インタビュー
なぜシャープは「AQUOS R9/wish4」でグローバルを目指すのか
キーパーソンロングインタビュー
2024年5月24日 11:00
5月8日、シャープはAndroidスマートフォンの新モデル「AQUOS R9」「AQUOS wish4」を発表した。
発表会のプレゼンテーションでは、通信事業本部パーソナル通信事業部長の中江優晃氏が、製品の特徴を紹介するパートよりもグローバルに向けた考え方を先に語り、デザインも一新されるなど、これまでの「AQUOS」シリーズとの違いを強く打ち出す内容となった。
はたして、シャープは、どのような考え方でスマートフォンの開発を進めているのか。中江氏のほか、同社通信事業本部の小林 繁本部長、そして商品企画部の清水 寛幸課長に、新製品開発における考え方、グローバル展開に対する思想などを聞いた。
新製品のみならず、シャープのスマホ開発に関わる事情なども語られたロングインタビューとなっている。
絶妙なバランスを追求する「AQUOS R9」
――AQUOSシリーズの最新スマートフォンが発表されましたが、今回はカメラをセンターに配置することを止め、新たなデザインが採用されました。また「AQUOS R9」の発表に関して、昨年は「AQUOS R8」「AQUOS R8 pro」がありましたが、今回はproモデルを出さないということになりました。
小林氏
名を捨て実を取ると言いますか、そこは難しい判断でした。
――たとえばproモデルについては、単純に端末価格、つまり手に取ってもらいやすい価格帯のモデルに注力するということでいいのでしょうか。
小林氏
そこはですね、やっぱりパフォーマンス(スマホの処理能力)が大事だと考えました。性能を発揮できる中で、もっともコスト的に頑張るという考え方です。つまり「端末価格ありき」ではないのです。
ハイエンドのAQUOSスマートフォンとして、我々が想定するユースケースで耐えうる性能を持ちながら、それでいて価格的にお手頃という絶妙なバランスが今回の製品です。
お客様の意識を調査すると、「何が何でも一番いいチップセットじゃないといけない」人は、数年前に比べると激減してきています。
本当に普段、快適に使えるのなら、そういったことにこだわらない人が、実は圧倒的に増えてきていて。
「性能」対「値段」の関係としては、一般的に性能を上げていけば当然、価格も高くなります。でも価格が上がると需要は下がります。そのベストなクロスポイントを見つけるっていうのは、(端末開発の)やっぱり妙だと思うんですね。
難しいのが「性能が倍」だからといって、「値段が倍」になるわけではないところです。需要も、あるところから急激に下がるようなカーブなんです。
たとえば今回、「AQUOS R9」は、メモリー(RAM)12GB搭載しています。そういった性能をきちんと備え、先代モデルよりも進化させつつ……といった絶妙なところを、もう必死になって見つけにいく感じです。
ここまで円安になるって、当時は実は思ってなかったんですけど、快適を届けようとすると、やっぱり「AQUOS」は国民のブランドとして利用していただいていますし。
デザインが大きく変わる
――デザイン一新にも驚きました。
小林氏
個人的には、最初に見た直後はしっくり来なかったのですが、時間が経つにつれて、すごく魅力的に感じています。
結構、海外のお客さま(キャリア)からも絶賛される方がいるなど、良い評価を得ています。どこのメーカーにもないデザインだと。
もちろんそのあたりは賛否両論あるだろうなと予想していました。
清水氏
これまでは、ガジェットぽさ、機能美といったところを押し出したものでした。
一方、新製品では、生活に馴染むデザインですね。
――一方で、Rシリーズは1インチセンサー搭載以降、ひとつのアイデンティティと言えるデザインでした。
小林氏
そこは社内でも議論がありました。個人的にも、これまでのデザインもすごく好きなので、そういう声をいただくことはとても理解できます。
――デザイナーの三宅一成氏を起用することになった経緯は?
中江氏
いろんなデザイン候補のひとつでしたが、デザイナーさんによって、考え方がいろいろあります。
僕らがうまく言葉にできないものの、グローバルに通用する日本のデザインはなんだろうと考えながら、対話をしていくなかで、三宅さんが「こういう形で、こういうことですよね」という解釈で出してこられたデザインが、一番しっくりきて、一番共感できた。すごく良かったです。
清水氏
AQUOSシリーズのスマートフォンでは、Rシリーズやsenseシリーズでこういうデザイン、と分ける考え方が強かったのですが、グローバル展開を考えると、AQUOSに何が求められているのか、と考えるようになって。そういうメッセージを伝えていかないと、AQUOS自体の存在感がなくなってしまう。
――これまでの海外での展開が、開発陣にとっても、すごく大きな体験になっているようです。
小林氏
お客様からの声の聞き方に変化をもたらしてくれたというか、バイアスを取り除いてくれた、といったことはあるかもしれません。
中江氏
今回の発表会でのプレゼン資料の順番は、まさしく社内で起きた変化をそのままストーリー化して作った感じなんです。
スマホブランドとしての「AQUOS」って何なのか、そもそもどんなことをしてきたのか――と。
“原点会議”みたいな感じで、過去を振り返って。
小林氏
ライカとの関係もあって、カメラが向上して、そこをお客さまにも評価していただけるようになって。お客さまの声も聞いて、そこにちゃんと対応していきたいです。
――イヤホンジャックを搭載しないことに、なにか理由があるのでしょうか。
小林氏
搭載できるのなら、あるほうがいいのは間違いないでしょう。ただ、部品としてやっぱり大きいですよね。賛否両論ありますが……。
中江氏
イヤホンより、スピーカーの性能を優先したというのが正直なところです。
SIMフリー版を同時発表した理由
――話は変わって、「AQUOS R9」「AQUOS wish4」の発表会では、あわせてSIMフリー版(オープンマーケット版)の話も同時にアナウンスされました。
清水氏
AQUOS sense8の発表時に初めて試みたのですが、今回もそうしようと。
小林氏
「お手ごろな価格です」と説明しながら、価格をお示しせず「発売元にご確認を……」というのは、そろそろ卒業しようと。自分たちで販売されるものについては、いいのではないかなと考えたのです。もちろん小売店での想定での価格です。
中江氏
もちろん、実際やってみると調整することはありますが、やれないことはないなと。
――メーカーとして下取りはどう取り組みますか。
小林氏
セグメントごとによって異なるかなと思っています。ハイエンドの高額な機種は、下取りも高めになるのですが発売から1年経つと、中古販売時の下落幅が大きくなっています。
もともと安い機種は、0円で手にされる人もいるなかで、下取りしてから修理し、中古価格2万円です、としても、受け入れていただけるか難しい。
一方、真ん中のゾーンは、下取りでやろうと思えば、できるんじゃないかなと。
価格によって需要が変わる。価格弾力性みたいなもののカーブの見方ですね。我々が下取りでお引き取りして、一級整備、つまり新品レベルにして、というところのコストと、ニーズとのバランスです。
――政策として中古スマホを盛り上げる取り組みがあります。
小林氏
製品1台1台を、より長くご利用いただけるように製造しています。そのことが、中古スマホ市場にポジティブな影響を与える可能性はあるのでしょう。
とはいえ、対応周波数やキャリアアグリゲーション(CA、複数の周波数帯を束ねて通信する仕組み。キャリアによって束ねる周波数帯が異なる)のサポートなど、細かな最適化が意識されないまま、という議論になっている気もしています。
安さを求める人に販売して、大丈夫なのかなとも思います。自分の手で、SIMフリー機種を手にして、SIMも自身で入手して、あるいはeSIMも設定できて、といった方であれば大丈夫でしょう。一方で、ショップ店頭でしっかりしたサポートを受けられているようなお客様に、もともとどのキャリアで提供されていたか、わからないまま販売して、もしトラブルがあれば誰がサポートするのかなと……。
――なるほど、A社のスマホを買って、B社の回線を使うと、通信面でちょっと繋がりにくい、みたいな可能性はあり得るかもしれません。
小林氏
メーカーとしては、できるだけ長く使える製品にして、求められるならば「中古で買っても使える端末」にしていくことは意識しています。
発表と発売時期の関係
――今回もそうですが、発表と発売の時間が空いています。
中江氏
できるだけ、発表と発売の時期が近いほうが望ましいとは思っています。ただ、発表のタイミングを逃すのもよくないなという点もあり、ジレンマですね。
――5月がスマホ新機種発表の旬でもあると。
小林氏
お客様も「5月になったがAQUOSスマホはどうなるのか」と待たれてますしね……チップセットのリリースとソフトウェアの開発などで左右されることはどうしてもあります。
中江氏
今回も、もうちょっと早く出せないかな? という考えはありました。ただ、日程を取るのか、使い勝手の向上の追求を取るのかといったところで、長くご利用いただくには、発売時期を犠牲にせず、ベストなところを探った結果ということになります。
Snapdragon 7+ Gen 3をいち早く
――AQUOS R9は、Snapdragon 7+ Gen 3を搭載しています。
清水氏
発表から製品化まですごく速いです。
中江氏
グローバルでもトップのメーカーですね。
清水氏
発表時期については、キャリアさんのカタログへの掲載という点もあります。
小林氏
だいたい四半期に一度、製品カタログが更新されるのですが、そこに掲載されるなら、未発表のままではいけない、ということはありますね。
――販売量として、キャリアさんでの扱いはまだまだ大きいですよね。
小林氏
(夏モデルとして掲載されない場合)次のカタログまで掲載されないことになってしまいますし……。
――チップセット関連では、Snapdragonではさまざまな機能が搭載されますが、実装されるかどうかは「メーカー次第」と、クアルコムのキーパーソンへの取材で聞いています。
中江氏
チップセットを提供する側と、OEMである我々ベンダー(メーカー)の違いは、最終的なお客さまとの距離かなと思います。
商品を開発していると、「こんな良い機能があるんです」となるよりも、「どれだけ良い体験になるのか」という視点になります。
当然、よい機能がサポートされている場合、それをどう仕上げるかはメーカー次第の部分でしょう。種をもらい、どう育てるか。
小林氏
実際、一部で、チップセットならではの機能を実装しています。画質系の機能などです。
中江氏
逆に言えば、ベンダー側の醍醐味として、同じチップセットでも同じ性能にならない、ということがあるんです。
「このチップを使っていたら、当然、この機能が付いているよな」というのも、実際、違うところがあるんです。それくらい幅の広い“種”をいただいている。種は一緒なんですよ。
小林氏
ズームを重視するのか、我々のように夜景を重視するのか。あるいはカラーバランスを重視するのか。
あらゆる環境での撮影をサポートしなきゃいけないなかで、ある場面ではうまく撮影できるのに、別の場面ではぜんぜんダメという機能はやっぱりちょっと搭載できない。「こう撮るとうまく撮れるのに、ちょっと動かしただけで、そのモードで撮れなくなる」というのは、きびしいですね。
清水氏
カメラ以外では、たとえば今回、「Snapdragon Sound」はサポートしています。aptXやロスレス再生といったところは、クアルコムさんと一緒にアピールしていきたいですね。
小林氏
完全ワイヤレスイヤホンのメーカーさんもSnapdragon Soundの対応を進めていますし、お客さまにとっての価値も大きいかなと。
10万円「頑張った」
――SIMフリー版の「AQUOS R9」は10万円程度、という価格になるとのことですが、頑張ったポイントですか。
中江氏
かなり頑張った金額です。非常に大事なポイントですし。
小林氏
パッケージング能力が問われる点です。
市場が成長している時期は、差別化や、より優れた点などを競い合っていきます。でも成熟期になると、価格と特徴・機能のバランスの重要性が高まります。
清水氏
「10万円のハイエンド」は心に残りやすいかなと思いますし、そこは意識したところです。本当にいろいろな工夫を重ねて実現しました。
割引規制と販売プログラム
――この1年、NTTドコモやソフトバンクが販売プログラムを改定したり、総務省による割引規制が変更されたりしました。
小林氏
私どもからすると、お客さまの負担を軽減するためのアイデアが(キャリアの販売プログラムとして)いろいろ出されていると理解しています。もしなかりせば、正直、もっとひどかったんじゃないかなと。
電気通信事業法関連でルールが変わるたびに市場規模が削られていっている印象はあります。もっと大きな痛手が出るかもしれなかったところ、なんとか踏みとどまってくださったと。感謝しかないです。
先に海外進出のお話をしましたが、国によっては日本より平均価格が上昇しています。一方、日本は極端に下がってきています。法制度や社会的な議論を通じてそうした状況になってきた。
とはいえ、そうした状況のなかで、なんとかお客さまに選んでいただける商品になるよう奔走したわけです。今も試行錯誤を続けている状態ですね。
グローバルと日本市場
――8日の発表会では、まずグローバルで展開するという話から入ったのは、ちょっと驚きました。大成功だったと見ていいのでしょうか。
小林氏
海外市場で倍増したのは事実ですが、もともとがアーリーステージなので、まだまだこれからです。時間はかかります。
とはいえ、ますますグローバル化して、日本か海外か、という区切りはなくなってきたと感じています。おサイフケータイ/FeliCaが仮になくとも、NFCは搭載しますし。
市場に製品を提供するプレイヤー(事業者)を見ると、vivoやインフィニックスといったメーカーは日本未進出ですが、おおむね、海外も日本もわりと同じ面々です。
もちろん国や地域によって平均的なデバイス、価格は異なりますが、基本的なラインアップは同じ。どちらかと言えば、「日本がグローバル化している」と思った方が良いのかなと感じています。
――なるほど
小林氏
海外の、とあるキャリアさんと話をしたとき、興味深い話を聞きました。
実はシャープでは、防水性能を生産した1台1台、チェックしています。
――1台1台ですか。それは本当に時間とコストがかかりますよね。
小林氏
はい、具体的な手法はお見せできないのですが……海外の他社さんでは、生産した総台数からランダムに抜き取って、防水性能をチェックするところがあるらしいです。もし基準を満たしていなければ、再検査するとか。
シャープの取り組みは、海外キャリアさんからすると、驚かれるようです。もちろん、グローバルで展開する上で、ランダムに検査するという考え方もありますが、そこはシャープにとっては譲れない線があると言いますか。
通常なら、そうした手間暇は、端末価格に反映される。でも、本当に微妙なところで、どちらがいいのか、と簡単には言えない。ただ、1台1台で信頼性を高めようとする日本のもの作りを、支持してくれる方が意外と日本以外の市場にも、たくさんいらっしゃるんだな。っていう手応えはあります。
――AQUOS R8をベースにしたモデルが海外で提供されましたが、実際、いかがでしたか。
小林氏
それがまあまあ好評だったんですよ。インドネシアでは、だいたい米ドルで200米ドル近辺が一番の売れ筋で、GalaxyシリーズやOPPOが強いです。ただ、そこは「4Gでいい」という製品が主流です。
清水氏
シャープの強みがあるのは、まさにそうした市場、ミッドレンジ以上のところですね。
――senseシリーズやwishシリーズは?
小林氏
台湾ではAQUOS sense8がかなり人気を得て、今も売れていますね。
――そういえば、「AQUOS R8s」という名前で発売されましたね。
清水氏
現地では「スペシャルな機種」といった意味をご紹介しましたね。
小林氏
同じ機種でLeicaブランドの有無が……というところがありますので、ブランド・マネジメントの観点で、そういう名称にしました。
今後もLeicaブランドで提供する国もあります。
ウェアラブルデバイス「何らか考えています」
――さきほど完全ワイヤレスイヤホンの話が出たのでお聞きしておきたいのが、ウェアラブルデバイスへの考えです。
小林氏
何らか考えてます。でも、追々ですね。
我々は(シャープの親会社である)鴻海系の工場ともお付き合いがあったりしますので、多方面で検討します。
デバイスによって、お客さまとデバイスの距離って違います。
テレビは3m、スマホで50cm、それが身につけるとなれば30cmになって、指輪となれば0cmです。お客さまとの“距離”による体験はそれぞれ異なります。スマホだけですと限界はありますし、そこを追求する気持ちは持っています。
量販店では、2000円程度~10万円程度と、本当に幅広い製品がラインアップされています。製品のコンセプトと、お客さまが手を出せる価格帯といったところを考えないといけないなと思います。
OSバージョンアップのサポートとチップセットと
――スマートフォンのライフサイクルで気になるのは、OSバージョンアップの提供回数が増えていることです。市場のライフサイクルからして、それが本当に良いことなのか。
小林氏
お客さまがお使いになるかぎり、商品の寿命を全うして、そこまできっちり安心して使っていただけるというのは、ひとつの基準になりますよね。
ただ、7年間修理ができることと、7年間、OSバージョンアップのサポートすることは、ちょっと意味が違う事柄です。
――OSのバージョンアップが長期にわたって保証されると、OS側の進化の幅は制限されないでしょうか。
中江氏
OS側で導入された機能だとしても、ハードウェアの制限で使えない、といったことがあれば、そこはオフできる仕様になっています。
たとえば、7年前のハードウェアだと、最新OSののうち、一部しか使えないと。そういうことが起こり得ることを許容しているプラットフォームということだと思います。
小林氏
7年も続くサービスは本当に成功しているものになるのでしょう。
――AIは難しそうですね。
小林氏
ちょっとテクニカルな話になるんですけど、ソフトウェア、OSのアップグレードって、「上(のレイヤー)」だけアップグレードするケースと、一番「下(のレイヤー)」までアップグレードするケースがあります。上位だけアップグレードするほうが当然、楽です。
具体的にいうと、「このAndroidのバージョンは、このLinuxのカーネルバージョンで動作させる」ということがセットになっています。
だいたい、2~3回分ぐらい、古いカーネルでも動くようになってるんで、あるところから、カーネルを変える、つまりLinuxのバージョンを変える必要が出てきます。それはもうデバイスのドライバーソフトも新たに開発するといったレベルです。
それはチップセット側もサポートしていないと実現できません。
――Snapdragonで「for ◯◯」としている製品は、そういうことかもしれませんね。
小林氏
なるほど。ただ、チップセット側で新しいLinuxカーネルに対応していなければ、絶対にバージョンアップできません。
生成AIへの取り組み
――生成AIの活用として今回、留守番電話の要約という機能になりました。
小林氏
お客さまの意識調査をすると、思っていた以上に、LINEなどのアプリではなく、通常の通話も利用が多いことがわかったんです。
キャリアさんの通話定額サービスがあることや、アプリの通話機能ですとギガ(通信量)を消費したりすることが背景にあるのかなと。
清水氏
よく知った間柄だと、LINEを使うというケースは確かに多いと思います。一方で、今回、考えたのは、知らない番号からの着信です。番号がわからず応答したくない、でも本当は必要な要件かもしれない――といったところで、心理的な負担を軽減できる機能になるかなと考えたわけです。
小林氏
将来的な理想像としては、生成AIを使って、「お名前を教えてください」といった応答までできるようになればと。
旧モデルでの「留守電AI」はあり得るのか
――「AQUOS R9」に搭載される、留守番電話を要約するAI機能は、過去のモデルにも提供されるのでしょうか。
中江氏
厳しいかもしれないですね……。
小林氏
やってできないことはないでしょうが、たぶん、パフォーマンスなどで、お客さまが求める品質に達しないかもしれないですね。NPUの性能に依存するところがあるかなと。
中江氏
試験はしています。
小林氏
AI関連の仕組みはメモリーをすごく用いますので、そういったところも影響するかもしれません。
――昨年のAQUOS R8 proとAQUOS R8という2つのラインアップを揃えたことは成功と見ていますか?
中江氏
そうですね、商業的な数字で見ても、結果的には良い内容でした。やる意味はあります。
――AQUOS R8 pro発表の1年前には、proモデルには、技術面での意味もあるといった話がありました。
小林氏
それは確かにあります。社内でもそういった意見はありますし、これからお客さまの声をしっかり伺っていきたいです。
中江氏
セキュリティ面を踏まえても、オンデバイス(スマホ上)で処理させるというのは、追求した点のひとつです。
グーグルが提供するAIとの棲み分け
――AI関連で、たとえば撮影した写真の編集などはグーグル側の技術で、ということになるのでしょうか。
小林氏
実際、Googleフォトの機能として、ユーザーが無償で利用できる範囲も拡充されていますよね。
ようはグーグルと競い合う(重複する)ことをしても仕方ないというか、OEM(メーカー)が頑張れるところがあると思います。カメラなどハードに密着した頑張れるところ、あるいは販売される国の文化的背景にあわせていくところですとか。
――個人的には、Pixel以外でも録音の書き起こしができるようになることを望んでいるのですが……。
中江氏
もう少し(チップセットの)性能が上がれば実現できると思っています。
小林氏
録音アプリそのものは、あまり利用率は高いアプリものではないですね。必要な人はダウンロードして使ってるっていう。
ただ、Pixelと似たものを開発しても……という想いもありますし、やってみようかという考えもあります。
ロバート(シャープCEOのロバート・ウー氏)からも「生成AI、もっと頑張れ」と声もかかっていますし。生成AIは専属チームで取り組んでいますので、「え、これ、実は生成AIなの?」といったものとか……。
――エモパーもいますし、ロボホンもありますし。
中江氏
最新チップセットだから、こういうことができますよ! というものではなく、自然なもの、体験の提供を目指したいですね。
――ありがとうございました。