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第415回:接続料(アクセスチャージ) とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 他社回線の利用料
今回紹介する「接続料」は、携帯電話関係の用語としては、他事業者ネットワークやサービスを利用した場合に、事業者間で支払われる料金のことを指します。アクセスチャージと呼ばれることもあります。
たとえば、ソフトバンクの携帯電話からドコモの携帯電話に電話をかけた場合、携帯電話のユーザーは、事業者であるソフトバンクモバイルに通話料を支払います。しかし、通話するためには、途中からNTTドコモの回線を利用しています。そこで、ソフトバンクモバイルは、NTTドコモに接続料(アクセスチャージ)を支払います。
このように、ある事業者が他事業者の回線を利用したとき、事業者間同士で接続料を精算する方式を「事業者間料金精算方式」と言います。その精算に使う料金を接続料と呼びます。接続料は、アクセスチャージという呼び方以外にも、事業者間精算料金、事業者間接続料金、網使用料などと呼ばれることもあります。
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接続料(アクセスチャージ)とは、利用者が他事業者の利用者に通話をしたときに、事業者間で支払われる回線使用料のことだ
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ちなみに、接続料は事業者間で精算し、エンドユーザーは自分が使っている事業者の定めた料金を支払います。このような料金形態を「エンドエンド料金」あるいは「エンドツーエンド料金」といいます。日本の携帯電話の通話料金は、いずれの事業者もこのエンドエンド料金制になっています。
アクセスチャージ料金は、事業者によって異なります。NTTドコモ関係者による報道陣向け説明会によれば、各社の3分あたり接続料は、2008年度の場合、以下のようになっている、とされています。
NTTドコモ
区域内:28.80円
区域外:32.40円
KDDI
区域内:31.50円
区域外:39.24円
SBM
区域内:38.70円
区域外:45.36円
イー・モバイル
全区域:29.34円
携帯電話事業者同士の接続料は年々下がる傾向にあります。ドコモの場合、アクセスチャージが設定されたのは1997年12月でしたが、当時は3分あたり118.8円となっていました。
接続料は、携帯電話から固定電話に通話する場合、携帯電話の事業者から固定電話の事業者に支払われています。たとえば携帯電話事業者からNTT東日本、NTT西日本に支払われる接続料は、3分間あたり6.41円となっています。
■ 料金はどのように決まるのか
接続料は事業者によって異なりますが、実は、日本の携帯電話事業者の場合、その料金の算定方法は定められていません。基本的には他社と相互接続を行う際に個別の協定で決められ、公開の義務もありません。
そのため、事業者の集まる会合などでは、「ある携帯電話会社の接続料には、本来回線コストには関係ない営業コストまで含まれているのではないか」「ある携帯電話会社は接続料を高めに設定して、そこから自社内無料通話の赤字を補填している懸念がある」などと意見の応酬が行われることもあります。
ただ、NTTドコモとKDDIの場合は、一定以上の市場シェアを持つことから、いわゆる「ドミナント規制」の対象となり、アクセスチャージ料金や相互接続のための条件は公開し、総務大臣の認可を得なければならないことになっています。したがって、両社からは接続料が公表されています。
ちなみにドミナント規制とは、シェアの高い事業者による寡占や、不公正な競争が行われることを防ぐ目的で、一定以上のシェアを獲得した事業者に対して行われる規制のことです。携帯電話の場合、市場シェアが25%を超える事業者は「アクセスチャージの料金を公表しなければならない」「接続業者間で差別的な扱いを行ってはならない」などを規制を受けることになっています。
固定電話のNTT東日本・NTT西日本の場合は、LRIC(Long Run Incremental Costs・長期増分費用)という方式で、アクセスチャージが算定されています。この方式では、その事業者のネットワークを全て最新にして、コストから非効率部分を排除した場合の原価を算出して、1アクセスあたりにかかる費用を接続料と算定します。
これは、料金設定から、独占事業者にありがちな非効率性を排除でき、接続に関係のない費用を接続料から排除することもできる計算方法です。「本来、回線は会社の持ち物ではなくみんなのもの」という発想に基づいた計算方法といえますが、かつて固定電話は国単位・地域単位で行っていた公営事業であり、なおかつ独占的な寡占事業という歴史的経緯を踏まえ、自由競争市場に向けて新規事業者と公平な競争になるよう考えられた、という事情があります。
携帯電話の場合、固定電話ほどの独占・寡占的な事業者がいるわけではないため、このような計算方法を取ることはありません。逆にいえば、接続料をどのように算定すべきなのか、多くの人が納得するような計算方法を明示するのが難しいといえます。また、シェアの高い事業者を決める際に、どの程度までシェアがあれば「シェアが高い」とするのかという問題もあります。
もともと電電公社と、法によって国内で唯一国際回線を持つことが許された特殊会社を母体に持った携帯電話事業者であるから「シェアが高い」とするのか、あるいは接続料に関しては、透明性を高めるためにドミナント規制に関わらず、全ての携帯電話事業者が算定方式を公開すべきといった議論も為されています。
■ URL
相互接続情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/disclosure/interconnection/
接続約款(KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/kddi/kokai/setsuzoku_yakkan/
■ 関連記事
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(大和 哲)
2009/03/31 12:20
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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