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「非常時の事業者間ローミング」検討会の第4回、今回は“ローミング以外の手段”が焦点に

 総務省は15日、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会(第4回)」をオンラインで開催した。今回の検討会では主に、ローミング以外の非常時の通信手段について、携帯電話各社などから資料が提出され、プレゼンテーションが実施された。

携帯各社のプレゼンテーション

NTTドコモ

 NTTドコモは、NTT(持株)とスカパーJSATによって7月に設立された新会社「Space Compass」を紹介。

 Space Compassの事業のひとつとしては、「宇宙RAN事業(HAPSサービス)」が挙げられる。これは、宇宙空間および成層圏からの無線通信を実現するサービスで、2025年度の提供開始が目標とされている。

 ユーザーは特別な機器を用意しなくても、普段使っているスマートフォンでネットワークを利用でき、地上の豪雨や地震などに左右されないため、非常時などにおけるニーズも見込まれている。

 また、ドコモでは、災害対策における通信確保の取り組みとして、「システムとしての信頼性向上」「重要通信の確保」「通信サービスの早期復旧」という「災害対策3原則」を定める。

 移動基地局や可搬型基地局に加え、新たなツールとして船上基地局やドローンも導入し、非常時に通信をすみやかに確保できるようにする。

KDDI

 KDDIは、携帯電話の基地局が被災した場合に想定される早期復旧手段として、船舶型の基地局や可搬型基地局、米スペースX(Space Exploration Technologies)の衛星ブロードバンドを用いたサービス「Starlink」を紹介した。

 KDDIは、「Starlink」をauの基地局のバックホール回線として用いることについて、スペースXと合意している。また、「Starlink」の法人向けサービスの提供が2022年内に始まる予定。山間部などでも高速通信が実現するほか、災害時のバックアップとしても期待されている。

 また、非常時に影響を受けた携帯電話サービスの代替手段としては、衛星通信の「インマルサットBGAN」や「イリジウム衛星携帯電話」に加え、「公衆Wi-Fi」や「デュアルSIM」などが紹介された。

ソフトバンク

 ソフトバンクは、非常時などを含め、通信環境を整備することが難しい状況でもサービスエリアを維持・構築すべく、非地上系ネットワーク(NTN)の活用を図る。同社子会社のHAPSモバイルによる成層圏通信プラットフォームなどを活用し、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する取り組みを推進する。

 災害対策としては、各種災害対策が施された堅牢なネットワークセンターを保有するほか、伝送路の多ルート化やネットワーク拠点の分散を実施。

 また、災害発生時には、移動基地局車や可搬型移動基地局、有線給電ドローン無線中継システムなどを活用することにより、通信エリアの迅速な復旧を図る。

楽天モバイル

 楽天モバイルは、米ASTスペースモバイルとタッグを組み、低軌道衛星を活用したモバイル通信ネットワークを構築する「スペースモバイル」プロジェクトを進める。

 同プロジェクトでは、一般的なスマートフォンを使って衛星と直接通信できるようになることを目指しており、災害時に基地局が被害を受けた場合でも、通信が提供できることが期待されている。

 また、災害時の早期復旧に向けた取り組みとして、日本各地の自治体などと災害対策に関する連携を拡大している。被災者を支援する活動の例として、台風14号による土砂崩れの影響を受けた熊本県において、スマートフォンやモバイルバッテリーを提供した。

非常時は公衆Wi-Fiも活躍

 NTTブロードバンドプラットフォームからは、公衆Wi-Fiサービスの利用状況の分析結果も紹介された。期間は6月1日~7月6日で、商業施設や公共施設などでのWi-Fiサービスにおける認証数が日ごとに集計された。

 たとえばKDDIの通信障害が発生した7月2日には、総認証数が通常の土曜日より約15%増加。また、初回認証数も約1.3倍に増えた。障害を受けて、代替手段としての公衆Wi-Fiの利用が大幅に増加したと分析されている。

 先述のような分析結果に基づき、非常時における事業者間ローミングの実現に加え、公衆Wi-Fiの活用に関する議論を進めていくことも提案された。

 また、無線LANビジネス推進連絡会は、災害時に無料開放される統一SSID「00000JAPAN」を紹介。災害時などに安心して使えるよう、利便性の向上や周知啓蒙活動に取り組んでいくとした。