インタビュー
「Human×Car×Home」を日本でも、日本市場でシャオミが描く拡大戦略とは
2025年9月27日 00:00
シャオミ・ジャパンは26日、2025年下期新製品発表会を開催した。「Xiaomi 15T」シリーズやタブレット、スマートウォッチ、スマート家電などが発表された。
さらに会場では体験イベント「Xiaomi EXPO 2025」を開催。同社のEV「Xiaomi SU7 Ultra」も日本で初めて展示されている。
本稿では、発表会後の囲み取材と個別取材の様子をお届けする。応対したのは、シャオミ・ジャパン副社長の鄭彦(てい・げん)氏と、プロダクトプランニング部本部長の安達晃彦氏。
囲み取材
――FeliCaを搭載した「Xiaomi 15T Pro」がグローバル発表と同時に日本で発表できた背景は。
安達氏
2025年スマートフォンを8商品ほどを出してきたが、どれもFeliCaが搭載されてません。日本のユーザーに大きなユースケースであるFeliCaをを届けたいと考えつつも、すべての製品に入れることは難しい部分がありました。
優先順位を考えているときにXiaomi Tシリーズでしっかりしていきたいということを開発側と早期から連携し、グローバルと同時期に発表させていただきました。
今回はオープンマーケットモデルしかないため、スピード感を持って搭載できたというふうに考えていただければと思います。
――今回はオープンマーケットモデルのみの展開だが、今後通信事業者で採用される可能性があると考えてもよいのか。
鄭氏
日本での売上は通信事業者による販売が9割以上を占めているため、シャオミとしては積極的に協力していくつもりです。通信事業者のラインナップの考え方もあるため、今後も一緒に議論していきます。
――オープンマーケットモデルの優先順位が上がり、通信事業者モデルの優先順位が下がったという戦略なのか。
安達氏
そのような戦略変更は全くありません。通信事業者とは継続的に議論を重ね、ご一緒させていただきます。
――価格を据え置いた背景を教えてほしい。
安達氏
Xiaomi Tシリーズは、最先端テクノロジーが入った上でコスパが高い商品という位置づけです。一つの目安を10万円と考えており、ユーザーがシャオミに期待している点に応えるため、価格を頑張って実現しました。
――通信事業者販売がない場合、ブランドを知らない層への周知を店舗以外も含めてどう行っていくか。
安達氏
日本のユーザーに広く届けるには通信事業者の販路が不可欠であり、引き続き取り組みます。
Xiaomi Storeが点から線、面へと拡大していくことや、車のような製品が出てくることで、従来のスマートフォンメーカーとは異なるブランドイメージや理解を得て、ユーザーを広げたいです。
鄭氏
通信事業者、MVNO、量販店、自社チャネル全てで展開するつもりであり、特定のチャネルにフォーカスすることはありません。各チャネルの特性に合わせて商品を選び、展開していきます。
また「Xiaomi」「REDMI」「POCO」と、ブランドごとの役割は異なるため、そこをユーザーに伝えていきます。
もうひとつ大きな特徴として、スマートフォンだけではなく、家電を含むスマートデバイスとのエコシステムがシャオミならではであり、差別化ポイントだと考えています。
――「Xiaomi Store」展開のゴールは。
鄭氏
まずは出店件数を増やし、2026年には東名阪に広げ、将来的には全国展開も視野に入れています。
――イオンモールとの協力は継続するのか。
鄭氏
イオンは重要なパートナーであり、協力は継続します。しかし、イオンモールでしかやらないということではないです。立地、イオンモールのポテンシャル、客層、経済条件などを総合的に判断して展開していきます。
――「Xiaomi EXPO 2025」を秋葉原で開催した狙いは。
鄭氏
発表と同時に発売し、同時に触っていただきたいという考えからです。秋葉原はテクノロジー好きな方が多く集まる場所であり、特に車を展示することで、そうした人たちにまず体験してほしいと思います。
――今後もこのようなイベントは続けていくのか。
鄭氏
シャオミの特徴としてユーザーとのコミュニケーションを大切にしているため、続けていきます。
安達氏
課題として、ファンだけでなく、ファミリー層など、幅広い層へアテンションを拡大したいと考えています。そういう意味では、発表会だけではなく、一般の方にもぜひ見ていただきたいという思いがあります。どんなご反応をいただけるか、すごく楽しみにしています。
――Xiaomi SU7を日本で発売する計画は。
鄭氏
日本の市場および、厳格な保安基準について勉強している状況です。計画を立てることもまだ時期尚早の段階です。
――今回「Xiaomi SU7 Ultra」を展示した経緯、背景は。
鄭氏
まず、「Human×Car×Home」という全体の世界観を将来的に日本でも実現したいという背景があります。それがどういうイメージなのかを日本のユーザーにお見せしたいと思いました。
安達氏
実際に物があるかないかで体感できるイメージは大きく違うこと、また「一目見てみたい」という要望が多かったため、公式に紹介する機会としてチームが準備しました。
――EVを日本に持ってくるのに時間がかかると見る具体的な理由を教えてほしい。
鄭氏
最も重要な点が、日本の安全基準が非常に厳しく、「Xiaomi SU7」は元々海外進出前提でデザインされていなかったため、日本の基準をクリアする必要がります。
もう一つは日本のEV普及率が2%程度と低く、チャージステーションも少ないため、この市場に対するノウハウをまだ持っておらず、勉強が必要であると考えています。
――現在の日本のEV市場をどのように見ているか。
鄭氏
まだ勉強中ですが、わかったことだと普及率の低さやチャージステーションの少なさに伴う使い勝手の悪さ、長距離移動への不安などです。これらは弊社が解決できる問題ではなく、業界全体が注視し解決していく必要がある課題だと思っています。
――将来的に日本のEV市場の成長性には期待しているか。
鄭氏
期待しています。中国では国の補助金などによりEVが増えたが、日本も政策面、環境、ユーザーの期待や要望などにより、今後大きく方向が変わるのではないかと考えています。
個別取材
――2025年上期の事業状況について、「Xiaomi 15」の発売やPOCOの本格展開といったチャレンジした部分についてどのように評価していますか。
安達氏
毎年チャレンジしていますが、2025年は特に力を入れてきました。まず、「Xiaomi 15 Ultra」は昨年の「Xiaomi 14 Ultra」の勢いをそのままにさらに持ち上げる形で展開され、ユーザーからの手応えは14 Ultraの時よりもさらに大きなものとなっています。
また、「Xiaomi Store」の展開も始まり、リアルにユーザーとやり取りできるようになった点が大きい要素です。
さらに、POCOの展開については、グローバルでのラインナップの豊富さ・多様性を、抜群のコストパフォーマンスという強力な武器として日本のモバイル市場に投げ込みました。
全体的には賑やかな上期と、実績を出すことができたと評価しています。
――逆にFeliCa非搭載や通信事業者モデルがなかった点などはどのように評価していますか。
安達氏
FeliCaは「しなかった」のではなく、「ないものを積極的に持ってきた」というアプローチが正しい認識です。
特にPOCOは、コストパフォーマンスとCPUにフォーカスし、適正な価格でスピーディに提供するというアプローチを日本での仕方にした結果、上期は通信事業者モデルやFeliCaがない商品構成となりました。
しかし、これは下期に今回の商品を投入することがわかっていたため、FeliCaの需要については「Xiaomi 15T Pro」で対応できると考えていました。
――売上などに影響は?
安達氏
FeliCaがあった方が売れるのは確かですが、これらの製品はグローバルメーカーとしてのラインナップの強みを活かしたアプローチの一環ですね。
我々はスマートフォンだけでなく、タブレット、ウェアラブル、IoT製品、雑貨類など総合力としてのブランド認知や面白さを提供できていると考えています。
――囲み取材でも出た質問ですが、「Xiaomi 15T Pro」は日本向けにカスタマイズされながらも、なぜこのスケジュールでの発売が可能になったのでしょうか?
安達氏
本社が今回、非常に頑張ってくれたことが大きいです。Xiaomi Tシリーズは「Xiaomi 11T Pro」から数えて今回で5世代目にあたり、買い換えるユーザーも多く、通信事業者にも採用され、それなりに数の出ている商品です。
Xiaomiの特徴を持ちつつ、ハイスペックとコストパフォーマンスのバランスが取れたちょうど良いラインであるため、この市場に絶対に投入したいという我々の意向に本社が動いてくれました。
また、今回の「Xiaomi 15T Pro」はオープンマーケットモデルのみなので、スピード感を高められたというところはあります。
鄭氏
通信事業者モデルがあると、事業者とも状況をあわせなければ行けなかったりします。
安達氏
(事業者による)評価とかね。
――今回「Xiaomi HyperOS 3」のアップデートも発表されましたが、日本向けの「Xiaomi 15T Pro」へのアップデートはグローバルモデルと同じくらいのタイミングで提供される見込みですか?
安達氏
早いと思いますよ。OSバージョンアップの回数もほとんど変わらないはずなので、あまりラグなく展開できる見込みです。サーバーの問題などから順々にとはなりますが。
結構UIが変わるので楽しみですよね。
――「Xiaomi 17」が中国で発表されましたが、「Xiaomi 15/15 Ultra」の売上などから、日本での展開の見通しはありますか?
安達氏
昨日中国で発表されたばかりのため、現時点では何も申し上げられません。
ただ、ネットの状況を見るだけでも、特に他社への意識の高さも含めて「かなり面白い」と盛り上がっているため、日本での盛り上がりやフィードバックを本社にきちんと伝えたいと考えています。
――今後、日本で展開していきたい製品やサービス、期待できるポイントについて教えてください。
鄭氏
世の中全体で物価が高くなってきているという状況を踏まえ、今年は「Xiaomi Store」を出すことを決めたときに、サービス面でも充実させなければならないと考えました。
取り組みとしては、分割払いサービスの提供を開始したほか、下取りや「Xiaomi Care」を導入しました。これはユーザーに安心してお使いいただくという目的と、商品の付加価値を高めることになります。
これらは「Xiaomi Store」を発表した今年の頭から決めていて、出そうと思ったサービスになるのですが、今後は新しいサービスを導入するよりも、現在提供しているサービスの質を高めていくことに注力します。
たとえば、分割払いサービスについては、ユーザーから限度額の申請が通らない場合があるという意見をいただいており、こうした既存サービスの質を高める必要があると考えています。
――今回発表された「Xiaomi Care」は端末購入時のみしか加入できませんが、今後は後から加入できるようになったりしますか。
鄭氏
そういったところもユーザーのニーズにあわせて、もうちょっと使いやすいような形に改善していこうかなと思っています。
――サポート体制が整ってきた中で、MIXシリーズ(折りたたみモデル)の日本展開の見通しはどうですか。
安達氏
(横折りタイプ「Xiaomi MIX Fold」の発表がない点について)今年は「Xiaomi 17」シリーズに力を入れたのかもしれませんが、シャオミは何がいつ、どういう技術で面白い商品が出てくるかわからない企業です。
我々スタッフとして、いちユーザーとして、MIXシリーズの登場には非常に期待しています。
日本展開については、まず中国以外でグローバルモデルが用意できるかどうかが重要です。グローバルモデルが用意できれば、それを日本に持ってくるかどうかを本社と相談しながら決めていきたいと考えています。
スマートフォン以外のIoT製品については、グローバルとSKU(在庫管理単位)が似てきており、ほぼ同時期に発売されるものが増えています。タブレットのラインアップもここ1年で非常に増えており、ウェアラブル製品もほぼ全て出ているため、スマートフォン以外の商品にも注目してほしいです。
――シャオミ・ジャパンの社長がXの投稿で交代していることが明かされましたが、ロ・シャオルー新社長のミッションや、本社から期待されていることは何でしょうか。
鄭氏
本社は今後「Human×Car×Home」というグローバル戦略を押し進めていくことを重視しています。
今年5月に大沼彰前社長が退任した後、その戦略に対して深い理解を持つ本社の人間がドライブできるようにしたいというミッションや期待のもとで、ロ新社長が任命されています。
安達氏
すごくいい人ですよ。
――「Xiaomi 33W Power Bank 20000mAh(Integrated Cable)」のリコールについて、中国では14.7万台が対象と報告されました。日本やグローバルにおけるリコール対象数や回収率など、開示できる情報はありますか?
鄭氏
現在出しているリコールモデルの対象数は多くありません。日本国内での対象台数は、経済産業省のホームページに掲載されています。
本社内での調査によると、対象となるロットは2024年8月から9月の間に生産されたものだけであるため、数は少ないです。
――バッテリーの安全性について、シャオミ・ジャパンとしての見解やアピールがあればお願いします。
安達氏
我々はグローバルブランドとして、中国のブランドだからといった色眼鏡とは関係なく、各国の安全基準をしっかりと検証した上で製品を発売しています。
さまざまな商品がありますが、安心してお使いいただき、ご購入いただければと思います。万が一そうした問題が発生した場合は、メーカーとして適切かつ徹底した対処方法で取り組んでまいります。
シャオミは母体としてしっかりとした企業であり、やるべきことをやっていますので、ご安心・ご信頼いただければと思います。
――ありがとうございました。



