インタビュー

シャオミが「Xiaomi 15 Ultra」を国内発売、グローバルの発表から1週間で日本でも発表できた理由

 シャオミ・ジャパンは13日、2025年上期の新製品発表会を開催した。スマートフォンにタブレット、スマートウォッチ、スマートバンド、ワイヤレスイヤホン、家電類が一挙に発表された。

 さらには、同社にとって国内初の常設ショップも発表されており、製品の充実とともに、ユーザーとの接点の強化という、幅広い取り組みが明らかにされた。

安達氏(左)と鄭氏(右)

 本稿では、発表会後の囲み取材、そして単独インタビューの様子をお届けする。応対したのは、シャオミ・ジャパン副社長の鄭彦(てい・げん)氏と、プロダクトプランニング部本部長の安達晃彦氏。

囲み取材

――これだけのラインアップを揃えた意気込みをあらためて教えて欲しい。

鄭氏
 これまでは、日本市場に対して、グローバルほど商品を導入できていませんでした。

 シャオミ全体の新しいグローバル戦略として「人」「車」「ホーム」を掲げています。日本でもその体験価値、スマートフォンと連携するスマートホームなどを提案していくためにも、商品をどんどん加速して投入していきたいと考えています。

3月2日のグローバル発表会で示されたスローガン

安達氏
 3月2日にスペイン・バルセロナで、グローバルでの発表会が開催されました。

 そこで発表されたラインアップのうち、電動キックボード以外はほぼ持ってこれたかなと思います。

 グローバルで展開してるものを、できるだけ日本に導入したいと思っていました。それと同時に、ストアのオープンのタイミングも重ねることができると。

 その意味でも、IoT製品の幅の広がりも、ご紹介したいと考えたんです。

――グローバルでは、16GB+512GBが1499ユーロ(約24万円)だった。日本でも20万円を超えるかと思っていたが、日本では約18万円となった。どうやって安くできたのか。

バルセロナの発表会で示された価格

鄭氏
 グローバルとなるべくスペックを揃えて、全体のボリュームでコストを抑えることがひとつ。物流・サプライチェーンを最適化したこともあります。

 もうひとつは、戦略としてアグレッシブな値付けを目指しました。

安達氏
 欧州での価格は据え置きでした。だとすれば、日本でも据え置き(19万9800円)となるところ、最後の2万円の差をシャオミ・ジャパンとして頑張ったということになります。

 もうひとつ、今回は、1TBというストレージのモデルも導入したかったと頑張りました。

――キャリアでの販売が発表されておらず、FeliCaのような日本での仕様への対応もない。その分、早く導入できると思うが、そのあたりの考え方は?

安達氏
 日本への導入を決めてFeliCaに対応するかどうか、という流れではなく、まずグローバルで発表され、ユーザーからの求める声も多い製品を、鮮度高く日本で発売するということがまず第一でした。

 ラインアップにないよりも、ご用意したほうがグローバルでの強さ、商品のユニークさっていうものをお伝えできるのかなと思います。今後も販路などは継続して検討していきます。

鄭氏
 キャリアさんと、量販店さんと自社販売とバランスをとっていきます。スマートフォンではやはりキャリアさんと量販店さんでの取扱いが多いです。一方で、IoT家電は非常に数が多く、自社のオンラインとストアで展開したいと考えました。

――今後の店舗数は?

鄭氏
 具体的な数字は言えませんけれども、首都圏を中心に展開し、今後は全国規模で展開していきたいです。

――ポップアップストアは都心だったが、郊外のショッピングモールからというのは?

鄭氏
 シャオミとイオンさんは、中国や東南アジアで、26のモールにおいてストアを出店しております。そういう縁があったことに加えて、スマートホーム製品は、ショッピングモールへお越しになるお客さまの層と親和性が高いと考えました。

――イオンのモールであれば、東京の場合、23区内での出店が難しい用に思えるが。

鄭氏
 必ずしもイオンさんだけに出店するというわけではないです。

――グローバルモデルとしては、バージョン(SKU)は分かれているのか。

安達氏
 基本的にシャオミのスマートフォンは、中国版と、中国国外版に分かれています。ハイエンドになればなるほど、国外版は同じSKUです。

 一方で、廉価な機種は、部材の最適化などのために、いくつかエリアごとに分かれることが多いです。

 昨年発売した「Redmi 14C」という製品は、対応周波数で、日本と近いのはラテンアメリカ版でした。グローバルで展開する製品のうち、どれを日本で技適を通すか、と。基本的にそこは本社でどうするか決める、あるいは日本で導入するものをグローバルから選定するという流れです。

――Xiaomi 15も発売されることになって、攻勢をかける印象が強い。本社側にも日本での状況が評価されているのか。

安達氏
 先日はPOCOシリーズを発表し、「ガンガン行こうぜ」というモードにあります。

 打率10割ではなく、トライアンドエラーというか、(どれが売れるか)見極めながら進めています。今はラインアップを拡充するタイミングです。

――Xiaomi 14Tもあるなかで、Xiaomi 15へのニーズは?

安達氏
 まずは求める声があったこと。大きさや値段もありました。

 これまでは「あんまり出ないし、やめておこうか」となるところを、今回は積極的にまず出してみて反応を見たいです。

鄭氏
 Xiaomi 15 Ultraは、シャオミファンやカメラ愛好家に利用していただけると思います。一方で、Xiaomi 15は日常的に使ってもらえると思いますので、新しいユーザー層を拡げたいと考えています。

――Xiaomi 15 Ultraのバッテリー容量が中国版とグローバル版で異なるようだ。中国版は6000mAh、グローバル版は5410mAhと。

安達氏
 基本設計は同じです。ただ、国ごとにレギュレーションや狙いが異なるところがあります。

 基本デザインは一緒なんですけど、グローバル版はSKUが1つで、いわば最大公約数のような基準のスペックになります。

 コスト面からグレードを下げているのではなく、最適化するためにスペックが異なるということになります。本体に入る容積は同じです。決して、中国国外を軽んじているわけではないです。

個別インタビュー

――今日の発表会で、「シャオミが完全体になった」といったような印象を受けました。これまで「あれは売らないのか」「店は出さないのか」と問われ続けてきたことへの回答が出揃ったと言いますか。

安達氏
 おー、(ドラゴンボールの)セルみたいな。

鄭氏
 ちゃんとメッセージが伝わりましたか(と笑顔)。

――囲み取材でも、去年が好調だったからか? と質問もあがりましたが、実際どうだったんでしょう。

鄭氏
 絶対数で言いますと、たとえばIoT製品はまだ導入から間もなく、胸を張って販売数を言える状況ではないです。でも、手応えを感じていたんですよね。

 もうひとつが、グローバルで「人」「車」「ホーム」という戦略を打ち出していることがあります。お客さまとのコミュニケーションを強化すると。

 ストアも展開することになり、スマートフォンだけではなく、ライフスタイルのソリューションを提案していく、構築していくためにもスマート家電をどんどん導入しないといけないというミッションがあります。

安達氏
 「完全体」って良い言葉をいただきました。海外のシャオミストアを知っている方からすると、日本での展開はやっぱりギャップを感じておられて、「早くストアを」というご要望は何年もいただいていたんです。

 そうしたなかでのきっかけは、やはり去年の「Xiaomi 14 Ultra」です。スマートフォンとしてすごくご好評をいただきました。昨夏からライフスタイル商品も人気で、「これはいける」というところで……第2章というか、新たな幕がひとつ、開きはじめたのかなという感じはしています。

――それにしても、3月2日にグローバルで発表された「Xiaomi 15 Ultra」がこんな早く日本で発売になると思いませんでした。ニーズがあるのはわかりますが、実際に「やるぞ」と決断することは異なりますよね。

安達氏
 ずっと「同時に」という話はあったんですけど、これまでは我々の準備も万全じゃなくて。

 で、「Xiaomi 14 Ultra」のときに、2カ月半ほど遅れたわけですが、並行輸入で入手された方々が、かなりの数、いらしたようなんですよね。

 その状況を見て、それだけニーズがあるなら同時に近いかたちにしたいと、当時から思っていました。2024年5月ごろから、高い評価をいただけていると手応えもビシバシ感じていて、「次はやっぱり同時だよね」と。これはもう“ウィッシュ”(願うという意味の英単語、~したいと求める場合など)ですよね。

 それを現実に落とし込むのは結構大変で、なんとか1週間ちょっとの遅れで発表にこぎつけました。

 もちろん、ただ発売するだけならもっと短縮できたかもしれません。でも、やっぱり今回のようにきちんと発表会を開催して、商品の価値をしっかりと体験していただけるようにしたかった。

 とはいえ、やっぱりグローバルの発表会と重なるわけですから、サンプル品の調達など、ちょっと細かくはお伝えできないんですけど、内部的なプロセスはもうカリカリに調整して、なんとか実現させました。

――フォトグラフィーキットは、レジェンドエディション以外のカラーもあるのでしょうか。

安達氏
 中国版にはあります。ただ、グローバルではレジェンドエディションのブラック・レッドだけです。今のところ、日本でレジェンドエディション以外を出す計画はないのです。

――なるほど。フォトグラフィーキット単体販売もありますが、Xiaomi 15 Ultraを4月15日までに購入して22日までに手続きすると無料でプレゼントと。

安達氏
 十分な在庫をご用意させていただいてると思っておりますが、お客さまの反応が想像を超えてしまうと、もしかしたらお待たせしてしまうかもしれません。ただ、権利は絶対に残りますので。

――期間限定とはいえ、条件を満たす人全員が対象ということですよね。たとえば先着2万人といった形にしなかったのは?

安達氏
 社内ではたくさん議論しましたが、確実に手にしたい方が多いだろうから、とまず期間で区切る方法にしました。争奪戦のような状況は避けたいなと考えましたね。

――なるほど。さて、Xiaomi 15もいよいよ、となりますが、販売数としてはUltraより売れそうでしょうか。

鄭氏
 試行錯誤というか、テストマーケティングと言いますか、そういった点も含め、もう少しユーザー層を広げたいと考えているところですから。

安達氏
 最近、個人的に思っているのは、Ultraのような製品は、他社メーカーのスマートフォンと比べて買う方は少ないんじゃないかと。

――指名買いみたいな。

安達氏
 そうです、そうです。iPhoneと比べてというよりも、「こんなスマホが出てきた!」ともう最初から、手持ちのスマホの2台目として買う方が結構多かったんじゃないかと思っています。

 一方で、「Xiaomi 15」はいわば“1台目のスマホ”です。いろいろと比べられて買うかどうか、という意思決定プロセスになるんじゃないかと思います。そのあたりはUltraと異なるのではないかなと。

――Xiaomi HyperAIについても教えて下さい。日本語で、基本全て使えるということでいいでしょうか。

安達氏
 はい、そうです。が、正直に言うと、僕自身はまだ、あんまり触れてないんですよ。とはいえ、録音アプリで日本語の書き起こしなど、ちゃんと対応しています。

――話は変わって、2月の「POCO X7 Pro」発表会で鄭さんが副社長へ就任した、と発表会で登壇されて、今回の発表会で怒涛の製品群と常設ストア開設です。これは偶然なんですか?

鄭氏
 あ、はい、それはどちらかというと偶然かなと思います。私がシャオミ・ジャパンへジョインしたタイミングでは、店舗への検討中でした。私自身、日本へ来て20年、日本と海外のメーカーで通信機器の開発・販売に携わってきました。

 そうしたなかで、シャオミ・ジャパンにおける私自身の強みを活かして、本社とのコミュニケーションを通じてグローバルの事例を研究し、本社側のリソースとサポートを得て、日本の取り組みを加速したというところでしょうか。

――イオンモールでの出店については、イオン側からのラブコールといったお話も発表会でのプレゼンテーションでありましたが、独占的な契約ではないんですね。

鄭氏
 はい、シャオミとして以前から日本国外のイオンモールで店舗を展開していて、それがご縁になって。

――協業とのことですが、イオンモールだけに出店ということはないんですね。

鄭氏
 はい、そういう取り決めはないです。あくまでイオンさんと先に取り組んでいたという。イオンさん側からすれば、シャオミの可能性をイメージできる状況にあったわけです。我々にとって、スマート家電とのターゲット層との親和性が高いと考えたというお話です。

――では、ほかのショッピングモールや路面店のよううな店舗も今後の選択肢にある。

鄭氏
 はい、そうです。ポップアップストアを出していた渋谷パルコへお越しになる方と、イオンへ来場される方はやっぱりお客さまの層が異なります。今回の商品ラインアップと、立地などの条件を総合的に考えて考えました。

安達氏
 やっぱりこういうものって、不動産なので、ご縁というかタイミングみたいなものがあります。我々にとってちょうどいい広さの場所が、求めるような場所にちょうど空いているのか、という。

 そういう意味で、我々の意思だけじゃないところもあり、今後も、物件との出会い、ロケーションのタイミングといったものは、計算通りとはなかなかいかないのかなと思います。

――店内のレイアウトや演出といったものは、どうなるのでしょうか。

鄭氏
 基本的に外観とコンセプトはグローバルで統一します。

――それがどういうものかは、オープン後にご覧くださいという感じですね。さて、最後の質問です。今回の発表と直接関わりはないのですが、3月2日のグローバル発表会で、「Xiaomi Modular Optical System」が紹介されました。日本でも触れられる機会がありそうでしょうか?

鄭氏
 「Xiaomi Modular Optical System」自体はプロトタイプで、コンセプトの段階です。商品化はまだできてないです。

安達氏
 バルセロナには行けなかったんですが、結構、完成度高かったそうですよね。ぶっちゃけ言うと、今回お見せできないか、本社側にリクエストまではしました(笑)。でも、数がないということで、実現できませんでした。

――ああいうチャレンジをしている、という点も、せっかく常設店がオープンするということで、日本でも触れられる機会が来るといいなと……。

安達氏
 まったくもって何も決まっていないんですが、個人的には、シャオミストアを訪れて、ワークショップみたいなもの、体験会みたいなものをできると面白いかもなあとは思いますよね。

――期待したいです。ありがとうございました。