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NTTのドコモ完全子会社化記者会見――GAFAと戦える総合ICT企業を目指す
2020年9月29日 20:56
NTT(持株)とNTTドコモは、NTTがドコモを完全子会社化するためにTOB(株式公開買付)を実施すると発表した。また、NTTグループを再編し、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアを、NTTドコモグループに寄せる検討を始めたと明らかにした。
会見には、NTTの代表取締役社長 澤田 純氏と、NTTドコモの代表取締役社長 吉澤 和弘氏が登壇。
意思決定の迅速化とNTTグループ再編で総合ICT企業へ進化
NTTの澤田氏は、情報通信市場を取り巻く環境の変化や社会トレンドの変化を捉え、「グローバルレベルでダイナミックな環境変化」が起きていると分析した。
新型コロナウイルス感染症によるリモートワークの急拡大などをとらえ、新サービスの提供やリソースの集中化、研究開発の推進や、スマートライフ事業など新規事業の創出の強化などを実施していくという。
その中で、グループを横断してのリソースとアセットの戦略的活用と意思決定の迅速化が不可欠であると判断したという。
そこで、NTTではドコモを完全子会社化し、ドコモグループの意思決定の迅速化を図る。
また、将来的にNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアをドコモグループに再編を検討している。ドコモとNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの既存のサービス同士の融合はもちろん、新たなサービスの創出において、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアの能力を活用し、移動と固定を融合した総合ICT企業へ進化させることを目指す方針。
TOB規模は4兆円超
NTTによるドコモの完全子会社化にあたり、ドコモ株の公開買付(TOB)を実施する。買付期間は9月30日~11月16日、買付価格は1株あたり3900円、買付予定数は10億9089万6056株を予定する。買付の規模は約4.3兆円を予定している。
なお、TOBによりドコモ株がすべて取得できなかった場合でも、その他の手続きを踏まえ、2020年度内に子会社化を完了させる方針。
なお、NTTデータについては、完全子会社化する考えはないとしている。
ドコモはモバイル中心から事業領域を拡大する変革が必要
続いて、NTTドコモの代表取締役社長 吉澤 和弘氏から、ドコモの変革の必要性を説明した。
吉澤氏によると、通信事業での競争が激化し、GAFAなど異業種からのプレイヤーとの競争が加速しているという。また、社会の変化やユーザーニーズの多様化や高度化、複雑化があり、市場環境が大きく変化しているという。
5G時代の現在において、社会がリモート型に大きく変わる今、ドコモ自体がモバイル中心から事業領域を拡大し、ユーザーニーズにトータルで応えられるように変革が必要だとした。
このため、ドコモがNTTの完全子会社となることや、NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアとグループ再編を実施し、ドコモが「すべてのユーザーのフロント」としてユーザーニーズにトータルサービスで応えられる企業を目指す方針とした。
具体的には、グループ経営資源を活用し、モバイルと固定、Wi-Fiを融合させたネットワークサービスの実現や、ネットワークの最適化や高度化を実現し、コスト競争力を強化させる。
また、法人ビシネスやスマートライフ事業の強化、6GやIOWNなど次世代ネットワークなどの研究開発体制の強化を挙げた。
完全子会社化に至るまでとこれから
NTTの澤田氏によると、NTT内では数年前から今後の方針についての議論を進めており、今年4月に方針が固まったという。また、ドコモには6月に打診があったという。
今後は、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアをNTTドコモグループに寄せる方針だが、NTTドコモに吸収するかどうかは検討していないという。市場の競争が固定とモバイルを融合させる形で推移してきているといい、KDDIやソフトバンクと比較すると、固定とモバイルをあわせたサービス展開に遅れをとっていたという。
また、グループ再編により他社から批判が出たり市場独占状態になるのではという問いに対して、NTTの澤田氏は「NTT東西」との連携に対しては法規制があるが、ドコモやNTTコミュニケーションズなどに関しては法規制はないとした。モバイル回線のバックボーンとなるNTT網についても、KDDIやソフトバンクに対してもドコモと同じ条件で回線を卸しているとし、現在ドコモのシェアは約40%で、寡占的な市場状況にないとコメントした。
その上で、ドコモの完全子会社化やNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアとの協業について法制度上の問題はないと認識しているとした。
NTTの澤田氏は、NTTグループの再編でリソースの最適化やドコモの経営基盤の安定化を実現するとし、経営基盤の安定化で結果的にサービス料金の値下げにつながる考えを示した。
また、将来のドコモの姿として、「安価で良いサービスを出し、市場競争と研究開発ができる総合ICT企業を目指す」とコメントした。