レビュー

圧巻のカメラ性能! 「Google Pixel 6 Pro」は望遠も夜景もスゴい!

コンピュテーショナルフォトグラフィーの雄「Pixel 6 Pro」

 グーグルからついに「Pixel 6」シリーズが登場する。

 今回取り上げる端末「Pixel 6 Pro」は独自のチップ「Tensor」を搭載し、AIを駆使して操作体験の快適さとカメラ性能にグッと磨きをかけたフラッグシップ端末になっている。同時発売となる「Pixel 6」よりディスプレイおよびカメラ性能が高いので、写真を楽しみたいのであればこの「Pixel 6 Pro」一択だろう。「Pixel 5」シリーズからデザインも一新され、要注目のAndroidスマートフォン「Pixel 6 Pro」だと言えよう。

 基本的な性能などは本紙別記事に譲るとして、本稿では注目のカメラ機能についてのインプレッションをお届けしたい。

「Pixel 6 Pro」と「Pixel 6」の外観上の差はわずかだ。カメラ性能を重視するのであれば「Pixel 6 Pro」がオススメ
「カメラ」アプリのスクリーンショット。評価が高かったハイライト部とシャドウ部を別々に調整できる「デュアル露出コントロール」に加えて、画面左に色温度調整のバーが加わった。これは歓迎したい。画面下部には、カメラの焦点距離を切り替える4つのボタンが見える。スライドによる無段階ズーミングで最大20倍まで使用可能

高い画素数を集約して高画質化

カメラ部分のアップ。上が「Pixel 6 Pro」。レンズ開口部が多いのがわかるだろう

 特徴的なデザインのカメラバー部に収められている「Pixel 6 Pro」のカメラはこのような構成になっている。

  • メインとなる広角カメラ
    50メガピクセル Octa PD Quad Bayer
    ピクセル幅 1.2 μm
    絞り値:ƒ/1.85
    画角:82°
    イメージセンサーサイズ 1/1.31 インチ
  • 広大な画角を誇るウルトラワイドカメラ
    12メガピクセル
    ピクセル幅 1.25 μm
    絞り値:ƒ/2.2
    画角:114°11
    レンズ補正
  • 圧巻の倍率が魅力の望遠カメラ
    48メガピクセル
    ピクセル幅:0.8 μm
    絞り値:ƒ/3.5
    画角:23.5°
    イメージ:センサーのサイズ 1/2 インチ
    光学ズーム4倍
    超解像ズームと望遠カメラによる最大20倍ズーム

 目を引く望遠カメラは、ペリスコープ型の光学ズームになっており、グーグルお得意の超解像ズームと合わせて、シャープかつクリーンな望遠写真を撮影可能になっている。

 「Pixel 6 Pro」のアウトカメラから出力される画像は12.5メガピクセルで、4080×3072ピクセルというサイズだ。

 高画素センサーの利点を活かし、4つのピクセルを1つとして使用し、より多くの光量を束ねて高画質を実現した設計になっている。いわゆるピクセルビニングというやつである。明るい日中から低光量時まで豊かな表現力を目指す思想となっている。

新機能、消しゴムマジックが面白い!

 集合写真の背景に「見知らぬ人」が写ったり、記念撮影に「通行人」が写り込んでしまった経験はないだろうか?

 「Pixel 6」シリーズにはそんな「ウッカリ写真」をリカバリーする「消しゴムマジック」機能が搭載されている。失敗写真を「Googleフォト」で開くだけでセミオートに処理可能だ。

港をバックに記念写真を撮った。しかし画面左に見知らぬ人が……(モデル:佐藤ようか)
撮影した写真を「Google フォト」で開くと、画面下部に「背景の人物を消去」という文字(左)、その文字をタップすると「候補を検出しています」と表示された(中央)、「候補が見つかりました」という文字とともに「すべてを消去」という表示が。それをタップすると……(右)
パッと鮮やかに背景の人物を消してくれた。消去するものを円で囲むかブラシでなぞって選択することもできる

ポートレートモード

 被写体と背景との境界判別に定評があった「ポートレートモード」ももちろん健在だ。

 以前の「Pixel」シリーズ同様に被写体との距離に制限がなく、テーブルフォトでも正統派ポートレートでもしっかりとボケ味を堪能できる。「Google フォト」で写真を開き、ボケ量はもちろんピントの位置も自在に変更できるところも変わりがない。光源を追加して強さと位置をコントロールできる「ポートレートライト」も当然使うことができる。

ポートレートモード(クリック/タップで実寸大画像を表示)
モデルの風になびく髪の毛の処理もうまく表現されておりイイ感じだ
デフォルトでは自然でクセのないボケ感を得られる。「Google フォト」を使用してよりボケ効果を出すことも可能だ
夜に強い「Pixel 6 Pro」はこのようなシーンで「ポートレートモード」を楽しめる。背景の点光源がいい雰囲気になった
「ポートレートモード」の被写体は人物に限らない。料理や小物、このような対象物でもOKだ。旅先でも活躍する機能である

リアルトーン

 今回の「Pixel 6」シリーズは人間の肌、いわゆるスキントーンを重視した再現性になっている。

 性別や人種による微妙な肌の特性をリアルに表現するべく、数多くのテストショットを経て実装された機能だという。ヒトに強いスマートフォンカメラに仕上げられていると言える。

リアルトーン(クリック/タップで実寸大画像を表示)
酒場で友人の写真家を撮影。地明かりを加味した肌の色再現性とディテール、ややくたびれた髪と髭のリアル感がいい(モデル:奥田倉之)
モデルをアップで捉えた。女性を撮影した場合、艶がありややソフトな感じに仕上がっている印象だ。それでいて髪のシャープ感はバッチリである
「Face Unblur」機能もいい。「Tensor」のパワーでブレてしまった顔だけをクッキリとさせるもの。駆け寄ってきたモデルの顔をシャープに写し止めることができた

モーションモード

 このモードも、グーグル独自のチップ「Tensor」のパワーによって実現した面白い機能だ。

 撮影時に動きのあるものを、まるで長時間露光したかのような動感を付けられるもの。これがなかなか面白い。アイディア次第でユニークなショットを手にできそうである。

モーションモード
壁を背景にモデルに足を蹴り上げてもらった。するとこのような動感があるカットになった。撮影時にメニューの「モーション」から「アクションパン」を選んでシャッターを切るだけでいい
今度はモデルに大股に歩いてもらった。上記と同様に処理すると疾走感のある写真に仕上がった
「長時間露光」を試すと、夜の横浜を犬連れで歩く女性をブレさせてわからなくできた。波の動きもスローシャッターを切ったように表現された
みなとみらいの新名物、ロープウェイもご覧のとおり。サイバー感あふれる長時間露光風の写真に仕上がった。使用カメラの制限もなく遊べる機能になっている

夜景モード

 「Pixel」シリーズといえば「夜景モード(Night Sight、ナイトサイト)」と呼ばれる機能で暗所撮影に強いというイメージがある。スナップショットはもちろん、星景写真さえも撮影できる素晴らしいものだった。

 果たして「Pixel 6 Pro」の威力はどのくらいだろうか?登場したばかりのアップル「iPhone 13 Pro」とグーグル「Pixel 5」とで夜の多摩川河川敷を撮影して比較してみた。

夜景モードを比較(クリック/タップで実寸大画像を表示)
アップル「iPhone 13 Pro」は最新モデルだが「Pixel 6 Pro」とこのシチュエーションで比較するとかなり分が悪い。まず発色がよくなく暗部の再現性が低い。手前部分はほとんどつぶれており何が写っているか判別しにくい
「Pixel 6 Pro」はとても優秀である。さすがは「夜景番長」!見た目に近い色再現性で、手前部分の草むらもしっかりと捉えられている。建物の解像感も素晴らしい
「Pixel 5」はどうだろうか。やや暗部を持ち上げる傾向が強く、見た目よりだいぶ明るく写っている。また色も補正が強く感じられる。「明るく写せる」という意味ではいい端末だ

望遠カメラ

 「Pixel 6 Pro」の大きな魅力の一つ「望遠カメラ」。

 光学4倍のズームに加えて、グーグルお得意の超解像ズームとで最大20倍までの長い焦点距離がウリだ。

 「Pixel 4」シリーズも望遠に強かったがそれの再来というイメージだ。

 スマートフォンで長い焦点距離はホールドが難しく手ブレの心配もあると思っていたが、使ってみるとこれが安定感が高くなかなか面白い。日ごろデジタルカメラで望遠レンズを愉しんでいる人ならば、「Pixel 6 Pro」で気軽にテレフォトの世界を楽しめるはずだ。

望遠カメラ作例(クリック/タップで実寸大画像を表示)
秩父でSLに乗った。その車体が転車台に乗ろうとしている様子を望遠カメラで。撮影する人で賑わう場所でも、4倍の望遠カメラなら苦もなく被写体をたぐり寄せることができた。SLのディテール感もなかなかだ
中秋の名月をデジタル超解像ズーム併用の最大20倍で撮った。ノーマルなモード("カメラ”モード)のまま手持ちでイージーに撮影したが、月の表面が判別できる程度に写すことができた
横浜のホテルを、望遠カメラと夜景モード併用で撮影した。それぞれ4倍、10倍、20倍となっている。10倍と20倍は超解像ズーム併用だ。ホテルの部屋まで判別できそうな写りに驚いた
望遠カメラ作例(クリック/タップで実寸大画像を表示)
再び横浜の新名物、ロープウェイの建物を望遠カメラで撮った。観覧車とともに、室内で記念写真に興じている人が鮮明に捉えられた。手持ちでパッと写したのだがこの描写はスゴいとしか言いようがない
神社で見つけた木彫りの竜。望遠カメラはその木製の質感と、キラリと光る瞳をリアル感高く写し撮ってくれた。実にいい描写ではないか

作例

 ここからは自由に撮った作例をご覧いただくのだが、「Pixel 6 Pro」の写りがあまりにも素晴らしく、撮影の感触もいい感じでついたくさん写真を撮り過ぎてしまった。その数はセレクトしたら100枚オーバー! 泣く泣く12枚に絞って掲載することにして、あとは自サイトにでも載せようと思っている。

作例(クリック/タップで実寸大画像を表示)
足尾の堰を流れ落ちる水。飛沫の清冽感が伝わってくる
ススキの向こうに男体山。葉っぱの解像感と空の青さが自然な描写でいい
足尾銅山の建物と橋を。錆びた様子からリベットの立体感、壁の経年変化の様子までしっかりと写しとれた
ビーフシチューをレストランで。ミックス光だったが忠実な色再現とシズル感だ。「Pixel 6 Pro」はメシマズ写真は撮れそうもない
誰もいない特急列車の客車内。ウルトラワイドカメラの広大さはこういうシーンで役に立つ。シャドウ部にノイズが浮くがイヤな感じではない
多摩川土手から丹沢の向こうに沈む夕日を望遠カメラで。太陽の左の山は大室山か。光源を真っ正面に捉えると、半円状のゴーストが上下に現れたが、オフセットすればクリーンな絵を手にすることが可能だ
「Pixel 6 Pro」の望遠カメラは本当にスゴい。撮影がグンと楽しくなった。iPhoneを使っている人にもオススメしたいほど。絵も派手すぎずちょうどよく素晴らしい
夜間モードも相変わらず素晴らしいので、冬の夜長はブラブラ撮影が捗りそうだ。誇張が少ない絵作りがいい
望遠カメラ+夜間モードの威力は絶大である。デジカメと三脚での夜間撮影がなんだったのかと思ってしまうほど。「Tensor」の威力はスゴい。誰でもイージーにこのような撮影ができるのだから
北関東で夜の街を徘徊した。ショーウィンドーのドレスを撮ったが、生地の質感が見た目同様に撮れた。ホワイトバランスも的確である
SLに乗って移動中、「Pixel 6 Pro」のインカメラで自撮りした。インカメラは11.1MPでピクセル幅が1.22μm、絞り値ƒ/2.2、パンフォーカス仕様だ。画角は94°。ポートレートモードなのでボケ感がなかなかいい。手前のビールはちなみに1本目である
新宿のカメラ量販店前で。ライバルのスマホ広告を入れて歩行者を撮ったが、レスポンスも良好でスナップ撮影に向いていると感じた。起動も高速でストレスを感じることが少ない

まとめ

 本記事執筆にあたりグーグル「Pixel 6 Pro」で撮影を楽しんでいたが、このスマホ、本当に写真撮影をエンジョイできる端末に仕上がっていると感じた。豊かな描写、使える望遠カメラ、美しい夜景モードと実に使いでがある。

 独自のチップ「Tensor」の威力で動作もキビキビしており頼もしい。長時間もつバッテリー、そして5G(ミリ波も)対応とスキがない。価格もなかなか戦略的だ。カメラ機能を重視するフォトグラファーにぜひ手にしてもらいたい機種だと言える。

 ただ1点気になったのはディスプレイだ。

 「Pixel 6 Pro」はサイド部が湾曲したエッジディスプレイを採用しているのだが、これが撮影時のフレーミングによくない。ギリギリの構図を狙っていると微妙に余計なものが入ってしまうことがあった。

 このカット右側のように、ちょっとだけ不要なものが入ってしまうのだ。端が湾曲していて視認しづらいからである。もちろん左右(もしくは上下)をよ〜く確認すればいいのだが、それが不要な「Pixel 6」の様なフラットなディスプレイだったら完璧だったのにと思う。

 できればソフトウェアアップデートで、湾曲部分にかからないように「カメラ」のファインダー部分を調整してくれたらいいのにな、とここでリクエストしたい。

 それ以外は本当に素晴らしいカメラスマートフォンに仕上がっている。望遠カメラは本当に面白いので多くのフォトグラファーに使って欲しいと思っている。

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