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ドコモによる子会社化で何が変わった? NTT Com丸岡社長との一問一答
2022年10月18日 19:27
リアル会場とオンライン会場でハイブリッド開催されている法人向けイベント「docomo business Forum'22」。期間は10月21日までで、法人事業ブランド「ドコモビジネス」のサービスやソリューションについて紹介される。
本誌では、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の代表取締役社長 社長執行役員 丸岡亨氏による基調講演のようすを、別記事でお伝えした。本稿では、講演後に実施された丸岡氏と報道陣の質疑応答について、一問一答というかたちでお伝えする。なお、一問一答は質問の順番ではなく、ジャンルごとにまとめた。
ドコモの子会社化によって変わったこと
――昨年、NTTドコモによるNTT Comの子会社化が発表された。そのあとの変化として、どのような実感があるか。
丸岡氏
(NTT Comは)1月にドコモグループに入りました。7月にはドコモの持っていた法人向けのサービスに加え、5000人~6000人の社員がNTT Comに移りました。
その後の変化はいろいろなところで感じます。私は今、副社長と一緒に各地域の支社を回っています。NTT Comは支社を持っていなかったので、組織的にもかなり大きくなりましたし、サービス内容にも、(ドコモの)モバイル系が入ってきました。
「Go Together」と表現していますが、ドコモと一緒にやっていくことについて、ドコモとNTT Comの社員が物理的にひとつのオフィスに集まるのは非常に大きいと感じます。同じ場所にいることで、チームとしてのマインドが高まっていると感じます。
――手応えとしては「想定以上」なのか「想定通り」なのか、あるいは想定を下回るのか。
丸岡氏
想定と比べてどうかということであれば、想定以上かもしれません。
ドコモとNTT Comの社員から見ると、(統合は)大きな変化だと思うんですよね。同じグループであるものの、カルチャーはまったく違いますし、ビジネスそのものも異なります。
でも、いろいろな声を直接もらうなかで雰囲気などを聞くと、(統合は)かなり進んできていると思います。
スタートする前はさまざまなことを考えると思うんですけど、その状況に入ったら「もうやるよね」っていうことなのかもしれません。ほかの会社から来たからどうのっていうよりも、目の前で一緒に仕事をしますからね。
――ドコモとの統合について、課題感などはあるのか。
丸岡氏
課題感と言えるかわかりませんが、ドコモと一緒になったことで、ドコモの進めようとする戦略とのすり合わせも必要になります。
NTT Comは、コンシューマービジネスについてあまり経験がありません。ですから、戦略から販売まで含めてドコモと考えていきたいと思います。
――統合に伴う数字的な変化も知りたい。
丸岡氏
業績との関わりについて、来月に中間決算が出るので、そこまでは具体的な数字は申し上げられません。
――新ブランドの「ドコモビジネス」は現状、どのような感じで進んでいるのか。
丸岡氏
「ドコモビジネス」は大手から中小企業までカバーすると言っていますが、これまでドコモと一緒に進めてきたのは、どちらかというと大企業向けのアプローチ。そういったこともあって、どちらかといえば大企業向けの進捗のほうが大きいのが現状です。
中小企業向けには、まずはスタートダッシュというか、お客さまのところに行って「新しくドコモビジネスになりました」ということを話す活動をしています。ですから、実際に受注をいただけるよう頑張っていきたいと思います。
――NTT Comの商材は、もともと大企業向けのものが多かったのでは。すでに中小企業向けの商材もあるとは思うが、中小企業に対して今後どのようなものが有効だと思うか。
丸岡氏
対応はいろいろ進めたいと思っています。NTT Comの商材で言うと、私たちが「ミニソリューション」と呼んでいるラインアップが割と好調です。「スマートPBX」として、クラウド型のPBX(構内交換機)にモバイル系の端末などを加えて提供していますが、お客さまから高評価をいただいていると感じています。
モバイルについては、モバイルの使い方を高度化できる側面もあるのではと思います。エントリーモデルとして、端末に必要最小限のセキュリティ機能を持たせたうえで、営業管理や勤怠管理などをモバイルで完結できるような、シンプルでスマートなソリューションを提供したいと考えています。
お客さまからのご指摘をいろいろいただきつつ、次のサービスを開発したいと思います。
――DX関連の売上高で2023年度に1000億円という計画を出しているが、ドコモとの統合を受けて見直す計画はあるのか。
丸岡氏
これまで私たちが目標としてきたのはBtoBtoXの売上で、NTT(持株)が推進してきたものです。今後について、「ドコモビジネス」としてはさまざまなソリューションのあり方が出てきているので、BtoBtoXだけを目指すわけではありません。
BtoBtoXだけで言えば、ドコモと一緒になったこともあって、1.5倍くらいになりました。2023年度に1000億円なので、1500億円くらいには伸ばしたいと思いますが、そこ(BtoBtoX)は一部でしかないということです。
もちろん、BtoBtoXは大きくて重要ではありますが、それだけを目標としていていいのかな? というのは気になっています。
先般の1Q決算では「ソリューション」として開示しましたが、その中身についても、今後どのようなかたちでお知らせするのかは考えたいと思っています。
新サービスのIoT回線冗長化ソリューションや、通信障害について
――法人向けサービス「ドコモIoTマネージドサービス」において、KDDI回線も使える法人向けのIoT回線冗長化ソリューションが発表された。
サブ回線として用いるKDDI回線は、NTT Comが直接調達しているわけではなく、NTTグループの海外企業Transatel経由で調達している。直接調達ができない、あるいは直接調達しない理由を知りたい。また、直接調達できたほうがいいと思っているのか。
丸岡氏
まずTransatelについては、もともとNTT Comのグループ会社で、そのあとにNTT Ltd.に移行したという経緯があります。
そして、緊急時に備えた冗長化に関連して、緊急時のローミングなどについて、現在は総務省でも議論や検討が進んでいます。
NTTグループのサービスとしてこういった状況に対応するために、まずはTransatelのサービスを使えばいいのではないかと考えました。国内ではKDDIさんとのローミングもできるようになっていますので、時間的なことも含めて、Transatelのリソースを使ってスタートしたということです。
ご指摘の通り、個別に調達したほうが良ければそういった道も探っていきますが、現状は今回のような対応になっています。
――IoT関連について、先日KDDIの大規模な障害があって、法人関係も大きな影響を受けた。顧客からのニーズにどのような変化があったのか。
丸岡氏
冗長化などに対するお客さまの意識は高まったと思っています。私たちのお客さまからも、「設備の故障などにグループとしてどう対応できるのか」というような質問はいただきます。
大きくは総務省の研究会の検討を待つ必要がありますし、NTT Comとしてもそういった議論へ対応していきます。一方、まずはお客さまに対して提供できるようなサービスなどの整備を、事業者として進めていくことが大事だと思っています。
――冗長化はユーザーにとってはメリットがある一方で、通信会社からすれば他社の契約を取ることにもなると思うが。
丸岡氏
(他社の契約を取る)逆もあると思いますし、それぞれのキャリアを使っているお客さまがどう判断されるかということだと思います。
もちろん私たちは、ドコモの回線を継続して使っていただきたいと考えますが、お客さまにとってベストなソリューションは何かということも考えます。それは他社さんも同じだと思います。
「XR」に関する考え
――XRの取り組みについて、ビジネスという観点から見たときに、XRへの期待はどのようなものなのか。また、XR普及の鍵を握るのは何なのか、考えを聞きたい。
丸岡氏
新会社「NTTコノキュー」の立ち上げ自体が、NTTグループとしてのXRへの期待感を表していると思っています。
ゲームなどの用途でXRは馴染みがありますが、では企業向けはどうかということで、私たちがあらためてXRの活用について考えていかなければならないと思っています。必ずしもゴーグルが必要とされない世界観で、新しい体験ができることもあるのではと思います。
NTT Comでも店舗のバーチャル化などを実施していますが、リアルではできない、あるいはリモートでもリアル感を創出できる、ということがコンセプトです。これからお客さまにも展示などを見ていただきつつ、ユースケースをどんどん開拓できればと思います。
――ゴーグルなどが必要とされることが、XRの普及を阻む一因と考えているのか。
丸岡氏
ゴーグルに代表されるデバイスがあったほうが、没入感が出るとは思います。「NTTコノキュー」も自らデバイスを開発すると言っているので、そこは私も期待しています。
ただ、必ずしも没入感だけではないので、たとえば企業向けには、ゴーグルが必要ではない世界観もあるのでは? とは思っています。
「docomo MEC」について
――5G×MECの商用サービス「docomo MEC」について、現状での考えを教えてほしい。
丸岡氏
MECについては、どういう拠点に構築するかというのは非常に大きな判断ポイントだと思っています。
需要がどのようなかたちでいつ爆発してくるのかということを考えつつ、エッジコンピューティングをどう配置するのかは大きなポイントだと思いますが、現時点でニーズに対応できているとは感じています。
今後は、私たちドコモグループとして、アプリケーションなどのサービスをいつどのようにローンチするのかを考えていきたいですし、エッジコンピューティングの配置もあわせて検討していこうと思っています。
NTTコムウェアの位置づけ
――「ドコモビジネス」に対して、NTTコムウェアをどのように組み込むのかを具体的なかたちで教えてほしい。
これまでNTTコムウェアはNTT内での取引が多かったのが、「ドコモビジネス」で市場に出てくるようになると、日本のIT産業へのインパクトも大きいと思うが。
丸岡氏
NTT ComとNTTコムウェアは、今回の再編成の前から、さまざまなところで連携してきました。
NTTコムウェアは大きなSI(システムインテグレーション)案件などをNTTグループ内で担当してきましたし、その役割は引き続き持っています。
ですから、グループ内の共通のITを開発していくといったことについてはNTTコムウェアが担当しますが、今後私たちは一般市場へのチャレンジをしていきます。その点で、NTTコムウェアのソフトウェア開発力は魅力的で重要だと思っています。
今いろいろ進めているのはアジャイル開発です。NTT Comでは「NeWork(ニュワーク)」、NTTグループでいうと「elgana(エルガナ)」などは、NTTコムウェアが開発をサポートしてくれているんです。
ウォーターフォール的なものだけではなく、アジャイル開発についても、彼らの力を借りながら「ドコモビジネス」を進めていきたいと思っています。