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第416回:XGP とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 XGPとは、“拡張されたグローバルなプラットフォーム”を意味する英語「eXtended Global Platform」の略称です。以前は、次世代PHSを意味する「neXt Generation PHS」の略称とされており、その名の通り、PHSをベースにした、モバイルブロードバンド通信の規格です。

 データ伝送スピードは最高で100Mbps、時速300km/hでの通信、そして大都市での過密な通信にも対応できることを目指して作られた規格です。

 モバイルブロードバンド通信規格としては、ITU(国際電気通信連合)の無線部門であるITU-Rが「ITU-R M.1801」という勧告を出していますが、XGPは、モバイルWiMAXなどとともに、このITU勧告に含まれる技術です。また、日本の通信規格の標準化を行っている団体「ARIB」(電波産業会)で、標準化仕様のSTD-T95 Ver.1.0として規格化されています。

 基本的には、次世代PHSと呼ばれていた規格そのもので、2007年9月に、PHSの普及活動を行ってきたPHS MoU Groupによって標準化されました。なお、現在、XGPの推進・普及活動はXGPフォーラムという団体が行っていますが、同団体はPHS MoU Groupが改組され、名称変更した団体です。

 日本では、PHS事業者であるウィルコムが、2.5GHz帯での免許を獲得していて、2009年4月中にも最高20Mbpsのモバイルブロードバンド通信の試験サービスを開始する予定となっています。

 XGPフォーラムでは、ウィルコムのXGP試験サービスを支援するほか,PHSが普及しているタイや、当局決定で2011年までにPHSの利用が中止されることになった中国など日本以外の国での導入も目指す、としています。


特徴はマイクロセル、WiMAXやLTE規格との相似

XGPの技術的な特徴

XGPの技術的な特徴
 XGPを技術的に見てみると、複数の端末が帯域を共有するためのが多元接続方式にはOFDMA(直交周波数分割多元接続)やTDMA(時分割多元接続)を採用し、上り通信・下り通信を二重化するためのデュプレックス方式にはTDD(時分割複信)を採用した通信方式になっていて、上り通信に関してはSC-FDMAの利用も可能です。また、アンテナ技術のMIMOなども採用しています。

 OFDMAは、LTEやモバイルWiMAXにも採用された技術で、OFDMをベースにした多元接続方法です。新しい世代のモバイル通信方式にはほぼ共通の方式といっていいでしょう。

 OFDMは、携帯電話以外でもADSLやIEEE802.11a以降の無線LAN、デジタルテレビ放送などでも利用されている変調方式(信号を周波数に乗せる方式)です。周波数利用効率が良く、マルチパスなどによるフェージングにも強く高速なデータ通信には向いた方式なのですが、演算が複雑という弱点もあります。そのためモバイル機器にとっては搭載するLSIが消費する電力が大きすぎてしまい、これまでは不向きとされてきたのですが、半導体技術の向上に伴って、モバイル機器にも利用できる目処が立ち、モバイルWiMAXやLTE、そしてXGPにも採用されるようになったのです。

 SC-FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)は、やはりLTEにも上り通信で採用された方式です。OFDMではアナログ/デジタル変換回路が複雑になり、電力消費が大きくなるという問題があります。そこで「1単位時間に周波数ごとに利用者を分ける」のではなく、一度の送信は1つの帯域を1ユーザーが使い、順番にユーザーを切り替えて送信するSC-FDMAを上り通信で利用できるようにしています。

 また。MIMOも、やはりLTEなどで利用されているアンテナ技術です。このようにXGPは、基本的にLTEやWiMAXと同様の方法を採用しています。他方式に比べると導入予定の事業者は少ないと考えられているXGPですが、LTEやWiMAXと共通する技術を用いることによって、他方式のハードウェアをなるべく流用しやすいようになっており、これはコスト面で他方式に負けないようにする戦略と言えます。


 なお、XGPで採用されているTDMAは、帯域をごく短い時間のスロットに区切って複数の発信者で共有する方式です。TDDは同じ周波数帯を時間によって上り通信下り通信に分けるやり方です。PHSや第2世代デジタル携帯電話のPDC、同じく欧州規格のGSMなどで採用された方式です。

 XGPでのTDMAスロット構成は上り下りとも625マイクロ秒単位×4スロットというように決められていて、これはPHSと同様のスロット構成になっています。XGPと既存PHSとの共存が可能なようにこのような構成になっています。

次世代モバイルブロードバンド技術の要素技術を採用しながら、PHSで培われた技術も継承しているのも、XGPの特徴の1つです。

 たとえば、XGPの基地局を設置する場所ですが、PHS同様、基本的には置局設計(基地局をどう配置するか設計すること)をせず、他の基地局との干渉を気にせずに設置できるようになっています。これは、XGPが自立分散DCA(Dynamic Channel Assignment、ダイナミックチャネル割当)方式を採用していることが理由です。

 自立分散DCAとは、ある帯域を使って通信を行うために、キャリアセンスという動作を行って、他ユーザーに既に使用されているかを検知し、機器が自律的に他の機械への干渉を避けながらチャネルを利用するという方式です。これにより基地局同士も自律的に帯域を共有しあうので、特に置局設計をしなくてすむのです。実際にウィルコムでは、XGP基地局の設置は、PHS基地局への設備追加という形を想定しています。それほどどこにでも設置できる仕組みとなっているのです。

 XGPでは、MIMOによる電波の指向性制御も可能ですから、都市部の過密空間でも、空間多重によってさらに帯域の効率的な利用が可能になるでしょう。この特性のために、PHS同様、XGPも干渉を気にせずに、マイクロセル基地局を緻密に配置することも容易です。

 このほかマイクロセルに加えて、マクロセルの混在も可能となっていて、広い範囲でユーザーが少ない疎な地域ではマクロセル、狭い範囲でユーザーが多い密な地域ではマイクロセルでエリアを構築する、というようなことも可能になっています。



URL
  XGPフォーラム
  http://www.xgpforum.com/ja/index.php

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(大和 哲)
2009/04/07 12:08

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