法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

革新的なスライド式ステルス3Dカメラを搭載したOPPO「Find X」

 2018年に国内市場に参入し、次々と新製品を発表してきたOPPO。今年6月にグローバル向けに発表され、話題となっていた「Find X」が国内市場向けに発売されることになった。カメラ部分が稼働し、本体からせり出すというユニークなスライド式ステルス3Dカメラを搭載した注目の端末だ。実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。

OPPO「Find X」、約156.7mm(高さ)×74.2mm(幅)×9.6mm(厚さ)、約186g(重量)、ワインレッド(写真)、サイレントブルーをラインナップ

画一的な形状になってしまったスマートフォン

 国内でスマートフォンの普及が本格的に始まってから十年が過ぎようとしている。ハードウェアの性能が向上し、プラットフォームも安定し、チップセットやディスプレイ、カメラなども大きく進化を遂げた。しかし、その一方で、ボディに注目してみると、思いの外、画一的な形状になってしまった感が残る。

 かつてのケータイ時代は、ディスプレイが反転したり、カメラが回転したり、ディスプレイとキーボードが分離するなど、ユニークな機種がいくつも登場し、話題となった。スマートフォンも初期の頃は、スライド式のQWERTY配列のキーボードを搭載していたり、二画面ディスプレイの折りたたみデザイン(他メーカーから後継モデルは登場したが……)などが発売されたが、最近はほとんどの機種がフラットな板状のボディに落ち着きつつある。

 特に、日本市場の場合、防水や防塵が重視される傾向が強く、これらを実現するためにシンプルな設計が好まれているようだ。グローバル市場でもその傾向は強く、アップルのiPhoneもここ数年で、3.5mmイヤホンマイク端子をなくし、ホームボタンを可動するボタンからハプティクス技術を利用し、押しても可動しないボタンに変更。昨年のiPhone Xではついにホームボタンそのものをなくしてしまった。いずれもコストダウンと堅牢性を考慮しての設計変更だが、本体の個性が失われてしまったという声も少なくない。

 今回発売されたOPPO「Find X」は、こうした動きとは逆に、今までにないユニークなメカニズムを搭載することで、新しい端末形状の可能性を示す一台として設計されている。現在、ほとんどのスマートフォンには前面と背面にカメラが搭載されているが、順調に高性能化が進んできた背面のメインカメラに対し、ここ1~2年は自分撮りのニーズが拡大したため、前面のインカメラの性能向上が著しい。ただ、同時にディスプレイの大型化、全画面化が急速に進んでいるため、インカメラをどのようにレイアウトするのかがひとつの課題となっている。

 そこで、多くの端末ではディスプレイ上部にノッチ(切り欠き)を設けることで、その部分にインカメラやレシーバー、3D顔認証用のセンサーなどを格納している。ノッチは端末デザインのアクセントとなっている一方で、「欠けているのは美しくない」「映像コンテンツが欠けてしまう」といった声もあり、賛否両論の状態だ。

 これに対し、Find Xはインカメラとアウトカメラを内蔵したユニットが必要に応じて、本体からせり出したり、引っ込んだりするという「スライド式ステルス3Dカメラ」というユニークなメカニズムを採用している。カメラアプリを起動すると、本体上部からカメラ部が自動的にせり出し、撮影が終わり、カメラアプリを終了すると、カメラ部は再び本体に格納されるという動きをする。

 昨年あたりから、こうしたメカニズムを採用したスマートフォンが登場すると噂されていたが、実際に今年6月にグローバル向けに発表されたときは「まさか、ホントに作るとは……」と、かなり驚かされたことを記憶している。グローバル向けの発表当時は、国内市場への投入は難しいと予想していたが、その後、OPPOは国内で催された他機種の発表の席で、Find Xの国内投入を匂わせるような発言をくり返していた。

 そして、今年10月に国内向けの発表会を催し、いよいよ11月から販売が開始されている。製品としてはかなり挑戦的なモデルであり、保守的と言われることが多い日本の市場において、どれだけ支持されるのかは未知数だが、それでも最先端のエポックメイクな製品を投入したOPPOには、日本市場への並々ならぬ意気込みを感じさせる。

画面占有率93.8%の6.4インチディスプレイを搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。前述のように、Find Xは「スライド式ステルス3Dカメラ」を搭載しており、カメラの状態によって、ボディ形状が変化するが、ここではカメラ部が格納された状態で見てみよう。

 ボディは前後面共に側面へ向けて、湾曲した構造を採用しており、手にフィットするデザインに仕上げられている。ボディ幅は74.2mmとスリムで、厚さも可動式のカメラ部が格納されているわりには9.6mmに抑えられている。側面や背面の仕上がりも非常に美しく、ディスプレイが点灯した状態で机などに置いてあると、ディスプレイのみが置いてあるような印象すらある。

 ただ、全体的になめらかに仕上げられたボディは滑りやすく、机などに置いておくと、ごくわずかな傾きの影響を受けるのか、気が付くと、数センチ以上、移動していることも少なくない。パッケージに同梱されているカバーなどで、本体があまり滑らないような状態で、注意しながら使うことをおすすめしたい。

カメラが内部に格納されているため、背面はロゴのみのすっきりとしたデザイン
上部には持ちやすくするためか、凹みが付けられている。カメラ部とボディの隙間はほとんどない
右側面には電源ボタンを装備
左側面は分割式の音量ボタンを装備

 前面には「パノラマアークスクリーン」と呼ばれる2340×1080ドット表示が可能な6.4インチのフルHD+対応AMOLED(有機EL)ディスプレイを搭載する。前面上部にはノッチなどがなく、前面の上部と左右側面はギリギリまでディスプレイが覆う構造で、下部もホームボタンや指紋センサーなどがないことから狭額縁に仕上げられており、本体前面の画面占有率は93.8%に達する。これまで多くの端末で「まるでディスプレイを持ち歩いているような~」という表現を使ってきたが、まさにFind Xこそがディスプレイを持ち歩いている仕上がりだと言えるだろう。ちなみに、ディスプレイには出荷時に実用可能な保護フィルムが貼付されている。

 ただ、ディスプレイの上下左右が狭額縁で、左右側面が湾曲している形状の弊害がないわけではない。人によって、多少の差はあるかもしれないが、端末を手にしたとき、どうしてもディスプレイの左右側面の湾曲した部分に触れてしまい、予期せぬ操作をしてしまうことがある。実は、後述するカメラを試すとき、筆者はある程度、触り慣れたので、何事もなく、扱うことができたが、モデルさんに自分撮りをお願いすると、端末を握るように持ってしまい、カメラ機能を起動した状態で渡したのに、撮影モードが切り替わったり、ほかの画面が表示されてしまうといったことが何度かあった。このあたりは慣れの問題だが、使いはじめるときは少し気をつけた方がいいだろう。

本体を握るように持つと、どうしても左右の湾曲している部分に触れてしまい、誤操作になってしまうことがある

 バッテリーは1700mAhのものを2つ搭載するという構造を採用しており、容量としては合計3400mAhになる。このユニークなバッテリー構成を採用したのは、同社独自の「Super VOOC」と呼ばれる『快速充電』システムを実現するためで、2つのバッテリーで電圧を分散して充電することを可能にしている。OPPOによれば、Find Xの場合、付属のACアダプタを利用することで、バッテリー残量がない状態から、わずか35分で充電を完了するという。バッテリーの持ちも一般的な利用であれば、不満を感じることはなさそうだ。ワイヤレス充電には対応していない。

 チップセットは米Qualcomm製SDM845を採用し、8GBのRAMと256GBのROMを搭載する。外部メモリーカードには対応していないが、その分、本体のストレージがかなり大容量なので、撮影した動画などをため込んだりしない限りは不足することはないだろう。対応バンドはスペック表を参照していただきたいが、国内のモバイルネットワークとしてはNTTドコモ、au、ソフトバンクのいずれでも利用することができた。

 VoLTEについては発表当時、UQモバイルとY!mobileで動作するとのアナウンスで、今回の試用では両社のSIMカードでの動作を確認したほか、mineoのAプラン(au網)のSIMカードでもVoLTEを使うことができた。au網を利用したMVNO各社については、au VoLTE対応SIMカードであれば、おそらく同じようにVoLTEを利用できるだろう。逆に、ソフトバンクについては自社傘下のLINEモバイルも含め、MVNO各社向けにVoLTEを提供していないため、現時点ではソフトバンク及びY!mobile以外でのVoLTE通話が利用できないようだ。

 Find Xでは、NTTドコモ及びNTTドコモ網を利用したMVNO各社について、残念ながら、VoLTEに対応しておらず、音声通話は3Gのみに限定される。今後のバージョンアップでの対応が期待される。ちなみに、SIMカードはnanoSIMカードを採用し、SIMカードトレイの表裏に1枚ずつのSIMカードを装着できるDSDV(デュアルSIM&デュアルVoLTE)対応となっている。

 プラットフォームはAndroid 8.1をベースにしたOPPO独自のColor OS 5.1を搭載する。ホーム画面などのユーザーインターフェイスはAndroidプラットフォームとほぼ同じだが、設定画面の項目の呼称などが違うため、他機種からの乗り換えユーザーは少し戸惑うかもしれない。動作は非常に軽快であり、ストレスなく、使うことができる。

下部はUSB Type-C外部接続端子、SIMカードトレイが備えられている。上部と同じように、、凹みのあるデザイン
SIMカードトレイはピンで取り出すタイプ。nanoSIMカードを表裏に装着する
NTTドコモ網のAPN一覧。NTTドコモのspモードがある半面、mineoやNifMoといったメジャーなMVNO各社が登録されていない
au網のAPN一覧。UQ mobileやmineo(auプラン)なども登録済み
ソフトバンク網のAPNはY!mobileのみだった。ソフトバンク網のサービスを開始したLINEモバイルやmineo(Sプラン)などの登録がない
VoLTE対応SIMが装着されているときは「VoLTEコール」が表示される。一部、非対応SIMカードなのに、表示されるものもあった
デュアルSIMのメニューではダイヤルやインターネットの優先を設定できるほか、データ通信量の統計も設定可能
Color OS 5.1のホーム画面。天気のアイコンをタップすれば、詳細な天気予報が確認できる
文字入力はGoogle日本語入力を採用
AndroidスマートフォンやiPhoneからの移行ツールも用意される
ナビゲーションキーは配列を変えられるだけでなく、非表示に切り替えることも可能
スワイプ操作を利用したスワイプアップジェスチャーナビゲーションも用意される
ステータスパネルは日本語表記が中心で、初心者にもわかりやすい
設定画面の項目と並びはAndroidプラットフォームと少し異なる印象

スムーズに使えるスライド式ステルス3Dカメラ

 さて、Find Xでもっとも気になるスライド式ステルス3Dカメラについて、チェックしてみよう。前述のように、Find Xは本体前面の93.8%を覆う大画面を実現するため、前後のカメラを本体の前後面の内側からせり出すような構造を採用している。そのため、[カメラ]アプリなど、カメラを利用する機能が起動していないときは、カメラ部が本体に内蔵されており、外部からカメラの存在を知ることはできない。

カメラ部に格納されているメインカメラはデュアルカメラ。中央にはLEDライトを備える
フロントカメラはやや右寄りに備えられており、黒い部分にはドットプロジェクターやセンサーが内蔵される

 カメラ部は[カメラ]アプリをはじめ、カメラを利用するアプリや機能を起動したときにせり出す。このカメラを利用する機能には、後述するインカメラによる3D顔認証が含まれているため、端末を持ち、3D顔認証で画面ロックを解除するとき、必ずカメラ部がせり出すことになる。つまり、1日の利用で何十回もカメラ部がスライドするが、OPPOによれば、30万回以上の開閉試験を実施済みとのことで、1日あたり150回の開閉動作でも5年間は問題ないとしている。カメラ部の開閉によるバッテリーの消耗もそれほど大きいものではなく、200回のスライドでバッテリー残量の減少は1%程度とのことだ。

カメラアプリを起動して、カメラをせり出させ、アプリを終了して、カメラを格納させた動画。前面と背面の動きがわかる

 また、カメラ部がスライドするというメカニズムが組み込まれていることで、落下時や衝撃時の破損が気になるところだが、この点については落下を検知したときに自動的にカメラ部が収納される「落下防止システム」を備える。実際に、カメラが出た状態で、ベッドの上に落としてみたが、落下が検出された旨のメッセージが表示された。さらに、可動部はホコリなどによる影響が懸念されるが、この点も16時間の防塵テストをクリアしており、問題ないとしている。まったく不安がないわけではないが、ユーザーが実際に利用する環境をひと通り考慮した設計になっていると言えるだろう。

カメラの「エキスパート」モードではISO感度やホワイトバランス、シャッター速度などを個別に設定可能
カメラを起動した状態で落下させると、自動的にカメラ部が格納され、画面にこうした警告が表示される

 カメラの仕様については、背面には2000万画素と1600万画素のデュアルカメラ、前面には2500万画素のインカメラを備える。いずれも[カメラ]アプリを起動するか、カメラAPIを呼び出すアプリを起動したときのみ、カメラ部がスライドし、利用できるようになる。QRコードリーダーなどのサードパーティのアプリも試したが、問題なく、動作している。

 アウトカメラは撮影モードとして、「タイムラプス」「スローモーション」「動画」「写真」「ポートレート」「ステッカー」「パノラマ」「エキスパート」があり、「エキスパート」では露出やISO、シャッター速度などを細かく変更して撮影できる。もっとも標準的な「写真」では設定項目が「美肌」の設定、HDR、タイマー、フラッシュライトなどに限られており、非常にシンプルな構成。AIによって21のシーンを検出し、最適な設定で撮影できる「AIシチュエーション」が搭載され、検出されたシーンが画面内に表示される。「写真」モードの美肌は6段階で設定でき、「AI」を選ぶと、「スマート美肌」で自然な仕上がりの写真を撮影できる。「ポートレート」ではライティングの効果として、「自然光」「キャンパスライト」などを選び、雰囲気を変えた写真を撮ることも可能だ。

 インカメラについても「タイムラプス」「動画」「写真」「ポートレート」「ステッカー」「パノラマ」の撮影モードが用意されており、ポートレートでの照明エフェクトやスマート美肌なども同じように利用できる。顔の296カ所を立体的にスキャンし、800万通りの美顔データを活かした補正を追加するA.I.ビューティー機能も搭載される。

 カメラ部のインカメラ周囲にはドットプロジェクターなどが組み込まれており、これらを利用した3D顔認証技術が搭載される。顔の1万5000カ所を3Dスキャンすることで、3Dモデルデータを作成し、これによって、認証を行なう。OPPOによれば、画面ロック解除においては、一般的な指紋認証に比べ、20倍は安全な技術だとしている。この3D顔認証を有効にすると、前述のように、端末を画面をオンにしたとき、カメラ部がせり出し、顔認証が行なわれ、画面をスワイプすると、端末を利用できるようになる。文章で書くと、ややまどろっこしいが、操作の流れとしては非常にスムーズであり、ストレスを感じさせない。

3D顔認証を利用するときのカメラ部の動きの動画。すぐに認識して、カメラが元に戻る。画面をスワイプすると、ホームが表示される

 スライド式ステルス3Dカメラという新しいメカニズムを採用しているものの、カメラそのものの性能はこれまでのOPPO製スマートフォンで培われてきたものが搭載されており、暗いところでもしっかりと被写体を捉え、美しい写真を撮ることができる。

薄暗いバーで撮影。カクテルのグラスも背景も非常にクリアに撮影できている(リンク先は3456×4608ドット)
ポートレートモードで夜景をバックに撮影(リンク先は4608×3458ドット) モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション)
ポートレートで撮影した写真は、[写真]アプリの編集で、ライティングなどを変更できる
Googleレンズにも対応する

未来的なデザインとスライド式ステルス3Dカメラが目を引く一台

 ここ数年、画一的な形状のモデルが多くリリースされてきたスマートフォンだが、より広いディスプレイを搭載するべく、各社とも前面の上下左右のベゼルを狭額縁に仕上げるなど、新しい可能性を模索する状況にある。

 そんな中、OPPO Find Xはスライド式ステルス3Dカメラというユニークなメカニズムを採用し、カメラ部も本体内に格納することで、93.8%という画面占有率を実現している。未来的なボディデザインとも相まって、非常に個性的な端末に仕上げられたという印象だ。

 ただし、その分、価格はライバル機種に比べ、少し値が張る印象で、実売価格では税込で12万円を超える領域に踏み込んでいる。各携帯電話会社の端末販売が分離プランに向くと言われている中、ユーザーとして、この価格をどう見るかが悩みどころだろう。しかし、値段に見合うだけのポテンシャルと楽しさ、個性を持ち合わせた端末であることは間違いない。ぜひ、実機を手に取って、スライド式ステルス3Dカメラの動きも含め、チェックしていただきたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。