特集:5Gでつながる未来
クアルコムのアモン社長が語る「5G」カバーエリアを拡大できる期待の技術「DSS」とは
2019年12月4日 19:08
3日(現地時間)、米国マウイでクアルコムのイベント「Snapdragon Tech Summit」が開幕した。
スマートフォン向けのチップセットであるSnapdragonシリーズ最新製品が発表される一方、クアルコム社長のクリスティアーノ・アモン氏からは、グローバルにおける5Gの最新動向が紹介された。
5G、世界では40以上のキャリアでサービス
数年前、「2020年が5G元年になる」と目されていたが、実際は2019年から世界各地で5Gサービスが開始されている。初陣を競った米国や韓国はもちろん、中国、欧州、中東、豪州でも5Gサービスが登場。
アモン氏が示した資料では、40以上の通信事業者で既に5Gサービスが提供されており、5Gへの投資を進めているのは世界109カ国325以上の事業者におよぶ。
アモン氏は、6GHz帯以下(サブ6)の周波数と、これまで携帯電話向けでは活用されてこなかった高い周波数であるミリ波の組み合わせで、サービスがグローバルに展開されていると解説。スマートフォンだけではない、さまざまな産業での活用が進むと指摘する。
エリアカバーを劇的に広げる可能性をもたらす「DSS」
ここであらためて注目しておきたい技術がある。それは「DSS(ダイナミック スペクトラム シェアリング)」。2019年7月末の決算説明会の中で触れられ、その後、9月に米サンディエゴで開催された同社イベントでも紹介された技術だ。
直訳すれば“動的周波数共有”といった意味になるDSSは、ひとつの周波数を、時間ごとに「今は4G」「次のタイミングでは5G」と柔軟に切り替える仕組みだ。
3日に発表された「Snapdragon 865/765」ではDSSがサポートされており、2020年に登場するスマートフォンで搭載されていく見込みだ。
もし通信事業者がDSSへ対応すれば、たとえば4G用に使ってきた800MHz帯など、低い周波数を5Gのエリア構築に活用できる可能性がある。ただ、そうした仕掛けを実現するには、技術的な側面だけではなく、法制度上でも課題は少なくない。クアルコムによれば、日本国内ではDSSに関する議論はまだスタートしていないとのことで、少し未来の技術と言える。
ただ、それでも高い周波数だけに限られる現在の5G用周波数と比べれば、サービスエリアを格段に広げやすいと見られる。
広いエリアをカバーするための周波数は、一般的に広帯域にすることは難しく、高い周波数ほどの超高速性能は実現しづらくなるが、そうしたトレードオフを踏まえても、クアルコムでは将来的に5Gへの全面的な移行を見据え「DSSは非常に重要」(アモン氏)と指摘。
エリクソンや米国の通信事業者であるベライゾン(Verizon)と協力して導入を進めているとのことで、3日の講演の中で、ライブデモンストレーションを披露した。