法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
ついに上陸! 「motorola razr 5G」が切り開くスマートフォンの新スタイル
2021年3月22日 12:00
この十数年、着実に進化を遂げてきたスマートフォン。しかし、フラットなボディに大画面ディスプレイを搭載するモデルがほとんどになり、デザイン的な違いがあまり感じられなくなりつつある。
そんな中、スマートフォンの新しいスタイルとして注目を集めているのがフォルダブル、つまり、折りたたみデザインだ。
往年の名機のネーミングを継承したフォルダブルデザインのスマートフォン「motorola razr 5G」がいよいよ日本国内でも発売されることになった。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。
古くて新しい折りたたみデザイン
現在、国内外で販売されているスマートフォンは、そのほとんどがフラットなディスプレイを搭載したスレート(板状)デザインのボディを採用している。一時はフルキーボードを搭載したモデルなども登場したが、ユーザーのニーズに応える形で進化を遂げた結果、現在はフラットボディが圧倒的な主流となっている。
一方、スマートフォンが普及する前、いわゆる「ケータイ」時代と言えば、棒状のストレートデザインのボディにはじまり、その後、国内外では折りたたみデザインが広く普及した。折りたたみデザインはストレートデザインに比べ、大きなディスプレイを搭載できるうえ、端末を閉じたときに画面をオフにでき、省電力にも役立つという隠れたメリットもあった。現在でもAndroidベースのフィーチャーフォンが各社のラインアップに残っているが、通話機能の使いやすさなどから、根強い人気を持つ。
そんな懐かしい折りたたみデザインがスマートフォンの時代となった今、再び注目を集めている。有機ELディスプレイの「曲がる」特性を活かし、大画面のディスプレイを搭載しながら、端末を折りたためみ、コンパクトに利用できるモデルが登場し、話題となっている。折りたたみデザインのスマートフォンには、大きく分けて、2つのスタイルがあり、ひとつは本のように横方向に開くモデル、もうひとつが従来の折りたたみデザインのケータイのように、縦方向に開くモデルだ。
今回、発売されるモトローラ製「motorola razr 5G」は、折りたたみデザインのケータイのように、縦方向に開くデザインを採用する。ボディのデザインは折りたたみだが、本体を開くと、大きなディスプレイが現われ、一般的なスマートフォンと同じような使い方を可能にする。つまり、大画面ディスプレイを搭載しながら、コンパクトにも使える新しいスタイルのスマートフォンを目指した製品というわけだ。
今回の製品名に与えられた「razr(レーザー)」というネーミングは、グローバル市場でケータイが全盛期の時代、モトローラが発売したケータイ「RAZR」を継承したものだ。「RAZR」は初代モデルが2003年に米国で発売され、そのスリムで美しいデザインが人気を集め、全世界で1億台を超える爆発的なヒットを記録した。国内では2006年にNTTドコモから「M702iS」と「M702iG」が発売されたため、記憶にある読者も多いだろう。
その後、RAZRのネーミングを冠したスマートフォンも登場したが、今回の「motorola razr 5G」は、ネーミングを継承するだけでなく、デザインも往年の名機をモチーフにされた折りたたみデザインのスマートフォンだ。
ちなみに、折りたたみデザインを採用したスマートフォンの「motorola razr」は、2020年2月に初代モデルがグローバル市場で発表されたが、国内では発売されず、今回の「motorola razr 5G」が日本初上陸になる。
ソフトバンクのラインアップとして発売されるほか、国内のオープン市場向けにSIMフリー端末として発売され、+styleでは限定カラー「Brush Gold(ブラッシュゴールド)」も発売される。
折りたたんで持ちやすいコンパクトボディ
まず、外観から見てみよう。前述のように、「motorola razr 5G」は折りたたみデザインを採用している。ボディ幅は一般的なスマートフォンと変わらない72.6mmだが、長さ(高さ)は本体を開いた状態で169.2mm、本体を閉じた状態で91.7mmとなっている。ちょうど一般的なスマートフォンを二つ折りにしたようなサイズ感になる。
本体を開いた状態の下部には、バッテリーやSIMカードトレイ、外部接続端子などが内蔵された部分があり、本体上部側とちょうど合わさるような形状となっている。ちなみに、この下部のアゴのような部分は、ケータイ時代の「RAZR」でも採用されていており、「motorola razr 5G」でもそのデザインが継承された形で仕上げられているわけだ。
本体を閉じた状態のサイズは非常にコンパクトで、ラウンドしたフォルムとも相まって、手にすっぽり収まるサイズにまとめられている。ポケットなどにも入れやすいサイズ感だ。本体を開くときはボディ上部を指先で持って開くことができるが、上部と下部の間に指先をさし込むようにして、開くこともできる。ちなみに、ボディの上部と下部は7000シリーズのアルミニウムでフレームが構成されているが、ヒンジ部分は耐久性を考慮し、ステンレススチールが採用されている。
気になるヒンジ部分の耐久性については、モトローラによれば、2020年発売の「motorola razr」のユーザーを調査したところ、1日平均40の回の開閉操作を行ない、99%のユーザーが100回以内だったそうだ。この実績に基づき、同様の操作を5年間、くり返した回数よりも多い約20万回の開閉ができるように、部品の耐久性を確保しているという。
ちなみに、「motorola razr 5G」のヒンジは、かつての折りたたみデザインのケータイや同様のレイアウトを採用した他機種と違い、開閉の途中で止まる構造ではないため、端末を半開きの状態で机の上に置いて、使うようなスタイルでは利用できない。基本的には本体を開いて、フラットな状態で操作するか、本体を閉じた状態で使うことになる。
6.2インチと2.7インチのディスプレイを搭載
メインディスプレイは本体を開いた内側に、6.2インチHD+対応の折りたたみ式プラスチックOLED(有機EL)を搭載する。縦横比は21:9で、解像度は2142×876ドット表示となっている。
前述の通り、本体を折りたためるのは、ディスプレイが折り曲げられる有機ELを採用しているためだ。本体を開いたときはディスプレイがフラットになり、折りたたんだときにはヒンジ部分でディスプレイが丸くティアドロップ形状になる。ただし、ディスプレイはそのまま曲げられているわけではなく、本体下部側のアゴの部分にディスプレイがわずかに滑り込むように移動させることで、スムーズかつ歪みのないように開閉できるようにしている。本体を開いたときのメインディスプレイは、フラットなスマートフォンと比較しても遜色のない操作感で、タッチ操作のレスポンスは十分なレベルに達している。
折りたたみデザインを採用したスマートフォンは「motorola razr 5G」以外にも存在するが、ライバル機種と違うのは、本体を閉じたときの外側に、2.7インチのクイックビューディスプレイを備えている点だ。クイックビューディスプレイは解像度こそ、800×600ドット表示のSD対応だが、メインディスプレイと同じように、画面をタッチしながら、さまざまな機能を操作できるようにしている。つまり、単に通知などを表示するだけでなく、メッセージに返信したり、マップを表示したり、Spotifyなどの音楽配信サービスのアプリを操作することもできる。後述するカメラ機能では、自分撮りのディスプレイとしても利用することが可能だ。
Snapdragon 765G搭載で5Gネットワークに対応
チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 765Gを採用し、8GB RAMと256GB ROMを搭載する。microSDメモリーカードは非対応だが、本体のストレージが256GBと多いので、それほど、気になることはないだろう。
セキュリティは本体下部の背面側に指紋センサーを内蔵しており、指紋認証が利用できる。指紋認証は端末を閉じた状態で開いた状態でも操作することが可能で、端末の画面ロック解除だけでなく、特定のアプリのロック解除やログインにも利用することができる。3D対応ではないものの、顔認証にも対応する。
通常、顔認証は認証時に本体のインカメラで顔を捉えるが、motorola razr 5Gはメインディスプレイの上のインカメラだけでなく、アウトカメラでも認証できるため、端末を閉じた状態でも顔認証でロックを解除し、すぐにクイックビューディスプレイで操作することできる。
バッテリーは2800mAhのものが内蔵されており、パッケージには15W TurboPowerチャージャーが同梱される。モトローラによれば、通常の利用なら、約1日程度の稼働が可能で、同梱の15W TurboPowerチャージャーを使えば、短時間でフル充電ができるとしている。今回の試用ではインターネット接続やカメラによる撮影などを試したが、端末を閉じるとメインディスプレイがすぐに消灯する仕組みの効果もあってか、あまりバッテリー残量でストレスを感じるようなことはなかった。
ネットワークは国内外の5Gネットワークをはじめ、4G(LTE)/3G(W-CDMA)/2G(GSM)に対応する。今回はSIMフリー版を試用したが、ソフトバンクの5G対応SIMカードの他に、auとNTTドコモの5Gネットワークにも接続することができた。モトローラから正式なアナウンスは出ていないが、主要3社については特に問題なく、利用できると見ていいだろう。
また、ソフトバンク版はnanoSIMカード1枚のみのシングルSIMだが、SIMフリー版はnanoSIMカードとeSIMのDSDVでの運用が可能だ。動作確認情報は各社のアナウンス待ちになりそうだが、すでにeSIMによるサービスを提供するIIJmio以外にもauやソフトバンクのオンライン専用ブランドなどでもeSIMサービスが開始されるため、幅広い環境で利用できることになりそうだ。
おなじみのMotoアプリや多彩なカメラ機能も搭載
プラットフォームは製品向けの最新版となるAndroid 11を搭載する。折りたたみデザインという独特のスタイルを採用する「motorola razr 5G」だが、これまでのモトローラ製端末と同じように、「Pure Android」とも呼ばれる標準仕様にもっとも近いAndroidプラットフォームを採用しており、非常に素直で扱いやすいユーザーインターフェイスに仕上げている。
文字入力はAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」を搭載しており、メインディスプレイとクイックビューディスプレイの両方で同じように使うことができる。
これまでのモトローラ製スマートフォンに搭載されてきたおなじみの機能として、「Motoアプリ」も搭載される。これまでの「Motoアプリ」同様、ユーザーが簡単に操作するための「Motoアクション」、ディスプレイ関連の機能を設定する「Motoディスプレイ」が搭載されるほか、ゲームを楽しむときに便利な「Motoゲームタイム」、Android 11の新機能を説明する「新着情報」、「motorola razr 5G」の機能を解説する「Razrヒント」のメニューも用意されている。なかでも「Razrヒント」は「motorola razr 5G」ならではの機能について解説されているので、購入したユーザーはぜひ目を通しておきたい。また、「カスタマイズ」を選ぶと、アイコンやフォント、カラーなどを自分好みにできる「My UX」が利用できる。
折りたたんだ状態でメインカメラで自撮り
カメラは本体の外側に4800万画素/F1.7のメインカメラ、ディスプレイの上側に2000万画素/F2.2のインカメラを搭載する。
どちらも4つの画素を1つの画素として撮影できる「クアッドピクセルテクノロジー」に対応しており、暗いところなどでもより多くの光を取り込んで撮影ができる。メインカメラは光学手ぶれ補正に対応しており、笑顔を自動的に撮影する「自動スマイルキャプチャ」、ジェスチャーで自撮りができる「ジェスチャーセルフィー」、暗いところでの撮影に強い「ナイトビジョン」、特定のカラーだけを活かした撮影ができる「スポットカラー」など、これまでのモトローラ製端末でおなじみの多彩な撮影機能が搭載されている。
これらの撮影機能はこれまでの端末の場合、メインカメラに搭載されていたため、自分撮りには活かすことが難しい感があったが、前述の通り、「motorola razr 5G」は端末を閉じた状態でクイックビューディスプレイにプレビューを表示しながら、メインカメラで撮影できるため、今まで以上に多彩な撮影機能を活かしやすくなっている。
ちなみに、カメラの起動については、前述の「Motoアクション」に登録されており、端末を手に持ち、手首を2回、連続でひねると、すぐにカメラを起動できる。この操作は端末を閉じた状態でも開いた状態でも利用できる。同様に、スクリーンキャプチャを撮るときは、画面に三本の指を立てて、長押しすれば、シャッター音と共に、撮影することができる。
新しいスタイルでワクワク感を
十数年、着実に進化を遂げてきたスマートフォンだが、製品としての完成度や成熟度が高められた一方、性能や機能面で多少の差があるものの、デザイン的にはどの端末を手にしても代わり映えがしないという声も耳にする。スマートフォンは多くの人にとって、もっとも身近なデジタルデバイスであり、インターネットやSNS、カメラ、音楽、動画、ゲームなどが快適に楽しめれば、十分という解釈も成り立つが、その一方で、自分だけの持ち物として、所有感やカッコ良さ、ワクワク感、楽しさも演出できるアイテムであって欲しいという見方もある。
今回発売されるモトローラ製「motorola razr 5G」は、往年の名機のデザインやネーミングを継承しながら、折りたたみデザインという新しいスタイルをスマートフォンで実現したモデルだ。そのデザインや質感、仕上がりは、現在の多くのスマートフォンと一線を画すものであり、ユーザーにワクワク感や期待感、楽しさも感じさせる端末に仕上がっている。機能的にも単に折りたためるだけでなく、折りたたむことでメインカメラで自分撮りができたり、端末を閉じたまま、クイックディスプレイでさまざまな機能を利用できるようにするなど、端末のデザインと機能を連携させることで、新しいスタイルを切り開こうとしている。
価格はソフトバンクが販売するモデルが19万8000円(税込)、モトローラオンラインストアが販売するモデルが17万9799円(税込)と、いずれも一般的なスマートフォンに比べれば、高価格帯だが、それに見合うだけの機能やスペックを搭載しており、満足度の高い端末に仕上がっている。少しでもリーズナブルな価格で入手したいというのであれば、ソフトバンクの「トクするサポート+」で買うというのもひとつの手だ。「motorola razr 5G」一般的なフラットボディのスマートフォンにはない新しいスタイルを求めるユーザーに、ぜひ手に取って欲しい一台と言えるだろう。