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第414回:LTE とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 3.9G携帯電話規格のひとつ
LTEは、3.9Gと呼ばれる次世代携帯電話の通信規格の1つです。“長期的進化”を意味する英語「Long Term Evolution」の略称となっています。
W-CDMAの規格を標準化した団体でもある3GPPにて、「3GPP Release.8」としてLTEの仕様が標準化されており、E-UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)/E-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)とも呼ばれています。LTE標準化の一勢力となったNTTドコモでは、かつて「スーパー3G」とも呼んでいましたが、最近ではLTEと呼ぶことが多くなっているようです。
LTEの特徴は、電波を使った携帯電話・モバイル通信の規格でありながら、非常に高速なデータ通信が可能である、ということです。20MHz幅を使う環境で、最大で下り326.4Mbps、上り86.4Mbpsというスピードで通信できます。たとえば、現在提供されているHSDPA方式(ドコモのFOMAハイスピードなど)では、下り14.4Mbpsが最高であることを考えると、まさに桁の違うスピードであるということがいえるでしょう。また、光ケーブルなどを使った有線ブロードバンドサービスに迫るスピードであるとも言えます。
■ 「携帯電話システム」的な規格
技術的に見ると、LTEは多重アクセス方式にOFDMA/SC-FDMAを採用し、MIMOといったアンテナ技術を使うことで、広帯域化や周波数利用の効率化を図り、データ通信の高速化を目指した規格です。
OFDMAやMIMOなどは他の次世代通信技術にも共通した技術です。たとえばモバイルWiMAXや次世代PHSでも変調方式としてOFDMAが採用されていますし、アンテナ技術としてMIMOが採用されています。ただし、同じ技術を採用しているとは言え、規格が作られた背景や標準化を推進している団体のバックグラウンド、想定している応用用途によってそれぞれ性格が異なっています。
そういった意味では、LTEは、従来の携帯電話の技術・規格をバックボーンにした次世代通信技術だと言えるでしょう。携帯電話の3G方式であるW-CDMA、3.5G方式であるHSPAとの互換性を考え、周波数の利用やハンドオーバーの方法などで、携帯電話の仕組みと共通、あるいは互換性を持った方式を採用しているのはLTEの大きな特徴です。
また、LTEは世界の大手事業者の多くが採用する方針を示した、標準的な規格であるということも特徴の1つです。この規格はW-CDMA規格を標準化した3GPPが採用したことからもわかるように、元々W-CDMAとの親和性が高いのですが、CDMA2000を採用している事業者も今後はLTEへ乗り換える動きとなっていて、世界の携帯電話事業者の多くがLTEを採用する方向で動いています。
日本国内の動向を見ると、3GにW-CDMA・HSPAを採用しているNTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルに加えて、CDMA2000を採用しているKDDIも3.9GにはLTEの採用を表明しています。海外では北米の有力なCDMA2000事業者であったベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)といった事業者もLTEを採用する方向であると伝えられています。
ちなみに、CDMA2000を推進した米クアルコムは同社次世代携帯電話規格でありLTE対抗と目されていた「UMB」の開発継続を断念しており、今後はLTEの開発などにリソースを振り向けるとしています。
3.9Gの携帯電話規格として、多くの事業者がLTE採用する流れにあるのは、世界の多くの企業の規格を取り入れるように努力した結果でもあります。たとえば、LTEのネットワークアーキテクチャであるSAE(System Architecture Evolution)では、欧州のGPRS規格をベースにした規格、モトローラ、アルカテル・ルーセント、ノーテルなどの欧米企業やドコモがIETF(Internet Engineering Task Force・インターネット技術標準化委員会)が策定するプロトコルをベースとした仕様策定を提案し、結果的には、その両方が規格内に共存することになっています。GPRSを採用している欧州の事業者にとってみればGPRSの発展系の仕組みを採用できればそのほうが利用しやすいですし、CDMA2000を採用してきた事業者にしてみれば、より汎用性のあるIETFベースのプロトコルの方が楽という、両方の立場に配慮した構成になっているわけです。
■ LTEの実用化時期と4Gの将来
LTEの実用化は、日本の場合、早ければ2010年ごろにサービスが一部開始される可能性があります。2009年3月時点では、各社でフィールド実証実験などが行われている状況です。
ドコモでは、富士通と富士通研究所と共同で、北海道札幌市のユビキタス特区において、「LTE(Long Term Evolution)」のフィールド実証実験を実施し、10MHz幅で、最大120Mbpsの通信が可能であることなどを確認した、と発表しています。
同じく採用予定事業者のソフトバンクモバイルはLTEを利用したフィールド実験を3月17日より茨城県水戸市内で開始すると発表しています。実験では、市内に基地局3カ所を設置し、実験用の携帯電話端末3台で、屋外での電波伝搬特性や干渉特性、スループット、モビリティ、空間多重機能(MIMO)などの検証を行う予定であるとしてます。
LTEは、現在の3.5G(第3.5世代)とも呼ばれるHSDPAを含む3G(第3世代)の携帯電話を発展させ、次世代の4G(第4世代)携帯電話への橋渡しとなる「第3.9世代」の携帯電話の技術として規格化されています。将来的には、LTEの次に4Gを目指す時代が来ることになりそうで、いろいろな技術などが提案されています。一方、LTEをさらに発展させる「LTE Advanced」という構想も出てきています。使用する技術などはまだあいまいですが、基本的な方向としてはLTEとの互換性を保ちつつ、100MHz幅までの広帯域使用技術と周波数効率をあげることで、LTE以上のデータ通信レートを実現しよう、という流れになっています。
■ URL
LTE(3GPP、英文)
http://www.3gpp.org/article/lte
■ 関連記事
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・ ソフトバンク、LTE実験局免許を取得
・ KDDI、次世代通信技術でLTE導入へ
(大和 哲)
2009/03/24 12:32
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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