■ au端末の共通プラットフォーム
「KCP+」は、2008年1月現在、最新のauの携帯電話向け開発プラットフォームです。2007年秋冬モデルとして発表された東芝製端末「W56T」、ソニー・エリクソン製端末「W54S」、三洋電機製端末「W54SA」から採用されています。
KDDIでは、「KCP+」を導入する以前にも、クアルコムのMSMチップセットやBREWをベースにしたアプリケーションの共通プラットフォーム「KCP」(KDDI Common Platform)を提供していました。
「KCP+」は、この「KCP」でサポートされてきた範囲をさらに広げ、チップセットなどを新たなものにしたプラットフォームです。
ベースとなっているBREWは、最新のBREW 4.0とし、機能的にはOSレベルでマルチタスク機能がサポートされるなどの部分が強化されています。カバー範囲としてはOSやライブラリーだけでなく、ミドルウェア、無線通信制御、BREW、アプリケーション、各種デバイスとのインターフェイスまで含んでおり、非常に広い範囲で共通化されたソフトウェア群が用意されました。
KCP+では利用するチップセットも新たなものになり、クアルコムのMSM7500シリーズ以降がサポート対象となっています。
■ 共通プラットフォーム導入のメリット
KCP+の採用によって期待されるのは、au携帯電話の高機能化、そしてコストダウンです。
機能面に関して言えば、たとえば、メーカーは、KCP+を採用することで、LISMOの「オーディオ機器連携」、携帯電話上でOperaガジェットを元にした機能を利用できる「au oneガジェット」、複数のアプリケーションを同時起動できる「マルチプレイウィンドウ」、待ち受けやボタンのカスタマイズができるきせかえ機能「VIVID UI」、Bluetoothといった機能を導入できるようになります。
これらは、KCP+のミドルウェア、アプリケーションソフトウェアとして標準で用意されており、メーカーは、自前で開発することなく、これらの機能をユーザーに提供できますので、開発費用を抑えてコストダウンに繋がるというわけです。
各メーカーが同じソフトウェアを使うということになれば、使い勝手なども同じになってしまいそうですが、Flash liteなどを利用して独自のユーザーインターフェイスを採用したり、独自のデバイスを利用することもでき、製品の差別化も可能です。
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左が従来のKCP、右がKCP+
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■ 最新チップセットを十分使いこなせるプラットフォームに
KCP+の登場の背景には、年々複雑化するソフトウェアの開発、それとau携帯電話で採用しているプラットフォームの進化があります。
近年の携帯電話は、高機能化・多機能化が進み、あわせて採用デバイスも高機能かつ複雑になってきています。
たとえば、au携帯電話が利用しているクアルコムのCDMA用チップセットの場合、それまでのARM9ベース・シングルコアのCPUでしたが、KCP+の対応プラットフォームとなっているMSM7500では、従来のARM9コアに加えて、ARM11コアを搭載するデュアルコアCPUとなっています。
つまり、デュアルコアのチップセットを有効に使うのであれば、同時にそれぞれのアーキテクチャで動くソフトを効率よく駆動できるOSが必要になるわけです。これだけでも、十分開発難易度は高いのですが、たとえばMSM7500の場合であれば3Dアクセラレーター機能なども搭載していますので、このような高機能かつ多機能なデバイスを駆動するソフトを1つ1つ機種ごとに携帯電話メーカーが作るのは、大変な手間がかかります。そこで、「KCP+」を導入することで、各携帯電話開発メーカーの負担を軽減しようとしているのです。
auのCDMA 1X WIN端末は全ての機種がクアルコムのMSM系チップとBREWを採用しているため、将来的にはKCP+の導入によって、効率化した端末開発だけではなく、ひいてはタイムリーに新機能を搭載した新機種を提供できるようになる、といったことも可能になるかもしれません。
また、共通化した部分のコストダウンが可能になることから、新機種を設計する場合でも、機能追加分のコストアップを、共通化部分のコストダウンで吸収する、といったことにも期待できるでしょう。
■ URL
KCP+構築完了について(KDDIニュースリリース)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2007/1016d/
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(大和 哲)
2008/01/30 12:03
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