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第96回:XScale とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


StrongARM後継のマイクロプロセッサ

Xscaleプロセッサの高性能版「PXA250」
 携帯電話には、様々な半導体チップが内蔵されています。例えば、音声信号などをデジタル信号として処理するDSP(デジタルシグナルプロセッサ)、頭脳部分となるCPU(またはMPU)、DAC(Digital-to-Analog Converter=デジタル/アナログ変換器)、SAWフィルタ、メモリなどで、カメラ付き携帯電話だとCMOSイメージセンサーなどもあります。

 Xscaleは、インテルがPDAや3G携帯電話向けに開発したマイクロプロセッサのアーキテクチャ(設計)です。PDA用のマイクロプロセッサとしては、英ARM(Advanced Research Machine)社がアーキテクチャを開発し、多くのメーカーが互換チップを提供している「ARM」シリーズが有名ですが、このXscaleもARMの流れを汲んだマイクロプロセッサです。

 もともとインテルは、ARMがDigital Equipment Corp.(DEC)に供与したライセンスを経由してこのARMのテクノロジを使った「StrongARM」を発売していたのですが、ARMプロセッサコアとの互換性を保ちながらインテルのプロセッサアーキテクチャの要素を加えた新しいシリーズを発表しました。これがXscaleです。

 ちなみに、ARMプロセッサのアーキテクチャにはいくつかのバージョンがあるのですが、最新のものとしては、ARM自身はARM v6アーキテクチャーを発表しています。このXscaleはその前のバージョンの「ARM v5」と互換のアーキテクチャになっています。

 現在、XScaleアーキテクチャのプロセッサとしては、PDA・ハンドヘルドPC用の「PXA250」と、PDAでもエントリー機や携帯電話に使われる「PXA210」がインテルからリリースされています。PXA250には高性能なクロック周波数200MHz/300MHz/400MHzのものが、PXA210には133MHz/200MHzのものがあります。高性能版であるPXA250の方は、カラー液晶のコントローラーとしての機能やUSB、Bluetoothといった通信ポートもチップ中に内蔵しています。

 このXscaleCPUは既にいくつかのハンドヘルドPCなどで採用されており、例えばこの6月から発売となっている東芝製のPocket PC「GENIO e550G」が、Xscaleプロセッサの中でも高性能のPXA250 400MHzを搭載しています。また、海外ではFujitsu Siemensの「Pocket LOOX」などもXscaleアーキテクチャのプロセッサを採用しています。


XScale CPU搭載の東芝製Pocket PC「GENIO e550G」

強力さと省電力を併せ持ったマイクロプロセッサ

 Xscaleの特徴は、高性能かつ低電力なプロセッサの双方を兼ね備えていることです。性能を見ると、Xscaleプロセッサは利用できるクロックスピードが高速であることに気が付きます。例えば、GENIO e550Gに搭載されているPXA250は400MHz。これは従来機「Genio e550X」のStrong ARM 203MHzと比べるとかなり速いクロックスピードです。

 プロセッサのクロックが速いということは、それだけデータの処理を高速にできるということです。Xscaleはマルチメディアデータを扱うための拡張命令も利用できるようになっており、このプロセッサの高い性能と合わせて、DSPの助けを借りずに音声や映像といったマルチメディアデータの処理を大変スムーズにこなすことができます。

 また、スピードに関して言えば、インテルは2000年8月のIDF(インテルディベロッパーフォーラム)でXscaleに関するデモを行なっており、ここではXscaleプロセッサは最高で1GHzという高速なクロックで利用することができるとしていました。パソコンのCPUでは、1GHzや2GHz以上といった高速なものはいくつか出ていますが、携帯電話などに組み込まれるマイクロプロセッサとしては、これは驚異的なクロックスピードと言えるでしょう。

 低電力については、同じくIDFでのインテルの発表によれば、1GHzの時には1.5ワットの電力を必要としますが、クロックスピードを下げれば下げるほど必要な電力は小さくなり、200MHzでは50ミリワット(1000ミリワット=1ワット)という省電力で稼動させることが可能なようです。200MHzというと、これまでのStrongARMよりもわずかに低クロックになります。例えば携帯電話のように、クロックは多少低くしてもとにかく電池のもちが必要であるような用途で、このXscaleプロセッサを使えるようにする、ということでしょう。

 また、その他の特徴としては、Xscaleには過去のARM系プロセッサとの互換もあり、ソフトメーカーの支持も強く、様々なソフトウエアでのサポートが期待できることが挙げられます。例えば、マイクロソフトのWindows CE .NETや英シンビアンのSymbian OSなどは強力にXscaleのサポートを発表していますし、LinuxにもXscaleに対応したディストリビューションが存在します。また、Palm OS 5もARM v4アーキテクチャに対応しており、Xscaleでも利用が可能になる予定です。


・ インテル
  http://www.intel.co.jp/

インテルと英Symbian、Symbian OSをXScaleに最適化
インテルが作るFOMAの中身、研究・開発現場レポート
インテル、ワイヤレス機器向けアーキテクチャ「インテルPCA」発表
東芝、XScale CPU搭載のPocket PC「GENIO e550G」
富士通、Bluetooth内蔵のPocket PC 2002マシン「Pocket LOOX」


(大和 哲)
2002/06/18 12:45

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