三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

プロ設定搭載のグーグル「Pixel 8 Pro」、パワーアップした3眼カメラを徹底的に試す!

 コンピュテーショナルフォトグラフィーのパイオニア、グーグルから「Pixel」シリーズの最新モデルが登場した。「Pixel 8 Pro」と「Pixel 8」だ。今回はフラッグシップ端末「Pixel 8 Pro」の静止画撮影機能をインプレッションする。ライバル機を圧倒する写りに注目だ。

 なお端末の詳細スペックや価格などは本誌の別記事を参照していただきたい。

グーグル「Pixel 8 Pro」カメラの特徴

 オリジナルの最新チップセット「Google Tensor G3」を搭載した「Pixel 8 Pro」。3つの背面カメラはこのような構成になっている。

カメラ構成
  • 広角カメラ:5000万画素 35mm版換算12mm相当 F1.68
  • 超広角カメラ:4800万画素 35mm版換算24mm相当 F1.95
  • 望遠カメラ:4800万画素 35mm版換算110mm相当 F2.8

 超広角カメラも高画素化を果たし、各カメラのレンズも明るくなっていてうれしいアップデートと言える。通常はピクセルビニングによって1200万画素の出力になっている。

 なお同時発売の「Pixel 8」は2眼カメラ構成で、後述の「プロ設定」は搭載されていない。

 各カメラの写りを見ていこう。

(超広角カメラ)都庁前広場のカットだが、広大な画角はそのほぼ全てをフレームに収めることができる。描写はまずまずで何よりも自然な色再現性がいい。
(広角カメラ)上と同じ位置から広角カメラにシフト。窓枠の精細感や壁面の描写が素晴らしい。さすがメインのカメラの写りだと感じる。
(2倍)広角カメラからのピクセルビニングによる2倍のカット。当然ながら同等の安定した画像になっている。
(望遠カメラ)5倍となる望遠カメラの写りも実にシャープ。昨年の「Pixel 7 Pro」を使っていると2倍→5倍の画角差も同じなのですんなり使いこなせるだろう。
(30倍超解像ズーム)30倍のデジタルズームの描写には驚かされた。こんなにも鮮明に中央部の円形窓を描き出すとは! 「Pixel 7 Pro」やライバル機とも同時に撮影したが明らかに「Pixel 8 Pro」の写りがよかった(いずれ対決企画をやってみたいものだ)。12月には、より鮮明に写すことができるアップデートが予定されている。期待したい。

「Pixel 8 Pro」独自の撮影機能とは?

 「Pixel 8 Pro」には「Pixel 8」にはない「プロ設定」が搭載されているのだ。画面左下の歯車アイコンをタップすると「写真の設定」が表示される。基本的な機能設定をする「全般」メニューの右側にある「プロ」メニューがそれだ。

機能の説明
  • 解像度:12MPと50MPを切り換える設定。50MP撮影時は夜景モードと同じような長秒レリーズになる。
  • RAW/JPEG:RAWとJPEGの同時記録をオンオフする。
  • レンズの選択:ニクいのがこの設定だ。これを「手動」に設定すると「UW」「W」「T」の超広角カメラ、広角カメラ、望遠カメラの光学的な3つの画角(カメラ)のみ使用可能になる。デジタルズームを使用不可にして、画質的においしい焦点距離だけを使うことができるのだ。

 画面右下に表示されるメニューをタップすると下のような設定項目が現れる。スライダーを操作もしくは左右のアイコンをタップすることによってマニュアル感覚で撮影ができるというわけだ(パノラマ、動画撮影時は異なる)。

機能の説明
  • 「明るさ」:ハイライト部分を中心とした明るさを調整できる。
  • 「シャドウ」:シャドウ部分を中心とした明るさを調整できる。
  • 「ホワイトバランス」:色温度の調整が可能。
このようにとっさに色温度を設定して自分のイメージどおりを写真を撮影できるのが「Pixel 8 Pro」というわけだ。
「シャッタースピード」では、1/10000秒〜16秒までの設定が可能。スローシャッターなど意図を反映した撮影が確実に行える。
機能の説明
  • 「フォーカス」:マニュアルフォーカスが使えるようになる。超望遠撮影時と同じく小窓によるターゲット表示とピーキング表示が可能なので撮影が快適になっている。
  • 「ISO」:ISO 50〜ISO 3200 までの設定ができる。

 ここら辺のUIはもうちょっと使いやすくなる余地があると思う。アップデートに期待したい。ちなみに「Pixel 8」では「明るさ」「シャドウ」「ホワイトバランス」のみとなる。

5000万画素の超高解像度撮影

 50MPによる高解像度撮影も楽しめる。ライバル機では高画素撮影は広角カメラだけだが、「Pixel 8 Pro」なら超広角カメラ、望遠カメラでの撮影もできるのがうれしい。作品作りに大いに役立つだろう。

超広角カメラで竹林を撮った。葉のディテールと竹の幹がしっかりと描写されている。
望遠カメラでも50MP。シダの葉脈まで鮮明にキャプチャーできた。

マクロ撮影もやりやすく進化

 超広角カメラでのマクロ撮影もアップデートされた。カメラが高画素化しレンズも明るくなっているので写りがクリアだ。

同時に登場する「Pixel Watch 2」の文字盤もご覧のとおり。ガラスの質感がいい雰囲気だ。
プロ機能のフォーカスピーキングを使うとシビアなピント合わせも快適である。

安定したポートレートモード

 「Pixel」シリーズは被写体をしっかりと浮き立たせる境界判定に定評あるが、「Pixel 8 Pro」のポートレートモードも申し分ない。夜間でも安心して使用できた。

動物の毛は切り抜きがかなり難しいが、「Pixel 8 Pro」はうまくそれをクリアしている印象だ。馬のたてがみやヒゲの部分に注目して欲しい。
ポートレートモードが難しい密集する木の葉を撮ってみたが、がんばって境界判定している印象だ。ややおかしい部分もあるがパッと見は気付かないかもしれない。
夜の下北沢。赤提灯をポートレートモードで狙ったがキレイに浮き立たせてくれた。低照度時でも使えるのがうれしい。

夜景モード(Night Sight)

 「夜景番長」の異名をとる「Pixel」の夜景モード。向こうでは「Night Sight」と呼ばれているが、その素晴らしさはもちろん健在である。どのレンズを使ってもシャープかつ鮮やかで印象的な夜景を撮影できた。さすが「Pixel」である。

環境によってシャッター秒数を変更できるスライダーが表示されるようになった。
とある店先をスナップ。光量がある場所だったので、置かれていた野菜のディテールを余すところなく捉えることができた。メリハリのあるいい写りである。
ショッピングセンターの夜景を撮った。精細感も色合いもよく、ノイズ感もほどほどで好感の持てる絵作りだ。
高架下でのカット。光源部分に少しフレアが出ているが、「Pixel」らしいスッキリとしたナイトシーンを撮影できた。夜の街歩きが楽しくなる端末だと思う。

「Pixel Watch 2」との連携

 同時にリリースとなる「Pixel Watch 2」とのコンビネーションも「Pixel 7 Pro」と「Pixel Watch」同様だ。「Pixel 8 Pro」の遠隔ファインダーとして活用できた。

「Pixel Watch 2」から30倍までのズームイン操作を行っているところ。

 「Pixel Watch 2」でシャッターを切ると、3秒間のカウントダウン後に「Pixel 8 Pro」で撮影が完了した。

「Pixel 8 Pro」を操作している「Pixel Watch 2」を「Pixel 8 Pro」で撮影。

グーグル「Pixel 8 Pro」でブラブラ撮影を楽しむ

 超広角から超望遠まで見事な写りが楽しめる「Pixel 8 Pro」。カメラの起動も確実で速く、シャッターチャンスにも強い。日中から夜間まであらゆるシチュエーションで写真撮影が楽しめる最新AIスマートフォンであった。

無人野菜スタンドを発見。すかさず2倍で撮影したがピクセルビニングによる描写のよさに驚かされた。発色と質感が素晴らしい。
外国車のライト周り。ライトのカッティングと上部の刻印、そしてメタリック塗装の表現がいい感じ。
公園の遊具をポートレートモードで。何気ない光景も印象的なボケ感と発色で不思議な雰囲気のカットに。
とある階段で向かいから歩いてくる人を発見。電源ボタンのダブルクリックでカメラを瞬時に立ち上げて、思っていたシーンを撮影できた。「Pixel」を気に入っている特徴の一つだ。

 夜の街をブラブラ中、動物病院のロビーで診察を待つネコを発見。ネットに包まれたその様子を撮影した。観念した様子と病院の雰囲気を瞬時に撮ることができた。早くよくなるといいね。

下北沢の駅前。プロモードでスローシャッターを選択して色温度を変えて撮影した。こんなデジタルカメラのような表現ができる「Pro」機が「Pixel 8 Pro」である。
10月12日はいよいよ「Pixel 8」シリーズと「Pixel Watch 2」の発売日だ。街中で大々的なバナーを発見した。5倍かつ30倍の超解像ズームは撮り歩きが楽しくなる装備だ。
「Pixel 8 Pro」の望遠カメラはシャープに写る。公園の噴水もご覧のとおり。飛沫の一粒一粒がわかりそうな感じ。
優秀なポートレートモードは人物撮影だけでなくこのようなスナップやブツ撮りでも大いに活用したい。昼間から低照度下でも安定した写りを見せてくれる。
公園でひなたぼっこ中のカナヘビを発見。瞬時に30倍の超解像ズームで撮影した。カナヘビの表情と皮膚の質感がとてもよくわかるカットになった。
「Pixel 8 Pro」の描写は好感が持てる。ヒトの見た目に近い風合いと発色がいい。今回人物を撮影するチャンスがなかったが、以前から人種を問わずリアルなスキントーン描写に定評があるのでポートレート撮影にも向いているはずだ。

 「Pixel 8 Pro」はディスプレイも明るくて見やすく、バッテリーの保ちもよかった。一日中撮り歩いてもバッテリー残量はかなりあった。それでいて写りがいいのだから申し分ないではないか。

先代からしっかりと性能アップ!

 「Pixel 8 Pro」は先代「Pixel 7 Pro」からしっかりと性能アップした端末だった。3つの背面カメラは全て高画素となり、レンズも明るくなって、プロ設定も備えた。ふだんは端末任せにしてイージーに撮り、いざというときはデジタルカメラのように自分のイメージどおりに設定をして表現を楽しむことができる。

 「Pixel」はコンピュテーショナルフォトグラフィーのパイオニアだが、撮影者の「意図」を反映する手段を用意してくれたのがニクいと感じる。

 「写真」と「カメラ」機能に重きを置く人ならば、選ぶべき最新Androidスマートフォンと言えよう。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau