、移行を検討している人がかなり多いようだ。

 確かに、今回のオンライン専用プランは、これまでのメインブランドの料金プランに比べ、シンプルで安いが、本稿でも説明したように、オンライン専用プランであるがゆえの制限もある。同時に、各社がかなり突貫工事で料金プランやサービス仕様を作っているため、まだ十分に洗い出しができておらず、ユーザーにきちんと情報を明示できていない印象も残る。

 また、一部メディアの報道では、月額料金とデータ通信量ばかりが強調されているが、各社のオンライン専用プランはそれぞれに方向性が少しずつ違い、サービス内容や制限事項も異なるため、どのオンライン専用プランにしても慎重に選ぶ必要がある。目先の月額料金ばかりに目を奪われず、メインブランドや低価格ブランドも含め、 どのカテゴリーの新料金プランが自分に適しているのか をじっくりと選ぶことをおすすめした。

 同時に、料金プランの選択は一度、選んだら、終わりではなく、毎月の利用状況をチェックしながら、適宜、変更していくことも忘れないようにしたい。