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楽天モバイルのエリアはどれだけ広がった? 2020年4月と現在の違い、KDDIローミング切り替えの影響は

 22日、楽天モバイルは報道関係者向けに同社のサービスエリアの最新状況を紹介する説明会を開催した。

 説明は矢澤俊介副社長から行われ、この10月に実施されたKDDIのローミングエリアからの切り替えや、今夏→年内としていた「人口カバー率96%」の最新状況などが語られた。

矢澤氏

 本誌では10月初旬、矢澤副社長へのインタビューを掲載しており、その内容と重複する部分もあれば、アップデートされたところもある。あらためて同社の取り組みを紹介しよう。

本格サービス開始時からの変化

 2019年秋にサービス開始、そして2020年4月に“本格サービス”開始という道のりを経た楽天モバイル。

 2017年に第4の携帯電話事業者へ名乗りを上げた同社にとって、ゼロから全国で構築してきたサービスエリアは、どう変化してきたのか、矢澤氏は過去と現在のサービスエリアマップを披露する。

仙台エリア
関東エリア
新潟エリア
名古屋エリア
大阪エリア
広島エリア
松山エリア
福岡エリア
沖縄エリア

 紹介されたのは、東名阪や仙台、福岡など都市部を中心としたもの。東京23区、名古屋市、大阪市はサービス開始時から同社自身のエリアとして整備され、それ以外で基地局がないエリアはKDDIのエリアを借り受け(ローミング)サービスが始まった。

 本格サービス開始から約1年半。

 楽天モバイルのサービスエリアは、基地局数が3万局を突破し、人口カバー率で見ると23.4%→94.3%(10月14日時点)へ格段に広がった。

 5G基地局については、9月の段階で2000カ所を突破している。

 他社の5G基地局は1万、2万という桁で整備が進んでおり、楽天モバイルの設備数は見劣りする格好だが、矢澤氏は「4Gの基地局には、5Gの設備をすぐ取り付けられる。かなり早いタイミングで展開できる」とする。

 しかし5G基地局の具体的な局数について、矢澤氏は明言を避ける。同氏は、Sub-6(6GHz帯以下の周波数)やミリ波の特徴を踏まえて、ユーザー体験として5Gらしさを味わえる状況を検討した上で決めるとコメント。それでも「(4G基地局で設置済みの3万局と、半導体調達待ちの1万局をあわせた)4万局あたりはすぐ達成できると思う」と自信を見せた。

 このほか、東京の地下鉄でのエリア化については、10月の本誌インタビューで紹介された「東京メトロ9割エリア化」という情報に加え、今回、都営地下鉄では10月以降、約6割のエリアが楽天モバイルエリアになったことが紹介された。東京以外の地下鉄は2022年以降に整備される予定だ。

楽天モバイルの基地局

 スピーディな基地局展開の背景には、基地局そのものの構成が他社よりもシンプルかつコンパクトになっていることが挙げられる。このことは1年前の決算説明会でも触れられていたが、今回の説明ではイラスト付きで紹介された。

 従来の設備では、アンテナ、そしてベースバンドユニット(BBU)と呼ばれるサーバー、無線機、整流器、バッテリーが必要となる。一方、楽天モバイルの基地局は無線機とアンテナを一体化。そこに整流器とバッテリーが置かれるだけとなる。BBUの代わりとして、アンテナが繋がるエッジデータセンターが処理を担うことになるが、そのエッジデータセンターは仮想化されたものになっている。

 15m級鉄塔は比較的都市部での展開となり、山間部での展開に向けて30m/40mという高さの基地局設備を用意し、カーボンタワー型を順次投入する。

 省スペースかつ軽量とのことで、従来の鉄塔タイプと比べコスト面で1/3程度になるとした。

 なお、インフラシェアリングを展開するJTOWERと、10月15日、資本提携を発表。このことは今後の屋内エリア化計画に大きく影響するものではないという。

人口カバー率は2022年2~3月ごろに96%へ

 とはいえ、同社が約1年前に掲げた計画では、2021年夏にも人口カバー率96%へ達するはずだった。

 しかし、コロナ禍に端を発した世界的な半導体不足の影響を受けて、基地局用部材の一部の調達に遅れが出た。そのことが明らかにされたのは、7月下旬、まさに夏を迎えてからのことだった。

 このとき、同社はWebサイトの一部文言を変更し、整備計画の遅れを初めて明らかにした。ユーザー向けの告知としては差分がとてもわかりづらい形だが、さらに10月に開催された楽天グループのオンラインイベント「Rakuten Optimism 2021」において、三木谷浩史会長が「2022年度第2四半期に人口カバー率96%を超える見込み」とした。

 その96%に達する時期について、今回、矢澤氏は「2022年2月~3月ごろになる」とさらりと触れる。2021年内という予定からさらに遅れることが明らかにされたが、その理由も同じく「基地局用部材の半導体不足」(矢澤氏)という。

 不足している半導体は、楽天モバイルの基地局につながる回線に活用されるものとのことだが、詳細は明らかにされていない。とはいえ、5Gの設備には必要ないとのことで、5G基地局の展開に影響は出ていないという。

衛星通信の活用

 人口カバー率を96%以上にする手法として、矢澤氏は、2023年後半に予定されているASTスペースモバイルの衛星通信サービスの活用を挙げ、「人がまったく立ち入らない場所を含め、2~3年後には国土面積の100%がエリアになる」と説明。

 ただし、衛星経由の通信では、同時接続数が限られ、通信容量に余裕がないため、「(2026年度に人口カバー率96%という)開設計画を総務省に提出しているが、それは4万4000局で実現する予定だった。それに加えて、3000局の準備を進めており、5万局弱の準備が進んでいる」とした矢澤氏は、衛星だけではなく地上の基地局整備も引き続き進める考えを示した。

 このほか、携帯電話に適した周波数帯とされる、いわゆるプラチナバンドについては「総務省には、ぜひ使わせてほしいと意見は表明しているが、すぐもらえるものでもなく、いろいろな皆様のご理解をいただけないと進められないものでもある。『プラチナバンドがないからエリア整備ができない』とは、私から言ってはいけないことだと思う」と述べ、可能な限り1.7GHz帯で整備する姿勢を示した。

ローミング切り替え後、ユーザーの声は?

 KDDIのローミングエリアから、楽天モバイル自身のエリアへの切り替えは、1年前の10月に初めて実施され、その後、今春と半年ごとに2回、実施されてきた。切り替えは、楽天自身のエリアが一定の割合になれば、協議の上で実施されることになっている。

 3回目のローミング切り替えとなった今年10月、その規模は過去最大となり、これまでと比べ20倍以上の規模となった。

 楽天モバイルでは、ユーザーからの苦情があれば、4営業日以内に対応する方針とし、専任チームを設置してスピーディにユーザーの要望へ応える体制を整備していた。

 その結果はどうだったのか。

 矢澤氏によれば、10月1週目~2週目をピークに、一定数、ユーザーからの問い合わせはあった。しかし、1回目や2回目のローミング切り替えと比べ、その数は減少しており、これまでのエリア整備対策の効果が出ていることがわかった。

 自社エリアへの切り替えが進めば、楽天モバイルにとってはKDDIへのローミング費用の支払額が減る。8月の決算では、三木谷氏が「ローミング費用が本当に高い」とこぼすほどだったが、矢澤氏は「ローミング費用がすぐ0円になるわけではないが、段階的に下がっていく見通しがたった」と語る。

 その結果、「(ローミング費用を)あまり気にせず顧客獲得に臨める。かなりアクセスを踏むことになるのではないか」と述べ、契約増に向けた取り組みが加速するとした。

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