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KDDIの「大阪堺データセンター」稼働開始、1年足らずでシャープ跡地を“居抜き”できた理由とは
2026年1月22日 19:54
KDDIは、大阪府堺市において「大阪堺データセンター」の稼働を開始したと発表した。まずはAI処理を担うためのGPUクラウドとして提供される。
産業・商業の集積地である大阪都市圏近郊に位置する、シャープ堺工場跡地の既存設備を再利用しており、AI時代に対応した大規模データセンターが短期間で構築された。
シャープ工場跡地活用で半年で構築
大阪堺データセンターは、2025年4月、正式にKDDIが取得したシャープ堺工場の跡地に設けられた。大阪の主要エリアから約15kmという立地で、低遅延かつ信頼性の高いクラウド環境が提供される。
そうした大阪堺データセンターの大きな特徴は、既存設備の活用と、ソブリン性(主権性)をサポートしたAI基盤だ。
既存設備の活用とは、具体的に電力設備や冷却設備のこと。シャープ堺工場時代は、大型の液晶パネルが生産されており、テレビ作りの一大拠点。その分、しっかりした電力を関西電力から受けられる設備もある。
7万7000ワットの電力を受けると、複数の変圧器を経由して最終的にサーバー向けの電圧に調整されているという。
液晶作りの際にも水は用いられており、工業用水の取得だけではなく、建物内の配管もまた、KDDI側は多く流用したという。
たとえば変圧器も、価格は数億円し、調達から設置完了まで3年はかかるという代物。シャープ時代から受け継いだ設備の中でも「目玉」と言っていいものだ。
居抜きで成功できる実力
KDDIの松田浩路社長も「居抜き」と表現するほどだが、居抜きを成功させるには、どの設備は活用できるのか見抜く力が必要だ。
auやUQ mobile、povoといった個人向けの携帯電話サービスで親しまれるKDDIだが、データセンター事業も30年以上にわたり、「Telehouse(テレハウス)」というブランドで展開してきた。
国内外で、多くのデータセンターの構築・運用を手掛けており、その分の知見もある。だからこそ、先述したような変圧器の価値を見抜き、データセンターとして活用できると判断した。その結果、通常は3~4年かかるとされるデータセンターの構築を、昨年4月からの1年足らずという短期間で成し遂げた。
NVIDIA GB200 NVL72と水冷技術
施設内には、高度な計算能力を持つ「NVIDIA GB200 NVL72」などのAIサーバーが設置されている。前世代と比較して2倍以上の学習性能を持つ基盤になるという。
冷却方式には、従来の空冷に加え、水冷方式の一種である直接液体冷却が導入された。性能が高まったGPUが集まり、空冷ではとても発熱対策が追いつかないためだ。
担当者によれば、CDUと呼ばれる設備がサーバーラックの横に配置され、配管を通じて冷却水をラックへ送り届ける。ラック内にあるサーバー内部の配管が、GPUを冷却する金属にまで水を届けて、熱を外へ運ぶ。
このとき、サーバー1台1台に配管を繋げるのであれば、相応の手間が発生することになる。しかし今回は、電力や通信だけではなく、水冷用の配管まで標準化された仕様がサーバー側に採用されている。つまり、スタッフは、サーバーをラックに入れるだけで電力・通信に加えて、水の流れも繋がるのだという。
データのソブリン性
大阪堺データセンターには、グーグルの生成AIモデル「Gemini」のディストリビューション版が配置される。
とある企業が「Geminiを使いたいが、データを日本国内に留めておきたい」と考えた場合、大阪堺データセンター内の「Gemini」を利用すれば、データのソブリン性(主権性)をクリアしながら管理できることになる。機密性の高いデータを国内で保管・管理したまま、AIの学習や推論へ活用できる環境が提供されることになる。
なお、大阪堺データセンター上の「NVIDIA GB200 NVL72」を提供するクラウドサービス「KDDI GPU Cloud」は、1月22日からトライアル提供が開始され、4月1日からサービス申し込みの受付が開始される。
最大100Gbpsでインターネットに接続できるほか、機密性の高いデータを扱えるよう閉域網サービス「KDDI Wide Area Virtual Switch 2)も利用できる。
製薬・製造・国産LLM開発などで活用
大阪堺データセンターの活用事例として、複数のパートナー企業との取り組みが発表されている。
製薬
製薬分野では、武田薬品工業およびKDDIグループの医用工学研究所(MEI)とともに、2026年4月以降、医療ビッグデータの分析プロジェクトが実施される。
国内完結の環境でデータを安全に学習させ、医療特化型LLMによる推論を行うことで、テキストデータからの情報抽出や希少疾患の兆候可視化などが目指される。
国産LLM
AI開発分野では、グループ会社のELYZAとともに、領域や企業に特化した国産モデルの開発から推論までが一気通貫で提供される。
日本社会でAI加速担う
KDDIの大阪堺データセンターは、経済産業省の「クラウドプログラム」の助成を受けて整備され、国内のAI開発基盤としての役割を担う。KDDIはこれを「最先端AIデータセンターへの転生」と表現し、日本のAI社会実装を加速させる拠点と位置づけている。
当面は、いわゆるHardware as a Serviceとしての提供となる。21日には、ソフトバンクがAIデータセンター向けのソフトウェアスタック「Infrinia AI Cloud OS」を発表済みだが、KDDIも、NVIDIAのAI Enterpirseなどのソフト上ァを今後提供する。仮想レイヤーなども実装していく予定。また、ソブリン性の担保につながるグーグルのGemini for GDC(Google Distributed Cloud)
が導入されており、グーグルのクラウドサービスを国内拠点のデータセンターで使いたいというニーズに対応できる点も、大きな特徴とされている。


















