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衛星で携帯電話を結ぶ、楽天とパートナーシップを組むASTスペースモバイルのエリア構築の取り組み
2021年10月13日 14:24
12日と13日に開催されている楽天グループのイベント「Rakuten Optimism」の2日目となった13日、ASTスペースモバイルの衛星通信サービスの話題を交えたカバレッジについて講演が行われた。
「どこでもつながる通信サービスを:衛星通信技術により地理的カバー率100%達成へ」と題して、楽天モバイルからは、同社 執行役員 兼 技術戦略本部長の内田信行氏が、ASTスペースモバイルからは、同社会長 兼 CEOのアーベル・アヴェラン氏が登壇した。
衛星で世界をエリア化
今回のRakuten Optimismは、「デジタル化」がメインという内田氏。そこで重要になってくるのが通信の接続。しかし一方では、世界人口のおよそ半数が通信ネットワークを利用できない暮らしを送っているという報告がある。
米国企業のASTスペースモバイルは、宇宙に打ち上げた人工衛星から地上の通信網をカバーするという取り組みを行っている。これにより、一般的な基地局の設置が難しい地域でも通信サービスを利用できる、と楽天モバイルでは将来像を描く。
アヴェラン氏は、スペースモバイルの特徴についてこう語る。
「我々は唯一の宇宙ベースのモバイルネットワークを作っています。一般的な携帯電話の接続を目指しており、どこに誰がいたとしても、ブロードバンドを利用できるのです」
楽天モバイルでは、「世界初の仮想化されたネットワーク」を目指して2020年にMNOとして携帯電話業界への参入を果たした。内田氏は、その過程で業界でも「そんなことは無理だ」といった意見や批判もあったことを語る。
ASTスペースモバイルも、同様にこれまでにない挑戦に取り組んでいる。「なぜ、そのように決断したのでしょうか」と内田氏が問いかけた。
これまでと違うことをしなければ、新しいことにはならないとアヴェラン氏。「どのようにこれまでと違うことができるかと考えた。どこにいても、どこに住んでいても無線通信を使えるようにするにはどうするべきか」。場所に依存しない無線通信には技術的な難しさがあったとアヴェラン氏。しかし、楽天モバイルとともにイノベーションを起こして市場にもたらそうと取り組んだと語る。
加えて、通信の拡大は1兆ドルのマーケットにつながるとアヴェラン氏。「今現在、ネットワークを利用できない人々に対して、どうしたら携帯電話でインターネットを提供できるか。状況に関わらず緊急事態への対応やサービスを提供したいということが、モチベーションでありビジネス機会だった」という。
この25年ほどで、衛星やブロードバンドの発達で、さまざまな場所でネットワークを利用できることになったことに触れ、次の成長ドライバーは「場所も周波数帯も関係なく、ネットワークを使えるようにすること」というアヴェラン氏。そのためには楽天モバイルのような企業とのパートナーシップが重要と語る。
楽天モバイルとエコシステム確立したい
さらに、スペースモバイルの技術をいかに持続可能なものにしていくかにも注目しているとアヴェラン氏。アフリカや南米、アジアの一部など低速なネットワークしか利用できていない国はもちろん、先進国でも提供していく方針を明らかにし、「ブロードバンド接続は人権のひとつといっても過言ではない」とも語った。
内田氏は「日本でスペースモバイルの説明をすると(その実現性について)疑いを持つコメントもあった」とした上で、「同じようなことがASTでもあったのでは?」と質問。
アヴェラン氏は「たくさんのイノベーションとたくさんの課題の解決が必要だった」と語る。ASTの取り組みは、これまで政府機関などが主導することが大半だった宇宙プロジェクトを民間企業としててがけていることや大掛かりなサービスに使われることが多い衛星通信を、携帯電話ネットワークとして利用することなど、これまでのサービスとは大きく異なる点がある。
こうしたことを説明した上でアヴェラン氏は「いろいろと言われることはあるが、どうか見守ってもらいたい。楽天モバイルとパートナーシップを組み、エコシステムを確立し技術を活かしていきたい」とコメント。
今後、衛星打ち上げ
2021年は、NASDAQへの上場や複数の通信キャリアとのパートナーシップ締結など、ASTにとって重要な年となった。
その上で今後のASTをアヴェラン氏が説明した。「インフラ構築から我々のミッションを実現しようとしてきたが、資金があることが重要。そこでNASDAQ上場はうまくいった」と財務基盤を形成し、技術的な成長を図れたことを強調。
資金集め以外にも、楽天モバイルをはじめボーダフォンなどさまざまな企業とパートナーシップを締結できたことについても紹介する。2022年にも衛星の打ち上げが予定されており、アヴェラン氏は「2021年は我々にとって奇妙で、かつ重要な年だった。コロナによりさまざまなことがリモートで進んだが、非常に目覚ましく2022年に向けて基盤を構築できた」と総括した。
内田氏によれば、ASTの日本でのトライアルは2022年から開始の予定という。