三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

デザイン一新の「AQUOS R9」、カメラの実力に迫る

 シャープからユニークなデザインのスマートフォンが登場した。三宅一成氏の手によるルックスを採用したこの「AQUOS R9」は、ライカとの協業によるカメラを搭載し、ブランドアンバサダーとして故松田優作氏を起用。話題を呼びそうな端末になっている。今回は「AQUOS R9」を手にブラブラと撮影を楽しんでみた。

 スペックや価格など詳細は本誌別記事を参照して欲しい。

カメラはライカとの協業

 「AQUOS R9」のカメラはライカと協業したユニットが搭載されている。その部分はユニークなデザインになっており「自由曲線」を取り入れて、丸でも四角でもない「緩い」イメージで、どことなく柔らかく人に近い雰囲気の意匠に仕上げられている。

 気になるカメラだが、ライカ監修のHEKTOR(ヘクトール)レンズを採用する。

 標準カメラ、広角カメラ、インカメラの3つに、5030万画素かつ像面位相差オートフォーカスとなっている。

 メインとなる標準カメラは、全画素を用いた像面位相差オートフォーカスかつ光学式手ブレ補正対応に仕上げられているのが特徴だ。またAIによる動体予測被写体追尾も搭載されている。

 端末は全体的にソリッドでシンプルな形状で、エッジがやや角張っていて、ケースなしでも撮影時にとても持ちやすい印象を受けた。高級感もあり、大人の端末という雰囲気である。

画角比較カット

 x0.6、x1、x2、最大の8倍デジタルズームのカットを比較してみた。x0.6、x1はシャープネス強めだがまずまずの写りで色味も良好だ。それ以上だと発色も微妙になり、塗り絵的な描写になってくる。

 スクリーンに表示されるx0.6、x1、x2の範囲で写すのが賢明だろう。ただこの切り替えがスローなのだ。タップしてからワンテンポ遅れる感じなので注意が必要である。

「ポートレートモード」も搭載

 背景をぼかすことが可能なポートレートモードももちろん搭載されている。

 撮影時にスクリーンで確認するとエッジは曖昧に表示されるが、仕上がりはちゃんと境界を判別して、ぼけてくれていた。このような表示が多かったので写りが心配になった。人物の美肌とボケ量をスライダーで調整可能だ。

「ウォーターマーク(透かし)」機能も搭載

 ライカと協業しているスマートフォンの流行は、撮影カットに「ウォーターマーク(透かし)」を入れ込むことのようだ。この「AQUOS R9」にも「ウォーターマーク」としてカメラの設定からそれのオンオフが可能だ。

 しかも「AQUOSロゴ」、「オリジナル」、「日時」、「LEICA HEKTOR +撮影情報」の4種類も選ぶことができる。それぞれの組み合わせも可能という充実ぶりである(笑)きっと多くの人は「LEICA HEKTOR + 撮影情報」を選ぶに違いない。

「AQUOS R9」でブラブラ実写スナップ

 ソリッドで持ちやすい「AQUOS R9」を手にアチコチをブラブラと撮り歩いてみた。
 スクリーンも見やすく、バッテリーの保ちもよく、焦点距離の切り替えが遅いことを除けば、比較的サクサクと撮影することができた。設定で「すばやく起動」をオンにしておけば電源キーの二回押しでカメラを立ち上げられるのでオススメだ。

空と池の発色もよく、近景から遠景まで好ましい写りだ
餌をねだるコイ。連続でシャッターを切ったがほどよいレスポンスで撮影することができた
蓮のシーズンだ。デジタルズームしてその花を捉えたが、エッジ部分に描写がおかしいところがある。色味がいいだけに惜しいところである
提灯の間から日光が差しているが、この程度の逆光ならイヤなフレアやゴーストの発生は感じられなかった。モニュメントのディテールもいい印象だ

 ポートレートモードはスクリーンでのプレビュー時に境界が曖昧に表示される。しかし写りはなかなかの仕上がりに。ボケ量はスライダーで調整可能だ。

果物を売る露店を撮った。ミックス光源だったが概ね見た目に近い写りになった。色味はちょっと暖色傾向になった
夕日を浴びる橋脚を露出補正でアンダー目に撮影。1/3から半段アンダー目だとライカっぽい仕上がりに

 電源キーのダブルクリックでカメラが即座に立ち上がるので、ブラブラと街中を歩くスナップ撮影で「!」と感じた被写体を瞬時に撮影できるのがいい。オートフォーカスも正確で速く感じた。

マニュアルモードにして薄暮の月を撮った。ISO感度は419と記されているが、ややノイジーな写りとなった
こちらの夜景はISO感度951となった。色味はまずまずだがザラザラ感が若干気になる写りだ
壁に書かれていた絵を撮ったが、梅雨の曇天下での色合いとシャープネスがいい感じになった
遊具を撮ったが、その素材感と発色が見事。ピント面の精細感が気に入った
夜のラーメン店でチャーハンを撮ったが、オートホワイトバランスが微妙で、色味とシズル感が残念な印象に。ややメシマズ写真となった
花の蜜を吸うハチに迫った。動き回る小さな昆虫もシャープかつその体毛までしっかりと写しとれた。花の色合いもいい感じに
夜間に開放された古民家を訪れた。提灯とライトアップの光というミックス照明だったが、雰囲気よく夏の夜を撮影することができた。ISO感度は6400まで上がったが、思いのほかいい仕上がりとなった

まとめ

 「AQUOS R9」は優しげなルックスが特徴だが、搭載されているカメラも同様の印象だ。

 標準カメラと広角カメラの写りはまずまずで、デジタルズームの領域まで踏み込まなければ問題ない描写だと感じた。

 威圧的にいくつもカメラが並ぶスマートフォンが多い中、ユニークなデザインの端末がほしい人にはいい選択肢になる一台だろう。もし「PRO」が登場するのであればどのようになるのか楽しみである。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau