インタビュー
「povo」が取り組む次の一手は? KDDI Digital Life濱田社長インタビュー
2025年9月24日 06:00
基本料0円からデータ通信量を自由に購入していく「トッピング」という斬新なコンセプトで、日本の通信業界に衝撃を与えた「povo2.0」。2024年には、オープン化、そして「povo3.0」としてSDK(ソフトウェア開発キット)を用意し、他社のサービスへ融合して、通信サービスを提供するという新たなコンセプトを提示した。
2025年4月、その舵取りを任されたのが、KDDI Digital Lifeの新社長に就任した濱田達弥氏だ。
モンゴルでの携帯電話事業やアジアでのグローバルコンシューマー事業に携わった濱田氏は、今まさに「povo3.0構想」を加速させていると語る。
武器のひとつはSDKであり、さまざまな異業種とのタッグを目指す。そしてもうひとつ、同氏が描く未来が、AIを活用し、ユーザー一人ひとりに最適化されたプランを提案する「ハイパー・パーソナライゼーション」の実現だ。
povoが目指す「デジタルテルコ」の真価、そして国内での戦い方と同時に進める海外展開について、濱田社長にじっくりと話を聞いた。
新社長に就いた理由
――濱田さんは今年の4月から「povo2.0」を手掛けるKDDI Digital Lifeの社長職に就かれたわけですが、基本料0円でデータ通信をトッピングとして追加購入する「povo」をどう見ていますか。
濱田氏
個人的には、「povo」のトッピングに対しては、正直驚きはありませんでした。というのも、以前、モンゴルで「モビコム」というKDDIのグループ会社に、6年、CEOを務めていた経験があったからです。基本的にモンゴルはプリペイド市場なんですよ。
ちょうど私が赴任したころに4Gの全国展開が始まり、スマートフォンが急激に普及していった。同時に、プリペイドからポストペイ(後払い)への切り替えを進めました。
日本はポストペイの契約ばかりですが、私個人にとってはプリペイドに馴染みがあったんです。「トッピング」もまたプリペイドですから、そういう意味で驚きがなかった、ということになります。
モンゴルから帰任した後も、KDDI内でグローバルコンシューマー事業の部署にいましたが、そこで主に取り組んだのはアジア市場。アジアもプリペイド契約が多数を占めています。
余談ですが、モビコム時代、KDDIを通じてサークルズライフ(povoの仕組みをKDDIとともに構築した)がモビコムへアプローチしてきました。通信事業者向けの支援システム、課金システムなどを提案してきてくれて。
その後のグローバルコンシューマー事業立ち上げの際に、サークルズライフのプラットフォームとpovoの事業モデルを海外展開しようという話になって。いくつかの国の通信事業者を訪問して……といったこともありました。
2024年になって、中期戦略を策定していくなかで、キャリア(携帯電話会社)向けソリューションとして海外市場に展開しようと。KDDIのノウハウを、いわばB2B2Cとして海外市場へ展開していく……ということを狙っていたのが、当時の私のチームでした。
――過去2年の取り組みだけでも、povo、つまりKDDI Digital Lifeをリードする立場になぜ濱田さんが就かれたのか理解できた気がします。
濱田氏
povoは、この秋、2.0になってから丸4年になりました。国内も頑張りますが、海外でも展開していこうと、今、活動しています。
――昨年、秋山前社長から「povo 3.0」として、SDKの提供などの方針が示されました。それを軌道に乗せていく、ジャンプアップさせていくところが、濱田さんの担うミッションですか。
濱田氏
はい、そうなんです。
SDK/B2B2C戦略の加速
――MWCの時にMetaとの協業という発表もありました。正式な発表はありませんでしたが、検索してみると、国内インバウンド向けの「Meta Unlimited」といったトッピングが出てきます。
濱田氏
はい、日本国内で販売するのではなく、Metaさんから日本へ行きそうな方々をターゲットにした施策として販売されていました。日本に関する興味を持っている人へpovoのインバウンド向けSIMを紹介して販売していく仕組みを作ったのです。
Japan SIM、OSAKA eSIMといったものを販売していくタイミングも迎えて、Metaさんとのプロジェクトは一旦クローズしました。今は、OSAKA eSIM、Japan SIMというインバウンド向けのSIMへフォーカスしています。
povoからダイレクトに訪日される、いわゆるインバウンドの方々へ提供しています。
――povo3.0の考え方、つまりSDKで色んなサービスと組み合わせて通信を提供する、という取り組みは、当然、今も継続している。
濱田氏
ものすごく加速させています。
――ちなみに、povo3.0で唱えるSDKでは、相手先のサービスに組み込まれるという形ですが、インバウンド向けをダイレクトに手掛けるというのは、例外にあたりますか?
濱田氏
いえ、OSAKA eSIMについては、SDKを使っています。povoというブランドは一切出さず、「大阪観光局のサービス」として仕立てられています。お客さまへのマーケティング、アプローチも、主体は大阪観光局になります。
グループ会社で公衆無線LANを手掛けるワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)が、大阪観光局とWi-Fiに関する取り組みを先行して進めていました。
ただ、Wi-Fiのエリアはどうしても一定の場所に限られます。そこで、「OSAKA eSIM」を展開することになったわけです。
――なるほど。
濱田氏
それから、パソコンにpovoを組み込む取り組みもあります。HPさんと進めた「ConnectIN povo」です。
――「ConnectIN povo」は5年で300GBでした。これの多寡について意見はさまざまありました。そんなふうにユーザーの受け止めがどうなるか見通し切ることができないなかで「povoのSDKを採用するサービス」の内容を柔軟に変えることはできますか?
濱田氏
確かに、異なる産業分野のパートナーさんと取り組む際には、当然、ギャップが発生する可能性はあります。我々の通信事業者としての思惑と期待、それからパートナーさん側が持つ思惑と期待。それらが必ずしもマッチするとは限りませんよね。
通信の部分に関しては、パッケージをフレキシブルに変えられます。
と、簡単に申し上げているんですけれども、いわゆるMNO、一般的な携帯電話会社からすれば、そんなプロダクトはポンポンと作れないんです。
ところがKDDI Digital Lifeは、クラウドネイティブでソフトウェアベースでのシステムです。プロダクト開発は比較的早い。1カ月、2カ月で簡単に作れてしまう。そこが我々の強みです。
「デジタルテレコ」とは
――「クラウドベース」とのことでしたが、MWCでは「デジタルテルコ」(Digital Telco)といった表現もありました。これとは別でしょうが、日本国内では、楽天モバイルが「完全仮想化ネットワーク」というコンセプトも掲げています。これらはどう違うのでしょうか。
濱田氏
通信事業者からすると、「デジタルテルコ」は抽象的なんです。たとえばKDDIでも、auやUQでもアプリを使っています。オンラインで処理もできます。じゃあどの部分が「デジタルテルコ」か、というのが抽象的。
あえて、わかりやすくお伝えするならば、たとえば店舗での対面や、コールセンターでの対応、ショップの運営・代理店さんとの関係といったところが、完全にオンラインのみ……という形態が「デジタルテルコ」と言えます。
一方、通信事業者の観点からすると、インフラも運営のためのシステムも、サーバーも全てデジタル化されています。
ただ、従来型は、通信サービスを運営するためのさまざまな機能が、いわば数珠つなぎです。その分、安定し、頑強です。しかし、そのシステムのなかのひとつを改変したい場合、全体に影響が波及します。その分、時間がかかります。
ところがクラウドでのソフトウェアベースとなれば、課金システム、通信運営のシステムといったものがそれぞれパッケージになっていて、つながっている。開発・改善することが従来型と比べて容易なんですよね。
従来型システムですと、料金変更や新プロダクトの開発~提供まで1年といったスパンがかかる。それでは市場のスピードに追いつかないことがあります。
プリペイド型のサービスに求められるものは、変化すること、それからお客様のトレンドに合わせた柔軟性、最適化、機敏さでしょう。実現するにはソフトウェアベースが必要です。
一刻も早くプロモーションを展開し、キャンペーンを実施する。プロダクトを作る。バンドルサービスも作る。新しいパートナーとのパッケージを出す……これらを実現する形態が「デジタルテルコ」という概念かと思っています。
povoのコア戦略
――濱田新社長のもとでも、「デジタルテルコ」としてスピード感などは変えない、加速すると。
濱田氏
そうです。次に向けた戦略の中核のひとつは、SDKをベースにした「ビジネスエンパワー」「イネイブラー」になっていくことです。
povoのSDKを使い、いろんな業態・業種の方とパートナーとなる。つまり従来のB2Cだけではなく、B2B2Cのビジネスモデルの確立です。
そのためには、たとえばKDDIの法人部門とタッグを組んで今、まさに進めようとしています。
もうひとつは、個人のお客さまに向けて「ハイパー・パーソナライゼーション」を目指していきます。
――ハイパー・パーソナライゼーションですか。
濱田氏
ポストペイド、つまり一般的な携帯電話の料金プランは、3~4種類が用意され、そこから選んでいただきます。
一方、「povo」には、めちゃめちゃ多くのパッケージ(トッピング)がありますよね。「多すぎて分かりにくいんじゃないか」という話ももちろんありますが、実はですね、もっと増やしたいぐらいなんです。
究極は、もう100種類ぐらいもあってもいい。ただし、アプリ上で全てを見せる必要はないのではないか。
お客さまごとに、それぞれぴったりの料金・容量があるはずで、たとえば生成AIで「このトッピングはどうですか?」と提案していきたい。これまでより、一層、お客さまごとのトッピングを作れるようにしたいんです。
それがパーソナライゼーションの次の段階だと思ってるんです。
今まで通信事業者って、サービス・プロダクトを作って、お客さまに使っていただく形です。いわば主語が「通信事業者」。
そのプロダクタイゼーション(製品化)の主導権を、お客さま自身に持っていっていただけるようにしたい。
究極の姿を言えば、「データ」「音声」、そして、ある程度まとめたトッピングがあるとして、よく使われる方ならば「50GB~70GBで5GB単位で選べるようにしましょうか?」ですとか。
そういう多様なものが究極的なゴールとして、実現できればいいなと思っているわけです。
これが実現すると、お客さまごとの属性、つまりセグメントという概念は崩れていく。個々人ごとのインディビュアルという概念に変わってくると思うんですよね。
もちろん運営スタッフ側も、人力で1万も2万も10万もパッケージ(トッピング)を作れません。AIの力でなんとかフレキシブルに作っていけないか――今の段階では、これは夢語りに近いですよ。ただ、「povo」が極めたい姿なんです。
――あー、なるほど、その話からすると、現在のトッピングからもっと増やしたいという話は理解できます。
濱田氏
ユーザーとして、ある程度「こんな風に使いたい」とか、あるいはAI側が「こうしたらいいんじゃ?」というところが僕の理想ではあります。
実現するためには、我々のビジネスオペレーション側も“ハイパー・オートメイト”されないといけない。やはりAIのフル活用が必要です。
「究極のゴール」(ハイパー・パーソナライゼーション)を実現できていなくとも、その過程で作り上げていくものが、今度は僕らのエクスパティーズ(専門性)になるし、知財にもなる。それを海外のオペレーター(通信事業者)に提案してB2Cモデルで提供する。
――海外のオペレーターでも、長く事業を展開しているところへ、povo的なシステムを導入してもらうことは、相当大変なようにも思えますが……。
濱田氏
めちゃくちゃ大変です。
海外と言ってもマーケットとしては、特にアジアに注目しています。冒頭、申し上げたようにアジアではプリペイドがメインの市場ですから、「トッピング」に似たものがあります。名前の違いくらいでしかない。
ですから、日本国内で「povo」が登場したときのような、センセーショナルな印象を与えられるか? といえば、ちょっと難しいでしょう。
そこで、SDKを使い、異業種とのコラボレーション、あるいはAIを使ったコンシェルジェ・エージェントタイプのビジネスモデル。こういったものを磨き上げておきたいです。そうでないと、アジア市場で存在感を持って、イノベーションを打ち出せない。
――欧米が後回しになるとしたら、それはポストペイドの世界だからですか?
濱田氏
いや、本当は欧米でもいいんです。ポストペイドの方がインパクト出しやすいので。たまたま、我々のチームがアジアとの接点が多いということもあります。
日本国内での戦略
――では、日本ではどんなふうに展開していきますか。
濱田氏
徹底的に国内では戦います。成功モデルを1個1個、勝ちパターンとして、武器を揃えていかないと、海外で勝てないよねっていう感じです。
――povoのトッピングでは、飲食店のギフト券とデータ通信のセットといったものがあります。こういったものは、何を成功の指標としていますか?
濱田氏
すごく簡単な言い方をすると、そうしたトッピングは、バンドルして、セットで提供しているだけです。パートナーさんのクーポンや商材の割引といったメリットと、我々の通信をまとめて、1回の決済で販売させていただいている。これはこれで継続します。需要が結構ありますし、ライフスタイルに入り込めるものですから。
一方で、先述してきた「SDK」は、povoの姿が見えても見えなくても、どちらでも良いものです。
黒子に徹してもいい。パートナー企業にとってのお客さまへアプローチするもので、クーポンとセットにするようなトッピングの事業とは、まったく異なる取り組みです。どちらかというとB2Bのビジネスに近い要素もやっぱりあると思うんですよ。
――SDKを使った仕組みとして、「DMMモバイル Plus」などもありましたが、それ以外ではいかがでしょうか。
濱田氏
最近ですと、JR東日本さんの訪日外国人向けアプリ「Welcome Suica Mobile」です。アプリの中に「Japan SIM」を導入し、インバウンドのお客さまがアプリから直接、SIMも購入できます。
JR東日本さんとは色んな議論をさせていただいて、これはまずファーストステップ。今後の進化も考えています。
――どう進化するかが気になるところです。
濱田氏
いろんな使い方があると思うんですよ。
JR東日本さんだけではなくて、たとえばローソンさんとやっている「povo Data Oasis」は月に最大1GB、通信量をもらえます。
これって考えようによってはスタンプラリーのようにもできますよね。どこかに行ってギガをもらう。これ、旅行する人からしたら嬉しいでしょう。
そういうアレンジもできますし。SDKを使ったモデルって、色々汎用性が高いと思うんですよ。今、必死に開拓中で、B2Bビジネスとの協業として加速させています。
――JR東日本の例を出していただきましたが、そうした企業が自社プロダクトに通信を組み込む背景には、ユーザーにおいてどんなペインポイントがあると考えているんでしょうか。
濱田氏
いろいろあります。JR東日本さんのケースだと、インバウンドの方(訪日外国人)には必ず日本での通信が必要ですよね。さらに日本国内で使える支払い手段も必要です。
移動手段もないと困るので電車へ乗る。つまり、(交通と決済をカバーできる)Suicaへの需要には、通信も必要ということで、親和性がある。
だからバンドルってのは絶対いい話だと思うんです。
ちなみにSuicaでは、日本国内でしかチャージできません。日本国内の空港に到着しても、チャージしようとしても質の悪いWi-Fiだとうまくいかないことがあります。なので、povoのSIMを入れてSuicaアプリをダウンロードしてチャージして……と。
こういう課題は、我々が知らないものでした。異業種のパートナーさんの目線、求めてる期待はすごく重要なんです。
――そのあたりを聞き出すのも大変そうですが……。
濱田氏
まさに法人営業です。
「povo」は、KDDIにおいてパーソナル事業という分野です。でも、パートナー企業に採用していただくには、やはりKDDI内の法人営業に知見があります。私自身も直接訪問して、お客さまとお話しています。
eSIMと日本独自の消費トレンド
――個人向けサービスについてもお話を聞きたいです。新しいiPhoneが本日出ました(取材日は9月19日)。全てeSIM専用となっています。オンライン専用のpovoとの相性の良さがあるのかな? と思えるところです。
濱田氏
はい、povoも開業当初からeSIMをメインのひとつにしています。これもデジタルテルコの1つなんですよね。もちろん物理的なSIMカードも続けていきます。
今後iPhoneに限らず、eSIM専用機種が登場する可能性もあるでしょうから、「povo」との親和性が高く、非常にありがたいと思ってます。
今後はウェアラブルのAIグラスなど、どんどん登場する未来もあるでしょう。eSIMのほうが、より軽量化できるでしょうから、スマートフォンベースではないビジネスモデルも、さまざまなメーカー・企業との機会を広げたい。
――povo2.0登場から4年ということで、利用の傾向もあらためて教えてください。
濱田氏
トッピングとしては、1GBや3GBといった低容量から大容量までご用意しています。
ただ、データ通信量の傾向として、有効期限が1年などの長期間で、大容量というトッピングの需要が結構増えてきてるんです。
この背景には、日本特有の文化や性質というか、特性があるのかなと個人的には感じるものがあるんですけど、有効期限6カ月のものを購入する際、1カ月いくらになるのか、「12カ月だから1/12で1カ月いくらだ」とか。計画的な購入が好まれているのかなと感じています。
――なるほど。
濱田氏
東南アジアや南アジアだと、「先々の、不要なものは買いたくない」という発想です。だからプリペイドが主要になる。高ARPU(利用料が高い)人でも、ポストペイドよりもプリペイド。後払いに移らないんです。
アジアでポストペイドサービスと言っても、結局は月の最後に請求書が届き、自分で振り込んだり送金したりしないといけないことが多いようです。
後払いサービスの利用傾向は、クレジットカードや銀行口座の保有率が大きく影響します。ちなみにモンゴルは、法律上、国民が銀行口座を1つ持つことになっています。ところが東南アジアや南アジアでの銀行口座保有率は極度に下がります。
新機能も検討中
――ちなみに、トッピングの自動更新機能といった機能はどうでしょう。
濱田氏
検討中です……というか、やります。ただ、オンオフの設定を気をつけないと、お客さんにとっては思わぬ請求になってしまう可能性がありますよね。
慎重に進めないといけないのですが、自動更新というか、オートチャージは、やります。
――そのほかはいかがでしょうか。
濱田氏
povoアプリでバナーとして、新しいトッピングを表示していますが、利用履歴をもとにお客さまへフィットするトッピングをオススメできたら良い話かなと思っています。そういうパーソナライズ型のアドバイズメントもこれからやっていくと思っています。
povo AI導入の理由
――7月下旬に「povo」アプリで、「povo AI」が導入されましたね。アプリの利用頻度を上げたいのかなと感じましたが……。
濱田氏
さきほど大容量・長期間のトッピングの利用が増えていると申し上げました。そうしたトッピングを購入する方は、そうそう頻繁にアプリを見に来ないんですよね。
一方で、povoでは週単位でいろんなプロモーションやキャンペーンをやっています。アプリをご覧にならない方にとっては、気づかないうちに始まって、気づかないうちに終わっていることになる。
もっとアプリが魅力的なものになって、トッピングの購入目的じゃなくても見に来てくれるようなレベルまで持ってきたいんです。
そのためには、たとえば「povo AI」で、AIとのチャットを楽しんでいただけるようになれば、それだけでも面白い。
povoにはキャラクターがいますけども、彼が話している風なアニメーションをアプリ上で表示できるようにしてもいい。このキャラクターの家族が新たに登場してもいい。
お客さまが楽しめるプラットフォームに変えられれば、povoアプリは、本当にユニークな存在になり得る。その第1弾が「povo AI」です。
ただ、より多くの、一般のお客さまに、こういうAIチャットの使い方までは浸透していません。もう少しブラッシュアップし、povoのキャラクターが喋っている風にして、どんどん使ってもらいたいです。
そうすると、ものすごい量のトッピングを用意したとしても見せることなく、“povoコンシェルジュ・エージェント”が、オススメしてくれる。
簡単な質問をしたらポンとAIエージェントが答えてくれる、ですとか。
――いつごろ実現させたいですか。
濱田氏
今は「povo AI」を導入して、未来へ一歩進んだという状況です。
povo AIでは、「GPT-4o」と「o3-mini」、「GPT-3.5」、「Perplexity Sonar Pro」を無料でご利用いただけます。「GPT」は今後、5.0に近い将来、切り替えます。
その次のステップくらいで、povoのキャラクターによるAIエージェントを考えていきたい。ただ、アプリの構造にも影響があるので、開発には時間をちょっと要する。povoにはWebサイトもありますが、そちらへ先にエージェント機能を導入すると思います。
――povoのアプリが、ユーザーとの接点を変えていくことになりますね。
濱田氏
はい、純粋に通信のパッケージ・トッピングだけの話じゃないと思ってます。アプリが、いわば我々の顔ですから。
実店舗もなく、コールセンターの音声対応もない。povoのアプリがお客さまとの接点として、唯一の生命線なんですよ。
そのアプリが、お客さまにものすごくフィットするように、そして自分たちも自信を持って「これ面白いよね」を胸を張れるようになっていないといけない。
だからアプリのUI・UX、搭載される機能、通信サービスのバンドリングパッケージなどなど、やりたいことはもう、数えくれないほどあります。
読者へのメッセージ
――最後に本誌読者に向けたメッセージをお願いします。
濱田氏
4年前に「povo2.0」が誕生しました。日本の通信業界へ、非常にセンセーショナルなサービスを持ち込めたと思っています。
おかげ様で、サービスとしては、非常に安定し、成長を続けています。でも、その成長を継続するだけとは考えていません。
povoはいわば基盤です。その基盤から、新たな領域へ探索していきたい。そのひとつがAIを活用したお客様向けのハイパー・パーソナライゼーション。そして、もうひとつがいろんな形で「povoが実はここに」というSDKを使っての、業種の垣根を超えたビジネスです。こういったものをお客様にご提供していきたいという風に思っています。
――ありがとうございました。













