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NTTの第36回株主総会、総務省との接待問題やドコモ子会社化を説明

 NTTは24日、第36回定時株主総会を開催した。議案は第1号~第4号までの4議案で、株主提案だった第4号議案を除いてすべて可決された。

 総会の場には、NTT 代表取締役社長の澤田純氏が議長として登壇。澤田氏はあらためて、総務省幹部などとの会食に関する一連の不祥事について陳謝。

 経営陣の認識が甘かったと説明し「社員に模範を示すべき、経営層がこうした事態を招いたことを深く反省し、再発防止のため社内ルール見直しなど取組みを徹底する」と説明した。

左=NTT 澤田純氏

 NTTでは6月7日、特別調査委員会による調査報告書とそれを受けた取組みを公開している。

会食事案についての取組み

 同社株主からも、総務省との会食事案に対する取組みの説明を求める声が上がった。これに対しては、NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員の島田明氏が説明。

 同社による特別調査委員会による報告書での指摘を踏まえて、利害関係のある政務三役や公務員と個別の会食を行わないとするルールを策定するとともに、その定着を目指して役員などに対して継続的に研修を実施するとした。

 また、運用状況については、担当役員の承認による会食などの事前チェック、内部監査による事後チェックの強化などを掲げる。

 総務省との接待問題をめぐっては、澤田氏をはじめとして関係役員などは報酬減額・厳重注意が行われており、島田氏は「信頼を取り戻す道づくりをしていくことで信頼を取り戻していきたい」と語った。

ドコモ完全子会社化の意義を説明

 NTTドコモがNTTの完全子会社となって以降、初開催となった今回の株主総会。澤田氏からは、あらためてその意義が説明された。

 ICT分野においては移動通信・固定通信の垣根がなくなるとともに、海外の事業者を含めて、通信領域を超えた多面的・多層的な市場競争が激化していくと予見されることに加えて、アフターコロナにおいてはリモートを活用した分散型社会へ移行していくと澤田氏は説明。

 そうしたグローバルレベルでの大きな変化が予測される中、NTTグループの中期的発展に向けては、リモートワールドを考慮した新サービスの展開や経営資源集中・DX推進などに加えて、世界規模の研究開発を加速させるとともに、スマートライフ事業などの強化が必要と訴える。

 こうしたことの実現には、グループ横断での経営資源の戦略的活用が不可欠という澤田氏。同社グループの中核を成すドコモの競争力強化・成長を通じてグループ全体の成長・発展に向けてのドコモ完全子会社化だったと説明する。

 「新サービス・ソリューションや6Gを見据えた新たな通信基盤の整備を移動・固定・融合型で推進。上位レイヤーまでを含めた総合ICT企業への進化を目指す」とあらためて今後、目指す方向性についてコメントした。

キャリアメール持ち運び、早期に対応

 会場の投資家からは、他社へ移行後のキャリアメールアドレスの持ち運びについて、23日に一部報道で菅義偉内閣総理大臣が年内にも実現したい意向を示したことに触れ、ドコモアプリのSIMフリー機への移行の難しさを指摘する声があった。

 これに対して、ドコモ 代表取締役副社長の丸山誠治氏は、キャリアメール持ち運びについて「ニーズを明らかにして、需要の見込みを考えながら対応する。総務省タスクフォースで検討中と聞いているが、対応は前向きに、かつ早期に進める」とした。

 加えて丸山氏は、端末交換時などの各種アプリの移行の難しさは認識しているとした上で「ドコモスマートフォンについては、円滑に操作できるようサポートしている。そのほかの端末についても極力サポートしたいと考えている」とコメントした。

 さらに会場からは、SNSアプリの「+メッセージ」について、3キャリア以外にも楽天モバイル、MVNOに広めれば市場の活性化につながるのではないかと指摘。+メッセージを拡大してほしいという声は、23日のKDDIの株主総会でも上がっていた。

夢のある話がほしい

 「もっと株を買い増ししたくなるような夢のある話はないのか」という会場の投資家の声に対して、NTT 島田氏は「ドコモ、NTT コミュニケーションズ、NTT コムウェアを統合し、従来固定回線のみだった法人用ネットワークに5G無線ネットワークを導入するなど新たなチャレンジが必要になってくる」と説明。

 「6GやIOWN構想でオール光ネットワークに向けてインテルやソニーとチップづくりを進める構想などがある」と今後の展開を紹介する。

 「通信は目に見えない事業。もっと露出を図らなくてはいけないと思う。これから我々のR&Dの力や新しいプロダクトなどをもっと株主やユーザーに向けて見てもらえるよう開発し、広報宣伝活動に努めていく」と語った。

 澤田氏は「研究開発においては『電気からひかりへ』というキーワードで進めている。2023年には(IOWN構想対応の)半導体の最初期のバージョンを出そうとしている。これは世界で初となる」とコメント。エネルギー削減により環境問題へも貢献できると説明した上で「世界を変えていくようなものを、世界のパートナーと一緒に提供していきたい」とした。

 また、今夏の開催が見込まれる東京五輪についての動きを問われ、新型コロナウイルスの影響が大きい中での開催となることについて「安心という意味ではなかなか不安が大きいもの」としつつ、ドコモのモバイルネットワークを通じて人流を把握できる仕組みなどを用いて密を回避できるソリューションなどを用意していることを説明。

 新型コロナそのものに対しての研究をしていることも紹介、今回の大会には間に合わないこともあるとしつつ「いろいろな業務をリモートでできるような努力をしていきたい。これ(リモート普及)はずっと続く話であり、より安全な大会を目指した動きをお手伝いしていきたい」とコメントした。