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ドコモ、MNPとARPU反転で攻勢へ AIエージェント「SyncMe」や新金融グループ設立で成長加速
2026年5月8日 19:44
NTTドコモは8日、2025年度決算会見を開催した。2025年度はコンシューマ通信事業への投資により減益となったものの、2026年度はスマートライフ事業などの成長により増益を見込む。MNPの転入超過やARPUの反転といった顧客基盤強化の成果を足がかりに、今後は金融事業の再編や次世代AIエージェント「SyncMe」の提供を通じて新たな価値創造を推進する。
決算は減益も、MNPとARPUはプラスに転じる
2025年度の営業収益は前年比3.9%増の6兆4581億円、営業利益は同7.7%減の9421億円となった。販売体制の強化やネットワーク強靭化への投資が響いた形だが、2026年度は営業収益6兆8210億円、営業利益9430億円と増益に転じる見通し。
コンシューマ通信事業においては、短期解約を前提とした顧客獲得を抑制し、獲得コストの効率化を図りつつも販売体制を強化したことで、2025年度下期にMNPの転入超過を達成した。
今後は顧客規模を維持するだけでなく、顧客とのエンゲージメントを高めて強固な顧客基盤を構築する方針。大容量プラン「ドコモMAX」をはじめ、金融やイエナカなどの付加価値サービスを通じたクロスユースを促進し、中長期的にロイヤルユーザーを2000万人超へと拡大していく。
前田義晃代表取締役社長は「MNPは下期でプラス化し、ドコモMAXも目標の300万契約を突破した」と語り、顧客基盤の回復をアピールする。2025年6月に提供が開始された「ドコモMAX」は、選べる特典の提供なども奏功しており、2026年度には500万契約以上を目指す。
エンゲージメント向上の取り組みにより、顧客あたりの月間売上高を示すARPUも前年比20円増の3960円と反転を果たした。2026年度はさらに50円増の4010円が目標に据えられ、将来的にはロイヤル化による高利用を促進することで4100円を超える水準を目指す。
これによりモバイル通信サービス収入の減収幅は着実に縮小しており、2026年度に底を打ち、2027年度には反転する見通しが示された。
金融を中核に「NTTドコモ・フィナンシャルグループ」始動
スマートライフ事業では、金融領域を中心に成長が図られる。2026年7月には「NTTドコモ・フィナンシャルグループ」として新たな事業体制が開始され、銀行を中心としたサービス間連携が一段と強化される。前田社長は「決済と銀行を一気通貫で提供し、機動力アップで事業成長を加速する」と述べた。
顧客一人ひとりの事情を理解して寄り添う「金融AIエージェント」の導入も進められ、2030年度には金融事業の収益倍増が目指される。また、法人事業も成長領域の拡大により2025年度に営業収益2兆円を達成し、今後も年率10%の持続的な成長が見込まれている。
5Gエリア拡充とネットワークのAI運用
通信インフラの改善では、5G基地局数が2025年度末で5万2300局に達し、2026年度はさらに構築ペースを加速する。3G周波数の4G転用により通信容量が1.5倍に拡大され、主要都市中心部の96%の箇所で100Mbps以上が記録されるなど体感品質の向上が進む。
課題となっていた鉄道利用時の通信品質改善も進められ、快適に利用できる路線は2025年度末の28路線から、2026年度末には39路線へと拡大する予定。
次世代AIエージェント「SyncMe」がもたらす顧客体験
AI時代の新たな価値創造として、次世代エージェント型サービス「SyncMe」のパイロット版の提供を開始した。単なる応答型のAIではなく、ドコモが蓄積した行動データなどをAIが学習し、顧客を深く理解することで、最適な体験を先回りして提案する仕組み。
前田社長は「使えば使うほど理解が深まり、さらに便利でお得になる」とその利便性を説明する。将来的にはこのAI基盤がパートナー企業向けにも展開され、各社のエージェントと連携したプラットフォームの高度化が図られる。
主な質疑応答
――先日の「井上尚弥 vs 中谷潤人」の視聴者数はどのくらいだったか。また、ドコモMAXへの契約者数増などの影響はあったのか。
前田社長
視聴者数自体はちょうど100万人ほどで、ペイ・パー・ビューとしては日本最高でした。ドコモMAXの契約者の方々にも相当ご覧いただきました。
ドコモMAXの契約者数増に、かなりの効果はあったと思っています。正確に視聴目的で入られたかどうかは追いきれないため、ご容赦いただきたいです。
――ahamoが開始して5年経った。直近の契約者数を教えてほしい。また、ARPUの向上という話も出たが、ahamoの料金はこのままなのか。
前田社長
ahamoの契約者数は、伸びています。新規でご契約いただくお客様の半数強がahamoを選ぶという状態です。大体、現在800万契約を超えるくらいのレベルです。
料金改定に関しては、ahamo単体で考えるべき話ではないと思っています。やはり様々なコストが上がってきていることは事実なので、価格改定をするかどうかについては、考えていかなければいけないと、否定を全くできない状態だと思っています。
旧料金プランを含めると運用の負担も相当高まっている部分もあります。提供条件などをうまく整理しながら、お客様にご理解いただける取り組み方をしていけるのかということを、相当考えなければいけないです。
システムの対応も行っていかなければいけないため、まさに今いろいろと考えているところですが、現時点では検討中だとご理解いただければと思います。
――値上げに踏み切れない要因は。
前田社長
特に要因があって値上げできないと言っているわけではありません。古いプランを含めて一律どうするという簡単な話ではなく、しっかり考えたうえで踏み切りたいと思っています。
――MNPが好調ということだった。一方で他社は、10万単位で減らしているという話もあり、短期解約を防ぐための措置でもあるという話をしているキャリアもいた。短期解約を避ける上で、どのような工夫をしているのか。
前田社長
irumoの0.5GBプランをやめるというのも、元々、短期解約を抑制したいがためにやめるということでした。確かに顧客の獲得競争のなかで、様々な取り組みを行ってきています。その中での強度を強くすればするほど、確かに一定量、短期解約の方々が入ってきてしまっているということは、事実です。
各社、競争していく中で、短期解約が結果的に取れてしまうということがあるのも事実です。これをなんとか抑えたいということで、昨年度末に、各社対応されていますが、カエドキプログラムの手数料設定を入れたということも工夫の一つです。
与信の仕方ということを、今までのお客様の履歴にもとづいた形で、割引の条件を提供するかしないかということを決めてみるといったことに取り組んでいきたいと思います。
いずれにせよ、我々としても短期解約をなんとか抑えたいということなので、他社がどういうような形で獲得に対して、取り組んでいらっしゃるのかしっかり見た上で、どの程度の強度で獲得をしていくのかコントロールすることで、短期解約と思われるお客様がなるべく入ってこないような取り組みを2026年度にしていきたいと考えています。
――KDDIとソフトバンクは販促費を使わずに囲い込む戦略をとっているが、ドコモは2社とどう戦っていくのか。
前田社長
出ていくユーザーを抑えるという意味で、ロイヤルユーザーの拡大を目指すことは大前提です。他社の出方を見ながら戦っていくことで、効率化をしながら獲得をしていきます。獲得できたユーザーに提案しながらロイヤルユーザー化を目指していきます。
――今年度の販促費用はどうなるのか。
前田社長
できる限り効率化していきたいと思っています。一方、カエドキプログラムなどの過去からの流れによるものはコストとして計上しなければいけないため、今年度は継続し、来年度には改善するものと考えています。
それ以外の部分については、昨年度に販促費をかけましたが、どのような形でオペレーションしていくことでパフォーマンスアップできるかが見えてきました。効率化を図る改善をしていきたいと考えています。
――ネットワークについて他社並みに基地局の数が増えたらネットワークが改善するものなのか。
前田社長
マクロで見たら、設備容量を確保することは大事です。チューニングも含めてオペレーションのレベルも上げていくということも大事だと思っています。しっかり全体の品質を向上させていく取り組みを進めていきます。
――SNS上でahamoのネットワークだけ遅いなど言われている。
前田社長
それはないです。あの噂だけはどうにかならないかと思っています……。
――ネットワークの数が増えているが、ネットを見ると繋がらないという声が多い。ユーザーが体感するまでにタイムラグがあると思う。ユーザーの認知をどのようにしていきたいのか。
前田社長
もともと遅効性があるものです。もっとコミュニケーションを積極的に取っていくべきだと考えています。たとえば、東京メトロの駅に5Gの対応ができたというポスターを張り出したり、良くなったエリアに対してきめ細やかなコミュニケーションを取っていきたいと思います。
――5G SAのエリア拡大について、具体的な数値や目標が示されなかった。いつごろ出るのか。
前田社長
今年度かけて他社になるべく追いつきたいと思っています。5G導入時の初期に入れた親局自体が5G SAに対応していないケースもあるため、交換していくことも含めて、頑張って進めている最中ではあります。
今年度かけてなるべく他社さんと同じようなレベル感に持っていきたいと思っていますが、重要なのはたくさんの人が集まるところの対応をまず急ぐということなので、そういった意味では首都圏、大阪府、愛知県あたりからしっかり進めるということが大事かなと思っています。
――d払いの決済回数はPayPayに対して大きく差がついていると思う。どのようなところを課題と捉えて、どう取り組んでいくのか。
前田社長
コード決済について、差がついているという点はその通りだと思います。しかし、我々のパフォーマンスの追いかけ方という意味では、dカードとd払いの両方で取扱高をどう最大化していくかを考えています。
2025年度も17兆円を超えるところまで取扱高を拡大しているため、ポイ活も含めて、dポイント経済圏の中でお使いいただいたほうが、お得に便利にご利用いただけるという環境自体はかなり大きく整ってきていると思っています。そうでなければ年間で2兆円程度の取扱高の成長というのは、なかなか作れないと思います。
これからもこのペースで伸ばしていけると思っていますし、できればそれ以上のペースを作っていきたいと思っています。そのために、決済だけではなく、銀行との連携でさらに全体を大きくしていきたいと、取り組んでいます。PayPayに負けないように頑張ります。













