■ CDMA2000 1xEV-DOの後継
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CTIA Wireless 2005のクアルコムブースで展示されていたEV-DO Rev.Aの試作端末
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「EV-DO Rev.A」は、第3世代の移動体通信方式である「CDMA2000」に属する高速なデータ通信規格のひとつです。正式には、「CDMA2000 1xEV-DO Revision A(IS-856-A)」といいます。
Rev.Aの前には、「CDMA2000 1xEV-DO」という規格があり、Rev.Aはその後継規格ということになります。日本では、auがEV-DO Rev.Aを利用して、2006年中に導入する考えを明らかにしています。
CDMA2000 1xEV-DOは、米クアルコムが開発した、高速データ通信専用の移動体通信規格です。EV-DOの“DO”は、「Data Only」でデータのみをやり取りして、音声のやり取りはしないという意味で、CDMA2000網を利用して高速にデータのやりとりを行ないます。同方式のデータ通信サービスは、日本ではauが2003年10月から「CDMA 1X WIN」というサービスブランドで提供を開始しています。
EV-DO Rev.Aでは、EV-DOで使われていた設備、特に地上系のネットワーク設備の多くが流用できます。そのため、これまでEV-DOでサービスを行なっていた事業者にとっては低いコストで始めることができるWAN(Wide Area Network)サービスであり、他事業者との競争のために強力な武器となる規格である、と言うこともできます。なお、従来規格のEV-DOは、Rev.Aと区別するためにRev.0と呼ばれることもあります。
■ EV-DO Rev.Aの特徴は「速度の向上」「マルチキャスト」「QoS」
EV-DO Rev.AはEV-DOに比べて、さまざまな点が改良されています。その中でも特に特徴的な改良点は「速度の向上」「マルチキャスト対応」「QoS対応」が挙げられるでしょう。
●速度の向上
EV-DO Rev.Aは、EV-DOと比較して、端末から基地局への上り速度、基地局から端末への下り速度とも増速されています。
EV-DOでは、下り最大2.4Mbps、上り最大144kbpsでしたが、Ev-DO Rev.Aでは下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsになりました。また、Rev.Aでは適応変調符号化(通信環境によって通信方法を変えて、その状況でできるだけ速く確実な通信を行なう技術)が高度化され、より細かく状況に対応できるようになり、同じ状況でもEV-DOよりも品質の高いサービスを提供することができるようになっています。
●マルチキャストに対応
EV-DO Rev.Aでは、「マルチキャスト」が提供可能になりました。マルチキャストは、1対多の通信、またはブロードキャスト(Broadcast)とも呼ばれるデータ配信方法です。
あるデータを電波に載せて発信すると、それを電波の届く複数の端末が、同時に自分のデータとして受け取ることができることを指しています。ブロードキャストという単語が「放送」を意味することからもわかるように、従来と同じく1対1での通信(ユニキャスト)だけでなく、チャンネルを合わせた複数の端末が“放送しているデータ”を受け取れるということになります。
このような技術を使って行なうサービスのことをBCMCS(Broadcast/Multicast Services)と呼ぶこともあります。
マルチキャストのメリットは、大きなデータを複数の人に送信するために、帯域をそれほど利用しないことにあります。多くの人にデータを配信するためには、普通の通信では、「データ帯域×人数分の帯域」が必要になります。しかし、マルチキャストであればデータ帯域×1で済むわけです。
ただし、無線通信の場合、複数の受信者がいると「基地局から近くて電波状況のいい人」や「基地局から遠くて電波状況の悪い人」がいることになります。環境が異なる、その両者がデータを受信できるようにするには、遠い人でも受信できるようにしなければなりません、そのため、マルチキャストを利用した場合は、全体の通信速度が遅くなってしまう(「律速となる」などと言われる場合があります)という弱点も持ち合わせています。
●QoS対応
「QoS」とは、サービスの品質を意味する「Quality of Service」の略で、通信の場合にはある一定の品質、つまり通信速度やデータの品質を保証することを意味します。
これまでのEV-DOでは、サービスの種類にも利用者の種類にもよらず、通信で取り交わされるデータがベストエフォートとされており、速度や品質は保証されていませんでした。EV-DO Rev.Aでは、ネットワーク上で特定のユーザーに帯域を優先的に割り当てることで、それぞれの用途に対して一定の通信品質、速度を確保する(Qosを保証する)ようになりました。
これによって、これまでのEV-DOでは成り立ちにくかったサービスも行なうことができるようになりました。たとえば、EV-DO Rev.Aでは、「VoIPによる音声通話」にも利用できるようになっています。
ストリーミングサービスや通話サービスは、リアルタイムでの反応が必要なサービスです。速度の低下や、遅延などが起こると、他のサービスに比べて大変目立ちやすいのですが、回線が混み合ってきたとしても、これらのサービスでは優先的にデータ通信を行なうようにすることで、QoSを確保し、十分な品質のサービスの提供を可能にしたわけです。
■ URL
IS-856 Revision A and EV-DO Enhancements(米クアルコム、英文)
http://www.qualcomm.com/technology/1xev-do/enhancements.html
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(大和 哲)
2005/07/07 12:08
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