特集:5Gでつながる未来

世界各国で「5G」開始、第2段階に向けた取り組みをクアルコムが解説

 米クアルコムは9月24日、5Gに関する最新の取り組みを紹介するメディア向けイベント「Future of 5G Workshop」をカリフォルニア州サンディエゴの本社で開催した。

世界各国で始まる5G、本格化に向けて次の段階へ

 2019年4月、米国と韓国で5Gの商用サービスが始まり、プレサービス段階の日本なども含めると、世界初の商用サービス開始から約6カ月間で30以上の通信事業者が何らかの形で5Gをスタートさせている。これはLTEの開始時よりも速いペースだとジム・トンプソンCTOは言う。

 一方で、現時点での5Gはまだ始まりにすぎないと同氏。商用化当初の5Gの仕様では、5Gが持つ特徴のうち、eMBB(高速大容量)という要素が実現された。スマートフォンやパソコン、固定無線などでは第1段階の現状でも恩恵を受けやすいが、さらに段階が進んで低遅延、多接続といった特徴も実現されれば、インダストリアルIoT(IIoT)や自動車向けのV2Xなど、従来のモバイル機器の枠に留まらずさまざまな分野での活用が見込まれる。

ジム・トンプソンCTO

 アナログ音声の1G、デジタル音声の2G、モバイルインターネットが本格化した3G、さらなる高速化でモバイルブロードバンドいう概念が生まれた4Gと、モバイル業界は10年周期で発展を遂げてきた。そして2020年代に向けて、さまざまな産業を変革させるプラットフォームとして期待される5Gを次の段階に進めるために、クアルコムはどのような準備を進めているのか、その成果の一部が今回のイベントで披露された。

多様なユースケースへの対応

 今回紹介された技術は、商用化時点での5Gよりも少し先、3GPP Rel.16以降で5Gの本領が発揮される段階につながるものだ。

 想定されるユースケースが増えれば、モバイルネットワークに求められる要素も増えていく。たとえば、大量のセンサーから得た情報を集計し、それに応じた作業を行うインダストリアルIoTでは低遅延や多接続の特徴が生かされ、高度化のためにはエッジコンピューティングも重要になる。

工場のラインでの画像認識を使ったデモ

 工場内の無線化には高い信頼性も要求されるため、複数の構内基地局を連携させ、障害物などによる電波強度が落ちた際には速やかに補完する仕組みも必要だ。また、共有周波数帯や免許を必要としない周波数帯の利用を効率化する試験も行っている。

不可能と言われたミリ波への挑戦

 多様化するユースケースへの対応のほか、通信技術の面でも4Gまでとは異なる事情がある。特に初期段階では、既存の通信方式と共存するため従来よりも高い周波数帯を使う地域が多い。

 6GHz未満のSub-6はともかく、ミリ波(日本では28GHz)の場合、4G以前で使われてきた帯域と比べて、直進性が強く回折が起きにくいことや減衰しやすいことなどがエリア構築を難しくしている。

本社内に設置されたミリ波のアンテナ

 これに対してビームフォーミングの活用や反射による視線上にない場所への伝搬などを検証するほか、RFフロントエンドソリューション全体を包括的なパッケージで提供できる強みを活かし、アンテナモジュールなど端末側での対策も進める。

 また、将来的には5Gと4Gを同じ周波数帯に共存させるDSS(Dynamic Spectrum Sharing)という技術も開発されており、DSSが利用できるようになれば、より扱いやすい周波数帯で5Gを運用できる。