法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)

ソフトバンクは手数料値上げ、KDDIはSBI証券をタッグ。気になるキャリア動向を深掘り

 通信業界を中心に活躍するライター4人による「スマホ会議(仮)」。今回は手数料の値上げを行ったソフトバンクや、SBI証券と手を組んだauなど、通信キャリアの動きについて話し合っていきます。

ソフトバンクが各種手数料の値上げを発表

関口
 ソフトバンクが手数料の値上げを発表しましたが、これは他社も追従していくのでしょうか。

石川氏
 以前はKDDIも手続きでの手数料は取っていましたよね。

石川氏

石野氏
 ただ、それ以上にソフトバンクは高く設定してきました。

石野氏

石川氏
 しかも、オンラインでも手数料が発生する。

石野氏
 KDDIも、auオンラインショップでの機種変更では手数料が発生しますが、聞くところによると、利用者がそこまで多いわけではなさそう。システム開発にも当然お金はかかるので、機械にお金を払うのか、代理店手数料を払うかになっていて、そもそも無料にはできないという主張は聞きます。

 ドコモは、機種変更の事務手数料を導入したときに、「料金の複雑化に伴う手間代です」という説明をしていました。人件費が上がっているし、手続きが煩雑になっているので、手数料が発生する。一方で、Webでの手続きは、ユーザー自身が作業を行っているので、そこに手数料が発生するのは、ドコモの理屈だとちょっとおかしい。少なくとも、ソフトバンクの価格設定は高いですよね。

法林氏
 ちょっと高すぎるよね。

法林氏

石川氏
 iPhoneだって、機種変更をしたら、端末が送られてきて、自分で簡単にデータ移行ができる。なぜそれに、3850円も手数料がかかるのかがわからない。

石野氏
 システム登録料なのはわかりますけど、にしても高いですよね。

石川氏
 eSIMの発行などにお金がかかるのはわかる。一方で、PayPayカードを持っていると、実質割引が適用されるのも謎です。

石野氏
 本当に手数料なのかと思ってしまいますよね。儲けようとしている匂いがしてしまう。

法林氏
 ユーザーからすると、MNPで他社に移動するのに、お金が発生するのは疑問になる。あと、ソフトバンクは料金プランの契約が偏っていて、ドコモやKDDIと比べて、各種割引の適用率が低いから、意外に中小容量プランの契約者が多いのかなと思う。結果、あんまり儲かっていないのかもしれない。

 とは言え、店頭での4950円は高いし、Webでも3850円は高いよね。

石野氏
 Webは、ユーザーが肩代わりしないといけない作業が多いのに。

法林氏
 システムにお金がかかるのはわかるけどね。

石川氏
 それなら、せめて全部Webでできるようにしてほしい。

石野氏
 店頭とWebの差額を見ると、じゃあ人件費は1件あたり1000円で済むのかという話になる。あと、手数料でクレジットカード契約を促進するのは、どうなんですかね。手数料ではなく、営業の商材になっている。

法林氏
 しかも、ポイント還元だからね。使い道が限られる。

石野氏
 ソフトバンクからワイモバイルへのブランド変更にも、手数料が発生する。武田元総務大臣が聞いたら激怒しそう。

石川氏
 それで言うと、総務省の変なルールがあるから、解除料でお金が取れなくなっているので、皺寄せがきているのかなとも思う。

石野氏
 でも、元々は、ブランド変更にお金がかからないから、料金プランみたいなものという話だったのに、手数料が発生してしまうと独立したブランドですよね。

法林氏
 SIMの再発行はWebでは当面無料で、準備ができ次第3850円になるんだね。

石野氏
 準備できなくていいという話ですよね。

関口
 様子見という感じなんですかね。

法林氏
 あと、eSIMは同一プラットフォーム間の転送は、環境が整いつつあるけど、そうじゃない場合は困ることもある。

石野氏
 iOS 26では、AndroidからのeSIM転送という設定項目ができていますね。

法林氏
 eSIM転送が異なるプラットフォーム間でもできるようになるのであれば、手数料が発生するのもわからなくはないけど、全機種でできるわけではない。それなら、ある程度のしきい値は設けないといけない。ちょっとやりすぎかな。

石野氏
 店頭手数料が約5000円って、通信料1ヶ月分くらいになりますし、MVNOだったら、5カ月分くらいになりますよ。

関口
 先に値上げをしていたドコモやKDDIは、商戦期に手数料を割り引くといった動きはなかったですよね。MVNOなら初期手数料の割引などを行なっていますが。

石野氏
 MVNOだと、料金に対する比率が大きい。通信量が毎月1000円だとしたら、手数料の3000円が高く感じる。ドコモやKDDIだと、数千円する料金のうちの3000円ですからね。

法林氏
 この仕組みだと、せっかく契約解除料が無料になったのに、MNPするのに、またお金がかかってしまう。総務省的にOKなのか。

 あと、機種変更をする人は、端末を変えるたびにお金を取られるのが嫌だから、今あるSIMカードを使い続けようとするかもしれないけど、5G SAのように、ネットワークのしくみが変わる度に「SIMカード交換してね」と言い出しかねない。

石野氏
 そういうところはドコモがしっかりしていて、変なお金は取らないんですけど、KDDIも結構ひどくて、5G SAに契約変更するだけで3850円かかるし、eSIMクイック転送をすると、勝手に契約変更になっていて、いつの間にか課金されていることがある。

法林氏
 ドコモは5G SA対応のSIMカードが明示されていて、ユーザーが持っている回線のSIMカードが5G SA対応かどうかがわかる。KDDIは実際にやってみないとわからないという、結構、ひどい状況。

石野氏
 しかも、eSIMクイック転送で5G SA対応機種、非対応機種間を何度も移行していると、その都度3850円が発生したりもする。それはないだろうと思います。

法林氏
 どれだけのユーザーがeSIM転送を利用するのかという話もあるけど、eSIM転送時にキャリア側が行なっているのは、認証している程度だからね。

石野氏
 そうなんですよ。ぼったくりじゃないですか。

関口
 手数料が一律になるという意味では、わかりやすさはありますし、物価高騰を考えると、手数料がかかることにも、理解はできます。

石川氏
 だから、店頭の手数料が上がることに関しては、何も文句がない。でも、Webの手続きは、自分で免許証の写真を撮ったり、顔の撮影をして認証をしないといけないのに、これだけお金がかかるのか。

石野氏
 むしろお金を貰いたいくらいですよ(笑)。

石川氏
 情報革命ってなんだろうっていう。

関口
 このまま行くと、機種変更といった手続きにお金をかけず、色々と試して楽しみたいという人は、MVNOといった選択を自然とするようになりますかね。

石川氏
 手数料でキャリアを選ぶ時代になってしまう。

石野氏
 手数料という料金競争。

法林氏
 「手数料品質」とか言っとこうか(笑)。

ソフトバンクは海外ローミングキャンペーン「海外あんしん定額」もスタート

佐藤
 ソフトバンクで言えば、「海外あんしん定額」が15日間無料になるキャンペーンも始まりましたね。


佐藤

法林氏
 ようやくだね。正直いえば、始めるのが遅い。7月中に発表しないとだめ。

佐藤
 7月中というのは、夏休みが始まる前にということですかね。

法林氏
 そう。今頃周知することではない。しかもひどいのは、認証コードを入れないとダメで、それを外してお金がかかった場合には、意地でも支払わせますという内容になっている。ドコモやKDDIは、予約できていなくても普通に使えた。

石川氏
 本当に動きが鈍かった。ドコモ、KDDIが始めて慌てて用意した感じです。今のソフトバンクは後手に回っている印象で、新しい料金プランも他社に比べて用意できていないし、海外ローミング無料もKDDIが始めたから急いで準備した。

石野氏
 クーポンコードを入れる仕組みって、一番その場しのぎというか、料金プランのシステムに組み込む時間がなかったんだなと。無料になるし、16日間で使える容量はドコモより多いので、いいんですけどね。

石川氏
 ただ、あくまでキャンペーンなんだよね。

石野氏
 そうなんですよね。そこが不安。ソフトバンクっていいことをやっているのに、不安を残す文言がついていることが多いですよね。

法林氏
 逃げられる要素を残している感じだね。

石川氏
 アメリカ放題は逃げられなかったけどね。

石野氏
 今回もそうなると思いますよ。キャンペーンを辞めるとなったら、相当叩かれるはず。eSIMの手数料だって、毎回3850円が発生していたら炎上すること間違いなしです。逃げられないことをやっているのに、逃げ道を残しているところは、アグレッシブさが足りないですよね。

 アメリカ放題は本当に素晴らしいサービスで、990円のSIMでも使い放題だし、電話もかけ放題、SMSも送り放題になります。

法林氏
 アメリカ放題は相当すごいよね。アメリカに行くたびに思う。

石野氏
 仕事で月に1回はアメリカに行くといった人は、マストで契約するべきサービスですよ。

 海外あんしん放題は、15日間と書いてあるけど、よく見ると実は16日なんですよね。96時間プランというのが、4回分使える形になっていて、これが一番お得です。

石川氏
 auも、なんだかんだ22日分ですしね。

法林氏
 ドコモはドコモ MAXの中に海外ローミングが入って、auもバリューリンクプランに入っている。ソフトバンクだけが残っていた状態だったので、先日、タイに行ったときは、同じ端末に入れていた楽天モバイルの2GB分でまかなった。

石川氏
 楽天モバイルの2GBが、一気にしょぼく見えるようになりましたね。

石野氏
 そうですね。しかも1GBを追加しようとすると、500円かかる。30GB使おうと思うと、28GB×500円で、1万4000円もかかってしまいます。

法林氏
 2泊3日程度で、メイン回線でなければ使えるけど、動画のアップロードなどを考えると、全然足りない。

KDDIは個人向けサービス「ConnectIN povo」や無料の「povo AI」を発表

佐藤
 一方、KDDIはパソコンやIoT機器に通信を組み込む「ConnectIN」で、個人向けの「ConnectIN povo」を発表しています。

法林氏
 対応するパソコンの価格が高すぎる。

石野氏
 5年で300GBは悪くないと思いましたけどね。

石川氏
 単に細く通信につながっていて、しっかり使いたければ、トッピングを買ってくださいという形だったら、わからなくはない。

法林氏
 だったら、30万円のPCに、通信モジュールをつけると35万円になるところを「povoがついても30万円ですよ」という形になればいいのに、そうはならない。

石川氏
 法人向けのConnectINは5年間使い放題というのに比べて、今回の個人向けは明らかにしょぼい。

法林氏
 もっと厳しい言い方をすれば、法人は5年間使い放題なのに、個人は300GBで5年間という差別だよ。ひどいと思う。

石川氏
 法人向けは、ある程度通信量をコントロールできて、夜間に動画をどんどん見られたりする心配がないけど、個人向けは違うという理屈はわかる。だったらもっと魅力的な設定があるはず。

法林氏
 通信モジュールをつけて、そこそこ新しい世代のCPUが載っているPCだと、40万円近くなるのはわかる。たとえば、5G対応の通信モジュールを搭載すると、それだけで5万円くらい高くなるからね。それにしても、57万円のノートPCを個人が買うと思っているのが、恐ろしい感覚だと思う。

石野氏
 おかしいのが、HPのPCって個人向けはすごくコスパがいい。バランスが良くて、デザインも綺麗にまとまっているし、余計なアプリが入っていない。それなのにConnectIN povoは、法人向けを無理やり個人に売っているような形で、やたら高くなっている。

法林氏
 テザリングをしない方向に向かいたいのはわかる。テザリングをしなくてもノートPCを開くだけで、インターネットに接続されるのはいいけど、50万円以上かけるなら、30万円くらいのPCとGalaxy Z Fold7を買った方が幸せだと思う。

石野氏
 法人向けだからかもしれないけど、HPもこんなに高いPCを売るメーカーじゃなかったのにと思ってしまいました。

法林氏
 値付けとして、個人が買うPCで57万円ってほとんどない。MacBook Proをカスタマイズするとかはあるけどね。

石野氏
 MacBook Proも、そのレベルになると、個人が買うものではないですからね。

石川氏
 儲かっているYouTuberとかがターゲットなんですかね。

法林氏
 でも、その人が使う場合に、300GBが魅力的なのかという話。ノマドワーカーが300GBで足りるわけがない。

石野氏
 10万円くらいのPCにこれが入っていて、たまに外で使うから5GBくらいで常時接続ならわかる。ミスマッチ感がすごいですよね。HPの主力って、OmniBook 7とかの、10万円前後だけど、AMD Ryzenチップが入っていて、ある程度快適に動くっていう製品ですよね。

法林氏
 最初にConnectINを法人向けに発表したとき、個人で買えないのかという記事も見かけた。それに応える形で話が進んだんだろうという気もする。

石野氏
 応えきれてないですけどね。

石川氏
 ぜんぜんユーザー層が見えてないですよね。例えば、大学生が入学するときにPCを買うタイミングで、10万円くらいのPCでデータ通信が4年間付いている。容量が足りない時は、トッピングするとかならわかる。今回は、ユーザーと端末、価格が何もマッチしていない。

石野氏
 10万円くらいのPCに、300GBをつけても全然いいですよね。モジュールが入っていないのかもしれませんが。

石川氏
 でも、キャリアがやるのであれば、モジュール付きPCを普及させる動きをしないといけない。

関口
 リリースを見た瞬間は、面白そうと思いましたけどね。

石野氏
 詳しく話を聞いているうちに、だんだん「これじゃない」感が強くなっていきましたね。

法林氏
 あと、サインアップのところも言うほど楽じゃないと思う。スマートフォンでQRコードを表示して、PCに読み込ませるので、簡単になったというけど、できるようになったのは最近の話だし。

石野氏
 QRコードを発行するまでが大変そうですよね。

法林氏
 そうだよね。povoのWindowsストアアプリを用意して、そこからサインアップできるくらいの導線は作らないと。

石野氏
 EIDとかも、自分で入力しないといけない。ユーザーがみんなわかるのかっていう話ですよ。EIDの入力っていう、ドコモの十八番作業まで真似しなくていいのに。

関口
 一方、povo AIは面白そうですよね。

石野氏
 そうですね。タダで使えたら、そりゃ誰も文句は言わないでしょうけど(笑)。

石川氏
 タダで使えて便利という話だけど、実は色々考えられていそう。おそらく、将来的にはAIもトッピングとして追加されるでしょう。

 KDDIはAIマーケットなどをやろうとしていますけど、AIサービスは毎日のように進化しているので、どれがいいのかわからない状態。こうやってキャリアが提供する形で、キャリア決済を通して、いろんなAIを試せる環境が作れるという意味では、povoとの相性がいい。

 将来的には、いろんなAIが1つのトッピングで使えるパターンもあれば、ChatGPTトッピングとか、Geminiトッピングがあって、月によって使うものを変えるといったこともできるので、AIサービスとユーザーを繋ぐという意味では、面白い試みです。

関口
 キャリアはAIサービスへの取り組みを色々やっていて、ソフトバンクはPerplexityと連携していたりもしていますが、povoの方がアプリだからか、敷居が低いように感じました。

石野氏
 そうですね。敷居は低いと思います。

石川氏
 今までの生成AIサービスは、アカウントを作って、クレジットカードの登録をするといったハードルがあったけど、いきなりアプリ内で使えるならハードルは下がりますよね。制限はあるけど、いろんな人が使い始められる。

石野氏
 今の所、できるのはチャットくらいなので、もう少しエージェント的な使い方に進化すると面白いですよね。AIとただ会話するのも飽きてきたというか、それ以上のことができるようになってほしいですね。

石川氏
 かといって、万年筆を勧められてもね。

石野氏
 Rakuten AIのことですね。楽天のエージェントって、楽天に関することしかやってくれないんですよね。

石川氏
 結局、誰のためのエージェントなのか。

石野氏
 楽天のためのエージェントになっていますよね。

石川氏
 でも、楽天に出店している人からすると、ピンポイントでしか紹介してくれないから、残りはバサバサと切り捨てられているようなもの。今までのメルマガをたくさん送るとか、バナーをつけるといった努力を一切無視して、単にAIに引っ掛かることでしか生き残っていけなくなる。楽天のビジネスモデルを壊しかねない。

関口
 Web媒体と、グーグルがやろうとしていることの関係に近いですね。AIに引っかからないと、生き残れない。

石野氏
 楽天トラベルも使えるようになるという話だったのですがまだ対応してなくて、ハワイのホテルを予約しようとしたら、楽天市場で売っているガイドブックをレコメンドされました。自分でやれってことかよっていう(笑)。

 あと、楽天には今できることと、将来的にできることを分けて説明してほしいです。

石川氏
 本当にそうだよね。

石野氏
 ただ、AIをいろんなところに使っているという話は面白い。料金や契約関連で言うと、SIM自販機の「最強くん」が出てきました。

石川氏
 あれって、そんなにAIを活用する必要があるのかな。

石野氏
 ワンプランですからね。

石川氏
 選択肢がないからね。

石野氏
 ショップ店員の代わりに相談するという形はわかりますけど。

石川氏
 でも、郵便局で頑張っていたけど、成果はあんまり出ていないよね。KDDIのローソンもそうだけど、こういったデバイスに人が話しかけるのかなと思ってしまいます。

法林氏
 高輪のローソンで、入り口の脇に「AI Ponta」くんがいて結構みんな触っていた。あれくらい入りやすい形にしないと、難しいよね。

auフィナンシャルグループとSBI証券の業務提携

佐藤
 KDDIの動きとしては、auフィナンシャルグループが、SBI証券と業務提携の検討を始めることを発表して、話題を呼んでいますね。

法林氏
 最終的にどういう形になるかはわからないけど、SBI証券はポイントサービスを含め、いろんな企業と全方位でお付き合いをしている。クレジットカードで投資信託の積立ができる証券会社が増えているけど、いろんなクレジットカードに対応したいという思いもあるはず。

 あと、auフィナンシャルグループがどこまでの提携を考えているかがわからないね。

関口
 KDDIとしては、この春にauカブコム証券を手放したばかりですが、SBI証券とタッグを組むということは、KDDI側としても、全方位でやっていきたいということなのでしょうか。

法林氏
 au PAYカードで投資信託が買えるのは、当時のauカブコム証券、現在の三菱UFJeスマート証券しかないという状態だったけど、今後はみずほ証券とか、大和証券など、他の証券会社の積立にも使って欲しいという方向に進むと思う。SBI証券は口座数も多いし、組みやすいということなんでしょうね。

石川氏
 キャリアから見ると、証券会社を持っておくことに、そこまで旨みがある状況ではないんだと思います。契約者のシェアがある程度決まっている状態なので、自前で頑張るよりは、いろんなところと組んだ方がいいというのが、auフィナンシャルグループの考えだと思います。

 今は、SBIと楽天の一騎打ちになっているので、こっちと組んでおきたいというのは、理解ができます。

関口
 ドコモからすると、auとSBIが手を組んだことで、マネックス証券だけの展開をする口実ができますよね。

法林氏
 SBI証券は元々、マルチポイント戦略と言って、いろいろなところと手を組む方針なので、そのうちの1つにauが加わっただけ。auとしては、auじぶん銀行をもっといろんなところと繋いで、メイン銀行として活用してもらうためには、証券との連携はより重要になる。SBI証券と組めるのであれば、当然やりますよね。

 自分もSBI証券にしようかと迷っているけど、リスクとしては、SBI証券の迷惑メールが多すぎて、見分けがつきにくくなることかな。

石野氏
 確かに多いですよね。僕も最近、ドコモメールにすごい数の迷惑メールが来ます。迷惑メールブロックが全然機能していない。

法林氏
 ドコモもだけど、ソフトバンクもダメだね。証券会社のハッキングが話題だけど、トリガーはメールやSMSなので、携帯会社がしっかりと迷惑メールに対する強化をしているのかは疑問。

石野氏
 本当に、こういうのにAIを使うべきですよね。

法林氏
 送信元認証とかもあるけど、AIで迷惑メールを削減するくらいのことはしてほしい。手数料を上げるより、そっちが先でしょう。

「スマホ新法」は誰のためのルールなのか

佐藤
 公正取引委員会と経済産業省から、いわゆる「スマホ新法」の改正ガイドラインが公開されましたが、こちらはいかがですか。

石川氏
 以前のものから、そんなには変わっていないですよね。

石野氏
 アップルも、懸念を表明するくらいになっていますね。

法林氏
 決めてしまったものは、仕方がないという反応だよね。公取委にはもう少し他にやることがあると思う。業界の見方が偏っていて、確かにセキュリティの問題はあるかもしれないけど、日本のユーザーはほとんどがキャリアから端末を購入している中で、apk(Androidプラットフォームのアプリパッケージ)を拾ってきて、インストールするような人はそんなにいないと思う。アプリストアをオープン化して、他社がマーケットをやるとしてもある程度、セキュリティは考慮するだろうし、iOSもそんなに揉めることはないと思う。

 ただ、反対側から見たときに、アップルはセキュリティを守るためとはいえ、アーキテクチャを閉じすぎている印象はある。AirDropとかは、ファイルの種類を限定して開放すればいいと思うし、Quick ShareをApp Storeで公開するといった動きもない。アップル側にも考えるべきことはあると思う。

 とはいえ、今回のスマホ新法に関しては、的外れだと思う。

石川氏
 的外れだし、結局のところ、得するのはMetaとかになりそう。iPhoneのデータをMetaが取れるようになって、Facebook上で色々できるようになったりする。日本のスタートアップやユーザーのためと言って、穴を開けたけど、得するのはアメリカの企業という構図なので、誰のためにやったことなのかがわからなくなっている。

石野氏
 アップルも、Metaだけは名指しで批判していますね。Wi-Fiなどのデータをとりにくると言っています。

石川氏
 Metaとクアルコム、グーグルの日本法人が団体を作っているのも、なんだそれはという話。公取委としても、想定していなかった動きなんじゃないですかね。

石野氏
 代理戦争みたいになってきていますよね。

関口
 プラットフォーマー同士の戦いが日本で展開される時に、公取委が利用されているような状態ですね。

石川氏
 だって、アメリカではこういう動きはないですよね。日本とEUだけなので、いいように利用されているだけ。

石野氏
 グーグルからすると、願ったり叶ったりの規制ですよね。元々サイドローディングはやっているし、ある程度課金の自由も担保しているので、あまり改修を加えなくていいけど、アップルにはダメージを与えられる。

法林氏
 結局、みんなユーザーの方は向いていないよね。アップルも自分たちのテリトリーを守るために頑張っているだけ。もう少し考えてほしい。

石野氏
 アップルは、自由なものが良ければ、Androidを選べばいいと言っています。これはその通りですよね。弁護士の方も競争環境の中で、自由なものと不自由なものを選択できる状況が、そんなに問題なのかと言っています。不自由なら選ばなければいいだけですし、選んでおいて開放しろと言うのはおかしい。

石川氏
 世界的に、日本の公取委が一人で暴れ回っているのならまだわかるけど、結局EUの真似事ですからね。

関口
 EUよりは、だいぶマイルドになっていますよね。

石野氏
 だいぶ骨抜きにされたというか、アップルの懸念を汲んでいるような形にはなっていますね。EUは、Apple WatchをAndroidに繋がるようにしろとか、だいぶ過激です。

石川氏
 そもそも、サイドローディングすれば、競争が生まれて手数料が下がるだろうという勘違いからスタートしています。

法林氏
 アップルが閉じた環境を作ってきたことが日本のユーザーにあまり認知されていない公取委のツッコミは的外れとして、アップルも時代に合わせて、他のプラットフォームのことも考えてほしい。オープンがいいからAndroid、セキュアがいいからiOSという選択ができるのはいいけど、外と繋ぐことも考えていかないといけない。

石野氏
 あと、アップルは、EUはこれでアダルトサイトが増えたと主張していますが、あんまりこれを強く主張しすぎると表現の自由に対する締め付けをする企業と見られかねないですよね。

法林氏
 実際、表現に対しては厳しい会社だけどね。

石野氏
 でも、ロビーの仕方としてどうなのかなと。悪いことをしているわけではないですからね。