法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」はAI活用で新しいユーザビリティを開く

 「Googleがつくったスマートフォン」として、国内でも人気が拡大している「Pixel」シリーズ。2023年モデルとなる「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」が発売され、筆者も実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。

Google「Pixel 8」、約150.5mm(高さ)×70.8mm(幅)×8.9mm(厚さ)、約187g(重さ)、Obsidian(写真)、Hazel、Roseをラインアップ
Google「Pixel 8 Pro」、約162.6mm(高さ)×76.5mm(幅)×8.8mm(厚さ)、約213g(重さ)、Porcelain(写真)、Bay、Obsidianをラインアップ

AI活用でスマートフォンが変わる?

 今年はさまざまなジャンルにおいて、AIに関する話題が増えている。昨年、生成型AIの「ChatGPT」が公開されたことで、一般メディアでもAIが取り上げられる機会が増えているが、パソコンのWindows 11にも今年11月から配信が開始された「Windows 11 23H2」に「Copilot in Windows」が搭載され、より多くの人が生成型AIを利用できるようになった。

 スマートフォンにおけるAIは、カメラ撮影時の画像処理などで広く認識されるようになったが、コンシューマー向けの商品であることから、ユーザーがメリットを実感できるような『使い道』が求められている。そんな中、Googleが最近の「Pixel」シリーズで展開する「消しゴムマジック」は、写真の背景に写り込んだ人やオブジェクトを簡単に消せることから、便利な機能として広く知られるようになり、「Pixel」シリーズの人気上昇の原動力となっている。

 Googleの「Pixel」シリーズは、2018年の「Pixel 3」シリーズから国内での販売が開始され、例年、秋頃にフラッグシップモデル、春から夏にかけては普及価格帯のモデルがリリースされている。フラッグシップモデルは基本的に「Pixel 8」のように、名前の後ろに数字のみが付けられているのに対し、普及価格帯のモデルは「Pixel 7a」のように、末尾に「Affordable(手頃な価格)」を意味する「a」が付加され、俗に「Aシリーズ」や「Aライン」とも呼ばれる。フラッグシップモデルについては、ディスプレイやカメラの仕様の違いにより、「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」のように、複数のモデルがラインアップされているのに対し、Aシリーズは基本的に1モデルのみが販売される。

 また、Pixelシリーズは国内に登場して以来、これまで二度ほど、大きくデザインや仕様を変えている。「Pixel 3」シリーズまでは背面に指紋センサーを備え、ツートーン仕上げのボディを採用していたが、「Pixel 4」シリーズからは背面カメラを左上にレイアウトし、カジュアルなカラーリングのモデルもラインアップに加えた。

 そして、Pixelシリーズが大きく変わったのは、2021年発売の「Pixel 6」シリーズからになる。背面のカメラを棒状のカメラバーに収めたデザインを採用する一方、チップセットに自社開発の「Tensor」を搭載し、ボディデザインとハードウェア仕様の両面で、大きく生まれ変わっている。それまでのPixelシリーズは、Googleのサービスを楽しむ(使う)ための標準的なスマートフォンという意味合いが強かったが、「Pixel 6」シリーズ以降はGoogleが機械学習で培ってきたノウハウを活かしたチップセット「Tensor」搭載により、AIを活かしたスマートフォンという新しい方向性へ進化を遂げていた。当時のレビューでも説明したが、「Pixel 6」シリーズではじめて消しゴムマジックを搭載し、発表イベントでもわかりやすく各機能を解説していた。

 その後、2022年7月には「Pixel 7a」、2022年10月には「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」、今年6月には「Pixel 7a」とシリーズを展開し、いずれのモデルでもAIによる機能強化が図られ、着実に支持を拡大しており、10月から販売が開始されたフラッグシップモデル「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」にもその流れは受け継がれている。

 販売についてはGoogleストアに加え、NTTドコモ、au、ソフトバンクでも扱われる。残念ながら、家電量販店でのSIMフリー版の販売はないが、大手家電量販店の各携帯電話会社のコーナーで購入することは可能だ。特に、今回は後述するように、主要3社の端末購入サポートプログラムを利用した価格がかなりアグレッシブな設定になっており、対するGoogleも11月24日からのブラックフライデーセールで販促を強化していることも注目される。

2つのサイズをラインアップ

 まず、外観からチェックしてみよう。Pixelシリーズは前述のように、「Pixel 6」シリーズ以降、背面にカメラバーを内蔵したデザインを採用しており、同じモデルのように見えてしまう部分もあるが、スタンダードサイズのモデルも大画面モデルもボディの大きさや形状が微妙に変化している。

 「Pixel 8」のボディは従来の「Pixel 7」に比べ、カメラバー上部のスペースが狭くなるなど、わずかにコンパクトになっている。本体の四つの角がより丸みを帯びた形状に仕上げられ、手に持ったときの手当たりが少し良くなったとも言える。背面は光沢仕上げを採用し、指紋が付きにくいコーティングが施されているが、Obsidianのような暗いボディカラーは少し指紋が気になる。カメラバー部分は従来モデル同様、マット仕上げとなっている。本体の重量は187gで、ほぼ同サイズの「iPhone 15 Pro」と同じ重量になる。

Pixel 8の背面は光沢仕上げ。カメラバーはマット仕上げ。カメラバーのカラーはボディカラーごとに異なる
右側面は上端側に電源キー、中央付近にシーソー式の音量キーを備える。側面のフレーム部分はマット仕上げ
左側面はやや下部寄りの位置にSIMカードスロットを備える。本体が短くなったこともあり、ややカメラバーの大きさが目立つ
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。Google 30W USB-C充電器(別売)を利用すれば、約30分で最大50%まで充電が可能
「Pixel 8」のケースはGoogleストアで5400円で販売中。内側部分が本体にキズなどがつかないように、ファブリック仕上げを採用
「Pixel 8」(左)は「Pixel 7」(右)に比べ、高さが約5.1mm、幅が約2.4mm、小さくなっている。「Pixel 7a」よりもコンパクト
「Pixel 8」(左)と「Pixel 7」(右)の背面。カメラバーの上側のスペースが小さくなり、カメラ部の楕円の穴はひと回り大きくなっている
「Pixel 8」(上)は「Pixel 7」(下)に比べ、ボディとディスプレイの四つの角が丸くなっている。外観も角張った印象が薄れた

 大画面モデルの「Pixel 8 Pro」は従来の「Pixel 7 Pro」とほぼ同サイズで、その差は1mm以下で、カメラバー上下のスペースなども含め、サイズ感はほとんど変わらないが、「Pixel 8」同様、四つの角は少し丸みを帯びた形状に仕上げられている。外観で従来の「Pixel 7 Pro」と大きく違うのは、背面が光沢仕上げからマット仕上げに変更されたことだ。

 iPhone 15シリーズなどもそうだが、背面にガラスを使いながら、マット仕上げで手の跡や指紋を残りにくくするモデルが少し増えており、今後はこうした仕上げがトレンドになりそうだ。もっとも本体にカバーを装着して利用するユーザーが多いため、背面の仕上げはあまり気にしないという声もある。背面のカメラバーのデザインは従来モデルから変更されている。「Pixel 7 Pro」では楕円形の穴に超広角カメラと広角カメラ、隣の円形の穴に望遠カメラを収めていたが、「Pixel 8 Pro」では横長のひとつの楕円形の穴に超広角カメラ、広角カメラ、望遠カメラを収めている。ボディサイズは違うが、「Pixel 8」などと統一したデザインを狙っているようだ。本体の重量は213gで、同サイズのボディの「iPhone 15 Pro Max」に比べ、10g以上、軽い。

Pixel 8 Proの背面は指紋や手の跡が残りにくいマット仕上げ。カメラバーは光沢仕上げ。カメラバーのカラーはボディカラーごとに異なる
右側面は上端側に電源キー、中央付近にシーソー式の音量キーを備える。側面のフレーム部分は光沢仕上げで、少し指紋が気になる
左側面はやや下部寄りの位置にSIMカードスロットを備える
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。フレーム部分は光沢仕上げ
「Pixel 8 Pro」のケース。価格は5400円。内側部分はファブリック仕上げ。装着したままでワイヤレス充電も可能
「Pixel 8 Pro」(左)と「Pixel 7 Pro」(右)の前面。ディスプレイの四つの角の丸みが異なる。ディスプレイの下側の額縁も狭くなっている
「Pixel 8 Pro」(左)と「Pixel 7 Pro」(右)の背面。「Pixel 8 Pro」はカメラ部が楕円の大きなひとつの穴になり、すっきりとした印象。右側の小さい円の下側が温度センサー

 本体側面の電源キーと音量キーのレイアウトは、一般的なスマートフォンと逆で、上側が電源キー、下側がシーソー式の音量キーとなっている。Pixelシリーズを使いはじめたときは、少し戸惑うかもしれないが、慣れてしまえば、それほど困ることはない。

 バッテリーは「Pixel 8」が4575mAh、「Pixel 8 Pro」が5050mAhをそれぞれ内蔵する。バッテリー駆動時間は24時間以上とされており、今回試用した範囲では一般的な利用であれば、十分な時間、利用できるという印象だった。もし、バッテリーの消費が早く感じるようであれば、ロック画面で常に情報表示をしないように設定したり、「Pixel 8 Pro」では画面解像度の設定を「高解像度」で使うなど、細かい設定を変更して、省電力を工夫していく必要がある。

 充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を使い、最大30WのUSB PD3.0対応の急速充電が利用可能で、約30分で約50%まで充電できる。Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応し、最大12Wで充電ができる。Googleが販売する「Google Pixel Stand(第2世代)」を利用すれば、「Pixel 8」を最大18W、「Pixel 8 Pro」を最大23Wで充電できるため、より短時間での充電が可能になる。他のワイヤレス充電対応機器を充電するバッテリーシェアにも対応し、Pixel Buds Proなどのワイヤレスイヤホンなどを充電するときなどに利用できる。

 耐環境性能は従来モデルに引き続き、IPX8防水、IP6X防塵に対応するが、これらは実使用に伴って、性能が低下することもあるため、長く利用することを重視するのであれば、水没させたり、水濡れのまま放置したり、ホコリまみれにするなど、必要以上に性能を過信した使い方をしない方がいいだろう。特に、「Pixel 8」シリーズは後述するように、プラットフォームのアップデートが最大7年間と長いが、長く使うための配慮も必要だということを意識しておきたい。

6.2インチ、6.7インチのフラット有機ELディスプレイを搭載

 「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」のディスプレイはサイズだけでなく、ディスプレイそのものの仕様も異なる。

 「Pixel 8」に搭載されるのは、約6.2インチのフルHD+対応OLED(有機EL)で、輝度は最大1400nit、ピーク輝度2000nitと非常に明るい。リフレッシュレートは60~120Hzで、[設定]アプリの[ディスプレイ]-[スムーズディスプレイ]をONにすれば、コンテンツに合わせた表示が可能になる。ディスプレイのガラスにはGorilla Glass Victusが採用され、ユーザーが市販の保護フィルムを貼ったときのタッチ感度を上げる「画面保護シートモード」もサポートされる。

 「Pixel 8 Pro」に搭載されるのは、約6.7インチのQHD対応OLED(有機EL)で、輝度は最大1600nit、ピーク輝度2400nitと、「Pixel 8」よりもさらに明るい。余談だが、Impress Watch Video「法林岳之のケータイしようぜ!!」で端末を紹介するとき、かつてはディスプレイの明るさを最大に設定して、撮影していたが、今回の「Pixel 8」シリーズをはじめ、最近の各社のフラッグシップモデルはディスプレイの輝度を少し抑えて撮影しないと、周囲の明るさとのバランスが崩れてしまうくらい明るくなっている。リフレッシュレートは1~120Hzに対応しているが、[設定]アプリの[ディスプレイ]で[スムーズディスプレイ]は60~120Hzへの対応のみで、1Hzでの動作についての設定項目はない。ディスプレイのガラスには「Pixel 8」よりも強固なGorilla Glass Victus2が採用されている。

 また、「Pixel 8 Pro」は1344×2992ドットのQHD表示に対応しているが、バッテリー消費を抑えるため、標準では解像度が1008×2244表示に抑えられている。より高精細な表示をしたいときは、[設定]アプリの[ディスプレイ]-[画面の解像度]で、[最大解像度(1344×2992)]に設定できるが、電力消費が増えるので、注意しておきたい。

 「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」のディスプレイが共通で従来モデルから変更されたのは、ディスプレイの形状だ。従来の「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」に搭載されていたディスプレイは、左右両端が湾曲した形状のエッジディスプレイだったが、今回の「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」は左右両端も含め、フラットな形状のディスプレイを採用している。これに加え、ボディの形状とも関係するように、ディスプレイの四つの角が少し丸みを帯びた形状に仕上げられている。エッジディスプレイは動画コンテンツやゲームなどをフル画面(横長)で表示したとき、没入感が得られるという特徴を持つが、その半面、エッジ部分が周囲の光に反射して、見えにくくなったり、落下時にディスプレイに傷を付けてしまうなどのデメリットもある。実は、筆者もケースを装着した「Pixel 7 Pro」を1メートルくらいの高さから落下させてしまったとき、破損はしなかったものの、運悪くディスプレイのエッジ部分にわずかな擦り傷を付けてしまったことがある。その意味からも今回のフラットディスプレイへの変更は歓迎できると考えている。

「Pixel 7 Pro」(下)はディスプレイの側端が湾曲したエッジディスプレイを採用していたのに対し、「Pixel 8 Pro」(上)はフラット仕上げに変更された

 ディスプレイ内には光学式の指紋センサーが内蔵され、指紋認証が利用できる。生体認証は指紋認証のほかに、インカメラによる顔認証にも対応し、スマートフォンの画面ロック解除に加え、アプリ内での本人認証にも利用できる。

Google独自開発「Tensor G3」搭載

 チップセットは昨年の「Pixel 7」シリーズや今夏の「Pixel Fold」に搭載された「Tensor G2」よりもひとつ世代が進んだ「Tensor G3」を搭載する。「Tensor G3」の詳しい内容は「Pixel 8」シリーズ発表時の記事を参照していただきたいが、CPUやGPUのコアを最新のものに刷新したほか、Googleがもっとも重視しているAIについては「Pixel 6」に搭載された「Tensor」(初代)と比較して、2倍以上の機械学習モデルを端末上で実行できるとしている。パフォーマンスについてはあまり明確にされていないが、ベンチマークテストアプリでは各社の2023年フラッグシップモデルに搭載されるSnapdragon 8 Gen 2に比べ、10~20%ほど、低いスコアが記録されている。ただ、このクラスになると、実際に操作したとき体感レベルはほとんど差がないため、各社のフラッグシップモデルと同クラス、もしくはわずかに一歩譲るレベルのパフォーマンスと見て差し支えないだろう。GoogleはTensorの機械学習モデルを強化することで、「消しゴムマジック」や「リアルタイム翻訳」など、実際の利用シーンに合わせた機能を提案しており、むしろ、Tensorを搭載したPixelシリーズの方がパフォーマンス以上のアドバンテージがあるという見方もできる。

 メモリーとストレージについては、「Pixel 8」がRAM 8GB、ROM 128GBと256GB、「Pixel 8 Pro」がRAM 12GB、ROM 128GB、256GB、512GBがラインアップされる。ただし、すべての容量のモデルを選べるのはGoogleストア、au、ソフトバンクで、NTTドコモは「Pixel 8」が128GBモデルのみ、「Pixel 8 Pro」が256GBモデルと512GBモデルのみとなっている。後述する各社の価格設定とも関連するが、auとソフトバンクがある程度、売れ行きを見込んでいるのに対し、NTTドコモは同社のユーザー層が保守的という判断なのか、やや及び腰な印象を受ける。

 対応バンドについては、いずれの販路で扱われる製品も共通で、今夏の「Pixel 7a」に引き続き、NTTドコモが5G向けに取得した「n79」もサポートされる。「Pixel 8 Pro」についてはミリ波の「n257」にも対応するが、現時点でミリ波が利用できる場所はかなり限られており、ミリ波ならではの用途やサービスも提供されていないため、今後、数年間のうちに何か恩恵を受けられるかもしれないレベルと考えて差し支えない。今回は主要3社のSIMカードを装着して、いくつかの場所で試用したが、ネットワークの不調が伝えられるNTTドコモの回線も含め、いずれもストレスなく利用できている。ただ、地域や時間帯によって、ネットワークの状況が変わるので、結果が一意ではないことはお断りしておく。SIMカードはnanoSIMとeSIMのデュアルSIMに対応する。

本体左側面にピンで取り出すタイプのSIMカードトレイを備える。nanoSIMカードを1枚のみ、装着可能。写真は「Pixel 8 Pro」だが、「Pixel 8」も同じ。eSIMも利用することが可能

Android 14を搭載し、今後7年間のアップデートに対応

 GoogleのPixelシリーズを利用するメリットのひとつに、最新のAndroidプラットフォームとGoogleの各サービスがいち早く利用できることが挙げられる。今回の「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」は、いずれも最新のAndroid 14を搭載しており、原稿執筆時点で2023年11月版のセキュリティパッチが適用されている。最近は他のAndroidスマートフォンもOSバージョンアップやセキュリティパッチの提供がある程度、早くなってきたが、やはり、展開の早さは当然のことながら、Pixelシリーズに一日の長がある。

 また、今回の「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」では、新たにAndroidプラットフォームとセキュリティパッチの更新が今後7年間、提供されることがアナウンスされている。国内外の市場動向として、スマートフォンの買い換えサイクルが2年、3年と長くなる中、ユーザーが安心してプラットフォームを利用できる環境を整えていることは歓迎したい。同時に、7年間のアップデートがサポートされたことで、端末そのもののリセールバリューも高くなるため、auとソフトバンクは端末購入サポートプログラム利用時の2年後の残価が高くなり、月々の支払い額をグッと抑えられるなどの影響が出ている。

 ユーザーインターフェイスについては従来同様、Androidプラットフォームの標準的なものを採用し、ナビゲーションモードもジェスチャーと3ボタンのどちらでも選ぶことができる。日本語入力はAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」が搭載される。

「Pixel 8 Pro」のホーム画面。左上に「Pixelスナップショット」は天気やスケジュールなど、必要な情報を適宜、表示できる。地震アラートやおやすみ時間なども表示可能。「Pixel 8」も同様
「Pixel 8 Pro」の通知パネル。「ウォレット」や「アラーム」などの項目もセットされている。「Pixel 8」も同様
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。「モバイルSuica」やauのアプリは追加したもの

 カスタマイズ(パーソナライズ)ではAI壁紙も楽しめる機能のひとつだ。[設定]アプリの[壁紙とスタイル]-[その他の壁紙]-[AI壁紙]で、テーマを選び、表示されたテーマのキーワードを変更すると、それらのキーワードに基づいた壁紙がAIによって、生成される。[ひらめきがほしい]をタップすると、さらにいろいろなキーワードを加えて、壁紙がカスタマイズされる。AI壁紙は今のところ、「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」のみで利用できる機能で、Android 14にバージョンアップした従来のPixelシリーズでは利用できない。

「AI壁紙」では下段に表示されているキーワードを選択することで、オリジナル壁紙をAIで生成することができる

 Pixelシリーズならではの機能も数多く搭載されているが、実用面で役に立ちそうな機能では「通話スクリーニング」が搭載された。通話スクリーニングは音声通話の着信があったとき、画面に表示された[スクリーニング]をタップすると、端末が代わりに応答し、通話内容を録音する機能だ。友だちや家族など、相手がわかっている着信であれば、普段通り、応答すればいいが、見知らぬ相手からの営業電話などは、これで対応するわけだ。もちろん、特殊詐欺などの迷惑電話にも役に立つ。この他にもリアルタイム翻訳や文字起こしなど、従来からPixelシリーズで重宝されてきた機能も継承され、進化を遂げている。

Pixelシリーズにインストールされている「Pixelガイド」を見れば、各機能を使いながら、理解することができる。意外にこうしたオンラインヘルプを拡充する機種は少ない

「Pixel 8」はデュアルカメラ、「Pixel 8 Pro」はトリプルカメラを搭載

 スマートフォンに搭載されるカメラは、各社の競争が一段と激しくなっているが、Pixelシリーズはここ数年で急速にライバルメーカーの製品を猛追した印象だ。ただ、それはカメラの画質向上というだけでなく、いかにユーザーが簡単かつきれいに写真を撮影し、撮った写真をどのように活用していくかという点にフォーカスしている。本体にカメラを搭載するデザインについては、前述のカメラバーに収める手法がうまく受け入れられている印象で、街中で人がスマートフォンを構えているシーンを見かけても背面を見れば、すぐに「Pixel 6」シリーズ以降を使っていることがわかる。

 カメラの仕様としては、「Pixel 8」が背面に5000万画素(1/1.31インチ)/F1.68の広角(25mm相当)、1200万画素(1/2.9インチ)/F2.2の超広角のデュアルカメラを搭載する。広角は最大8倍の超解像ズームに対応し、光学式と電子式による手ブレ補正も搭載する。超広角はオートフォーカスに対応し、ワイドレンジで撮影時のレンズの歪み補正も実装されている。前面のパンチホール内には1050万画素/F2.2前面(20mm相当)の自撮りカメラを内蔵し、画角は最大95度の撮影が可能だが、固定フォーカスのみの対応になる。

「Pixel 8」はカメラバーにデュアルカメラを内蔵
「Pixel 8」を使い、ポートレートで撮影。モデル:るびぃボンボンファミンプロダクション
「Pixel 8」のインカメラを使い、自分撮り。「写真」モードで撮影したが、[フォト]アプリですぐに背景をぼかすことも可能
薄暗いバーで撮影。テーブルの照明を受けて、かなり明るく撮影できている

 「Pixel 8 Pro」は背面に5000万画素(1/1.31インチ)/F1.68の広角(25mm相当)、4800万画素/F1.95超広角、4800万画素/F2.8の望遠(113mm相当)のトリプルカメラを構成する。メインで利用する広角カメラは「Pixel 8」と同じ仕様だが、超広角と望遠に4800万画素のイメージセンサーを採用し、超広角は2cmでのマクロ撮影、望遠は光学5倍(広角カメラ比)、超解像ズームは最大30倍と、ライバル機種と比較してもかなりハイスペックな仕様となっている。

「Pixel 8 Pro」はカメラバーにトリプルカメラを内蔵。カメラ部の右下の円に温度センサーが内蔵されている
「Pixel 8 Pro」はカメラバーに内蔵された温度センサーで、温度を測ることができる。センサーを対象物の5cm以内に近づけて計測する
「Pixel 8 Pro」を使い、ポートレートで撮影。写真のポーチは発売直後に購入特典で提供されていたもの
「Pixel 8 Pro」の超広角カメラで撮影。広角カメラの0.5倍相
「Pixel 8 Pro」の広角カメラで撮影。標準でピクセルビニングが有効のため、解像度は3072×4080ドットで撮影される。「プロ」に切り替えれば、5000万画素のフルで撮影することもできる
「Pixel 8 Pro」の広角カメラで撮影。標準の2倍相当の望遠で撮影されている
「Pixel 8 Pro」の望遠カメラで撮影。標準の5倍相当の望遠で撮影されている
「Pixel 8 Pro」のカメラは2cmまで寄って、マクロ撮影が可能

 撮影モードは従来に引き続き、「写真」「ポートレート」「夜景モード」「アクションパン」などがサポートされるが、「Pixel 8 Pro」では新たに「プロモード」がサポートされている。Pixelシリーズは前述のように、ユーザーが撮影の手軽さを重視し、撮影時の設定がシンプルな構成だったが、「Pixel 8 Pro」で「写真」モードで起動し、左下の設定アイコンを選ぶと、[全般]と[プロ]を選ぶことができる。[プロ]では撮影時の「解像度」、保存形式の「RAW/JPEG」、レンズの[自動]と[手動]を選ぶことができる。解像度はピクセルビニングによる撮影をするか、5000万画素をフルに活かした高解像度撮影をするかだが、レンズは[手動]を選ぶと、撮影時に[UW](超広角)、[W](広角)、[T](望遠)が選べるようになり、ぞれぞれのレンズの特性を活かした凝った撮影も可能になる。

 撮影後の編集機能については、従来からサポートされている「消しゴムマジック」や「ボケ補正」に加え、今回は「編集マジック」「ベストテイク」「音声消しゴムマジック」などが追加されている。編集マジックは撮影時にズレた背景の対象物を動かせる機能で、「ベストテイク」は複数人で撮影したとき、複数枚の写真からそれぞれがベストな表情(逆に、面白い表情も可能)の写真を生成できるという機能だ。意外に、誰でも実用性がありそうなのが「音声消しゴムマジック」で、動画撮影時に人が話す声を活かしつつ、背景の音を消す(抑える)ことができるという機能だ。すでに、GoogleのテレビCMなどでも紹介されているので、その効果はイメージしやすいだろうが、今回は交通量の多い道路の近くでモデルに話してもらい、「音声消しゴムマジック」でクルマの騒音を消してみたが、モデルの話し声だけがうまく抽出することができた。Vlogなどで使うときに便利なのは言うまでもないが、周囲の雑音を消すことができるため、友だちや家族に動画でメッセージを送るときにも便利そうだ。ちなみに、「音声消しゴムマジック」を編集するときは、撮影した動画をいったんGoogleフォトにアップロード(バックアップ)する必要がある。動画の長さは2分までで、検出できるのは人物の声、音楽、周囲の人、ノイズ、風などの自然界の音などが対象になる。年末年始など、人が集まるタイミングで、ぜひ試してほしい機能のひとつだ。

[フォト]アプリで写真を表示し、左下のボタンをタップすると、[編集マジック]が使える
手と船の位置がずれている写真で、人物をなぞって、選択する。この画面で[+]をタップして、ピンチ操作で選択部分を大きくすることも可能
無事に手の位置を修正することができた。中央下の編集ボタンをタップすれば、空やポートレートなどの加工も可能
音声消しゴムマジックでは動画撮影時のサウンドを分離し、ノイズや周囲の人の声などを抑えることができる

端末購入サポートプログラム利用時の価格に注目

 コロナ禍以降、端末価格の高騰などの影響もあり、スマートフォンの販売が伸び悩んでいることが伝えられているが、端末そのものの目新しさがあまり感じられなくなっているという指摘も多い。

 そんな中、Googleが開発したPixelシリーズは、2021年発売の「Pixel 6」シリーズ以降、AIを利用した機能強化を続けており、「消しゴムマジック」などで市場での認知度を大幅に高めた。ただ、「消しゴムマジック」はGoogle Oneを契約したアカウントであれば、他のスマートフォンでもGoogleフォトで同様の機能が利用できるほか、独自の編集機能を利用できる他メーカーの製品も増えている。もちろん、アドビの「Photoshop Express」などの写真編集アプリを利用すれば、もっと多彩な写真編集をすることも可能だ。ただ、Pixelシリーズは元々、写真編集のためにAIを活かしているのではなく、リアルタイム文字起こしや翻訳、AI壁紙、音声消しゴムマジックなど、スマートフォンを使っていくうえで、役立つ機能を実現し、それをいち早く最新の「Pixel 8」や「Pixel 8 Pro」に搭載している。この一年、生成型AIが急速に注目を集め、AIの可能性が語られることが増えているが、ユーザーにとって大事なことはAIの可能性ではなく、AIを活かしたサービスや機能が簡単に利用できることにある。「Pixel 8」シリーズはAIによるアドバンテージをいち早く簡単かつわかりやすく楽しめるスマートフォンと言って差し支えないだろう。

 また、他製品でも先行して話題になっていたが、最後に「Pixel 8」シリーズの販売価格についても触れておきたい。今回の「Pixel 8」シリーズはストレージの容量によって価格差があるが、Googleストアの価格では「Pixel 8」が11万2900円から、「Pixel 8 Pro」が15万9900円からに設定されている。昨年の「Pixel 7」シリーズが8万円台から買えていたことから考えると、かなり価格が上昇した印象を受けるが、この1年の円安を踏まえれば、昨年が少しイリーガルな安さであって、今年の「Pixel 8」シリーズが順当な価格設定だと言えそうだ。Googleストアで最上位のモデルが20万円を超えていないのだから、ある意味、良心的と言えるだろう。それでも高いことは確かだが……。

 購入価格について、もうひとつ注目されるのがauとソフトバンクで端末購入サポートプログラム利用時の実質負担額だ。詳細はauオンラインショップとソフトバンクオンラインショップの価格をご覧いただきたいが、「Pixel 8」(128GB)を端末購入サポートプログラムで購入したときの実質負担額は、auが1万6207円、ソフトバンクが2万2008円となっている。「Pixel 8 Pro」(128GB)はさすがにもう少し高いが、それでもauもソフトバンクも実質負担額が10万円を切っている。

 これまで各社の端末購入サポートプログラムは、基本的に36回払いや48回払いを均等に割り、24カ月後などに端末を返却する形で、実質負担額を抑えていたが、「Pixel 8」シリーズでは均等に割らず、24カ月目以降の支払総額(残債)を高く設定し、最初の2年間の支払額を低く抑えている。NTTドコモは当初、「Pixel 8」(128GB)ををいつでもカエドキプログラムで購入したときの支払額を月々1941円(初回のみ1958円)に設定していたが、auのスマホトクするプログラムが月々704円(初回のみ719円)、ソフトバンクの新トクするサポートが月々917円という価格を設定したため、NTTドコモは11月10日から月々の支払額を1482円に引き下げ、対抗している。こうした端末購入サポートプログラムの価格設定は、総務省が12月27日から端末割引額を最大4万円に拡大する方針を打ち出したため、今後、見直される可能性もあるが、かなり買いやすい価格であることは確かであり、これを機に「Pixel 8」を2年間、試してみるのも手だろう。端末としての完成度の高さは、十分、価格に見合うものであり、AIを活かした新しいスマートフォンの楽しさを体験させてくれるはずだ。