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独自チップ「Tensor」を新搭載した「Pixel 6」がもたらすAI体験

 グーグルが発表したAndroidスマートフォン「Pixel 6」シリーズには、同社が独自に開発したチップセット「Tensor」が搭載されている。

 「Tensor」は「(グーグルの歴史の中で)最大のモバイルハードウェアイノベーション」とアピールされ、さまざまな新体験をユーザーにもたらすものとなっている。

Tensorの概要

 「Tensor」のCPUは、Cortex-X1(2.8GHz)×2、Cortex-A76(2.25GHz)×2、Cortex-A55(1.8GHz)×4のオクタコア構成となっている。

 GPUには、20コアの「Mali-G78」が採用された。また、プロセスノードはサムスンの「5LPE」。

 「Tensor」という名前は、機械学習の計算の構成要素である「テンソル」にちなんだもの。機械学習向けのオープンソースプラットフォーム「TensorFlow」や、機械学習に特化したチップセット「Tensor Processing Units(TPU)」など、グーグルによるほかのテクノロジーにもその名前が見られる。

 グーグルでは機械学習を「(グーグルの)DNAであり、すべての活動の原動力」と位置づけ、研究を進めてきた。そうした研究結果はGoogle 翻訳やGoogle フォト、検索サービスなどといったかたちで世に出てきたが、同社はスマートフォン領域が未開拓であると感じていたという。

 そこで、「モバイルチップがグーグルの研究に追いつくのを待つのではなく、自分たちで作る」として、「Tensor」の開発に着手。グーグルの研究者チームが集まり、同社の機械学習向けに最適化されたチップセットを完成させた。

 「Tensor」によって「Pixel 6」のCPUパフォーマンスは「Pixel 5」に比べて80%向上し、GPUパフォーマンスは370%向上した。

 ただしグーグルは「ベンチマークよりも”新たな体験“が重要」と強調し、「Tensor」で得られる体験をアピールする。

パワーアップした音声認識や自然言語理解

 「Pixel 6」シリーズでは、これまでよりもパワーアップした音声認識を利用することができ、「Tensor」によってバッテリー消費も半分程度で済むようになった。

 進化した音声認識の恩恵を受けられるのが音声入力で、タッチタイピングの3倍のスピードで文字を入力可能。文章中で発音が似ている部分の修正が提案されるほか、文章の削除や送信なども音声で指示でき、スムーズな入力が実現する。

 これらの処理はすべてオンデバイスで行われ、サーバーに接続するよりもスピード・信頼性が向上している。

 また、自然言語理解に関する機能として、たとえば企業へ電話した際の自動音声応答システムの内容が文字として表示され、「1を押すと○○部門につながります」という選択肢も迷わず選べるようになる。

スマートな翻訳機能

 「Tensor」の高度な処理能力によって、翻訳機能も大きくパワーアップした。翻訳の品質は18%向上し、先述の音声入力と同じくバッテリー消費も半分程度に抑えられる。

 たとえばInstagramやTwitter、LINEなどのメッセージアプリではリアルタイム翻訳が利用でき、母国語で送ったメッセージが瞬時に外国語に変換されて相手に届く。

 また、音声翻訳の精度やスピードも向上した。今回の発表では、”片づけコンサルタント“として知られる近藤麻理恵氏が登場し、リアルタイム翻訳を用いたインタビューのデモが行われた。同氏は「ここまで完璧に訳せるとは」と驚きを見せる。

近藤麻理恵氏

カメラ

 「Tensor」は、グーグルが誇る画像処理(コンピュテーショナルフォトグラフィー)のクオリティ向上にも寄与している。

 特に動画撮影においては、「HDRnet」と呼ばれる新たなアルゴリズムにより、写真と同じようなレベルの画像処理を動画にも適用できるようになった。

 「Face Unblur」と呼ばれる人物撮影の機能も、進化した機械学習によって実現したものだ。

 同機能では、超広角カメラで撮影したシャープな顔と、メインカメラで撮影したノイズの少ない顔を融合させ、両方の良さを取り込んだ画像を生成する。

 また、新機能の「モーションモード(Motion Mode)」では、機械学習で被写体を識別し、動いている被写体に対して効果を加えたり、背景にぼかしを加えたりする。

 これにより、パンニングや長時間露光などのテクニックが求められる特殊な撮影効果を手軽に適用でき、プロの撮ったような写真ができあがる。

セキュリティ

 「Tensor」にはセキュリティチップとして「Titan M2」が導入されており、セキュリティの向上も実現した。機密性の高いタスクや制御は、アプリケーションのプロセッサから切り離された環境で実行される。

 「Google Pixel史上で最も高度なセキュリティを実現した」とされるPixel 6シリーズでは、最低でも5年間にわたるセキュリティアップデートを受けられる。

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