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ドコモがNTT Com子会社化、質疑応答で語られたこと

左からNTT Comの丸岡亨社長、NTTドコモの井伊基之社長、NTTコムウェアの黒岩真人社長

 25日、NTTドコモは、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、NTTコムウェアを子会社化すると発表した。同日開催された会見では、3社の機能統合や、今後のスケジュール、シナジーなどが語られた。

 機能統合としては、法人事業をNTT Comへ一元化するほか、OCN モバイル ONEはNTTレゾナントが担うこと、ドコモの映像・エンタメ事業がNTTぷららと一体化することなどが紹介された。さらにドコモでは新規領域として、電力、メディカル、XRへ注力する。

 本稿では、主だった質疑応答をお伝えする。

子会社化の意義とシナジー

――グループ再編にあたり、現状の市場への認識と、そのなかでの再編をどう位置づけているのか。

井伊氏
 通信技術が進歩することで値下げできるのは事実。料金が上がるというよりも、引き続き下がる方向は間違いない。したがって、通信は今、基盤事業。これをベースにしながら、その上で提供するサービスを事業の収益の柱にしなければならない。

 競合を含めて、スマートライフのような領域、法人向けソリューションが提供されており、通信だけではないグローバルでの競争になっている。

井伊氏

 NTTドコモはモバイルが中心、NTT Comはネットワーククラウド、データセンター事業、コムウェアはソフトウェアが中心だった。しかし競合はそうしたものを一通り揃えている。

 パートナーと組むこともあり、すべてを自社でまかなうわけではないが、我々にとっては必要な武器が(ドコモグループの再編で)一体となった。しかし、ようやく立ったというところで、立ち上がっただけでは勝てない。競争力のあるサービスを出せるか、コストを下げていけるかが重要と認識している。

――法人事業がNTT Comへ一元化されるとのことだが、どう変化していくのか。

井伊氏
 法人事業のあり方として、今回の統合で、かなりお客さまへ提供できる価値が大きくなると見ている。

 社会ではモバイルが生活でも産業でも深く浸透してきた。これまでよりも一段高いDX(デジタルトランスフォーメーション)をお客さまとともに構築できると期待している。

丸岡氏
 ネットワークの統合については、どの部分をどう進めていくか、(2022年春~夏の)ステップ2に向けて検討を進めたい。

丸岡氏

――法人事業でのシナジーをもう少し詳しく教えてほしい。ドコモの法人事業に何が足りなかったのか。

井伊氏
 ドコモの法人事業は、やはり回線事業、回線サービスが主流。法人様が携帯電話を使い、そこに事業者様向けのアプリがインストールされる。

 DXや特定のさまざまなサービスはあるが、固定との融合というところが今までできていたかというより、弱かったという認識だ。今回一体化することで、NTT Comが保有するシステム、ソフトウェアサービスを活用できる。なにより、データセンター内のクラウド基盤も利用できる。多くの中小企業にサービスやソリューションを提供したい。

 そうしたところの収益・利益は現状よりも少し伸びると思っている。大企業をたくさん抱えているNTT Comは法人事業の収益率が高い。そこに今度はモバイルという武器をいかに組み込み、さらに成長させるのか。

 どこがライバルかは申し上げられないが、両社が足りなかったところを組み合わせることで強くなりたい。

丸岡氏
 井伊社長のコメントが基本的な考え方。Comになかったものをドコモが、ドコモになかったものをComが持っている。

 もはや移動と固定と分かれている市場ではなく対応できるようにすることが一番。DXなどで協業する上でも、固定系だけでは限界がある。ドコモの5G、IoTなどをトータルで提供できるようになり、提供価値が向上する。

 アフターコロナ時代、分散型社会が広がる。そうすると各地域のお客さまにとって、回線レベルだけではないところでDXが必要になる。

 ドコモの、地域でのブランド力や営業力、NTT Comのソリューションをあわせてトータルで4000億円の増収をはかりたい。

MVNOなど個人向け事業について

――2つのステップを踏んで統合するとのことだが、第2ステップでNTTコミュニケーションズの個人向け事業がNTTレゾナントに移管される。しかしドコモに移管せずNTTレゾナントで残す意義は?

井伊氏
 NTTレゾナントが新たな事業者として、OCN モバイル ONEの事業者に変化する。

 この領域も競争が激しく、機動的な経営として、自由に競争できることや、事業責任を明確にするため子会社のままにしておきたい。

 ほかのMVNO事業者と横並びの競争という関係をしっかり作っていきたい。

――OCN モバイル ONEをドコモのサブブランドにするというか、一体化して戦う考えはないのか。

井伊氏
 (NTTレゾナントへの移管は)現時点での考えであり、未来も変わらない、というわけではない。ただ、今の時点では、サブブランドにする考えはない。

 MVNOではすでに市場がある。そこでの競争を加速することも大事。サブブランド化するよりも、MVNOによるサービスの充実を、ドコモがお手伝いするほうが最適だと考えている。

 もしサブブランドが必要となれば、(OCN モバイル ONEの位置づけと)関係なく作っていければいい。これはこれでしっかり競争を書く即したい。

――OCN モバイル ONEは、10月21日に始まった「エコノミーMVNO」のひとつとして提供されている。エコノミーMVNOではフリービットも取り扱われるとはいえ、ドコモグループ内に偏った印象を受ける。ほかのMVNOの参画を促すために、どのような取り組みを考えているのか。

井伊氏
 「エコノミー」の発表自体は、2020年12月の「ahamo」発表時で、ずいぶん前だった。その後、多数のMVNO各社と交渉を進めてきた。

 こちらから持ちかけつつ、要望をうかがいながら、引き続き議論を進めている。ドコモから伝えているのは、「dポイント会員基盤」の活用と、ドコモショップでお客さまにオススメするということ。

 「エコノミー」は低廉な価格帯をカバーするものだが、たとえばフリービットさんは、料金だけではなく(子供の利用に適したアプリを用意するなど)特化しているところもある。そういったものを我々は取り扱っていきたい。ひとまず2社が手を挙げたおかげで、他社も手を挙げやすくなったと期待している。

14日の通信障害について

――冒頭に14日の通信障害を謝罪したが、事故から10日経過し、その後について教えてほしい。影響を受けた人数はどれくらいか。電気通信事業法での重大事故となるのか。

井伊氏
 今回は「重大な事故」と認識しており、15日に緊急会見を開催した。事業法では、重大かどうかは事業者が判断するとなっており、そう判断した。会見時はまだつながりにくい状態だったが、現在も数字を検証している。

 つながらなかったことは痕跡を確認するのが難しい。つながればログは残るが、何も残らない。そこで当時、位置情報を登録できない数字として200万人と発表した。

 位置情報だけではなく、電話やパケット通信にも影響が出ていたが、数字を精査・分析している。なるべく早い時期に報告したい。当社Webサイトで、数字については発表したい。

NTT(持株)澤田社長は

 ドコモらによる会見後、続けてNTT(持株)の澤田純氏がリモートで登場し、NTT(持株)での中期経営計画のアップデートを語った。質疑ではNTTドコモ子会社化の効果などが語られた。

NTT(持株)の澤田氏(左)

――ドコモ子会社化の結果は?

澤田氏
 昨年のTOBから、料金値下げの競争が激しくなり、ドコモはahamoを出し、プレミアを出した。積極的な活動が出ているというのが(結果の)ひとつ。

 他社へ毎月、顧客が流出していたが、ほぼゼロか、その近辺に変わっており、競争力が上がっている。

 (発表の)遅れという議論については、7月に、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアを子会社化すると話していたが、会食の問題や、総務省での会食問題の検証・公正検討の検討会の状況を見て、10月に結論が出たので、ここで発表した。

 春~夏がステップ2ということで(ステップ2の時期は2020年12月に公表した内容と変わりがなく)あまり大きな遅れではないと見ている。

――研究開発の一体運営はどうなるのか。

澤田氏
 7月にIOWN総合開発センターを設立した。ドコモのR&Dについては、持株側の研究は基盤研究、研究を受けて開発するところ。ドコモ側は実用化するところ。IOWN開発センターと連携し、O-RANや6Gに向けて連携していく。

――中小企業向けの回線、ソリューション市場ということであれば、NTTドコモ/NTT ComとNTT東西で重複すると思えるが。

澤田氏
 わかりやすい例としてはローカル5Gがある。東西もNTT ComもNTTデータもすべてローカル5G(プライベート5G)に取り組んでいる。

 ドコモも視点を含め、中堅・中小向けの展開を進めているが、東西はローカル5Gを含め、IoTを拡張しようとしている。

 NTT東西と、NTTドコモ/NTT Comは、公正競争の条件上、連携販売はしない、させないという構造になっている。

 場合によってはぶつかる可能性がないことはない。とはいえ、ぶつかるほど、市場が開拓できればありがたい、というのは持株(の立場)でございまして。開拓すべき市場はかなりたくさんある。