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第401回:分離プラン とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「分離プラン」とは、携帯電話端末の価格と通話・通信分の料金を分けた、携帯電話の料金プランのことです。NTTドコモの料金プランであればバリュープラン、KDDIのauの料金プランであればシンプルコースが、分離プランにあたります。

 従来型の料金プランと比較すると、基本使用料が安くなる一方、端末の購入価格は高額になっています。

 従来プランでは、携帯電話事業者(キャリア)から端末販売を手掛ける販売代理店に対して、「販売奨励金(インセンティブ)」というものがあります。キャリアは奨励金を利用者が支払っている使用料から回収するというビジネスモデルを採用していました。そのため、本来は高額な携帯電話端末の販売価格は非常に安くなり、携帯電話の使用料は奨励金分、高くなっていました。

 分離プランは、通信料金と端末価格を分けることで、ユーザーから見て支払っている料金が何に対する負担であるかを明確にすることを目指し、総務省が各社に要請することで導入されました。

 ユーザーにとっては、分離プランを利用すると購入時の端末価格は高くなりますが、端末代金を支払い終えれば、従来プランよりも支払額は安くなります。分離プランを導入するキャリア各社では、端末代金を割賦で支払えるようにしていますが、ほとんどの場合、毎月の支払い額は端末価格+基本使用料となり、24回払いの場合の多くで従来プランと同額程度になります。

 キャリアにとっては、販売奨励金を抑えられる反面、携帯電話の買い換えサイクルが長くなってしまい、買い控えのような現象を招き、結果として新機種の販売数が減少してしまい、いわば諸刃の刃のような料金プランであると言える施策となっています。


「不公平性」「不透明性」是正をめざすモバイルビジネス研究会の報告

 「分離プラン」はもともと、総務省で開催されていた「モバイルビジネス研究会」という会議での報告書をもとに、各社へ提案されたものです。「モバイルビジネス研究会」とは、総務省が「移動体通信市場における現行ビジネスモデルの見直し」をテーマに発足したもので、いわゆる国内のケータイ市場において、競争促進などの整備を目的に設立されました。

 モバイルビジネス研究会が2007年9月に公開した報告書を受け、総務省では「モバイルビジネス活性化プラン」を発表し、さまざまな提言・政策の方向性を示しました。その1つが、販売奨励金を利用する従来型プランに関するもので、分離プランを導入することが定まりました。

 これは、キャリアが新規契約・機種変更時に販売奨励金を投入し、毎月の通信料金から回収する従来型の料金プランであれば、買替間隔の短いユーザーは得する一方、買換間隔の長いユーザーでは、販売奨励金回収後も負担が上乗せされた通信料金を支払う「不公平性」があるとされたことや、そもそも通信料金と端末価格の内訳がユーザーに明確に示されていない「不透明性」があることを問題にしました。

 導入は各社の自主判断とされたものの、同時期に導入されなければユーザーの混乱を招く恐れもあるため、2008年度に導入するとの見通しが示されましたが、NTTドコモやKDDIでは、2007年中に分離プランを導入しました。そして約1年経過した現在、携帯電話端末の販売数が前年比2割減と報じられるなどの現象が起きています。モバイルビジネス研究会は、総務省が開催した会合であり、買い控え現象が起きている現在の状況は、いわば一種の官製不況であるとも言われています。

 分離プランでは、あわせて携帯電話本体を割賦で購入できるケースがほとんどです。キャリアによっては、割賦購入を選択すると割引が適用されるサービスや、実質的に割賦でありながら「割引」と表現し、期間拘束型の契約プランにしている場合もあります。キャリアによって異なる表現、案内となることで他社と差別化できる一方、端末価格と利用料の透明化を目指した分離プランの主旨は、市場全体で達成できたとは言えない状況にあります。



URL
  モバイルビジネス研究会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile/

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(大和 哲)
2008/12/09 13:15

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