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第93回:Windows CE .NET とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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Windows CEの最新バージョン
「Windows CE .NET」は、情報機器用のリアルタイムOSで、マイクロソフト社製のOS「Windows CE」の最新バージョンです。以前は「Talisker」というコードネームで呼ばれていました。
Windows CEは、パソコン用のWindowsなどに比べると機能は限定されますが、容量が小さくできているので、PDAやHandheld PC(HPC)などの機器への組込向けOSです。このWindows CE .NETも、OSのコア部分で200KB程度と容量的に小さいので、組み込む用途としては、PDA、HPCなどの携帯機器や、携帯電話、家電などをターゲットにしています。
また、パソコン用のWindowsでは、利用できるコンピューターのCPUのバリエーションはなく、Pentium互換CPUと「IA-64」と呼ばれる64ビットCPU用のものが予定されているだけですが、Windows CE .NETでは様々な機械に組み込まれることを想定しているため、利用できるプロセッサのバリエーションもx86、Xscale、ARM、MIPS、SHシリーズと非常に豊富です。
このOSは、ソニー、カシオ、富士通、日立などの日本企業のほか、モトローラ、サムスン、シーメンスなどの海外メーカーも採用を表明しており、既にいくつかのメーカーで実際にこのOSが商品として発表されています。例えば、ここ数ヶ月で発表された製品としては、日立の業務用PDA「NPD-10JWL」や、デーティー・リサーチ・ジャパンのタブレット型インターネット端末「WebDT 370」などといったところで、既に搭載されているようです。
「Mira」の重要技術
また、このWindows CE .NETは、以前のWindows CEに比べていろいろな機能が強化されました。特に強化されたのが、無線ネットワーク関係、それからマルチメディア関係です。
ネットワークに関しては、このOSからBluetoothやIEEE 802.11bに準拠した無線LANが標準でサポートされるようになりました。BluetoothについてはWindows XPでも標準ではサポートされていないのに、このWindows CE .NETでは採用されています。また、内蔵ソフトとしては、XMLなどをサポートするフル機能に近いInternet Explorerのブラウザや、Windows Media Player、DirectXなどもサポートしています。
この辺りが強化されているのには訳があります。それは、Windows CE .NETが「Windowsを中心としたネットワーク構想の重要な要素」として期待されるようになったからです。Windows CE .NETは、ひとつの機械だけを見ると単なるOSに過ぎませんが、マイクロソフトの大きな構想の全体図から見ると、その役割だけを担っているわけではないのです。
マイクロソフトでは、「Mira(ミラ)」というホームネットワーク構想を発表しています。これは、ユーザーが自宅のどの部屋にいても、Webの閲覧や電子メールの送受信、デジタル画像へのアクセスと編集、音楽観賞などといった作業を行なえるようなMira対応のLCDパネルを作るというもので、これを実現するために、Miraや家庭内の機器にWindowsをベースとした技術とネットワークを搭載することが必要になります。
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Mira対応のパソコンや対応端末のプロトタイプ
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Mira対応のLCDパネル。無線LAN経由でインターネットやマルチメディアファイルの再生などが行なえる
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こうしたMira対応のデバイスには、Windows CE .NETをコアにした新技術が組み込まれます。また同様に、家庭内の機械などにもWindows CE .NETを搭載させようというのがマイクロソフトの構想です。
そのため、このOSでは「コンポーネントの組み合わせで様々な機械に組み込めること」や、「ネットワーク、マルチメディアに強い仕様」などが必要になったのです。ネットワークに関しては、このOSではBluetoothやIEEE 802.11bに準拠した無線LANを標準でサポートし、ワイヤレスに機械間で通信させることができます。Internet ExplorerはXMLにも対応しているので、Webの閲覧のみならず、インターネットや家庭内での通信でも、さまざまなデータの加工において要となります。
なお、マイクロソフトでは、このようにパソコンのみならず、様々な機器にWindowsテクノロジーを導入する「.NET戦略」も発表しています。こうした様々なWindowsがあり、それぞれでプログラムも同様のものが使えるようにする仕組みを「 .NET Framework」と呼んでいます。
このWindows CE .NETでは、 .NET Frameworkの限定版である「 .NET Compact Framework」が年内にリリースされる予定です。この技術を使うと、ネットワーク越しにサーバーなどの他のコンピューターが提供するWebサービスを利用できるようなアプリケーションに対応可能となります。また、「Visual Basic .NET」や「Visual C# .NET」で書かれたプログラムを、Windows CE .NETと、 .NET Frameworkが利用できるWindowsパソコンで共有して利用することも可能になります。
・ マイクロソフト
http://www.microsoft.com/japan/
・ 米マイクロソフト、「Windows CE .NET」発表
・ マイクロソフト、ホームネットワーク構想「Mira」を披露
・ 日立、無線LAN内蔵でWindows CE .NET搭載の業務用PDA
・ Windows CE.NETを搭載したタブレット型インターネット端末
(大和 哲)
2002/05/21 12:43
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