インタビュー
5万円で買える新スマホ「POCO X7 Pro」、キーパーソンに聞く提供の狙い
2025年2月13日 00:00
12日、シャオミ・ジャパン(小米技術日本)はAndroidスマートフォンの新機種「POCO X7 Pro」を発表、同日に発売した。
シャオミのブランドのひとつでありながら、シャオミとは独立したかたちで、グローバルで製品を提供する「POCO」において、「POCO X7 Pro」はミドルハイとも呼ばれる、フラッグシップに次ぐモデルに当たる。
はたして、どういった考えで日本でも提供されることになったのか。シャオミ・ジャパン副社長の鄭彦(てい・げん)氏と、シニア・マーケティングマネージャーの片山将氏に聞いた。
POCOが提供する価値とは
――シャオミとしては、Xiaomiブランド、Redmiブランド、そして今回のPOCOブランドで日本向けにスマートフォンを提供しています。価格とスペックだけ見れば、重複する機種もありそうです。
鄭氏
「POCO」は、独立したブランドとして展開しています。確かに同じ価格帯になる製品はあるかもしれませんが、位置づけが異なるんです。
Redmiシリーズは、エントリー~ミッドレンジをカバーし、より多くの方へ受け入れられることを目指しています。
日本では、最近、ハイエンドのスマートフォンがどんどん高価格帯になってきています。「そこまでは使いこなせない。もっと安いスマホを使いたい」という方に向けてRedmiシリーズを提供しています。
一方、POCOは、とにかくコストを抑え、それでいて高い性能を突き詰めることを特徴としています。結果としてITリテラシーが高く、性能を重視するユーザーに支持していただいていると思っています。
――あえてひとつ挙げるなら、今回の「POCO X7 Pro」のスマートフォンで最も重視しているスペックは何でしょうか
鄭氏
やはりチップセットの処理能力です。性能面を最も重視しています。
片山氏
これまで提供したモデルから、POCOと言えばゲーミングスマホというイメージを持たれている方もかなり多いですから、そういった方々に応えられるゲーム時の快適さは重視しています。グローバルでの発表から、あまり時間を空けずにそのまま出してほしいという声もあります。
――POCO X7 Proはおサイフケータイ非対応ですが、「グローバルでの発表から時間を置かず、そのまま出す」という考えから、ということですか。
片山氏
その通りです。対応するためには、(開発に時間がかかるなど)どうしても販売時期がグローバルより遅れますし、価格への影響もあります。そういった点を求められる方には、Xiaomiブランド、Redmiブランドでお応えできるかと。
もちろん「未来永劫、POCOでは対応しません」といったことはないのですが、現時点ではそういう方向ですね。
「2025年から本格展開」
――発表会では「2025年から本格展開する」という方針も示されました。2022年に国内初号機の「POCO F4 GT」、2024年に2号機の「POCO F6 Pro」、そして今回3号機となれば順当な流れと言えるかもしれませんが、なぜ今年から本格展開なのでしょうか。
鄭氏
ご指摘いただいたように、まさに「順当」だからです。
過去2モデルのお客さまからフィードバックもあり、ハイエンドでゲーミング目的だけではなく、ミッドレンジの機種を求めるお声もいただいて、幅広いニーズがあることはわかっていました。そこで今年は本格的に展開しようと。
ただし、グローバルで発表された全モデルをそのまま導入するわけではありません。市場のニーズに合わせて柔軟に対応していきます。
――プレゼンテーションでは、POCO X7 Proだけではなく、ほかのモデルも提供したいという意向が示されましたね。グローバルで見ると、POCOにはフラッグシップのFシリーズ、もっと割安なCシリーズなどがある。
一方、今回、「X7 Pro」がグローバルで発表された際には無印版と言える「X7」というモデルも発表されていましたが、国内では「X7 Pro」が発売されます。日本のユーザーのニーズに合わせるというのは、今回、X7とX7 Proといった選択肢があるなかで「X7 Pro」が選ばれた、ということが示しているわけですね。
片山氏
お客さまのニーズのなかには、もちろん安さを追求する声はあります。
ただ、その声もよくよく拝見すると、「めちゃくちゃ性能の良いハイエンドを使いたいけど予算が……」という方が結構多いんです。
2024年には「POCO F6 Pro」を発売しましたが、そのときにも「Proか無印か」で言えば、「Proがいい」という声が圧倒的に多い。単に価格を追い求めるのではなく、限られた予算のなかで、最大限の性能のスマートフォンが欲しいと考える方がおそらく多いのでは、と捉えています。
鄭氏
製品としては、ひとつのシリーズが1年に一度、バージョンアップしています。そのグローバルでのタイミングにあわせて、日本でも製品をリリースしたいです。
――ちなみに、「POCO」の日本での本格展開については、シャオミ・ジャパン側から本国へリクエストというか、リードしたのでしょうか?
鄭氏
いや、そこは「お互い」と言うべきですね。今後の日本市場への取り組みに関してコミュニケーションをしていくなかで、「こういう市場がある」「こういう商品を投入できれば事業を拡大できる」といった話もあって、日本側も本国側も納得して決めたことになります。
キャリア販売目指さず、オンライン専売に
――オンライン専業とのことですが、いわゆる大手携帯電話会社、キャリアで取り扱われることは目指さないのでしょうか。
鄭氏
はい、基本的にPOCOはオンライン専売です。もし、キャリアさんがオンラインでのもお取り扱いといったことであれば検討はできるんですけども……まだキャリアさん側と、そういったコミュニケーションは取っていないというのが事実です。
――なるほど、今回、MVNOではイオンモバイル、HISモバイルで、そして量販店ではビックカメラやヨドバシカメラ、ヤマダ電機での取り扱いも発表されていますが、いずれもオンラインのみですか。
鄭氏
そうです、オンラインだけなんです。
――イオンモバイルは、イオンの店舗内にカウンターや売り場を設けているところがありますよね。
鄭氏
置きません。量販店さんでもオンラインだけです。
――オンラインでの販売を貫き通すのは、「POCOは必要なものを載せて、不必要なものは省く」といったコンセプトを掲げていることと、やはり関わりがありますか?
鄭氏
はい、そうです。要は「リソースを集中させ、不要なものは削り、コストを抑える」ことがPOCOというブランドの最大の特徴です。
「性能は高い、それでいて非常に求めやすい価格帯にする」……つまり同じ価格帯の他社製品と比べると、ダントツに商品として優れているという特徴を出したいんです。
商品開発でもフォーカスしていますし、効率的な価格設定を目指してオンラインに限定しているわけです。
――グローバルで1月に発表された「POCO X7 Pro」は、8GB+256GBモデルが279ドル(本稿執筆時点で約4.3万円)とのことでしたが、日本での価格は4万9980円です。消費税を考えると、価格差があまりないです。
鄭氏
(円安が続くという)為替の影響があるなかで、実は、かなり頑張った点です。できるだけ弊社で影響を吸収して、グローバルとほぼ変わらない価格で提供することに注力しました。
――「ITリテラシーが高く、性能を重視するユーザー」に支持されているという話もありましたが、そういった層って、どうしても市場規模と言いますか、人数に上限があると思うのですが……。
鄭氏
より正しく言えば"ITリテラシーが高い方々に向けて商品を作っている”というよりも、コストを削減してパフォーマンスを追求したところ、ITリテラシーの高い方々に"選んでいただけるようになった”のです。
片山氏
当然、日常的に使う上でも優れた機種です。
――そういう意味では、今回、イエローがアイキャッチなカラーバリエーションですが、グリーンとブラックは落ち着いたトーンで、「普段使い」にマッチすると感じる人もいそうです。
片山氏
まさにその通りで、グリーンに関しては、「POCO Xシリーズ」としても初めての色味なんですよ。ブラックはスタンダードなカラーで、そこにもう一色のグリーンは、好みの幅を広げてくれるカラーです。
――最後の質問です。今後、日本で本格展開する「POCO」ブランドのスマートフォンですが、日本のユーザーのフィードバックを本国の開発陣へ届ける仕組みはどうなりますか。
鄭氏
そこはもう、私の役割のひとつです。日本のニーズをしっかり発信していきます。
――ありがとうございました。