【MWC Barcelona 2026】
【MWC26】ドコモ前田社長インタビュー:AIエージェント「SyncMe」から5G SAの本格展開まで、ドコモの次なる一手
2026年3月3日 07:55
NTTドコモは、MWC26 BarcelonaにNTTグループとして出展。イベントに合わせ、コンシューマー向けのAIエージェント「SyncMe(シンクミー)」や、5Gコアの設計、構築の自動化、さらにはネットワーク品質を指標化する「CNX指数」など、多数のサービスやソリューションを発表した。
ここでは同社代表取締役社長の前田義晃氏に「SyncMe」を導入する狙いや、本格展開までの道筋を聞いた。
また、前田氏は現在改善を続けているネットワーク品質や、本格的な拡大を目指す5G SAの展開方法についても語っている。ここでは、その一問一答をお届けする。
――最初に、SyncMeのコンセプトや狙いを教えてください。
前田氏
元々、携帯電話自体が究極のパーソナルエージェントですが、それを進化させていくことが我々のミッションであると、ずっと考えていました。今持っているアセット(資産)と世の中で勃興しているテクノロジーを組み合わせることで、その世界を作れることが見えてきたので「じゃあやろう」ということになりました。
これをどういうふうに発展させていくかですが、今の「SyncMe」はどちらかと言えばユーザーに寄り添って、自分と一緒にいるものですが、相棒のように他愛のないやり取りをし、安心感や豊かさを感じていただけるようなサービスにしていければと考えています。
いろいろなことを理解していますし、便利なことを実現していける。
たとえば、私が誰を推していて、それをするためにいくら使っていますという情報をもとに、「どこそこでライブがあります」と教えてくれる。
忙しくてやっている余裕がない時には、代わりに買ってくれる。エージェント同士がやり取りするということはほかでも言われていますが、そういったものを、コンシューマーベースのやり取りの中で作っていきます。
プラットフォームとしてどう共有していくかという話はありますが、これだけのデータアセットがあり、いろいろなエージェントが出てくる環境も需要があると思います。
この環境を使っていただきながら、SyncMeの中でいろいろなエージェントが出てくることも狙いたい。
また、SyncMeに限らず、ビジネスサービスプラットフォームのほかの領域でエージェンティックなサービスに活用できるようにする方向で考えていきたい。たくさんのプレイヤーが入ってこれるプラットフォームに仕立て上げていければと考えています。
――ユーザーの属性や趣味嗜好のデータは、dポイントに紐づいているものですよね。匿名化したデータはマーケティング用に販売していると思いますが、ある意味、SyncMeではユーザー自身がそのデータを役立てているような形になるのではと思いました。
前田氏
基本的にはマーケティングデータでした。サービスとして吸収しながら、それをお客様に価値提供する仕組みはこれまでなかったものです。生成AIが出てきて、ここまでのことができるようになりました。
――d払いやdカードの決済データや位置情報でここまで個人を推定できるのは驚きました。ただ、それだとリアルなデータは取れますが、逆にネットの中での行動が反映されないと思います。こうした点はどう解消していくお考えでしょうか。
前田氏
プライバシーの課題を解消するという前提ですが、ほかのプレイヤーが持っているデータを共有するというのはあってもいいのではないかと思っています。実際、僕らもGeminiのAPIを叩いてますし(Googleの持つ情報と連携しやすいという意味合い)。
――現状ではモニターを募集している段階ですが、収益化への道筋はどのようにお考えでしょうか。
前田氏
まだ決め切っているものはありませんが、かなり高度化している中で、それなりにフィー(利用料)をいただくことは考えていかなければいけないと気がしています。
サービスを運営する上でコストはかかりますし、API利用料だけでもどんどん高くなっています。コスト構造がある中で、一定のお金をいただくことは考えなければなりません。
また、プラットフォームを拡張し、そこでビジネスとして収益を出すなど、いろいろなビジネスモデルが考えられます。
――アプリは端末にプリインストールしていく方向でしょうか。
前田氏
そうですね。できるものはしていきます。端末側と連携するところまでやれるとおもしろいと思っています。
――先週発表のあったGalaxy S26シリーズにも、エージェント型AIが搭載されていました。ああいうものと、きちんと連携できているとよさそうですね。
前田氏
したいですね、ぜひ。
――ユーザー数や収益面で目標はありますか。
前田氏
収益化もしなければなりませんが、ここまでできたのはお客様に使っていただけたからです。「ここまでできるのはすごい」と言っていただけるものを作りたい。純粋に、そういう気持ちでやっています。
ドコモの方にはすべからく使っていただく形になってほしい。LLMのエンジンを作っているようなところにも、ローカルのお客様を理解できる機会やアセットがあるところと取り組むと、こういう発展形があるのかということを示せればいいなと思っています。
生成AIを5Gコアネットワークで
――話は変わって、MWCでは5Gコアの設計を生成AIで行うという話もありました。
前田氏
5Gコアにはものすごいノード数があり、それが連携しています。設定を人力でやるのがものすごく大変になっていました。
どう連携させるかという設計と設定をAIに任せると、稼働が90%ぐらい削減できる。
90%ですよ。今まで何をやってたんだというぐらいのレベルです。オートノマス(自動化・自律化)まではまだ行っていませんが、設定を反映させるレベルではそのぐらい削減できます。
――ネットワークの運営コストに効いてきそうですね。
前田氏
運営コストと、あとは品質ですね。
――品質という面だと、CNX指数というものも発表されました。これは、ネットワーク品質の改善に効くものという理解でよろしいでしょうか。
前田氏
基本的には、(ドコモを)やめていってしまった方の不快感を数値化します。
その状態と同じようになっているのはどこか、同じような状態になっている人は誰かを特定して、それを改善するためにやっています。いつも基地局数がどうという話をしちゃってますが、それはそれでベーシックなこととしてやりつつも、一番重要なことは品質が悪いところをいかに減らすかです。場所や人を明確化したうえで対策をしていくのが重要です。
物理的な課題もあるので、すぐにできるかどうかはありますが、いかに熱っぽく取り組んでいけるか。
我々の品質基準に達していないサイト(基地局のある場所)があったら、まずはそこに手を打つ。CNXスコアは、そういう形で利用します。
トラフィックの増え方から見えてくることもあるので、手を打つことは続けていきたいですね。それがお客様の体感や、使い続けるかどうかに直接つながっていきます。
――これは、ネットワーク品質の低下が問題視されたあとに開発が始まったのでしょうか。
前田氏
私が社長になってからですね。あるところからご提案いただき、これはいいということでやることになりました。
――その品質向上では、5G SAの導入効果も大きいと思います。現状ではエリアを広げていますが、まだ他社に追いついていない面があります。それ以上に、オプションになっているので利用率が低いという問題もありそうです。この点は改善されるのでしょうか。
前田氏
SAのカバレッジを広げるのは、がんばってやっていきます。26年度は本格的に広げたい。どちらかと言えばアーバンエリアで力を発揮するので、そちらを中心にしていきます。ただ、おっしゃるように、使ってもらう人が増えなければ意味がありません。
今の提供形態の話になりますが、そもそもお金を取っていませんし、正直取る気もありません。うちもこういう状況になり、改めてネットワークの重要性を感じています。
5Gのテクノロジーとしてのポテンシャルを実装するには、その状況で使える方を増やす必要があります。そこにハードルを設けていてどうするんだという話です。ですから、SAを普通に5Gとしてお使いいただける環境を作る方向感で考えています。
あとは、どういうふうにお客様に登録してもらうかのオペレーションや、基本契約にできる、できないのシステム的な準備もあります。SIMを変えなければいけない人もいますからね。ただ、これは、できるところから進めたいと考えています。
――機種変更の時に変えてもらうのが一番簡単ですかね。
前田氏
メーカー端末(オープンマーケットモデル)を買って自分で設置し、SAにすると使えなくなったという話もあるようです。うちの連中は真面目なので、「急に切り替えたらヤバイ」という話になってしまう(苦笑)。
ただ、お店に来ていただき、うちから端末をお買い求めになった方にはできる話です。今は将来有料になるかもしれないので許可を取るスタンスですが、そうじゃない。今はどんどん付与していきましょうという話になっています。
――一方で、その端末の買い替え自体が価格的にしづらくなってきているという話もあります。メモリーの価格も上がっている中で、何か考えていることはありますか。
前田氏
今、いろいろと議論されていますが、ああいった場(総務省の有識者会議)でも意見は表明しています。
お買い求めしやすい形でご提供しようとして物議をかもしてしまいましたが(苦笑)、カエドキプログラムもやっています。事業なのでバランスするものでなければなかなか難しいのですが、そのバランスはできる限り担保できる方向に行けないかと思っています。
議論の中で、「期間拘束のようなことをやれませんか」ということは他社もおっしゃっていますが、我々からメリットをご提供するのであれば、それに対して使い続けていただくバランスは取っていきたい。
これだけ値段が上がってきていますが、世の中の進化をスマホやネットワークが支えているのも事実。それがあまり進まなくなると、世の中の進化が止まってしまいます。
――有識者会議では、欧米のように料金プランに連動して割引を決めてもいいのではという話も出ていました。
前田氏
バランスさせる考え方の1つであることは事実だと思いますし、実際に海外では行われています。
日本の考え方の流れの中で、今やるべきことは皆さんで議論しながらになるので、サッとすぐにやりましょうと単純には言えませんが、安定して新しいサービスをお使いいただくためにもいろいろと変えなければいけないことが出てきているのは事実だと思います。
――本日はありがとうございました。








