法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)
WWDC 2025や8万円前後のスマホラッシュから見る、これからのスマホに求められる要素とは
2025年7月25日 00:00
WWDC 2025でOSの名称変更、新デザインを発表
佐藤
WWDC 2025が開催され、各OSの名称変更や、新しいデザインのLiquid Glassが話題ですね。
法林氏
Liquid Glassが「帰ってきたWindows Vista」とか言われているね(笑)。
石野氏
Windows Vistaも、デザイン自体が嫌われていたというより、あのデザインを動かすためのパソコンのスペックが追い付いていなくて、動作が安定しないから、結果として嫌がられていました。そういう意味では、基調講演にもありましたが、チップセットの性能が向上して、こういうデザインでも動かせるようになった。テクノロジーとデザインのタイミングは狙っているなと思いました。
Androidの場合は、スペックが上から下まで幅広くあるので、同じようなことができない。差別化にはなると思います。
石川氏
昔のiPhoneはシンプルで直感的、使いやすいと言われていましたが、最近は機能が増えすぎて複雑で使いにくくなってきていた。それを一回整理するという意味で、Liquid Glassは効いてくると思います。
実際、カメラアプリを開くと複数の撮影モードが一瞬表示されて、それがグッとまとまって、写真と動画のみが表示される。多機能さを見せつつも操作をするときにはシンプルになる。こういった両立ができるようになってきている。
OSの名前もこれにあわせて統一されて、今は当たり前のように、次に出るのは「iPhone 17」と言っていますが本当に17なのか。「iPhone 26」になる可能性もある。
石野氏
iPhoneの番号と、OSの番号、チップの番号が全部ズレていて覚えにくいんですよね。
石川氏
毎回調べるよね。
石野氏
それでも、ちょっとずつ間違えてたりする(笑)。 OSの名称を統一するのは、このタイミングしかないと思う。
石川氏
あと、名前に西暦が入ったことで、tvOSは毎年のアップデートができるのかが、個人的には気になっている。
関口
tvOSは、2年に1回のアップデートとかになるかもしれませんね。
石野氏
というか、毎回律義にtvOSの紹介をしなくてもいいのかも(笑)。
関口
今回は、iPhoneをカラオケとして使う機能なども追加されましたね。
石川氏
WWDC全体で言うと、世間的に「アップルはAIで後れを取っている」というイメージがあるけど、グーグルのGeminiやChatGPTと比べるのは違う。はじめからアップルはその土俵に立っていなくて、クラウドベースでさまざまなAI機能を動かすのではなく、あくまで端末上で動かすAIなので、比べてほしくないと話しています。
あとは、SiriのAI機能に関しては、まだできていないので、1年間待ってくれとアナウンスしている。それぞれのAI機能を見ると、Google PixelやGalaxy、AQUOSにも負けているような状態です。
石野氏
土俵が違うのはわかりますけど、オンデバイスでエージェント的に振る舞うAIは、グーグルもまだできていない。遅れていると言われていますけど、市場全体がそこまで進んでいるかというと、そうでもない。1年以内に、どこまで実現できるかで、世間の評価は巻き返せるのかなと思います。
あと正直、アップルのAIが遅れたところでだれも困らない。アップルはデバイスで収益を上げる会社なので、出遅れたところで売上に関係があるのか。グーグルの場合はAIがだめで、Google Cloudを使ってもらえなくなると収益が上がらなくなるけど、アップルはAIが遅れても、iPhoneが売れればいいんじゃないかな。
石川氏
一応、Apple Intelligenceとして端末内で処理はしているけど、より深いことをやろうとするとChatGPTと繋がるし、この先Geminiとも繋がるはず。Perplexityを買うという噂もあるので、クラウドベースのAIはほかにお任せできる。
石野氏
あと、アップルデバイス内のChatGPT機能の領域が広がっていて、絵も描けるようになっている。端末メーカーなのでそれでいいような気もします。
関口
ユーザーとして短期的に見るならいいけど、企業としては市場に置いて行かれてアドバンテージをとられ、そのうちユーザーをとられてしまうという危機感はありますよね。
AI関連では、あらゆるアプリ開発者がApple Intelligenceを利用できるようになる、「Foundation Models framework」も発表されていました。
石野氏
これも面白いですよね。簡単にチャットボットとかも作れるみたいです。こういう取り組みのほうがアップルっぽいですよね。
関口
最近、AIスマホが増えてきている中で何ができるのかを考えたときに、Androidの場合はGeminiがあるのに加えて、メーカーごとのAI機能が搭載されています。グーグルの取り組みとメーカーの取り組みが分かれているのが良し悪しだと思うのですが、プラットフォーマーとしてのAndroidは、メーカーからすると優しくないのかもしれない。どっちがいいんでしょうかね。
法林氏
個性を出すのであれば、メーカーそれぞれが頑張ったほうがわかりやすいし、Snapdragonの中にいろんなライブラリがあって、どんなカスタマイズをして、どんな機能を持たせるのかは、メーカーの腕の見せ所になる。これがないとディスプレイとカメラ、メモリ、ストレージといった、ハードウェアでしか差がなくなってくるので、AIはGeminiで統一されてしまうと、使い道が限られる。
関口
あと、WWDCでは電話系機能の発表も多かったですね。
法林氏
それはやるよね。各社が取り組んでいる領域なので。
石野氏
キャッチアップではありますけど、納得感はありますよね。
関口
あと、注目はiPadOSの進化ですかね。
石野氏
そうですね。iPadOSは、Mac化としての注目を集めていました。ただ、見た目がMacなのと、実際のMacの操作感は違うのかなとも思います。世の中、見た目に騙されすぎているというか、何度iPadのマルチウィンドウ機能に期待して、使ってみると違うという繰り返しをするのか。
石川氏
我々から見えること以上に、アップルとしてはiPadとMacを分けて考えている。iPadはあくまで指やペンでの入力デバイスだし、Macはキーボードファーストのデバイス。これは10年以上前からのものなので、見た目は変わっても違う部分です。
一方でiPadOSは紆余曲折というか、いまいち定まらないですよね。UIが変わるたびに「これでiPadで仕事ができる」と思って、実際に使うとやっぱりMacがいいとなる。
石野氏
無駄にiPadで仕事をしようとする人が多いですよね。
法林氏
石野君が率先してやっているじゃん(笑)。 業界内でも記者会見でiPadでメモを取っている人はそんなに多くない。
石川氏
Macを持っていない人がiPadでやっている気がする。
関口
あとはvisionOSの進化ですかね。
石川氏
visionOSはすごく進化していますが、なかなか伝わらないですよね。
法林氏
OSの進化の前にデバイスをどうにか広めないとね。
石野氏
みんなピンとこないですよね。これだけデバイスが広まっていないと、デモ映像に見えてしまう。
石川氏
Apple Visionに関しては、壮大な助走期間なので今は仕方ない。OSが進化を続けていって、軽いデバイスが出た何年後かに一気に広まる。
石野氏
アップルは、一度デバイスを出すとあきらめが悪いというか、しぶとく続けてくれる。
石川氏
Apple Watchもそうですけど、アップルの強みはコツコツ続けるところ。iPadもそうですよね。後出しじゃんけんではあるけど、じゃんけんし続けることで最終的には勝つ。
石野氏
やめるものは、デバイスを出す前にやめるようなイメージですね。
8万円前後の新市場「ミッドハイ」が熱い
佐藤
FCNT、モトローラ、OPPOと立て続けに8万円前後の「ミッドハイ」と呼ばれる価格帯のスマートフォンが登場しています。こちらについてはいかがですか。
石野氏
ミッドハイ、来てますよね。
石川氏
8万円前後のスマートフォンが一気に熱くなった。チップセットとして、そこにMediaTekが多く採用されているのが新しい風を感じる。クアルコムが心配にはなりますが。
石野氏
冷静に考えると数年前のハイエンドと同じ価格帯だし、8万円程度出せばそれなりの性能で、そこまで詳しくなければハイエンド感は味わえるようなスペックになる。メーカーにとっても、ミッドレンジよりははるかに儲けやすいので、いい価格帯ですよね。
キャリア採用モデルは、端末返却プログラムを使えば実質価格も3万円くらいに抑えられるので狙うにはいいゾーン。Pixel Aシリーズや、iPhone 16eとかも同じ価格帯なので、熱くなっている市場だなと感じます。
関口
価格設定として「10万円が指標じゃないのか」と感じますよね。一方で、AQUOS R10は10万円程度になっています。
石川氏
ちょっと高いんですよね。そこはSnapdragonの高さなんだろうなと思います。
法林氏
8万円くらいだと、返却プログラムを使って半額で返却をすると考えれば、月々1600円くらいになる。ここが狙い目ですよね。
石野氏
さらに割引を入れると月々1200円くらいになる。料金プランの中に入っていれば、気が付かないくらいの価格にまで抑えられます。
石川氏
全体的にグローバルメーカーでの戦いになってきていて、FCNTとモトローラは、チップやカメラセンサーをグローバルで調達している。今回採用されているカメラセンサーの「LYTIA」は、中国メーカーからブランドを使いたいという要望があってできたブランドだとのこと。最近はそういう要望がないみたいですが、アメリカや南米に強いメーカーからの引き合いがあると話していました。つまり、レノボグループとしてLYTIA推しになっている。
石野氏
カメラセンサーのブランドは、特に中国メーカーは重視するみたいです。Xiaomiが搭載している「Light Fusion」というセンサーはOMNIVISION製だけど、共同開発というていにして、Light Fusionと呼んでいるようです。もちろん、Xiaomi向けの独自カスタマイズはしているの名前だけではありませんが、ブランディングの一環という意味合いもあるみたいです。
関口
そう考えると、今年発売された、Nothing Phone (3a)や、Zenfone 12 Ultraも、製品紹介にLYTIAを盛り込んでいますね。
カメラの話から離れると、FCNTとモトローラは思った以上につながっているけど、モトローラ・モビリティ・ジャパンの人はあまり把握していないみたいですね。
石野氏
モトローラの日本法人は、開発部隊が日本ではないですからね。FCNTは日本のメンバーが実質すべてなので、シカゴのモトローラとよくやり取りをしているみたいです。AIキーも共通していますし、アプリを割り当てる設定画面も同じ。今回から、arrows Alphaに写真を撮影した際の透かしが入るようになっていますが、これもモトローラのものをそのまま持ってきています。
法林氏
ベースになるソフトウェアのライブラリは、共通化を図ろうとしているみたいだね。
石川氏
そのうち、arrowsから折りたたみスマートフォンが出るかも。
石野氏
ありえない話じゃないですよね。
法林氏
FCNTの桑山社長が折りたたみをやりたいと言っていたのもそれがあるからだよね。
石野氏
やりたいというか、モトローラから持ってきたい。
法林氏
あとはどれだけサポートができるかどうか。
関口
arrowsが目指している、シニア層や安心安全の需要と合致すればという形ですかね。
法林氏
もちろん若い人向けでもいいと思うけど、arrowsとして展開したときに、FCNTが修理とかの面倒も見れるのか。やるべきことはたくさんある。
石野氏
フォルダブルは出せばいいというものではなくて、アフターサポートがないといけない。ディスプレイの経年劣化は、どうしても普通のスマートフォンより早いです。
法林氏
そうだね。だからFCNTから発売して、ドコモショップでフィルムを張り替えられるようになるといった対応ができれば、あり得る。
石川氏
スマートフォンじゃないけど、今回の発表で言えばFCNTがらくらくホンを復活させたのはすごいですよね。
法林氏
6年ぶりだね。
石川氏
そうですね。部材がないと言っている中で、らくらくホンを残したのはすごい。スマートフォンはレノボ傘下としてコストを抑えつつ、らくらくホンのようなデバイスも開発できた。
法林氏
フォルダブルのヒンジはグローバルで複数のメーカーが開発していると言われているけど、フィーチャーフォンのヒンジを開発する会社がもうないという話だったね。
関口
らくらくホンが復活したというマーケットとしての重要性と、モノづくりとして新規で開発したという対比の話は面白かったですね。
石川氏
パッと見は変わっていないけど、実は全部変わっている。
法林氏
下手したららくらくホンのほうが作るのが大変だったと言っているくらいだからね。そう考えると今回はドコモの3G回線が停波というタイミングだから出たけど、今後はもう出てこないかもしれない。ほしい人は今のうちに買うべきだね。
石野氏
それでも、FCNTとしては数十万規模の市場があるという見込みらしいですね。
ミッドハイスマートフォンにどれほどのローカライズが求められるのか
法林氏
同じく8万円程度の端末、Pixel Aゾーンって言おうかな。今までは5万円程度のミッドレンジ帯が盛り上がっていたけど、Pixel Aゾーンにしっかりと市場を形成できるのかが見もの。
石野氏
OPPOは若干心配です。OPPO AIの全ラインナップに、クラウドのAIを搭載するという取り組みはわかるし、4万円台のOPPO Reno13 AでAIが使えるのはいいんですけど、今盛り上がっているミッドハイレンジのOPPO Reno14 5Gが、一切ローカライズされていないのは本当にいいのか。
法林氏
おサイフケータイなしね。
石野氏
そうですね。Reno13 Aは、背面デザインもベースモデルのド派手なものは持ってきていなくて、シンプルな端末を展開していますが、Reno14 5Gはかなり派手ないかにも中国メーカーらしいものをそのまま持ってきています。
法林氏
ただ、白と黒しかないと店頭に並んだ時に弱いし、最近はクリアカバーを付けて間に写真やステッカーを挟む人が多いから、あまり地味なのはかえってよくないのかもしれない。Reno14 5Gがいいのかはわからないけど、選択肢としてはありなのかもしれない。
石野氏
シャオミのPOCOシリーズのようなサイバーっぽいデザインはわかるけど、Reno14 5Gは中国感が強すぎませんか。
石川氏
OPPOはそんなに余裕があるわけではないのに、このままでいいのかなという心配はありますよね。
法林氏
ハイエンドのFind Xシリーズは、一時的に売り切れたらしいけど、僕の聞く限りではそんなにいい反響が届いていない。
あと、おサイフケータイで言うとモバイルSuicaが使えるかどうかは論点だけど、決済だけならNFCでできるものもあるし、QRコード決済もある。困らない人もいるよね。
石野氏
昔に比べれば、ましになりましたよね。
法林氏
一番のネックはモバイルSuicaなどの交通系IC。
石野氏
あと、マイナンバーの電子証明書を入れられない。
石川氏
これくらいのレンジの製品で、日本投入を急いでローカライズしないという選択肢はありなのか。そんなに急がなくてもいい気がする。
法林氏
それはシャオミもそうだよね。僕はSuicaをそんなに使わないので、そこまで気にしていないけど、FeliCaなしで、どれだけ使ってもらえるのかは難しい。「FeliCaないとイヤ」という人はやっぱり相当数いるけど、メインの移動手段がクルマという人なら、交通系ICが使えなくても困らないはず。職種や移動手段によるよね。
石野氏
やっぱり、マイナンバーが入れられないのは大きくないですかね。コンビニでスマートフォンだけで証明書が発行できるのは便利でした。
関口
今後、契約とか本人確認に使えるようになれば、使える幅は広がっていきそうですよね。
石川氏
Nintendo Switch 2は、マイナンバーカードに紐づけて、1人1台しか買えないとか。
石野氏
今後、対面での年齢確認とかにも使えるようになっていくはずなので、そのタイミングでFeliCaがないのはちょっと厳しい気がします。
石川氏
あと、今までは安さで中国メーカーが選ばれてきたけど、安さでFCNTなどが盛り上がってくるとどうなるのかわからない。
石野氏
そう考えると、レノボは本当にうまいですよね。
石川氏
グローバルでの調達力とローカライズは、パソコンでもうまかったですし、そのノウハウがスマートフォンでも活きています。
石野氏
買ったブランドを活かして伸ばすのがうまい。レノボ自体の存在感は薄くしても、ローカルで通じるブランドを使っている。さらに、横連携もうまくやっています。企業文化までうまく融合させていますよね。
法林氏
パソコンのThinkPadが日本IBMからLenovoになったときも思ったけど、あまり「俺が、俺が……」という感じじゃないよね。ちゃんと自分たちのブランドとしてIdeaPadを出して、コスト的に見合う部分は受け継いでいるし、できないところは各ブランドでやっている。
石野氏
スマートフォンも、昔は自分たちでやっていましたが、あまり売れないと見たらすぐにモトローラに切り替えている。
法林氏
今、アメリカでやっているサッカーのクラブワールドカップでは、スタジアムのバナーにモトローラが大きく出ている。
石野氏
そういうのがうまいですよね。現地の人たちが、レノボって出したらどう思うのかがわかっている。
法林氏
アメリカの人たちからしたら、レノボって出されるより、モトローラのほうが親しみがあるからね。支持されるネタをしっかりと持っているし、FCNTもうまくやっている。らくらくホンの部品調達にもレノボグループの力は活きているはず。
石野氏
中国メーカーなのに、ファーウェイやZTEのように、アメリカから制裁を受けるみたいな話が一切ない。それもすごい。
法林氏
シャープと鴻海の結びつきよりも強い気がする。FCNTはいいパートナーと手を組んだね。
関口
このひと月で出た端末は、競争が激しくなる市場に、しっかりとミートしてきたものが並んでいますよね。
石野氏
うーん。Reno14 5Gはちょっと微妙ですけどね。
法林氏
悪い端末ではないんだけど、さっきも話が出たように、そんなに急いで、ローカライズもせずに出さなくてもよかったと思う。同じ考え方に基づくと、シャオミのPOCOシリーズとか、Redmiシリーズはどうするのか。FeliCa必要論にもつながるけど、こういった端末を出すときに、FeliCaなしでも決済ができるということをまったくアピールせず、とにかく持ってきて、売るだけになっているのが不満です。
石川氏
少ない数なら持ってこられるんでしょうね。キャリアと組んで全国のショップに配置するわけじゃなくて、ネットで売るだけなのでラインナップをそろえて、ファンが喜んでくれればいいという発想なのかも。
石野氏
ちょっと、販売台数を追い求めない方向に行っている気がしますよね。
法林氏
少ない数を持ってきて、売り切って終わりという考え方は疑問。日本市場はキャリアが強いというのは認めるところではあるけど、今のやり方でいいのか。
石野氏
シャオミの規模だと、FeliCaを搭載してカスタマイズすると採算が取れないというジレンマになっている。搭載しないと数は売れないけど搭載するとコストがかかるので、搭載せずにモデル数を増やすという判断に至ったのも、わからなくはないです。
法林氏
ただ、FeliCaを搭載しないにしてもNFC(TypeA/B)でできることのフォローがないのはよろしくない。
石川氏
これだけたて続けに出していると、1つ1つに愛を感じないですよね。
法林氏
そうだよね。POCOを欲しがるようなファンに対しての取り組みは見えるけど、自分たちを知らない人たちに対するアプローチを用意していない。
石野氏
あと、今の規模感で見ると、そんなにスタッフを抱えて大丈夫なのかなという心配もあります。
石川氏
それはあくまで、日本単体で儲けているのではなく、中国でのベースがあるから。
石野氏
とはいえ、日本ではまだマイナーメーカーですよね。
法林氏
そこをメジャーにしていく努力は必要。ただ、メジャーにしていくために、FeliCaなしでできることをアピールすればいいのにと思うんだけどね。一方でモトローラは、ブランド力を上げるためにタレントにすごくお金をかけていて、端末のプロモーションはあまりやっていない。
Galaxyは、iPhoneやPixelに勝っていかないといけないから、自社サイトでGalaxy AIの使い方をアピールしている。どれが売れるのかは市場が決めることだけど、サムスンのやり方を見ていると、出すだけになってしまっているシャオミのやり方には、どうしても疑問が残る。
石川氏
Xperiaは端末価格は高いけど、発表会に行くとこだわりがすごく伝わるし、Xperiaが好きな人はたくさんいるから成立している。サムスンはアップルに勝ちたいし技術もあるけど、まだ世間に伝わり切っていないので、AI機能をアピールしている。
石野氏
シャオミも、Xiaomi 15 Ultraは、ライカと一緒に訴求していますけどね。
総務省のルール作りには疑問が残る
石川氏
1つ気になったのは、野村総合研究所の北俊一シニアパートナーが「端末割引はシンプルにするべき」と言い出した。何をいまさら手のひらを反しているのか。発言の背景にあるのは、総務省の会議で「時代に即したルールが必要」とされている。じゃあ、それって何という話。
韓国では端末流通法が7月で廃止になる。この端末流通法は日本の仕組みに似ているのですが、これによりパンテックがなくなり、LGが撤退し、SIMフリー市場はできたけどボロボロ。結果、みんなが平等に高い端末を買わされることになった。
法林氏
もともとそうだけど、総務省はあれこれ手を出しすぎだよね。
石野氏
どんどん積み増しで新しいルールを作った結果、ごちゃごちゃになっています。
法林氏
コントロールしたい気持ちはわからなくもないけど、本当にやらないといけないのは原理原則を作ること。なのに、細かいルール作りに走りすぎてしまっています。
石川氏
単に2年縛りをなくして、解除料をなくして、SIMフリーを流通させれば競争は起きたはずなのに、端末の価格にケチをつけ始めた。結果、いろいろと複雑なルールを付けている。端末と通信の分離をしても、結果としてはキャリアは値上げをしているわけですよ。
石野氏
各キャリアも、うっかり間違えてルール違反をしているような状態です。うっかりミスで行政指導を受けるって、そもそもルールが複雑すぎますよね。挙句の果てに、中古ショップに販売の平均価格を出させるとか、ちょっと細かすぎる。そこまでやらなくてもいいと思う部分まで、踏み込んでいます。
法林氏
料金を下げることが目的だけど、結果として料金は上がっている。端末の値段が上がっているのが理由でもあるけど、いまさら「時代に即した」と言われても、今まで何をしてきたのかという話。
石野氏
あと、今は楽天モバイルがいて4社での競争になっているので、仮にルールが緩和されても、MNPで10万円、20万円の割引をするといった流れにはならないと思う。
石川氏
各社、身の丈に合ったやり方で動くはず。ただ、ソフトバンクはガンガン割引してきそうだし、KDDIは引っ張られるかも。ドコモも当然やりたくないですよね。
石野氏
ドコモは、仕方なく他社と同じくらいお金をかけたら、MNPの数字は回復したけど、これ以上はためらっているような印象です。
法林氏
irumoの0.5GBプランをやめたのもそうだけど、MNPの踏み台にされることに気を付けている。
関口
ドコモは、あまりお金をかけてこなかったから、MNPでの流出が多かったと話していましたね。
石野氏
そうですね。今は他社並みにお金をかけているんですけどこれ以上にはしたくない。なので、ドコモ MAXを出して、DAZNファンが離れないように先手を打った。
石川氏
ユーザーを獲得するには、お金が必要というのは昔から変わっていない。端末が安くなれば、ユーザーはうれしいですしね。
関口
割引をやりすぎると、MVNOがついて来れなくなるので、ルール作りは難しいですよね。
法林氏
ドコモ MAXが出たときには、高いと感じる人はMVNOという選択肢があると、石川君がテレビで話していたよね。この方向性をもっとアピールしないといけないけど、テレビはあまりやらない。構造的にもMVNOが伸びにくい環境を作ってしまっているのは問題。
関口
官製値下げの影響で、キャリアの通信料は半額近くまで下がったとされていますが、そっちが下がると当然MVNOは厳しいですよね。
石川氏
そういう意味では、ドコモ、KDDIと立て続けに値上げをしているので、これからまたMVNOとのすみわけができてくるかもしれません。
石野氏
なので、MVNOは料金改定をするとか、もう少しエンジンをかけるタイミングなんですけど、ちょっとおとなしいですよね。
石川氏
接続料があって、下げ幅にも限界は来ているからね。
石野氏
実際に料金を下げなくてもよくて、もともと価格差はあるので、料金体系をちょっと変えて、見え方を変えたり、料金を整理するといった取り組みがあってもいいはずです。
石川氏
それでいうと、JALモバイルが好調らしい。料金や容量では差別化がしにくいので、国内線航空券がお得になるといった、新しい価値が注目されているのかもしれません。
法林氏
JALモバイルは、受け口がIIJだからよかった。
石川氏
そうですね。JALのブランド、マイレージ会員の母体にIIJのベースがある。
法林氏
だからこそ、サービスが成立している部分はあるよね。



















