法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
総務省に振り回される業界各社、AIとカメラの進化で加速するスマートフォン~2018年のモバイル業界を振り返る~
2018年12月28日 19:06
2018年も残すところ、数日。例年、動きが激しいと言われるモバイル業界だが、2018年は業界のビジネスの在り方を覆すようなニュースが続き、これまで以上に慌ただしい一年だったと言えそうだ。今年、モバイル業界で注目された話題を取り上げながら、一年の動きを振り返ってみよう
これでいいのか? 日本の通信行政
2018年のモバイル業界でもっとも話題になったトピックと言えば、やはり、菅官房長官の「4割下げられる余地がある」発言をおいて、他にはないだろう。
2015年の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を後押しすることになった安倍総理の「携帯電話料金引き下げの検討を指示」というニュースも業界に大きなインパクトを与えたが、今年の菅官房長官の発言は、『4割の値下げ』という直接的かつ具体的な内容で、現在、総務省で催されている「モバイル市場の競争環境に関する研究会」での議論にも強い影響を残している。
しかし、その発言については、本連載でも指摘したように、4割の根拠が不正確なデータに基づいているうえ、民間企業の価格設定や販売方法に政府が介入するという、とても自由主義経済とは思えないような動きに違和感を覚えたのは、筆者だけではないはずだ。
この件については、またあらためて取り上げたいが、日本の通信行政は元々、電電公社を民営化し、規制緩和によって、通信の自由化を実現し、競争環境を作り出すことで、料金の低廉化やサービスの拡大を実現してきた。にもかかわらず、今回は(今回も?)総務省と有識者による研究会は、各携帯電話事業者の端末販売方法や料金施策に口を挟み、挙げ句の果てには販売店まで登録制にするという、これまでの時代の流れに逆行するような方針を打ち出している。
本来、通信料金は技術の進歩によって、単価を下げられるため、年を追うごとに料金の低廉化が実現できるはずだ。特に、モバイル業界は技術の進歩が著しく、世代を追うごとにビット単価を下げてきた実績があり、今後も5Gへ向けて、その流れを継続できる状況にある。「国民共有の資源である電波を借り受けているのだから、介入は当然」という指摘もあるが、各携帯電話会社は電波利用料を支払っており、もし、必要であれば、テレビやラジオの放送も含め、電波利用料の見直しをすればいいことだ。
MVNOへの影響は
また、今回の研究会の議論は、端末の購入補助金などを排除することで、料金の低廉化を実現しようとしているが、以前の記事でも説明したように、現在のまま、各携帯電話会社の料金を4割、下げてしまうと、当然のことながら、MVNO各社の息の根を止めてしまうことになり兼ねない。
むしろ、携帯電話サービス全体の料金の低廉化を実現するのであれば、各携帯電話会社がMVNO各社に提示している接続料を下げるべきだが、12月26日に開催されたモバイル研究会の第5回でようやく取り上げられたものの、その内容はUQコミュニケーションズとWCPの2社の扱いなどに触れるのみで、肝心の接続料に対するアイデアは何も提示されなかった。
現在の接続料の計算式は契約数に基づいているため、契約数の多いNTTドコモが安く、契約数の少ないソフトバンクが高くなっている。しかし、「国民共有の資源である電波を借り受けている」という事実に基づくなら、たとえば、各携帯電話会社に割り当てられた周波数帯域幅(割当周波数の多さ)を係数に加えるなど、新しい工夫が必要になるが、そういった話題もまったく提示されていない。接続料については別の研究会で議論されており、そちらの研究会と連携する動きでもあれば、まだ理解できるが、そういった話題は何も取り上げられていない。
業界各社の姿勢にも疑問
今回の一連の議論を見ていて、非常に違和感を覚えたのは、モバイル業界全体として、襟を正さなければならないことはあるものの、未だに携帯電話会社もMVNO各社も「御上(おかみ)から周波数帯域を拝領して、携帯電話サービスを献呈させていただいている」ようなスタンスにしかなっていない点だ。
国民共有の資源である電波を利用して、サービスを提供していることは確かだが、前述の「通信の自由化」や「規制緩和」の流れを受け継いだ自由闊達な議論や発言がほとんどできておらず、総務省や有識者による研究会の顔色をうかがいながら、ヒアリングなどに応じている状況だ。
たとえば、菅官房長官の「4割値下げ」発言に対し、前述のように直接的な影響を受けるMVNO各社は「各携帯電話会社の料金値下げの前に、まずは接続料を下げるべき」と発言すべきだが、そういった発言はまったくなく、後日、催された総務省の研究会において、一部のMVNO各社が発言しただけに過ぎない。
菅官房長官の発言に対するコメントも「低廉な料金プランを用意しており、ある程度実現できてると考えている」(NTTドコモ)、「引き続き今後もお客さまのニーズに応えられるようサービスの向上に努めて参ります」(au)、「引き続きお客さまにとってより良いサービスを検討していきます」(ソフトバンク)といった内容だ。これらのコメントは各社の本心を表わしていないのかもしれないが、業界全体で建設的な議論や提案ができるような環境を作っていかなければ、今後も総務省や政府に振り回され続けることになってしまいそうだ。
変革の時期を迎える国内市場
国内でスマートフォンが本格的に展開されるようになってから十数年。そして、2019年から2020年へ向けては5Gの時代を迎えることになる。前述のモバイル研究会による緊急提言の影響などもあり、2019年以降は国内市場が大きく変革する時期を迎えることが予想されるが、今年はその先駆けとなる動きがいくつも見受けられた。
リーダー交代のKDDI
まず、今年最初のトピックとして、ひとつの転換期を印象づけたのは、KDDIの代表取締役社長が田中孝司氏から髙橋誠氏に交代したことが挙げられる。
髙橋氏はかつてのケータイ時代、auのさまざまな端末やサービスの発表会において、自ら壇上に立ち、プレゼンテーションをするなど、業界内では『auの顔』的な人物として親しまれてきた存在で、本誌にも古くから何度も記事に登場してきた。個人的にもDDIセルラー時代から取材をしてきた髙橋氏の社長就任は感慨深いものがあった。
社長交代の発表会見後、MWC 2018が開催されたバルセロナでの単独インタビューにおいて、田中氏が「楽天が携帯電話事業に参入することに象徴されるように、これからは『素の通信』で戦う時代ではなく、各社が持つさまざまなアセット(資産)を使って戦う必要がある。まさに次の時代へ向けて動き出したタイミングであり、そこで戦える髙橋氏にバトンを渡した」と語っていたことも非常に印象的だった。
KDDIはその後、楽天へのローミング提供をはじめ、決済や物流などの提携も発表しており、2019年以降、これらがどのように動き出し、新しいサービスが展開されてくるのかが非常に注目される。田中前社長には「お疲れさまでした」と申し上げたい。
ソフトバンクが上場
また、ソフトバンクもひとつの転換期を迎えることになった。2006年にボーダフォンの日本法人を買収して以来、国内で携帯電話事業を拡大してきたソフトバンクだが、今年12月、携帯電話事業を手がける事業会社が東証一部に上場した。
投資などを手がけるソフトバンクグループとの親子上場が話題になる一方、上場を控えた11月には通信事業を担当する人員の4割を他の成長領域への配置転換をすると明らかにするなど、こちらも新しい構造に舵を切った格好だ。しかし、12月6日には全国で4時間以上、携帯電話サービスが使えなくなるという過去最大規模も障害を起こしてしまった。原因はエリクソンの設備の不具合にあり、世界各国でも同じトラブルが起きたが、エリクソンに頼りっぱなしだったソフトバンクの姿勢には批判的な声が多く聞かれた。
ドコモ、来春の値下げを宣言
NTTドコモについては企業的なトピックこそなかったものの、10月には前述の総務省の指摘を受け、「2019年春に、2割から4割程度、引き下げた料金プランを提供する」と発表し、業界内を驚かせた。
この発言後、NTTドコモだけでなく、主要3社や関連各社の株価が大きく値を下げるなど、「ドコモショック」と呼ばれるような動きになってしまった。ユーザーとしては料金の低廉化を率直に歓迎したいが、業界としては政府からの根拠の希薄な「4割値下げ」発言が議論されている中、ひと足早く発表してしまったNTTドコモの従順な姿勢に否定的な意見もあった。
新規参入を決めた楽天
2019年に携帯電話サービスを開始する楽天は、昨年の免許付与以降、目立った動きがなく、メディア関係者をやきもきさせていたが、今年12月にようやく「基地局工事安全祈願祭」を催し、同社の携帯電話網が「今までと次元が違う安定性」を目指すことなどが明らかにされた。
2019年に予定されている携帯電話サービスがどのような内容になるのか、MVNOとしての楽天モバイルをどうするのかなど、まだ見えてこない部分も多く、2019年はサービス提供のロードマップを含めた明確な情報発信を期待したいところだ。
MVNOは苦戦
MVNO各社については、2017年の各携帯電話会社の新料金プランなどによる攻勢もあり、今年も苦戦が続いた格好だった。12月26日に発表されたMM総研の調査では、楽天モバイルがトップシェアを獲得し、これにIIJ(IIJmio)、UQコミュニケーションズ(UQモバイル)、NTTコミュニケーションズ(OCN モバイル ONE)、ケイ・オプティコム(mineo)などが続いており、いずれも従来からの通信事業者、もしくは各携帯電話事業者との資本関係を持つ事業者がリードする形となった。
従来に比べれば、格安SIMの利用が認知され、市場に定着したとも言われているが、実状は既存の通信事業者から多少、分散した程度という見方もあるうえ、今後、前述の菅官房長官の「4割値下げ」発言を本当に敢行されたとき、MVNO各社がどのように戦っていけるのかが注目される。
大手3キャリアのサービス面を振り返る
各携帯電話会社のサービス面については、5Gを控えていることもあり、あまり目立った動きはなかったが、スマートフォンが国内市場に定着し、利用スタイルが拡大していることを感じさせるものもいくつか登場した。
たとえば、auは米Netflixと提携し、Netflixの視聴プランを組み込んだ「auフラットプラン25 Netflixパック」を発表した。「25GBでは足りないのでは?」という声もあったが、Netflixがモバイルで視聴するユーザー向けに、ソフトウェアやユーザーインターフェイスを独自に開発していることも明らかになり、スマートフォンでも映像コンテンツを快適に視聴できることを証明して見せた。
NTTドコモでは、auの世界データ定額の追随になるが、今年3月から24時間980円で利用可能な「パケットパック海外オプション」をスタートさせた。6月からスタートさせた複数日割引などを含むキャンペーンは、来年2月から対象地域を拡大し、正式サービスになることも発表されるなど、かなり積極的に展開している。
2社が24時間980円の国際ローミングを実現しているのに対し、ソフトバンクはサブブランドのワイモバイルも含め、相変わらず、iPhoneのみを対象にした「アメリカ放題」しかなく、かなり出遅れている印象は否めない。2019年以降の巻き返しに期待すると同時に、MVNO各社でのサービス展開にも期待がかかるが、この部分についてはMVNO各社でも同様のサービスが提供できるような下地作りを総務省が先導してやるべきではないだろうか。
2018年を彩ったスマホたち
さて、最後に今年発売された端末についても触れておこう。本誌では「読者が選ぶ ケータイ of the Year 2018」として、キャリア部門とSIMフリー部門について、投票結果を掲載しているので、そちらも参照していただきたいが、ここでは筆者の独断による「俺のケータイ of the Year」を選んでみたい。
ファーウェイが投入した「P20 Pro」「Mate 20 Pro」
まず、今年のスマートフォンのトレンドについては、やはり、「カメラ」が最大のトピックだったと言えるだろう。携帯電話に搭載されるカメラは、国内市場が発祥であることは読者のみなさんもよくご存知だろうが、ここ数年のスマートフォンのカメラはコンパクトデジタルカメラなどにはなかった新しい機能が次々と搭載され、SNSなどを通じて、ユーザーを楽しませてきた。
たとえば、ファーウェイが数年前に先陣を切ったデュアルカメラもそのひとつだが、今年はメインカメラに3つめのイメージセンサーを搭載したマルチカメラのモデルが登場し、驚かせた。
今年3月に発表され、国内ではNTTドコモの専売となった「HUAWEI P20 Pro」、10月にグローバル向けに発表され、国内では11月に発売された「HUAWEI Mate 20 Pro」がその最高峰に位置付けられる。なかでもHUAWEI P20 Proの実機をフランス・パリで初めて手にして撮影したときの衝撃は今でも鮮明に覚えており、マルチカメラで実現するボケ味の利いた写真だけでなく、暗いところでも明るく、雰囲気のある美しい写真を撮影できることに感動した。
ファーストインプレッションに掲載した一枚は今年の個人的なベストショットだった。こうしたマルチカメラの流れは普及モデルにも拡大しており、SIMフリースマートフォンではおそらくトップセールスを記録した「HUAWEI P20 lite」など、3万円前後のモデルでもかなりクオリティの高い写真を撮影できるようになっている。
Galaxyシリーズにもマルチカメラ
同じマルチカメラでもカメラモジュールに今までにない新しい機構を組み込んだのがサムスンの「Galaxy S9」「Galaxy S9+」「Galaxy Note9」だ。いずれも周囲の明るさに応じて、絞りを物理的に可変させるという機構を組み込み、暗いところでも明るいところでも美しい色合いの写真を撮影できるようにした。
端末全体としての斬新さはやや物足りなかったという声もあったが、完成度についてはトップクラスの出来だったと言って、差し支えない。惜しむらくはAndroidプラットフォームの更新などが他社に遅れを取っていることが挙げられる。
動画専用カメラを備えた「AQUOS R2」
また、シャープの「AQUOS R2」では静止画を撮影するカメラのほかに、動画専用カメラモジュールを搭載するという新しいマルチカメラの可能性を示した。実際に動画を撮影してみると、従来の静止画カメラで撮影したものとは明らかに違う動画が撮影でき、子どもやペットなど、動きのある被写体を撮影するユーザーにはおすすめできる端末に仕上がっていた。
AIの力を見せるPixel 3/3 XL
逆に、カメラモジュールが1つでありながら、AIによって、ボケ味の利いた写真を撮影できる端末も増えている。なかでもGoogleが久しぶりに国内市場に投入した「Pixel 3」「Pixel 3 XL」は、発売日後にも夜景モードがアップデートで追加されるなど、AIを中心とした機能の進化を続けている。マルチカメラとは異なる方向性だが、AIの進化によって、カメラで撮影できる世界を拡げて行くという点において、注目される。Pixel 3についてはボディサイズと機能のバランスも良く、個人的にももっとも気に入った一台だ。
ディスプレイに指紋センサー
また、カメラ以外の機能面では、いくつか面白いものが登場した。たとえば、グローバル向けではいち早くHUAWEI Mate 20 Proが採用し、国内向けにはOPPOが「R17 Neo」に搭載したディスプレイ内指紋センサーが挙げられる。
指紋センサーについては本体前面、背面、側面などに備える機種が多いが、デバイスがボディデザインに与える影響も多く、操作性も人によって好みが分かれている。これに対し、ディスプレイ内指紋センサーは普段、スマートフォンを操作するときと同じように、指先を画面の指定された位置に置くだけで認証できるため、前面のほとんどをディスプレイにしながら、指紋認証の操作をやりやすくしている。このしくみは今のところ、有機ELのみで実現できるが、2019年以降は搭載モデルが増えることになるかもしれない。
Mate 20 Proから他の製品に給電できる機能
HUAWEI Mate 20 Proでもうひとつ面白かったのは、リバースワイヤレスチャージだ。Qiに準拠したワイヤレス充電に対応する機種は多いが、HUAWEI Mate 20 Proは本体内のワイヤレス充電に対応するだけでなく、他の機種にワイヤレスで給電できるしくみも備えている。4200mAhという大容量バッテリーをさらに活用できる機能として、注目される。
軽さと片手サイズのAQUOS 2製品
また、機能そのものというわけではないが、シャープがAQUOS zeroで示した146gという『軽さ』、AQUOS R2 Compactで示した『片手サイズ』は、いずれもユーザーがスマートフォンに求める本質をしっかりと表わしたモデルと言えるだろう。シャープはかねてから「ユーザーに寄り添う」という言葉を多用してきたが、ユーザー自身が明示的に求めるものだけでなく、ユーザーが実際に利用するシーンのことをしっかり考えたモノ作りに取り組んでいる印象で、グローバル市場のメーカーとは違ったアプローチはもっと高く評価されるべきだろう。
保守的な仕上がりだったiPhone
成熟した、完成度が高まったと言われながら、今年も各社のスマートフォンには次々とユニークな機能が搭載され、市場をにぎわせたが、逆に保守的になりすぎたのは、アップルのiPhoneだ。
今年、iPhoneは昨年のiPhone Xの流れを受け継いだiPhone XS/XS Max/XRの3機種を発売したが、イノベーションを感じさせる新機能はほとんどなく、iPhone XS Maxの画面の大きさ、3機種のディスプレイの違いなどが注目されるのみだった。むしろ、それ以上に注目されたのは、他製品を圧倒する高い価格設定で、最上位モデルの20万円に迫る価格を見て、購入を諦めてしまい、旧機種のiPhone 8やiPhone 7を購入したユーザー、他製品に乗り換えたユーザーも多く見受けられた。
iPhone XS/XS Max/XRは製品としての完成度も高く、質感も仕上げもかなり上質であることは間違いないが、やはり、ユーザーとしてはスマートフォンに出せる金額に限度があり、アップルはそこを完全に見誤ってしまった感は否めない。
アップルは創業時、誰にでも使えるコンピューターを作る会社としてスタートしたはずだが、今年のiPhone XS/XS Max/XRは誰もが手にできるスマートフォンとはとても言えない印象だ。2019年以降、国内市場で本格的な分離プランが導入され、本体価格のみで購入しなければならなくなったとき、ユーザーがiPhoneの価格設定にどういう評価を下すだろうか。
筆者が選ぶ今年の機種は……
これらのことを踏まえ、筆者が選ぶ今年を代表する機種をいくつか選んでみよう。昨年同様、ハイエンドモデルとミッドレンジに分けて、選んでみることにした。
まず、ハイエンドについては、ここでも取り上げた「HUAWEI P20 Pro」「HUAWEI Mate 20 Pro」「Galaxy S9+」「Google Pixel3」を挙げたい。
いずれもカメラに強みを持つモデルであるが、それぞれのカメラに対する方向性が違い、HUAWEI P20 Proはモノクロセンサーとカラーセンサーの組み合わせで高品質な写真を追求しているのに対し、HUAWEI Mate 20 ProとGoogle Pixel 3はAIのポテンシャルを活かした写真を撮影できるようにしている。
Galaxy S9+はこれまでに培われてきたカメラ性能を進化させつつ、可変絞りという新しい機構に取り組んでいる。スマートフォンとしての基本性能やユーザーインターフェイスについては、「HUAWEI P20 Pro」「HUAWEI Mate 20 Pro」「Galaxy S9+」がバランスが良く、Google Pixel 3はAndroid 9 Pie標準のユーザーインターフェイスが今ひとつ慣れない印象が残った。ただし、いずれも今年を代表するベストチョイスと言って、差し支えない。
一方、2019年以降に本格的な分離プラン導入がちらついていることもあり、3万円~5万円のミッドレンジのソーンは激戦区になりつつある。売れ行きとしては前述のHUAWEI P20 liteがかなり好調で、内容的にもおすすめの一台だが、昨年来、シャープのAQUOS senseシリーズも好調で、11月からは後継モデルのAQUOS sense2も発売された。
必要十分以上の機能を備えながら、3万円台という価格を実現しており、省電力性能や将来へのバージョンアップ保証なども含め、ユーザーが安心して購入できる端末に仕上がっている。主要3社に加え、MVNO各社向けのSIMフリーモデルも販売されており、どのキャリアと契約するユーザーにも購入しやすく、おすすめできる一台と言えるだろう。
最後に、スマートフォン以外の今年の一台として、NTTドコモの「カードケータイ」を挙げておきたい。昨年は同じく京セラ製の「TORQUE X01」を挙げたが、同社はスマートフォンや携帯電話を構成する数多くの部品を製造しており、カードケータイはまさにこれらを活かす技術力を組み合わせることで開発された同社らしい一台と言えるだろう。この一台に留まらず、今後もユニークなモノ作りが進められることを期待したい。
今年のモバイル業界は、冒頭でも触れたように、またしても総務省に振り回される一年となってしまった印象だが、その一方で、端末の新機能や新コンセプト、各社の新サービスなども登場し、目まぐるしく動いた一年だったと言えそうだ。
2019年はいよいよ5Gのスタートを控え、各社の料金プランや販売方法についても変革が見られる年になりそうだ。業界各社には来年もユーザーがワクワクするトピックを数多く提供していただくことをお願いしつつ、今年最後の記事の締めとさせていただきたい。