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第181回:IEEE 802.11g とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


現在の無線LANの代表的規格

 IEEE802.11gは2004年現在、無線LAN機器の主流の1つとなっている規格です。よく「11g」と略されます。

 国内ではNTTドコモの「Mzone」など各社から無線LANサービスが提供されており、第4世代の携帯電話では無線LANとシームレスに利用できるようにする方向で検討が進められています。

 公衆無線LANサービスでは、「IEEE 802.11b」に準拠したアクセスポイントが多く見受けられますが、ある無線LAN機器メーカーの発表によれば、「IEEE802.11b」「IEEE802.11a」は主流ではなくなりつつあり、他の規格にも適合しているコンボモデルを含めると、最近の出荷製品のうち、実に7割がこの「IEEE802.11g」に準拠した製品になっている、とされています。

 ちなみにこの規格は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers、電気電子学会)という米国の学会で、LAN技術の標準を策定している「802委員会」の中にある「ワーキンググループ11」の「タスクグループG」が策定したものです。


11bと互換性が高い11g

IEEE 802.11g対応無線LANアクセスポイントでは、11g専用モード、11bと11g両方に対応するモード、11bのみに対応するモードなどを選ぶことができる。なお、この画像は、リンクシスの「WRT54G-JP」の設定画面
 IEEE802.11gの特徴は、前規格である11bとの互換性が高いこと、そして前規格である11bと比較してデータ転送速度が大幅に上がったことが挙げられます。つまり、11g対応のアクセスポイントと無線LANカードを買っておけば、ノートパソコンやPDAで無線LANを、家庭内では11gに対応した高速な無線LANを、屋外のホットスポットでは以前からの11bを利用して無線インターネットを使う、というようなこともできるわけです。

 IEEE 802.11gでは、アクセスポイントは、機能的に11gの無線LAN機器も、11bの無線LAN機器も接続ができるように定められています。アクセスポイントの設定によって、無線LANアクセスポイントは通信する相手を「11gの無線LANを対象にする」「11gと11bの両方を対象にする」「11bのみを対象にする」と選ぶことができます。アクセスポイントの設定画面では「G専用モード」「ミックスモード」「B専用モード」などと表現されています。

 11gは、11bと同様に2.4GHzのISM(Industrial Science Medical)帯と呼ばれる、免許不要で扱える周波数帯域の電波を利用しています。このため、日本をはじめ、多くの国で屋外での使用に管轄官庁の認可が必要な5GHz帯を使う11aと違い、自由に屋内でも屋外でも使えるというメリットがあります。また、この同じ周波数を使っていることが、11gと11bの高い互換性を実現することができた要因の1つでもあります。

 ただし、逆を言えば、2.4GHz帯はさまざまな用途で使われているため、帯域を多くのユーザーで分け合わざるをえなくなります。従って、実際に無線LANを利用したときの実効速度は、11aなどに比べて遅くなりがちです。

 なお、11gと11bの違いは、搬送波にデータを載せるための変調方式にあります。11bではCCKが使われましたが、11gでは、CCKとOFDMが使われるようになりました。

 OFDMとは、“直交周波数分割多重”を意味する「Orthogonal Frequency Division Multiplexing」の略で、多数の搬送波を用いるマルチキャリアデジタル変調方式の1つです。変調速度を変えずにデータ通信の速度を上げることのできる伝送技術で、無線LANのほか、デジタル放送、携帯電話関係では、フラリオンとボーダフォンが都内でフィールドテストを行なっているFlash-OFDMなどでも使われている変調方式です。

 ただし、変調方式が変わって11gは高速化されているとは言っても、11bとの互換のために、たとえば「他の無線LAN機器が使いたい周波数で既に電波を出していないかをチェックする」といった制御方法は11b機器からも11g機器からもわかるようにしなければなりません。その部分は11bのスピードにあわせなければならないため、通信速度がさらに遅くなる要因となってしまっています。


各社独自のさらなる高速化も

 互換性があり、安価であるとはいえ公称の54Mbpsと比較すると、IEEE 802.11gの実効伝送速度は低く、さらに11aと比較しても遅い、という印象を消費者に与えてしまうためか、各チップセットメーカーが独自の方法や、他規格のドラフトを先取りで取り入れるなどして、高速化を図る工夫をしています。ただし、これらはアクセスポイント、そして無線LANカード双方が対応していないと有効とはならない場合がありますので注意が必要です。

 これらの方式の代表的なものとしては、

・SuperG
・Xpress
・PRISM Nitro

などがあります。

 「SuperG」は米Atheros Communicationsが開発した無線LAN高速化技術で、同社のチップを採用しているアイ・オー・データ機器、エレコム、プラネックスなどが対応製品を提供しています。

 この方式は、複数のデータを連続的に転送し制御のオーバーヘッドを軽減する「バースト転送」、データをできるだけ1フレームにまとめることで転送フレーム数を減らす「ファーストフレーム」、さらにチップで転送するデータをLempel-Ziv方式で圧縮して送ることで実質的に転送データを減らす「リアルタイム圧縮」という技術を利用しています。なお、Atherosの規格としては、11aにも対応した「SuperA/G」という規格もあります。

 「Xpress」は、同じく無線LANチップセットメーカーの米Broadcomの提唱する方式で、やはり、転送時に必要な制御部分を一部削り、パケットを連続的に転送する方式です。この方式は「IEEE 802.11e」で策定中の「Wireless Multimedia Enhancements(WME)」に準拠しています。Boardcomのチップセットは、バッファローなどが採用しています。

 「PRISM Nitro」は、かつてINTERSILが発表していた規格で、やはりバースト転送を行なう方式です。現在はINTERSILが無線LANから撤退してしまったために、かつては利用されていましたが、採用していた無線LAN機器メーカーも、最近の製品では、使用チップセットを変更し、転送方式もSUPER G(SUPER A/G)、Xpressに変更になっている場合が多いようです。



URL
  IEEE P802.11. The Working Group for Wireless LANs(英文)
  http://grouper.ieee.org/groups/802/11/
  Wireless Ethernet Compatibility Alliance(WECA、英文)
  http://www.wirelessethernet.com/

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第97回:IEEE802.11b とは
第90回:ホットスポット とは


(大和 哲)
2004/06/02 17:29

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