法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)
識者が選ぶ2025年ベストスマートフォンは? 今年のキーワードは「薄型化」
2025年12月19日 00:00
今年のトレンドは「薄型化」
関口
年末ということで、今年の総括と言いますか、印象に残った端末についてお話しいただきたいと思います。
石川氏
近年はスマートフォンがなかなか進化しないと言われてきましたが、今年は全体的に面白い年だったと思います。薄型化がトレンドで、「Galaxy Z Fold7」はインパクトがあったし、サムスンのメーカーとしての強さを感じました。
石野氏
突然変異的に変わった端末が多かったですね。「iPhone Air」もそうですけど、急に薄くなったり、軽くなったりといった端末が多くありました。
法林氏
個人的には、Galaxy Z Fold7は良かったし、「Nothing Phone(3)」も気に入っているけど、それ以外の端末は面白くなかったかな。「このタイミングではこれ」という感じで、読める端末が多くて、その最たる例がシャオミ。数を出せばいいと思っている印象で、あまり戦略を感じないのが気になった。端末としては、やっぱりGalaxy Z Fold7がお気に入りだし、イチオシです。
石野氏
Galaxy Z Fold7を使い始めた時には、普通のスマートフォンくらい薄くなって使いやすいと思っていましたけど、iPhone Airのように、普通のスマートフォンも薄型化したことで、結局Galaxy Z Fold7ですら厚く感じるようになってきました。
法林氏
iPhone Airは賛否あると思うけど、僕にはあまり馴染まなかったな。
石野氏
そうなんですね。僕はiPhone Airを触る時間が長くなっています。気軽に使えていいですよ。カメラが1つなので、撮影に困るという人もいますが、個人的には超広角と望遠を使うシーンがそんなにありません。
法林氏
iPhone Airは、ミニマムカメラだとは思うけど、ダメなレベルではない。
石野氏
普通に使えますよね。しかも処理性能が向上したおかげか、前の世代から画質が上がっているように感じます。画角はあまり選べませんが、光学品質の2倍ズームも使えますし、割り切った端末が出てきたのは面白いです。新しいユーザー層を開拓しようとしているのはいいですよね。
石川氏
あんまり売れていないという話は耳にしますが、なぜ売れていないのか、いまいちピンと来ないんですよね。
石野氏
そもそも、売れていないという基準が違う気がします。他社の基準で言えば大ヒットなんじゃないですかね。アップルの期待値が高過ぎただけだと思います。
石川氏
あと、ユーザーが保守的になっている気もする。カメラは2個、3個欲しいといった価値観があるから、メーカーも保守的にならざるを得なくなっている。
関口
どうせ機種変更をするなら、今までよりもいいものという心理はあると思います。そうなると、薄さという特徴よりもカメラなどの方が、わかりやすい指標になってしまいますよね。
法林氏
過去のもののことを考えず、フラットに選択をするのであれば、今年のiPhoneシリーズなら、無印でいいと思う。推し活に使いたいから(望遠が強い)iPhone 17 Proという選択肢はあるけど、値段を考えると、無印でいいと思ってしまう。
石野氏
なんなら、iPhone 16eでもいいくらいです。
法林氏
iPhone 16eはまた違う気もするけどね? でも、あまり必要性を考えずにProモデルを選んでいる人がいる気もするし、iPhone Airに振り切るかというと、それも違うのかもしれない。だったら、去年まであったPlusがあってもよかったと思う。
石川氏
その点、アップルは自分の首を絞めてしまっている部分もある。これまで、そこまで使いこなしていない人に対しても、Proを買った方がいいという空気を作ってきたので、iPhone Airのような端末が見向きもされなくなっている。
石野氏
あと、単純に価格の問題かなとも思いますね。iPhone AirはiPhone 17 Proに近いですから。
法林氏
一括価格ならまだしも、端末購入プログラムを適用すると、分割払いの月額や実質負担額はさらに近づくからね。そうなると、結局、Proを選んでしまう。
石野氏
そうですね。似たような価格で、盛られているものと削ぎ落としたものが並んでいたら、それは盛られているものを選んでしまいますよ。でも一部のスティーブ派はiPhone Airを選ぶと思う(笑)。
法林氏
端末購入プログラムで買えるとはいえ、2年間で20万円弱を自己負担して、端末を返すと考えると、やっぱりちょっと重いよね。
石野氏
そう考えると、やっぱりiPhone 17はバランスがいいですよね。
法林氏
他社に比べると、ちょっと高い気もするけど、それでも無印で事足りるからね。
石野氏
特に今年は無印のディスプレイ性能も上がりましたからね。120Hzリフレッシュレート対応は大きいですし、カメラのクオリティも高い。ストレージも256GBスタートになって、ベースが底上げされています。
法林氏
まあ、それを言い出すと、Galaxy Z Fold7もすごく高いけどね。ただ、今年は去年以上に画面を開いて使う機会が増えたと思う。
石野氏
僕は逆で、薄くなったことで開かないで使う機会が増えました。前のGalaxy Z Fold6は、アウトディスプレイが縦に長くて、アプリのレイアウトが崩れることがあったので、面倒くさくて開いて使うことがありましたが、今年は普通のスマートフォンとほぼ同比率なので、デザインが崩れることがなくてそのまま使う機会が増えています。
石川氏
もう開かなくていいじゃん。
石野氏
そうなんですよ。もう開かなくていいかなと思い始めたところで、iPhone Airが出て、こっちを触る時間が長くなっています。
法林氏
これで、来年のGalaxy S26 Ultraがすごく薄くなるかも。Sペンをどうするのかはわからないけど。
石野氏
それでいうと、Galaxy Z Fold7を開かなくなった要因の1つが、Sペンに非対応になったことですね。静電容量式のペンも色々買いましたが、やっぱり書き心地が違うんですよ。
佐藤
iPhoneとGalaxyの話ばかりになってきましたが、他のメーカーはどうですか?
法林氏
ちょっと名前を出したシャオミだけど、今年最初に出した「Xiaomi 15」って必要だったのかな。「Xiaomi 15 Ultra」は象徴的なモデルなので、あっていいと思うけどね。
関口
発売のタイミングだと、Ultraのインパクトが大きいので、普通のスマートフォンを求める人向けの無印と棲み分けられませんか。
石野氏
でも、普通のスマートフォンを求める人は、SIMフリーでしか売られていない、おサイフケータイもない端末を選ばないんじゃないですかね。Ultraまで突出していれば話は別だと思いますが、Xiaomi 15はコンパクトでハイエンドという特徴があるとはいえ、すごくノーマルなので、普通の人にはなかなかリーチできていないと思います。
法林氏
そうだね。Xiaomi 15が実はコンパクトだという部分は、あまり世の中にリーチできていないと思う。
石野氏
世の中に伝わらないし、そもそもほとんどお店にも置いていないですからね。
石川氏
伝える努力もしていないしね。
石野氏
そうですね。MM総研のデータでは、オープン市場向け端末出荷台数が上期で143.8万台のなか、4割近くがアップル。2位にシャオミがつけていますが、割合は12.9%です。つまり、上期で10万台強が売れているんですけど、それをこの機種数で割っていると考えると微妙ですよね。
同じくデータを見ていると、逆にサムスンが躍進していることもわかります。
石川氏
でも、売れているのはミッドレンジの端末じゃないかな。
石野氏
「Galaxy S25」も、例年より好調とは聞いています。数を稼いでいるのは、もちろん安い端末だと思いますけどね。
石川氏
年間で出荷されるスマートフォンは3000万台程度と言われているので、オープン市場は1割程度しかないことになりますね。
法林氏
実数はもう少し多いと思うけどね。ただ、相変わらずキャリアが強いね。
石野氏
結局、キャリアの方が買いやすいですからね。
イッセイ ミヤケ×アップルのブランド力を見せつけるiPhone Pocket
法林氏
そういえば、アップルで言えば、iPhone Pocketも出たね。
石川氏
他のライターさんと話した総括としては、ブランドの力って凄まじいなと。同じものだとしてもブランドがある、なしは大きいですよね。
法林氏
似たようなものを編んで売る人が出てきそうじゃない?
石川氏
確かに。
石野氏
でも、ブランドのマフラーとかもこれくらいの値段はしますから、編み物と言ってもこういう値段になるのは必然なんじゃないですかね。
法林氏
まあ、アップルがこういうものを出すと、他のメーカーも似たようなものを出してくるので類似製品は今後増えると思う。これが本当に持ちやすいのかは疑問だけど。
石野氏
あと、こういう製品って色が綺麗だから、オレンジとか黄色を買いたくなるんですけど、結局ファッションと合わせにくくて後悔するんですよ。
法林氏
そのわりにiPhone 17 Proは、みんなオレンジを買っているよね。
石川氏
自分もオレンジですね。
佐藤
僕もです。
法林氏
みんな同じだから、いっそのこと色違いに買い替えようかな(笑)。
復活のFCNTと調子の上がりきらないXperia
関口
今年のスマートフォンに話を戻して、日本メーカーについてはいかがですか?
石川氏
シャープは安泰ですよね。今年はproが出ませんでしたが、「AQUOS sense10」と「AQUOS wish5」は安定感があって盤石。一方で、FCNTが復活してきたのも注目です。レノボグループに入って、グループ力を活かしているのが伝わってくるので、これから競争力を増していくと思います。
石野氏
ただ、「arrows Alpha」をハイエンドと言い切ったのは、ちょっとどうかと思いました。どう見てもハイエンドではない。
法林氏
ハイスペックモデルではあるけど、ハイエンドではないよね。
石野氏
御社の中でのハイエンドですよねという話になってしまう。
石川氏
そもそもそんなに端末を出しているメーカーじゃないからね。
法林氏
ハイスペックモデルの定義がはっきりしなくなってきたよね。昔は、Snapdragonの最上位チップセットを搭載しているのがハイエンドという感じだったけど、そうではなくなってきた。カメラも1インチじゃないといけないと思っていたけど、最近は1インチじゃなくても綺麗な写真が撮れる。ズームすると、Pixelの超解像ズームProみたいな機能が目立つけど、一般の使い方であれば、さほど差はない。
そう考えると、AQUOS R9、AQUOS R10あたりの準フラッグシップモデルが売れているのには、納得できるのかな。
石野氏
10万円前後くらいの端末ですね。arrows Alphaもそうですし。もう少しお金を積むと、Galaxy S25に手が届くので、この辺りがサムスンの強みかなとも思います。
石川氏
あと、ソフトバンクがサムスンの端末を取り扱い始めた。ソフトバンクとしては、買取しやすい端末を集めているとのことで、割引を載せて割賦で売るには、下取り金額がある程度高い端末の方がいいので、グローバルメーカーのサムスンを選んだとのこと。そうなると、ソフトバンクであっても、中国メーカーの端末は取り扱いにくくなってくる。今年、シャオミがキャリアで採用されていないことからも、傾向は顕著です(収録時点)。
石野氏
日本メーカーで言えば、Xperiaは、「Xperia 1 VII」が販売再開できてよかったですし、「Xperia 10 VII」も出せてよかった。Xperia 10 VIIは、ミッドレンジの中では高いなと思いましたが、意外と好評っぽいですよね。記事もよく読まれます(笑)。
法林氏
Xperiaは、何をやっても読まれがちだけどね。
石川氏
ソニーはそこに甘えていると思う。Xperiaという名前で注目されることに甘んじている。
法林氏
実力という意味では、足りない部分もある。
石川氏
AQUOSの貪欲さを見習って欲しいです。
法林氏
Xperiaは、過去の資産で生き残っているような状態だからね。
石野氏
その資産を作った人たちは、今シャオミにいたり、Nothingにいたりします。
法林氏
最近のXperiaには、「そういうことをするのか」っていう驚きがない。Nothingを触っていて気に入ったのはそこで、触らないとわからない要素は多分にある。
石川氏
一度ヒットすると保守的になりがち。Xperia 1になったタイミングで驚きはありましたが、そこから全然変わっていない。今年もこれかと思ってしまいます。
石野氏
Xperia 1が出た頃には、まだXperia 5、Xperia 8とバリエーションがありました。Xperia 1 II、Xperia 1 IIIあたりまでは、αシリーズの操作体験を入れたりとか、チャレンジングなことをしていましたが、最近はあまり大きなアップデートがなくて面白くない。
あと、シャオミとかが1インチセンサーを載せて、カメラキットを用意している中で、カメラをアピールしていて、イメージセンサーも作っているソニーが、ベーシックなスマートフォンしか作っていないのが気になります。
法林氏
今年のiPhoneのフロントカメラもセンサーはソニーだよね。どうしてXperiaでやらないのかなと思ってしまう。
石野氏
そうですね。せっかくのソニーなので、もっとアルファっぽいXperiaとかがあってもいいですよ。
石川氏
それでいうと、「Xperia Pro-I」があったじゃん。あれが転けたので、もうそっちには振り切れないんじゃない。
石野氏
今だからこそとは思いますけどね。ソニーは手を出すのは早いけど、諦めるのも早いんですよね。スマートウォッチとかも、めちゃくちゃ早かったですからね。
法林氏
イヤホンもヒヤラブルとか言っていたよね。
石川氏
ロボットも作っていましたから。
石野氏
そうですね。最近はこういうチャレンジもあまりないですよね。あと、今年頑張ったメーカーという意味では、Nothingですかね。楽天モバイルとパートナーシップを組んだし、バリエーションも揃えた。Nothing Phone (3)にFeliCaを搭載したのも、偉かったですよね。
法林氏
僕もそう思う。
iPhone Airを出すタイミングは正しかったのか
関口
今年No.1端末みたいなのを選んでみますか? 先に盛り上がったのは、やはりGalaxy Z Fold7でしたが、いかがでしょうか。
石川氏
やっぱりインパクトは大きかったです。その後に出た「Google Pixel 10 Pro Fold」に、野暮ったさを感じてしまいました。
石野氏
そうですよね。実機を触って、テンションが下がってしまいました。
石川氏
そりゃ、石野さんが砂をかけるよね。
石野氏
かけますよ。もちろん。
石川氏
石野さん、切羽詰まっているのかなと思いましたよ(笑)。
石野氏
防塵対応が売りなのに、みんな砂をかけていないのがおかしいですよ。IP68ですからね。実際壊れていませんし、グーグルの試験に偽りはなかったということです。
関口
佐藤さん的に気になった端末はありますか?
佐藤
今年を振り返りながら色々と考えましたが、今年はGalaxy Z Fold7に勝るものはないかなと思ってしまいます。
法林氏
そこは違う端末をちょうだいよ(笑)。
佐藤
めちゃくちゃ主観で、今年一番好きだった端末は何かと聞かれたら、nubiaの「REDMAGIC 10 Air」なんですけど、これが特殊だという自覚はあるので……。
石野氏
じゃあ、僕もiPhone Airと言っておこうかな。最近、リークなのか願望なのかわかりませんが、iPhone Airの後継機をやめた、再開したみたいな話題が多すぎてちょっとイラっとします。いい端末なんだから次も出せばいいのに。
法林氏
日本法人的に痛いのは、iPhone Airが日本専用のSKU(Stock Keeping Unit/在庫管理の最小単位)なんだよね。iPhone miniと同じ感じになってしまっている。
石野氏
そうなんですよね。ただ、iPhone Airが売れると思っているのは、アップルのマーケティング戦略的にどうかなとも思います。いいものだけど台数はそんなに出ないという製品って、世の中にはたくさんあるので、アップルもそういう考えで出しているのかなと思ったら、いいものは売れるという考えだったみたいです。
この値段で、カメラが1つで、バッテリーが持つかわからないような端末は、台数を追うと厳しいですよね。
佐藤
それこそ、無印モデルのディスプレイ性能を上げるのであれば、今年までPlusを継続してもよかったのかなとも思いますよね。
石川氏
iPhone Airを出す時期を間違えている気がするよね。
法林氏
Plusを無くしたのは失敗だったと思うけど、どうなんだろう。日本のユーザーに、大きい画面の良さがあまり伝わっていない気はする。
石野氏
フリック入力だと、大きい画面はデメリットにもなりますから。
石川氏
そもそも、4モデルは多いんじゃないですか。ただ、今後iPhoneを売るタイミングは変わってくるかもしれない。おそらくiPhone 17eが出るし、無印モデルの販売時期が変わるという噂もあります。
法林氏
iPhone Airこそ、タイミングをずらして春に出したい意図があるから、命名ルールも変えているんじゃないかな。
石野氏
まあ、本当にiPhone 17eがあるのかによっても変わりますよね。iPhone 16eは、それなりに台数も出ているみたいですし。それでいうと、iPhone 16eでシングルカメラでコンパクトな、安いiPhoneというイメージを植え付けた後に、iPhone Airを出してしまったのも、あまり良くなかったかなと思います。
法林氏
iPhone Airは単独で出してもよかったよね。

























