「着うたフルプラス」は、これまでよりも高音質な音楽データをダウンロード、再生できる音楽データ配信サービスです。
2009年3月現在、KDDIのau携帯電話で「EZ着うたフルプラス」というブランド名で提供されています。2009年春モデルのKCP+プラットフォーム採用端末である「Walkman Phone, Premier3」や「Woooケータイ H001」「フルチェンケータイ T001」「CA001」「SH001」「P001」「Cyber-shotケータイ S001」「Walkman Phone, Xmini」「W65T」で利用が可能になっています。これらの機種では、「EZボタン」→「au oneトップ」→「楽しむ」→「音楽」から音楽配信サイトにアクセスし、フルコーラスの長さで高音質な音楽データをダウンロードし、携帯電話で再生できます。
これまでも、一曲の最初~最後まで収録した音楽データを携帯電話に配信する「着うたフル」というサービスがありましたが、着うたフルプラスは、この着うたフルをグレードアップしたサービスということになります。なお、着うたフルプラスというサービス名は、ソニー・ミュージックエンタテインメントの商標とされています。
■ コーデックにAAC採用、ビットレートは320/256kbpsに
音楽配信データの規格として使われている「着うたフル」と、新しい「着うたフルプラス」の最も大きな違いは、データの圧縮に利用している音声圧縮コーデックと、データ容量でしょう。
着うたフルでは、音声圧縮コーデックとして、より高い圧縮が可能なHE-AACを採用し、低いビットレートのものでは48kbps程度で配信されていました。auの携帯電話ではパソコン用ソフトの「au Music Port」でCDからリッピングしたものでは128kbpsというビットレートを利用できますが、それでも比較的低いビットレートであることに代わりはありません。一方、着うたフルプラスではAACという音声圧縮コーデックを採用し、ビットレートは320kbps(6分以上の長い曲データでは256kbps)で圧縮したデータを配信しています。
AACは、iPhoneや、その元となったアップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」などが採用していることで知られる音声圧縮コーデックです。着うたフルで利用されているHE-AACは、AACの拡張仕様で、より低いビットレート、より小さなデータ量で音楽データを作れるようにした規格です。スウェーデンのCoding Technologiesが開発した「SBR(Spectral Band Replication・スペクトル帯域複製)」という技術を採用して、より小さなデータで音楽データを構成できるようにしています。
SBRという技術は、音楽の音の成分をいくつかの音の高さに分けて考え、ある時間に出ている高い音は、別のタイミングの低い音と強い相関関係があることに着目して、高い音が低い音にどれだけ似ているかを簡素に表現することで、同じ音楽データを小さく圧縮します。
音楽データは、低ビットレートで圧縮しようとすればするほど、高い音域での忠実な音の再現が難しくなります。そのため、本当に忠実な再現はできなくとも、限りなく近い音をより少ないデータで再現しようとすると、このような工夫が必要になるわけです。携帯電話などでは、パケット通信で可能なデータ通信量は限られていますので、低いビットレートでのエンコーディングは必須です。そのため着うたフルでは、HE-AACをコーデックに採用していたわけです。
しかし、現在では、着うたフルが登場した2004年よりも、携帯電話のネットワークも進化し、より多くのデータを通信でやりとりすることが可能になりました。auのLISMOの場合は、パソコンに専用ソフトをインストールすれば、パソコンが接続するインターネットを使って、LISMO Music Storeなどから楽曲データを購入して携帯電話に転送することも可能です。
そこで、着うたフルでは1曲当たり数百KBから大きくても1~2MB程度のデータ量であったのに対し、着うたフルプラスでは平均10MB程度を目安に通信することとし、その分、ビットレート、つまり時間当たりに使えるデータの量を増やしました。そして、低ビットレートでの音楽データに適したHE-AACではなく、AACを採用しました。
これによって、着うたフルプラスでは、これまでの着うたでは携帯音楽プレーヤーなどと比較すると低音質だったのに対し、携帯電話でもデジタル音楽プレーヤーに近い高音質な音楽データのダウンロード・再生を可能にしたのです。
■ URL
EZ「着うたフルプラス」 サービス案内
http://www.au.kddi.com/chaku_uta_full/
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(大和 哲)
2009/03/17 12:02
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