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非常時の「事業者間ローミング」に向けた第2回検討会、「約7割が必要としている」という調査結果も

 総務省は4日、通信障害などの際に他社回線で携帯電話を利用できるようにする「事業者間ローミング」の実現に向け、第2回の検討会を実施した。

 本稿では、総務省が公開した資料から論点などを紹介する。なお、第1回の検討会は9月28日に開催された。

野村総研によるアンケート調査の結果は?

 野村総合研究所(野村総研)は、「携帯電話の通信障害に関するアンケート調査」を実施。対象者は全国15歳~69歳の男女で、回答者数は事前調査が2万8984、本調査が5222となった。調査はインターネットを用いて、8月30日~9月2日の期間で実施された。

 7月2日に発生した、KDDIの通信障害。事前調査の回答者のうち5人に1人が、KDDIの通信障害で「大きな影響を受けた」「影響を受けた」と回答した。au、UQ mobile、povoのユーザーについては、半数以上が障害の影響を受けたと回答している。

 KDDIの回線利用者で、障害を受けたと回答した人は、Wi-Fi、アプリ経由の通話、固定電話などを使って影響を回避したという。若年層はWi-Fiを活用する割合が高く、中高年層は固定電話を活用する割合が高かったとされている。

 緊急時の「事業者間ローミング」の必要性を問う設問では、本調査の回答者のうち7割程度が「必要だと思う」「どちらかといえば必要だと思う」と回答。年代が上がるほど必要性が高くなる傾向もみられたという。

 通信障害に対する普段の対策を問う設問では、本調査の回答者のうち約6割が「特に備えはしていない」と回答した。

防災科研の取り組み

 防災科学技術研究所(防災科研)は、災害時に組織を越えて防災情報を共有するしくみ「SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)」などの取り組みを紹介。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯3社からは災害時に通信エリアの状況が配信されており、防災科研は「大変重宝している」とした。楽天モバイルについても、ほかの3社同様、通信エリアの情報提供が期待されているという。

 防災科研は、事業者間ローミングの必要性について、「現地災害対策本部では、さまざまな機関が、パソコンなど、通信を活用する機器を持ち込んで活動している」として、「現地本部では事業者間ローミングは不可欠」とした。

海外の動向

 海外の動向として、カナダでは、7月8日に大手通信事業者(Rogers Communications)の大規模な通信事故が起きた。コアネットワークをアップデートするためのメンテナンスの失敗が起因となり、カナダ全土で広範囲な障害が発生。1000万人以上のユーザーが、電話やインターネットを利用できない状況に陥ったという。

 そこで7月11日に、イノベーション・科学経済開発大臣と主要通信会社との間で、事業者間ローミングなどに関する会議が開催された。事業者間ローミングの開始条件などを定めた「通信の信頼性に関する事業者間の覚書」について、12社が合意したことが9月7日に公表されている。

電気通信事業者協会(TCA)による、質問事項などへの回答

 電気通信事業者協会(TCA)は、第1回の検討会に対する質問事項について、携帯各社との確認事項を報告した。

 「事業者間ローミングの運用について、どのような運用基準が必要か」という質問に対しては、「ローミング開始条件」「ローミング提供範囲」「ローミング終了条件」「一般呼を受け入れた際、救済網側に影響のない範囲での受け入れ方法」の基準が必須と回答。

 また、「ユーザーへの周知方法」などの運用ルールの整備も必要だとしている。

 「ユーザー数に応じて、通信設備の容量は事業者ごとに異なる。事業者間ローミングでは、救済する利用者数に関して公平性を求めるのか」という質問に対しては、「公平感ある運用やしくみが必要」と回答した。

 例として、「全携帯事業者が同時期かつ相互に事業者間ローミングを開始すること」「被災事業者側以外の全携帯事業者で、被災した契約者を受け入れること」といった運用方法が挙げられている。

 事業者間ローミングのエリアごとの制御については、「各社でのエリアの作り方がそれぞれ異なるため、ローミングの適用エリアをある程度の市区町村や都道府県単位で制御できるよう、方法の検討を進める。緊急呼のみのローミングであれば、発動時に一律、全国で適用することも可能だと考える」とした。

 標準技術に準拠した「LBO(LocalBreakOut)方式」のローミングの場合、電波の状況を示す“ピクト表示”が、原則としてローミング先のものになるという(ローミング先のキャリア表示+アンテナピクト表示)。このため、ユーザーへの周知についても検討する必要があるとしている。