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楽天決算で三木谷氏「ローミング費用が本当に高い」、通信事業・RCP・エコシステムの「一石三鳥」を狙う

 楽天グループは11日、2021年度第2四半期決算を発表した。売上収益は7936億7100万円(前年同期比+16.9%)、営業利益はー1008億8900万円(前年同期207億2100万円)、グループ全体の純利益は―663億400万円(同278億2400万円)だった。

 本記事では、モバイル事業関連の内容を中心に紹介する。

「高い品質」と第三者機関で評価

 楽天モバイル代表取締役社長の山田 善久氏は、「楽天モバイルは、MWC(Mobile World Congress、世界最大級の携帯業界の見本市)で高く評価され、2021年のグローバルモバイルアワードで2件の受賞を果たしました。この賞は、モバイル業界で最も権威のある表彰制度として幅広く認識されており、楽天モバイルの技術が世界基準で高く評価頂いた結果と考えています」と、品質の高さをアピールし、今後も品質向上へ努力していくとした。

楽天モバイル代表取締役社長の山田 善久氏

 顧客獲得も順調に推移しているとしており、累計申込者数は6月時点で442万件と着実に進捗、総務省の「新料金プランへの移行率調査(同一会社間の移行は除く)」でも、楽天モバイルへの移行が半数以上となっているなど、高い支持が得られているとしている。

 また、回線申込みユーザーの属性を見ると、これまでは新たに携帯電話番号を取得する新規ユーザーが多かったのに対し、近況では他社からのMNPによる乗り換えユーザーが多くなっているという。MNPユーザーのほうが、データ利用量やユーザーあたりの単価(ARPU)が高く、解約率が低い傾向にあるという。なお、ARPUについては「無料キャンペーンが終了したばかり」(山田氏)で非開示としている。

 ちなみに、転入元については「各社まんべんなく入ってきている。シェアはMNO3社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク)が多いので、MNO3社からの転入が多い」(山田氏)と説明した。

 なお、楽天モバイルの契約者は、楽天カードの4倍のスピードで成長していると楽天グループ常務執行役員CMOの河野 奈保氏は説明する。資料では、楽天モバイルのサービス開始から1年で、300万弱の契約数となっていることがわかる。河野氏は、引き続き楽天モバイルユーザーのクロスユース率(ほかの楽天サービスを利用するユーザー率)が高いとし、「楽天エコシステムの成長を加速させていくドライバーの一つといえる」とコメントした。

人口カバー率とローミング費用

 半導体不足の影響で、当初発表していた「今夏の4G人口カバー率96%以上」は、今年中へ達成がずれ込む形となったが、契約済みの基地局を含む人口カバー率はすでに96%を達成しているとし、「ネットワーク整備に大きな変更はない。総務省に提出している『認定開設計画』からの遅れもない」(山田氏)と問題ないとの見解を示した。

 なお、6月末時点ですでに4Gの人口カバー率90%超を達成しているが、「KDDIのローミング費用」がかさみ、足を引っ張る要因の一つとなっている。

 モバイルセグメントの業績を見ると、キャンペーン施策などの影響で収益が前期から下がっているものの、前年同期比で17%増を達成。その一方、営業損失は前年同期から459億円膨らみ、996億8600万円となっている。

 自社エリアの拡大で「一人あたりのローミングデータ使用量は減少」したものの、契約者増で「トータルのローミング費用が増加した」と説明。決算会見中「ローミング費用が高い」としきりに発言していた楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏は、「人口カバー率96%を達成しても、最終的には99%、(『AST』とのスペースモバイル計画による)人工衛星で物理的にもエリアカバー率100%に近づけると思っているので、独自のネットワーク率が高まれば、(楽天モバイル)に有利な状況ができると考えている。トップギアをかけて徐々に上げていきたい」との思いを語った。

楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

 なお、三木谷氏はローミングについては、10月と3月のタイミングでエリアの見直しを行うといった趣旨の発言をしており、「正直に言うとローミングコストは本当に高い。(ローミング)見直しのタイミングで、ローミングコストがかなり下がることが期待されているので、これに合わせて(新規顧客の獲得を)加速していきたい。新規顧客獲得コスト自体は安定しているが、それにあわせてローミング費用が短期的にかかってしまうため、(獲得スピード)はちょっと我慢してスピードをコントロールしていかなければならない」と説明した。

RCPの世界展開

 楽天モバイルの完全仮想化ネットワークプラットフォーム「Rakuten Communications Platform(RCP)」について5日、独1&1社と携帯電話ネットワークの構築に関する長期的なパートナーシップを締結した。

 独1&1社とのパートナーシップについて三木谷氏は「楽天モバイルで3年半学んできたことを活かせるチャンス」と捉えているとコメント。このパートナーシップでは「全体的なシステム、デザイン、エンジニアリング、アーキテクチャー、オペレーションマネージメントを担当」とし、10年間の長期契約を締結している。ヨーロッパの中心国の1つであるドイツで展開できることは「非常に大きなチャンス」と説明した。

登壇しているのは、楽天モバイル代表取締役副社長兼CTOのタレック・アミン(Tareq Amin)氏

 海外でのRCP展開について三木谷氏は「(アクセンチュアなどの)パートナー企業と展開していく。基本的に我々は、ソフトウェアを出していく。ただ、5兆円くらいのマーケットといわれるプラットフォーム事業で、今の所楽天モバイルだけがもっている技術となり、凄まじいマーケットシェアを取り入れることができる。世界の企業から『一緒に組みたい』との嬉しいラブコールがたくさん来ているので、パートナー企業と組みながら、全世界で新しいモバイルネットワークを展開していく」と説明した。

5年後10年後にRCPは大きな利益を出す

 RCPについて、三木谷氏は「5年後、10年後には、RCPから出てくる売上と利益の方がほかの事業から出てきてるものよりも、大きくなっている可能性もあると思う」とコメント。

 その理由として、RCPが「新規参入するMNO」や「プライベート5G」にも活用できることを挙げた。

 また、「ネットワークを作ることによって、いろんな製造機械が完全自動化していたり、あるいは物流の危機が全部シンクロナイズして動いていくにはが必要だと。でもパブリックIPじゃなかなか難しいよねって言ったときに、やはりプライベート5Gだとソフトウェアをちょっといじるだけで、この地域だけに5Gを提供しますと言うことも簡単にできるわけですね。ですから、このソフトウェアをやることによる柔軟性というのは非常に上がってくると。福祉やさまざまなニーズに答えることができるかなと思っています」と将来性、柔軟性に優れていることをアピールした。

 また、モバイル事業の黒字化についてもRCPの世界展開が大きなカギだとしており、三木谷氏は「2023年に単月の黒字化を実現するという1つの目標になったわけですけれども、それが『一年早く』というのはちょっと難しいかもしれませんが、『少し前倒し』ってのを「Rakuten Symphony」(8月に新設したRCPのグローバル会社)で達成できるのではないかと思っております」とコメント。

iPhoneの取り扱いについて

 iPhone取り扱いの意義について山田氏は「以前は無料(同然の価格で)ほかの事業者が提供していたが、現在は総務省で値引きの規制がかかっている。我々の加入者数が激増することはないが、日本市場の半数を占めるiPhoneを取り扱うことは、信頼性を語る上で大事なもの」と説明。

 また、eSIM対応により「10分くらいで回線が開通する」ことや「iPhoneのデータ利用量はほかの端末に比べて多い」(三木谷氏)といった点にも注目しているという。

三木谷氏「最善を尽くしてモバイル事業を成功させたい」

 会見の最後に三木谷氏はモバイル事業について「一石”三”鳥」を狙っていきたいとコメント。「SA(Stand Alone)ネットワークによる利益の出る事業」、「楽天エコシステムの成長」、「プラットフォームソフトウェアとして、ほかの国にも販売できるようにしたい」という3つをあげ、それらが順調であることを確信していると説明。

 また、新型コロナウイルスによる経済の低迷の回復と、現在の厳しい状況から近いうちに脱却できることを願っていること、最善を尽くしてモバイル事業を成功させたいと、改めて想いを語った。

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