石野純也の「スマホとお金」

新たな端末購入プログラムは再び“縛り”を生むか? 3社の仕組みを紐解く

 “残クレ”とも呼ばれることがある端末購入プログラムですが、2025年、先行して仕組みを改定したソフトバンクに続き、ドコモとKDDIもその中身を変更します。KDDIは「スマホトクするプログラム+」に名称を改定。ドコモは「いつでもカエドキプログラム」の名称はそのままに、3月5日から「プログラム利用料」なる手数料を新設します。

ドコモは、3月5日からいつでもカエドキプログラムにプログラム利用料を新設する

 一見すると負担額が上がってしまうように見えるドコモとKDDIの端末購入プログラムですが、実際には、割引もあるため、金銭的な影響は少ないかもしれません。一方で、よりひとつのキャリアにとどまり続ける動機が高くなってしまうこともあり、新たな“縛り”になる懸念もあります。ここでは、その仕組みを解説していきます。

KDDIは、2月26日から「スマホトクするプログラム+」を開始。こちらもドコモと同様、プログラム利用料が最大2万2000円かかる

利用料は買い替えで免除、新たな2年縛りにも

 ドコモは、既存の仕組みを残しつつ、いつでもカエドキプログラム(とプラス対象機種)にプログラム利用料を新設します。利用料の最大額は2万2000円。機種によって、この金額は変わってくるようです。この料金がかかるのは、いつでもカエドキプログラムの権利を行使したタイミング。端末を回収に出し、残価を免除する際にかかる料金になります。

 現状のいつでもカエドキプログラムにはこのような仕組みがなく、端末を回収に出すだけで、そのまま残価が免除されます。本体価格や残価の設定が変わっていなければ、単純に最大2万2000円の値上がりになります。一方で、この利用料を免除する割引も設けられました。

現行のいつでもカエドキプログラムは、単純に残価分が免除される仕組み。追加の料金はかからなかった

 それが「ドコモで買替えおトク割」です。これが適用されると、利用料が完全に免除されるため、現行のいつでもカエドキプログラムと変わらない形になります。適用条件は次のとおり。その名のとおり、ドコモで新たに端末を購入して、そこから31日以内にいつでもカエドキプログラムで旧端末を回収に出し、割引の適用を申し出ればOK。

ドコモで買替えおトク割が適用されると、プログラム利用料は免除され、今まで変わらない形になる

 単純化すると、ドコモで機種変更すれば、従来と変わらず、手数料なしでいつでもカエドキプログラムを利用できるというわけです。ドコモにとどまり続けて、機種変更をしていくのであれば、これまでと仕組みは変わらないと言えるでしょう。

 逆に、ドコモではなく、オープンマーケットで販売している端末を買ったあといつでもカエドキプログラムで旧端末を回収に出したり、MNPで他社に移ったりすると、利用料がかかる形になります。端末単体購入も条件になっているため、回線を使い続ける必要は必ずしもないため、以前のような“2年縛り”というわけではありませんが、実質的に、ドコモで端末を買い続ける必要が出てきます。

 回線から端末に形を変えた縛りになるおそれがある点は、購入時に念頭に置いておいた方がいいでしょう。特に、キャリアモデルとオープンマーケットモデルをその時々で使い分けている人は、手数料が発生するおそれがあります。iPhoneやPixelは、アップルやグーグルから直接購入するのも手軽なため、こうした買い方をしている人は注意が必要です。

機種変更時にメーカーから直接端末を購入すると、プログラム利用料は免除されないため、注意が必要だ。写真はApple Storeで販売するiPhone 17。オンラインではドコモ版を購入することはできない

KDDIもauに同じ仕組みを導入、先行するソフトバンクでの実態は?

 KDDIのスマホトクするプログラム+も、考え方は同じ。+が誰にとってのプラスなのかは定かではありませんが、ドコモと同様、端末を回収に出した際には、最大で2万2000円の手数料がかかります。こちらも、2万2000円は最大値で、実際の金額は端末ごとに異なってきます。auで機種変更すると手数料が免除される「au買替特典」があるのも、ドコモと同じです。

特典利用時にauで機種変更すると、利用料が免除される

 プログラム利用料を先んじて導入していたソフトバンクの場合、「iPhone 17 Pro」のような高額の端末だと2万2000円、「AQUOS sense10」のようなミッドレンジ端末だと1万1000円、「Pixel 9a」のように、低価格を売りにしている端末だと0円といった形で幅があります。

 本稿執筆時点ではドコモ、KDDIともまだプログラムを開始していないため、機種ごとの利用料がいくらになるのかは判明していませんが、収益構造にキャリアごとの大きな差はないため、おそらくソフトバンクと傾向は似てくるはず。高い機種は2万2000円に、そうでない場合には0円になるものもあると予想されます。

ソフトバンクの場合、特典利用料は端末のグレードによって差がある。ミッドレンジのAQUOS sense10は1万1000円

 プログラムの利用料がかからない端末があるため、先々まで縛られず、自由に機種変更したい人はこれを活用する手もあります。

 引き続きキャリアモデルを購入してもいいですし、オープンマーケットモデルを選択してもいいと言えるでしょう。機種ごとに設定されている金額が異なるのも、かつての2年縛りとは大きく異なるポイント。ユーザー側の選択で、縛りを回避できる道が残されていると言えます。

Pixel 9aはMNPだと特典利用料が0円。2年経過後に負担なく機種変更する可能性がある人は、このような端末を選ぶのが正解と言える

縛りだけでなく初回購入時の割引ブースト効果も、ガイドラインもクリア

 一括で支払うプログラムの利用料が設定されていることで、そのぶん、毎月の支払いを安く抑えられている機種も存在します。先行事例としてソフトバンクを見ると、「Pixel 10」や「Galaxy S25」などが、12カ月、毎月1円で提供されています。これが可能になっているのが、早期利用料と特典利用料を取っているため。

 そのままだと免除する残債が大きくなりすぎてしまい、端末購入補助のガイドラインで定めた最大4万4000円を超えてしまいますが、早期利用料や特典利用料があるため、これを回避できていると言えます。

ソフトバンクでは、画像のPixel 10のように、現行のハイエンドモデルも12カ月、毎月1円で提供されている

 たとえばソフトバンクのPixel 10の128GB版は、本体価格が14万9760円。これを月額1円に設定すると、免除する残債は14万9748円に。一方で、ソフトバンクは13カ月目のPixel 10の買取予想価格を9万8900円としているため、差額の約5万円が割引と見なされ、法令違反になってしまいます。通常だと毎月1円の価格設定はできないというわけです。

ソフトバンクが公表している買取等予想価格では、13カ月経過後のPixel 10(128GB)の買取予想価格が9万8900円になっている。これを超えた残債を免除すると、そのぶんが割引と見なされる(図はGeminiで作成)

 ただ、Pixel 10は機種変更の早期利用料と特典利用料がともに2万2000円。1年で回収に出すと、4万4000円と12カ月分の1円がかかり、合計金額は4万4012円になります。これなら、割引と見なされる金額は1万円を下回るため、法令違反にはなりません。代金を毎月取るか、後から取るかの違いでしかないと言えばその通りなのですが、ランニングコストを抑えられる仕組みは作りやすくなります。

 上記のPixel 10の場合、MNPだと早期利用料が0円になり、さらに特典利用料もドコモやKDDIと同様、ソフトバンクで機種変更すると無料になる「買替え応援割」があります。これを利用すると、上記で計算したように、5万円を超える割引を実施している体裁になっています。ここでのポイントは、最初から特典利用料がないのではなく、機種変更を条件にした割引であるということ。

ソフトバンクの新トクするサポート+にも、買い替えを条件に特典利用料を免除する「買替え応援割」がある

 この場合、次の端末を買ったことをトリガーにした利益提供と見なされます。つまり、ユーザーがPixel 10そのものに対して支払っているのは、2万2012円になるということ。この際に割引と見なされるのは2万8848円。法令で認められた範囲内に収まっている形になります。

特典利用料の免除は、Pixel 10に対しての割引ではなく、次の端末を購入したことを条件にしている。割引の先送りができるというわけだ(図はGeminiで作成)

 このように、プログラムの利用料を設定すると、割引の原資を先送りする形になり、初回の購入――MNPや新規契約のユーザーの端末割引に“ブースト”をかける効果が出てきます。ドコモやKDDIが同じような運用をするとは限りませんが、必ずしもユーザーに不利益だけがある変更ではないと言えるかもしれません。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya