法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

GoogleのAIテクノロジーで加速する「Pixel 3」「Pixel 3 XL」

 10月9日に米国・ニューヨークで催された発表イベントに続き、翌10月10日には国内向けの発売が発表された、Googleのスマートフォン「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」。国内ではGoogleが自らオンラインで販売するほか、NTTドコモとソフトバンクからもキャリアモデルとして11月1日に発売された。同時発表のPixel Standも含めて実機を試すことができたので、その内容をチェックしてみよう。

Google「Pixel 3」、約145.6mm(高さ)×68.2mm(幅)×7.9mm(厚さ)、約148g(重量)、Just Black、Clearly White(写真)、Not Pinkをラインアップ
Google「Pixel 3 XL」、約158.0mm(高さ)×76.7mm(幅)×7.9mm(厚さ)、約184g(重量)、Just Black(写真)、Clearly White、Not Pinkをラインアップ

Googleが手がけるスマートフォン

 改めて説明するまでもないが、Androidスマートフォンの中核となるAndroidプラットフォームはGoogleが中心になって開発が進められている。今年8月に最新版のAndroid 9 Pieがリリースされたばかりで、これを世界中の端末メーカーが採用し、Androidスマートフォンとして世に送り出されている。自らプラットフォームからハードウェアまでを単独で手がけているアップルのiPhoneと大きく異なる点だ。

 そんな立場にあるGoogleは、かつて端末メーカーと共同で、「Nexus」シリーズというスマートフォンを世に送り出してきた。国内でも「Nexus 5」や「Nexus 5X」(LGエレクトロニクス製)、「Nexus S」や「Galaxy Nexus」(サムスン製)、「Nexus 6P」(ファーウェイ製)、「Nexus 6」(モトローラ製)などがリリースされ、一部はキャリアモデルにも採用され、それぞれ人気を集めた。

 このNexusシリーズは、Androidプラットフォームのリファレンス端末という位置付けで、Androidプラットフォームの標準的なユーザーインターフェイスとアプリ、いわゆる『素のAndroid』を体験できる端末として開発されていた。そのため、一般ユーザーが利用する一方で、Androidプラットフォームに関連するハードウェアやソフトウェアの開発者が、お手本的として参照する端末として扱われていた。

 ところが、2015年9月発売の「Nexus 6P」を最後に、Nexusシリーズには終止符が打たれ、プラットフォームのアップデート(バージョンアップ)もAndroid 8.0/8.1で終了しており、アップデートの保証期間も2018年11月で終了する予定だ。

 その後、Googleは途上国や新興国などを中心に、Nexusシリーズと同様に、それぞれの国と地域のメーカーなどと共同で、「Android One」というシリーズを起ち上げる。一見、Nexusシリーズの後継のように受け取られそうだが、Android Oneは『素のAndroid』を体験できる端末であると同時に、ある程度、機能を絞り込むことで、途上国や新興国などで広くAndroidプラットフォームを搭載したスマートフォンの普及を図りたいという狙いがあった。

 国内市場においてはNexusシリーズをもっとも多く販売してきた実績が評価され、2016年にワイモバイルがシャープと共に国内向け初代モデルを開発することになり、後に京セラとHTCもAndroid One端末を手がけ、価格の安さもウケて、ワイモバイルの人気シリーズのひとつに成長している。海外でもモトローラやLGエレクトロニクス、ノキア、シャオミといった有力メーカーが続々と新製品を市場に投入している。

 今回発売される「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」は、Googleが開発したスマートフォンだが、Nexusシリーズのようなリファレンス端末でもなければ、Android Oneのようなエントリー層を狙った端末というわけでもない。Googleとしては、Googleが持つハードウェアとソフトウェアの技術に、Googleアシスタントを中心としたGoogleのAIを組み合わせることで、新しいスマートフォンの方向性を目指した端末としている。

 ちなみに、ハードウェアの開発については、昨年9月、それまでのPixelシリーズ(日本では未展開)を開発していたHTCのスマートフォン部門を買収しており、この部門が今回のPixel 3/3 XLも担当しているという。ちなみに、「Pixel」というブランドは意外に古く、2013年に米国で発表された「ChromeBook Pixel」というChrome OS搭載のパソコンが始まりで、2016年に発表された「Pixel」「Pixel XL」以降、スマートフォンにも使われ、今回のモデルはその三代目に位置付けられる。国内向けとしては、初登場のブランドネームになる。

 販売に関してはGoogleがオンラインで国内向けに販売するほか、NTTドコモとソフトバンクからも発売される。Googleのオンライン販売は販売価格のまま、購入することになるが、NTTドコモでは「月々サポート」で割引が受けられ、ソフトバンクについても従来の「スマ放題」と「ホワイトプラン」を継続した場合のみ、月月割が適用されるため、いずれも少し割安に購入できる。最も高いモデルが13万円を超えていることから、少しでも割安に購入したいのであれば、キャリア2社の月額割引を上手に活かしたいところだ。

5.5インチの「Pixel 3」と6.3インチの「Pixel 3 XL」

 まず、外観からチェックしてみよう。今回発売されたモデルは「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」の2機種だが、ディスプレイのサイズや解像度、ボディの大きさ及び重量、バッテリー容量と連続稼働時間などの違いを除けば、どちらも基本的には同じ仕様で、カメラやネットワークの対応などにも違いはない。その点を踏まえたうえで、ご覧いただきたい。

 ボディは本体前面のほとんどをディスプレイが占めるデザインを採用し、右側面に電源ボタンや音量ボタン、背面に指紋認証センサーとメインカメラ、下部に外部接続端子とSIMカードトレイを備える。国内向けに販売されるモデルはおサイフケータイに対応することが発表されている。これまで国内で販売されてきた端末と違い、背面におサイフケータイのマークはプリントされていない。ちなみに、おサイフケータイで利用できる電子マネーはQUICPay、Suica、nanaco、楽天Edy、WAONで、Google Payも利用可能だ。

 ボディ幅はPixel 3が68.2mm、Pixel 3 XLが76.7mmとなっている。同クラスのライバル機種と比較すると、Pixel 3は5.8インチディスプレイ搭載のiPhone XSよりもスリムで、Pixel 3 XLは6.5インチディスプレイ搭載のiPhone XS Maxとほぼ同じ程度になる。重量はPixel 3が148g、Pixel 3 XLが184gとなっており、iPhone XS/XS Maxよりも軽量に仕上げられている。IP68規格に準拠した防水防塵にも対応しており、ボディ周り全般において、ライバル機種に勝っている印象だ。

 ディスプレイは「Pixel 3」が2160×1080ドット表示が可能な5.5インチフルHD+OLED(有機ELディスプレイ)、「Pixel 3 XL」が2960×1440ドット表示が可能なQHD+OLEDを搭載する。縦横比はPixel 3が18:9であるのに対し、Pixel 3 XLは18.5:9で、どちらも10万対1のコントラスト比を持ち、HDR表示に対応する。ディスプレイ前面にはCorning Gorilla Glass5が採用される。

Pixel 3
下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。右側にはピンで取り出すタイプのSIMトレイが装着される
本体の下部にピンで取り出すタイプのSIMトレイが備えられる。nanoSIMカード1枚のみを装着可能
Pixel 3の背面にはカメラ、指紋センサーを備える
右側面のボタンは上側が電源キー、下側に音量キーというレイアウトを採用
ノッチがあるiPhone XS(左)に対し、Pixel 3(右)はノッチがないスタンダードなデザイン
iPhone XS(左)とPixel 3(右)の背面。Pixel 3は背面の下側をマットに仕上げ、独特の触感を演出している
Pixel 3 XL
右側面のボタンは上側が電源キー、下側に音量キーというレイアウトを採用
下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。右側にはピンで取り出すタイプのSIMトレイが装着される
本体の下部にピンで取り出すタイプのSIMトレイが備えられる。nanoSIMカード1枚のみを装着可能
iPhone XS Max(左)とPixel 3 XL(右)。iPhoneの方がより画面占有率が高く見える。ノッチの深さも違う
iPhone XS Max(左)とPixel 3 XL(右)の背面。iPhoneのガラス仕上げに対し、カメラ部より下をマットに仕上げている

 インカメラが内蔵されたディスプレイの上部は、Pixel 3 XLがノッチ(切り欠き)のあるデザインを採用しているのに対し、Pixel 3はノッチのない仕上げとなっている。Pixel 3 XLのノッチはライバル機種に比べ、ややノッチが深く(縦方向に長い)、手にしているときも少し目立つ印象は否めないが、ノッチを目立たなくする表示に切り替えることもできる。Pixel 3 XLで映像コンテンツを視聴したときのノッチ部分の表示については、YouTubeのコンテンツを再生し、拡大表示に切り替えると、映像が欠けてしまうが、Google Playの映画などはノッチ部分まで表示が拡がらないため、自然なイメージで映像を視聴できる。このあたりはiPhone XS/XS Maxよりもしっかりと考えられている印象だ。

Pixel 3 XL(左)とiPhone XS Maxのノッチ(切り欠き)部分の比較。Pixel 3 XLの方が幅が狭いが、より深くなっている

 有機ELディスプレイの特性を活かし、Galaxyなどと同じように、待機時にも時計などを表示するAlways-on Displayもサポートされる。Pixel 3/3 XLでは「アンビエント表示」と明記されており、設定画面の[ディスプレイ]-[アンビエント表示]で設定する。[常にON]に設定して、時刻や通知などを常に表示することもできるが、バッテリーの消費やOLEDの焼き付きを心配するのであれば、画面をダブルタップして通知を表示したり、端末を持ち上げて表示する設定に切り替えるのがおすすめだ。

 ちなみに、このアンビエント表示を活かした機能として、「Now Playing」という機能が用意されている。これは現在聞こえている(周囲でかかっている)音楽の曲名などの情報をAlways-on Displayに表示するものだが、マナーモードが有効になっているときは、この機能がオフになってしまうため、曲情報は何も表示されない。普段、マナーモードのまま、使っているユーザーが多いことを考えると、少し見直しが必要かもしれない。

 また、ボディ周りで気になるのは右側面のボタンのレイアウトで、上側に電源キー、下側に音量キーの上下が並ぶ構成になっている点だ。これは従来のPixelシリーズから継承されたレイアウトだが、ファーウェイやシャープ、モトローラ、ASUSなど、多くのスマートフォンが上に音量キー、下に電源キーという配置を採用していることを考えると、少し慣れが必要だ。筆者も数週間使っているが、未だに慣れない。

 バッテリーはPixel 3が2915mAh、Pixel 3 XLが3430mAhのものを内蔵し、充電はUSB Type-C外部接続端子とQi規格によるワイヤレス充電に対応する。パッケージにはUSB-C 18Wアダプターが同梱されており、Googleによれば、15分の充電で、最大7時間の利用が可能になるという。

Pixel 3 XLのパッケージと付属品。USB-C 18Wアダプター(USB-PD対応)、Pixel USB-Cイヤフォン、USB-C Digital 3.5mmヘッドフォンアダプター、クイックスイッチアダプター、C-Cケーブル(USB 2.0)が同梱される

 ちなみに、ワイヤレス充電は同時に発売される純正アクセサリー「Pixel Stand」でも可能で、Pixel Standで利用した場合はPixel 3/3 XLの設定画面内で、フォトフレームとしての利用や目覚ましディスプレイの機能を設定したり、Googleアシスタントとの連携ができる。ベッドサイドなどに置いておけば、「Google Home」を設置したときと同じような使い方も可能だ。

Pixel 3シリーズで利用可能なアクセサリー「Pixel Stand」も発売された
Pixel Standの下部にはUSB Type-Cケーブルを挿す構造
Pixel StandにPixel 3 XLを置くと、Googleアシスタントが待機状態になり、Google Homeのように使える

 チップセットは米Qualcomm製SDM845を採用し、RAMは4GB、ROMは64GBと128GBのモデルが用意される。microSDカードなどの外部メモリーに対応していないため、端末内に音楽や写真をため込んでおきたいユーザーは、大容量の128GBのモデルを検討した方が良さそうだ。もっともGoogleが提供する「Google フォト」や「Google Play Music」などを利用し、写真はすぐにGoogleフォトにアップロード、音楽はストリーミング再生という使い方をすれば、端末のストレージは64GBでも問題なく、使うことはできそうだ。

 ちなみに、Googleのオンラインストアで販売するモデルとソフトバンクが扱うモデルは、いずれのROMのモデルを選ぶことができるが、NTTドコモが扱うモデルはPixel 3がROM 64GB、Pixel 3 XLがROM 128GBに限定されている。ボディカラーはPixel 3/3 XL共に、Clearly White、Just Black、Not Pinkの3色がラインアップされているが、NTTドコモではPixel 3 XLはClearly WhiteとJust Blackのみが扱われる。

 プラットフォームは最新のAndroid 9 Pieが搭載されている。国内向けにはIIJmioや楽天モバイルが取り扱う「Essential Phone PH-1」がAndroid 9 Pieを搭載しており、これに続くAndroid 9 Pie搭載端末の発売ということになる。Android 9 PieについてはすでにEssential Phone PH-1で試していたので、ある程度、操作はわかっていたが、Android 8以前のプラットフォームから移行するユーザーにとってはちょっと操作を戸惑うことが増えるかもしれない。

 まず、画面最下段に表示されるナビゲーションキー([戻る]キー、[ホーム]キー、[履歴]キー)は、中央に楕円の[ホーム]キー、左側に小さく「<」で表現される[戻るキー]が表示され、[ホーム]キーの長押しでGoogleアシスタントを起動できる。Googleアシスタントは本体を握る操作で起動することも可能だ。

 少し戸惑うのはアプリ一覧と履歴の表示で、いずれかの画面(一部、例外あり)で最下段から上方向にスワイプすると、アプリの使用履歴(タスク画面)が表示され、最下段から画面中段以上までスワイプすると、アプリの一覧が表示されるというスタイルだ。Android 8以前の環境ではホーム画面で上方向にスワイプするか、アプリ一覧ボタンをタップすると、アプリ一覧が表示されるユーザーインターフェイスが多く採用されており、Android 9 Pieの上方向スワイプは、これを進化させたように見受けられるが、同じ感覚で操作すると、アプリの使用履歴が表示されてしまい、もう一度、上方向に中段以上までスワイプ(というより、ドラッグ?)しないと、アプリ一覧を表示することができない。好みの問題もあるだろうが、Android 8以前の標準的なユーザーインターフェイスから考えると、やや使いにくい印象は否めない。

ホーム画面はかなりすっきりしたデザインだが、Googleカレンダーに情報が登録されているときは、時間が近づくと、上部の日時のエリアに登録内容が表示される。
アプリ一覧は最上段に予測されるアプリが表示され、下側にすべてのアプリが表示される
画面を上方向にスワイプすると、起動中のアプリの切り替え画面が表示される

 結果的に、ホーム画面にショートカットを配するようになってしまいそうだ。もっともGoogleとしては、アプリ一覧などのアイコンをタップして、アプリを利用するのではなく、可能な限り、あるいは必要に応じて、先回りして、Googleアシスタントからアプリを利用するべきと考えているのかもしれない……。いずれにせよ、操作に慣れが必要であることは確かだ。

「GoogleのAI」で写真が変わる?

 さて、今回のPixel 3/3 XLは背面にシングルカメラ、前面に広角と標準のデュアルカメラを搭載している。最近の各社のモデルではボケ味の利いた写真を撮影するため、背面に2つ以上のカメラを搭載するマルチカメラ搭載モデルが増えているが、Pixel 3/3 XLが敢えてシングルカメラを搭載してきた背景には、Googleの機械学習を活かしたAIに秘密がある。

 まず、カメラのスペックとしては、背面に12.2MPで1.4μmのデュアルピクセルイメージセンサーを採用し、F1.8の明るいレンズを組み合わせ、光学式/電子式の手ぶれ補正を搭載する。デュアルピクセルセンサーはイメージセンサーを構成する各ピクセルにフォトダイオードを組み込んだ設計で、ごく少数の像面位相差AF用のフォトダイオードしか組み込んでいないイメージセンサーに比べ、高速な位相差AFを実現する。Galaxy S7 edgeなどに搭載され話題になったので、覚えている読者も多いだろう。

Pixel 3の背面。カメラ、指紋センサーなどを備える。レイアウトはほぼ共通
Pixel 3 XLの背面にはカメラ、指紋センサーを備える

 Pixel 3/3 XLはいずれもシングルカメラでありながら、ポートレートで撮影した場合、主な被写体にフォーカスし、背景をぼかした写真を撮影できるようにしている。これはGoogleが膨大な数の写真を機械学習することで、被写体と背景を区別できるようにしているためだという。

 実際に、人物やモノなどを撮影してみたが、明るいところ、暗いところ、室内外を問わず、うまくシチュエーションがハマれば、面白いようにボケ味の利いた写真を撮ることができた。これまでボケ味の利いた写真には2つ以上のカメラが必須とされてきたが、シングルカメラでもこうした効果が得られるのであれば、今後スマートフォンのカメラが大きく変わるきっかけになるかもしれない。

 また、一般的な写真撮影ではシャッターを押すタイミングがずれてしまい、誰かが目を閉じていたり、顔を背けていたりといったことが起きるが、Pixel 3/3 XLでは「Top Shot」と呼ばれる機能により、シャッターチャンスを逃さない写真を撮影することができる。カメラを起動し、画面上段の[モーション]を[自動]、もしくは[ON]に設定することで、有効になる。これもAIを活かしたもので、撮影時に複数枚を撮影したものから、ベストな写真をピックアップしてくれるという。

タワーのライトが点灯した夕景を撮影。明るい空も建物もバランス良く撮影できている(リンク先は4032×3024ドット)

 一方、前面カメラは8MPのイメージセンサーを採用し、広角側はF2.2のレンズで97度の視野を実現し、標準側はF1.8のレンズで75度の視野を確保する。広角側は固定フォーカスであるのに対し、標準側は位相差検出によるオートフォーカスに対応する。撮影機能は基本的に背面カメラと同様で、ポートレートや動画なども撮影できる。ただし、動画については背面カメラ、前面カメラ共に、画角がタイトに変更されるため、静止画から切り替えて撮影するときは注意が必要だ。

ポートレートモードで撮影。背景がボケていない状態がこちら(リンク先は2448×3264ドット) モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション)
ポートレートモードで撮影すると、背景がボケた状態の写真も生成される (リンク先は2448×3264ドット)
薄暗いバーで撮影。ポートレートモードで撮影しているが、こちらは何も効果が加えられていない状態 (リンク先は3024×4032ドット)
ポートレートモードで生成された背景のボケた写真。グラスの上端がやや消えてしまっているが、シングルカメラでここまで撮れるのは優秀と言えるだろう (リンク先は3024×4032ドット)

 カメラ周りで注目されるのは、やはり、Googleレンズが挙げられる。カメラを起動し、[その他]-[レンズ]と選ぶか、Googleアシスタント起動時の左下のカメラアイコンをタップすると起動でき、ファインダー内に映し出された被写体がどんなものなのかを認識する機能になる。街で見かけた商品を探したり、建築物を認識させたりと、さまざまな使い方ができる。

 ただ、試用時点ではまだ開発中であるため、必ずしも正しく認識されるわけではなく、まだ「いろいろ試してみる」レベルにあるという印象だ。ただ、これも今後、GoogleのAIが強化されてくれば、認識率も高まり、より実用的な機能に進化していくことが期待される。ちなみに、Googleレンズは将来的に他のAndroidプラットフォームの端末にも展開されることが予想されるため、Pixel 3/3 XLならではの機能と言い難い部分もあることを付け加えておきたい。

 また、カメラを活かした機能として、ライバル製品でもARが活用されているが、Pixel 3/3 XLでは「Playground」と呼ばれるARスタンプの機能が搭載されている。たとえば、街中を写すとき、そこにマーベル映画のアイアンマンやハルクなどをいっしょに映し出し、写真を撮ることができる。自らを飾り付けるARエフェクトに抵抗感のあるユーザーもこうしたキャラクターといっしょに写るARであれば、かなり楽しめそうな印象だ。今後、コンテンツサービスなどと連携することも期待される。

ロンドンに渡航中にGoogleレンズを試してみた。007の映画に登場するMI6のビルにカメラを向けると、左下に「SIS Building」と表示され、正しく認識された
ウイスキーの銘柄を調べるため、Googleレンズを試したところ、「一致する結果は見つかりませんでした」と表示されてしまった
Playgroundを使えば、ファインダー内にキャラクターを表示することが可能。人と並んで記念撮影も楽しい

Googleのサービスを最大限に活用できる「Pixel 3」「Pixel 3 XL」

 Googleが久しぶりに国内市場に投入するスマートフォンということで、発表直後から注目度の高かった「Pixel 3」「Pixel 3 XL」だが、実際に試用してみると、当初からGoogleが掲げていた「Googleのハードウェアとソフトウェア、AIを活かしたスマートフォン」という位置付けが非常に鮮明になってくる。

 従来のNexusシリーズは『素のAndroid』であるがゆえに、ユーザーが積極的にカスタマイズしていく必要があったのに対し、Pixel 3/3 XLは初期段階で「Googleのサービスを活かせば、こんなことができる」「こういう便利な使い方ができる」といった項目が用意されており、Googleが提供するサービスを最大限に活用できるように作り込まれている印象だ。なかでもカメラはGoogleのAIによって、シングルカメラながら、絵になる写真を撮れるように進化しており、Googleレンズのような新しい取り組みとも相まって、さらにユーザーの探究心をくすぐってくれる。

 ただ、Androidプラットフォームの使い勝手については、本稿でも触れたように、今ひとつ慣れが必要とされる部分もあるうえ、側面の電源キーと音量キーの配置、設定画面内の表記や内容などが業界の多くのメーカーが採用するものと少しずれてしまっている部分も見受けられる。

 同時に、Googleは多彩なサービスを提供している一方で、サービスによっては内容説明が不十分で、今ひとつユーザーに使い方が伝わってこなかったり、Googleが考えるシナリオ通りには使えないケースがあるのも事実だ。

 価格面についてもNTTドコモとソフトバンクで月額割引を適用された実質価格であれば、一定の割安感があるものの、日本のGoogleが販売する価格は米国での販売価格に比べるとやや割高な印象も残る。価格が高いモデルほどその差額は大きいうえ、Googleからは補償サービスなども提供されていない。なお、日本では「Google Play Points」のゴールドステータスが無料でもらえるという特典が用意されている。

 とは言え、全体的には完成度も高く、国内での利用を考慮したFeliCa対応や防水防塵対応など、日本のユーザーが他のスマートフォンから移行して、すぐに使いはじめられる環境は整っている。Googleのサービスを存分に使いたいユーザーはもちろん、新しいスマートフォンの世界を体験したいユーザーにはおすすめできるモデルと言えるだろう。

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法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。