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ついに株式上場、「Beyond Carrier」でソフトバンクが目指す未来

 12月19日、ソフトバンクが株式を上場した。同日午後に開催された会見では、代表取締役社長の宮内謙氏から同社の進む道が語られた。

宮内社長

通信事業を基盤に飛躍を図る

 これまではソフトバンクグループの100%子会社として、通信事業を一手に引き受けてきた同社。これまでと比べ、自発的かつスピーディな経営が可能になると語る宮内氏は、通信事業を基盤に、新規事業の育成に注力する方針を示す。

 「Beyond Carrier(ビヨンドキャリア、キャリアを超える)戦略」と呼ばれる同社の取り組みは、大容量通信とハイエンドなスマートフォンを提供するソフトバンクブランド、中程度の通信量のワイモバイルブランド、ローエンドでエントリー向けなLINEモバイルという3つのブランドでモバイル通信領域を構成する。さらに固定向けの光回線や法人向けサービスを展開しつつ、2020年の5Gサービス商用化を進めていく。

 そうした通信サービスを基盤に、海外で成功を収めた企業と日本向けにジョイントベンチャーを設立して、日本市場での成功を目指す。通信以外の領域にも進出していく、まさにBeyond Carrierらしい取り組みだが、そうした流れは、既にNTTドコモやauも取り組んでいる。ただ、ソフトバンクが他社と異なるのは、グループ企業が手がける「ソフトバンクビジョンファンド」の存在だ。

 ソフトバンクビジョンファンドは、いわゆるユニコーン企業(企業評価が10億ドルを超える、未上場のスタートアップ企業)のうち、なおかつ、将来性があり、ビジネスモデルが評価できることなど、一定の基準を満たす新興企業へ投資する方針を掲げている。孫正義氏は事業会社が、戦略的持ち株会社のソフトバンクグループを中心に緩く繋がり、互いに連携していく様を「群戦略」と名付けており、まさにその戦略の中核に位置するのが、新生ソフトバンクということになる。

株式公開で何が変わる?

 「Beyond Carrier」戦略は、ソフトバンクグループの進める「群戦略」に基づく動き。競合他社とは異なる特徴を持つとはいえ、その目指す方向は、これまでに何度も孫正義氏から語られてきた。

 そうしたこともあってか、19日の会見ではソフトバンクグループとの距離感をあらためて問いかける質問も投げかけられたが、宮内氏は「孫からは素晴らしいアドバイスをもらっているが、数年前から国内事業は私が担当してきた」と述べ、予定通りのバトンタッチであることをあらためて説明する。

 そうした中で、今後、明らかに従来と異なることになりそうなのが、ソフトバンクが上場会社となったことで、グループ全体ではなく、独立した形で決算会見が行われる方針となったこと。たとえば今回の会見では、スマートフォンの累計契約数が3ブランドで2100万回線を超えたことが初めて明らかにされた。

 さらにワイモバイルブランドの契約数が400万を超えたことも宮内氏は開示。固定回線は700万件を超え、ヤフーIDとの連携が1300万を超えたことも紹介された。

 あわせて業績予想も公開され、2018年度は増収増益になることが示された。こうした情報開示は、投資家だけではなく、一般ユーザーの利用動向がわかりやすくなり、他社との競争関係も把握しやすくなる効果などが期待できるかもしれない。

 今回の会見は、株式公開だけではなく、最近発生した通信障害や、PayPayでの取り組み、中国ベンダーとの関係性など、幅広い分野に及んだ。それだけ、ソフトバンクがユーザーに大きな影響を与える存在であることをあらためて印象づけた格好。これに関連し、宮川潤一CTOが、通信障害の発生を受けて、携帯電話サービスが生活に欠かせない存在になったと会見の中で語る場面もあった。

 「Beyond Carrier」を掲げる同社が、どんな舵取りをしていくのか。新生ソフトバンクに、多くのユーザーの視線が注がれることになりそうだ。