レビュー

「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」実機レビュー、グーグルのAIがもたらす「音声消しゴムマジック」が面白い!

Googleの最新スマートフォン「Pixel 8 Pro」(左)と「Pixel 8」(右)

 Google(グーグル)のスマートフォン「Pixel 8」および「Pixel 8 Pro」が10月12日に発売された。直販価格では、Pixel 8は11万2900円~、Pixel 8 Proは15万9900円~となっている。

 今回はこの2モデルの評価用機材を使って、気になるポイントをチェックしていく。

デザインは継承

デザインなどはキープコンセプトな「Pixel 8シリーズ」

 Pixel 8の大きさは約70.8×8.9×150.5mm(幅×厚み×高さ)で、重さは約187g。ディスプレイは6.2インチ(1080×2400ドット)となっている。パネルはOLEDで最大120Hzでの駆動が可能なスムーズディスプレイを採用。

Pixel 8は手になじみやすいサイズ感
リフレッシュレートが120Hzとスクロールも滑らか
Pixel 7(左)とPixel 8(右)
Pixel 7(左)とよりPixel 8のほうが高さで約5mmコンパクトに(右)

 Pixel 8 Proは、Pixel 8よりもひと回り大きい約76.5×8.8×162.6mm(幅×厚み×高さ)で、重さは約213g。

 ディスプレイは6.7インチ(1344×2992ドット)となっており、ピクセル密度は489PPUなので、全モデルと比べて低くなっている(Pixel 7 Proは512 ppi)ものの、精細感の低下はそこまで感じられない。

6.7インチディスプレイのPixel 8 Pro
Pixel 7(Pro左)とPixel 8 Pro(右)
Pixel 7 Pro(左)とPixel 8 Proではサイズにほとんど差はない

 パネルはPixel 8と同じくOLEDで、駆動も最大120Hzと同等。

 また、Pixel 8 Proシリーズはエッジがカーブしたディスプレイではなくフラットな形状となっている。このあたりは好みの分かれるところだが、フラットなほうが誤操作も少なく、ガラスフィルムが貼りやすいといった利点も多い。

背面の仕上げとボタン配置

 背面は、Pixel 8が光沢のある仕上げでポップな印象がある。

Pixel 8の背面
Pixel 8の背面は光沢のあり仕上がり

 一方、Pixel 8 Proはつや消しのマットな仕上げで、評価用機材は黒系のオブシディアン(黒曜石)だったが、触っても指紋などが目立たないようになっている。

Pixel 8 Proの背面
Pixel 8の背面はマットな質感

 両モデルとも、本体右側面には電源ボタンと音量ボタンを配置。これまでのPixelシリーズと同じく上に電源ボタン、下に音量ボタンと、一般的なAndroid端末とは逆なので、他メーカーのAndroid端末から移行するとなれるまで若干戸惑う。

Pixel 8の右側面
Pixel 8の左側面
Pixel 8 Proの右側面

 手に持ってみると、どちらも 非常に軽く感じる。 特にPixel 8 Proは前モデルよりも1g重量は増えているが、実感としては前モデルよりも軽くなったような印象。前モデルでは、本体上部のカメラ側に重さを感じるので、Pixel 8 Proでは重量バランスを考慮した設計になっているようだ。

バッテリー

 バッテリーは、Pixel 8が4575 mAhで、Pixel 8 Proが5050mAh。どちらもUSB-PD 3.0に対応しており、急速充電時には約30分で最大50%までの充電が可能。また、Qi対応のワイヤレス充電にも対応している。

Pixel 8のType-CはUSB 3.2に対応

プロセッサーは「Tensor G3」

 プロセッサーはGoogle独自開発の「Google Tensor G3」を両モデルとも搭載する。

 AI関連の計算能力も向上しており、後述する「ベストテイク」や「音声消しゴムマジック」といった機能の実現に大きく寄与しているとのこと。

 ただしこのあたりの新機能は、しばらくするとそれ以前のPixelシリーズにも提供されるケースが多く、Google Tensor G3でのみ実行可能な機能というのは不明。そのため 最新機能がいち早く体験できるというのがポイント となっている。

 そのほか、Pixel 8はメモリーが8GBで、ストレージは128GBもしくは256GB。

 Pixel 8 Proは、メモリーが12GBでストレージは128GBもしくは256GB、512GBとなっている。

 microSDには対応していないので、Pixel 8 Proに1TBモデルも欲しいところだが、よほど大量に動画を撮影するといった使い方でない限り512GBモデルでもじゅうぶんだ。

動画アプリを使ってみたら

 テストとして動画編集アプリの「CapCut」で38分14秒の4K動画(12.34GB)をFHDへ変換してみたところ、Pixel 7 Proでは10分30秒だったのに対して、Pixel 8 Proは10分16秒、Pixel 8は10分18秒という結果になった。 動画エンコードに関しては前モデルよりも若干、性能アップ といったところだ。

 搭載されているプロセッサーが同じということもあり、Pixel 8とPixel 8 Proでは機能としてはそこまで差はない。

 カメラ機能としてはビデオ夜景モードを含む動画ブーストや、2cmまで近づいて撮影するマクロフォーカス、そして「プロ設定」がPixel 8 Proのみの機能となっている。

 またPixel 8 Proのみ温度センサーを搭載しており、温度測定機能が利用可能。体温は測れないものの、ミルクの温度などを測定するときに便利だ。

Pixel 8 Proは温度測定機能が利用可能

カメラ、そのスペックは?

 背面のカメラはPixel 8がデュアル仕様で、約5000万画素の広角(f/1.68、82°)と約1200万画素の超広角(f/2.2、125.8°)の組み合わせ。

Pixel 8のカメラはデュアルカメラ

 Pixel 8 Proはトリプル仕様で、約5000万画素の広角(f/1.68、82°)と約4800万画素の超広角(f/1.95、125.5°)、約4800万画素の望遠(f/2.8、21.8°)の組み合わせ。

Pixel 8 Proはトリプルカメラで、LEDライトの下にあるのが温度センサー

 メインの広角は両モデルとも同じだが、Pixel 8 Proには望遠を搭載し、3つのカメラすべてが4800万画素以上のセンサーでピクセルビニングをしているため、カメラ性能としてはかなり差がある印象を受ける。

インカメラは両モデルとも約1050万画素(f/2.2、95°)と同じ

 とはいえ、日常での撮影に関してはPixel 8でも十分な性能だ。

 もちろん、「プロ設定」があることも関連し、スマートフォンで本格的に撮影したいユーザーはPixel 8 Proを選ぶと満足度は高そうだ。

 ちなみにシャッター音は前モデルと同じ仕様とのことなので、日本以外の規制されていない国に持ち込んでもシャッター音は鳴ると思われる。

Pixel 8での作例

等倍で撮影
デジタルズーム2倍で撮影
デジタルズーム最大の8倍で撮影
超広角カメラで撮影
マクロモードでの撮影
マクロにならない距離での料理撮影
夜景モードでの撮影
長時間露光での撮影
インカメラでの撮影

Pixel 8 Proでの作例

等倍で撮影
デジタルズーム2倍で撮影
望遠カメラの5倍で撮影
デジタルズーム最大の30倍で撮影
超広角カメラで撮影
マクロモードでの撮影
マクロにならない距離での料理撮影
夜景モードでの撮影
長時間露光での撮影
インカメラでの撮影

音声消しゴムマジックが秀逸

 カメラ機能としては、集合写真などで複数人での撮影時に、なんどかシャッターを切ることで被写体の顔をAI合成できる「ベストテイク」や動画撮影時にノイズや音楽を消せる「音声消しゴムマジック」が搭載される。

複数枚の写真から顔を認識して合成をし、ユーザーが選択も可能な「ベストテイク」
動画内の風切り音などのノイズや音楽を消せる「音声消しゴムマジック」

 この「音声消しゴムマジック」がかなり秀逸で、実際に試してみたところ街中でBGMとして流れているような音楽をかなりの精度で消してくれる。

 さすがに最大まで消すと、会話などの音声も若干変化するため、ある程度、音声消しゴムマジックで消して、別のBGMをのせるといった編集をすれば、かなり自然な状態の動画に仕上がるはずだ。

音声消しゴムマジック適合前と適用後

価格やそのほかの機能

 惜しむらくは、両モデルとも全機種と比べて価格が上昇していること。アメリカではそれぞれ100ドルずつ値上げとなっており、日本では税別比較で3万円前後の価格差になる。昨今の為替相場を考えれば相応な価格と言えるが、前モデルがかなり低価格な値付けだったため、やはり割高感は感じてしまう。

 また、Type-C端子からのDP(Display Port)出力にも非対応となっているのはマイナスポイント。

 スマートフォンからのDP出力はPCモニターやテレビなどに出力するだけでなく、最近はARグラスへの出力などにも使えるため利用シーンは増えてきている。そのため、他メーカーのミッドレンジモデルでも対応している機能だ。

 しかもGoogleが行ったデモでは、外部ディスプレイへ表示できることを確認している。DP出力そのものかは不明ながら性能としては、同等の仕様を装備しているにも関わらず、ユーザーには開放していない機能となっている。それだけに出し惜しみを感じてしまう。

 全体としては両モデルともバランス良く進化しており、NTTドコモからも販売されるため、5Gのバンドはn79にも対応。OSアップデートやセキュリティアップデートは、7年間に拡大されたため、長く使えることを考えるとコストパフォーマンスは高い。Pixel 6シリーズからキープコンセプトで作られてきたモデルとしては、完成形ともいえる仕上がりの端末だ。