【MWC Barcelona 2026】

MWC26で語られた、KDDIのAIを活用したネットワーク戦略とデータセンターを手がける強み

 MWC Barcelona 2026でブースを出展中のKDDI。ここでは、グループインタビューの内容をもとに、KDDIが推進するAIを活用したネットワーク構築の考え方、AIデータセンターの使い方についてまとめていく。

AIでネットワークを制御、作業にかかる手間を約99%削減

 KDDI、およびKDDI総合研究所は、2月18日に「複数のAIが協力するエリア最適化技術を全国の基地局に導入」したことを発表している。

 基地局やエリアごとのプロファイルに合わせた個別のチューニングを人力でできることが理想ではあるが、全国規模での作業には限界があるため、AIを活用し、個別チューニングが全国規模で展開可能になるとのこと。導入箇所においては、作業にかかる手間を約99%削減することに成功している。

 AIを活用し、周辺の使用状況に合わせて通信のパワーを動的かつきめ細やかに抑えるといったトライアルも行われている。従来は時間帯で区切って出力を調整するといった方法が取られていたが、AIの導入によって、より効率的に電力を利用できるとされる。

 また、通信障害などが発生した場合は、切り離しや復旧作業にAIが用いられる。原因の特定、対処の判断、実行までを行わせる取り組みが進められており、ハードウェア交換といった物理的な作業を除き、最初から最後まで極力人を介さないネットワーク運用を目指す。

 KDDI コア技術統括本部 技術企画本部 副本部長の佐藤卓郎氏は、「ネットワーク整備におけるAIの活用は、単純に既存作業を自動化するだけではなく、これまでエンジニア数や手間といった問題から、手を出したいけど出せなかった領域にまで踏み込み、より高度なネットワーク最適化の実現を目指す」とコメントしている。

KDDI コア技術統括本部 技術企画本部 副本部長の佐藤卓郎氏

 ただし、AIにネットワーク制御を任せ切ってしまうと、海外のインフラベンダーのAIモデルに丸投げしてしまう状態となり、日本特有の環境に最適化されたものにはならないという。

 KDDIでは、そこに通信キャリアとして培ってきたチューニングのノウハウを加えることで、AIの効力を何倍にも引き上げるアプローチを重視している。

 また、佐藤氏は「ネットワークにAIを掛け合わせていくことで、通信事業者各社のチューニングには今後更なる差が開いてくる」としている。

 なお、現時点でAIを活用したネットワーク制御技術の外販予定はないとのことだが、ネットワークコンサルテーションのパッケージとして売り出し、その中にAIネットワーク制御技術が含まれていく可能性はあるとのことだ。

5G SAは面展開、ミリ波はスポットでエリア構築を進める

 Opensignal社の調査にて、通信体感分析で3連覇しているKDDI。5Gエリアの構築について、改めて5G SAの面展開を進めながら、ミリ波のスポット展開を進める方針がうかがえた。

 5Gサービスインの当初から、KDDIはNSA方式でのネットワーク構築を進め、その上にSA化を進めていく方針をとっている。周波数帯域幅の都合でSAのパフォーマンスがNSAを下回ってしまう(本来の5Gのパフォーマンスを発揮できない)ことを避けるためだ。

 現在はSub6のエリアが街中に広がってきていることを受け、ローバンドも含めたSA化を推進している最中。今年度末に人口カバー率90%の目標を掲げており、進捗も好ましいとの回答を得られた。

 一方、直進性が強く、面でエリアを構築することが困難なミリ波については、ユーザーが多く集まる場所に特化した対策を進めている。

 スタジアムやイベント会場での展開に加え、JR東日本と協力し、東京駅の新幹線ホームなどもエリア化。新幹線に乗る直前に、移動時間に視聴するコンテンツを数秒でダウンロードするといった体験の実現を狙っている。佐藤氏は、将来的には空港などでの展開も理想と話している。

 ただし、将来的にSub6帯でも容量が厳しくなる時期が来るとの見立てから、スポット的にミリ波エリアを構築する一方で、レピーターの導入も進められている。

 KDDIと京セラが共同で開発するレピーターは、電波を増幅するだけでなく、複数のルートを自動的に切り替える機能や、障害物を検知する機能を備えており、直進性の高いミリ波の弱点をカバーできるという。

 新宿西口で行われているフィールド試験では、4区画ほどを面的にカバーできることが確認されており、体験した端末メーカーからも高い評価を得ているとのことだ。

 なお、ミリ波の普及には、対応端末の増加も不可欠。KDDIとしても、端末メーカーに対してミリ波対応端末の投入を要望しており、動画コンテンツを超高速でダウンロードできるといった、わかりやすいユーザー体験の提示が響いているとのこと。

 近い将来、iPhoneといった、一部地域ではミリ波対応モデルを展開している端末については、日本導入モデルもミリ波に対応してもらえるよう努力していく旨の回答を得られた。

KDDIが積極的にAIデータセンターに取り組む意義

 シャープ堺工場の跡地に構えられた堺データセンターの稼働開始も記憶に新しいように、KDDIは積極的にデータセンター事業を進める企業でもある。

 最大の特徴は、計算資源を提供する「AIデータセンター」と、ネットワークの接続拠点となる「インターコネクションデータセンター」の2つを組み合わせて価値を提供している点だ。

 KDDIは「テレハウス(TELEHOUSE)」ブランドとして30年以上の歴史を持ち、ニューヨーク、ロンドン、バンコクなどで多数のインターコネクションデータセンター(相互接続拠点)を展開している。

KDDIブースでは堺データセンター内部の模型も展示

 KDDI コア技術統括本部 ソリューション技術運用本部 副本部長の田中仁氏は、「AIデータセンターは、GPUなどを設置してデータが生成される場所。そこで生成されたたくさんのお客様のデータを送る役割として、インターコネクションデータセンターを打ち出している」とし、「AIデータセンターだけでなく、これまで作ったインターコネクションと2つを組み合わせて価値を提供していこうというのが目的」と説明している。

KDDI コア技術統括本部 ソリューション技術運用本部 副本部長の田中仁氏

 今後、IoT端末などで収集したデータとAIを組み合わせる「フィジカルAI」の時代においては、ネットワークとデータセンターの連携が不可欠になるとの考えも示された。

 田中氏は、「IoTのデータが基地局から入り、接続性が高いインターコネクションデータセンターに入り、AIに入っていく。作り出したものをまた送り出すという、入りと出のネットワークの関係性をデータセンターと合わせて考えることが重要」と語り、データを「収集」して「処理」し、「送り出す」という一連のエコシステムを構築できることがKDDIの独自性であるとしている。

 他社の分散型ネットワーク構想との違いについても、KDDIにはすでに大阪中央や大手町などに強力な接続拠点(コネクティビティサイト)があることを優位性として挙げている。

 また、日本の安定した電力網とKDDIのインフラは、海外企業からも熱い視線を集めているという。電力事情が厳しい東南アジアや韓国、中国、台湾などの企業に対し、日本のAIデータセンターは非常に魅力的で、海外で計算リソースがない時に、堺まで持ってきて、日本と連携しながら、AIの面から顧客を支えるといった構想もあるとのことだ。

 ほかにも、KDDIは、関東や九州へAIデータセンターを拡張し、それらを海底ケーブルや大容量通信でつなぐ「AIデジタルベルト」構想を発表しており、田中氏は、「堺だけで取れないものを関東や九州で同じデータを持たせるなど、耐障害性を上げていきたい」と述べ、データセンター間を高速通信でつなぐことで、セキュリティ面でも強固な基盤を作り上げる狙いがあることを語っている。