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第90回:ホットスポット とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


ホットスポットとは

 「ホットスポット」とは、喫茶店やレストラン、空港、駅、ホテルなどに無線ネットワークを設置して、インターネットが利用できるようになっている、つまり「公衆エリア無線LANサービス」が提供されている場所のことをいいます。

 無線ネットワークを利用できる機器(多くの場合、IEEE802.11b対応のパソコンやPDA。このサービス用の専用アカウントが必要な場合もある)を、サービス提供エリアに持っていくだけでインターネット接続サービスが利用できるため、モバイルコンピューティングユーザーに注目されているキーワードです。

 この種のサービスとしては、大手のサービス提供業者が行なっているものや、日本IBMなどが提供する市販のホットスポット構築キットを利用したりして、喫茶店や店舗などが独自にサービスを提供している場合もあります。

 大手の提供業者によるサービスとして有名なところでは、NTTコミュニケーションズが「HI-FIBE」という名称で、都心部のハンバーガーショップ(モスバーガー)やコンビニエンスストア(ミニストップ)などの店舗で無線LANインターネット接続サービスを提供する実証実験が行なわれてきましたが、これは5月15日から「ホットスポット」というサービス名称で本格的に商用サービスが開始される予定です(ちなみに、「ホットスポット」はNTTコミュニケーションズの登録商標です)。

 同様のサービスとしては、都内の街角や区役所などでのモバイルインターネットサービス(MIS)による公衆無線LANインターネットサービスもあります。こちらは野外での利用で、いわゆる街角インターネットを狙っているタイプのものです。

 このほか、まだ商用化はされていませんが、実験レベルのものとしては、NTTドコモが幕張メッセや赤坂プリンスホテルなどで行なっているモニター実験や、JR東日本が東京駅、成田空港、空港第2ビル駅構内などで行なっている試験サービスなどがあります。

 また、変わったところでは、電車での移動中にも利用できるサービスとして、ノキア・ジャパンと小田急電鉄、京浜急行電鉄が行なっていた「IPv6@トレイン」などもあります。


主流は無線LAN・Wi-Fi対応

 ホットスポットなどの無線LANサービスを利用するには、無線ネットワークが利用可能なパソコンやPDAが必要です。ホットスポットをはじめとする多くの公衆エリア無線LANサービスは、IEEE 802.11bやBluetoothといった無線ネットワーク技術に対応しており、特に多くがIEEE802.11bを利用しています。

 このIEEE802.11bという規格は、一般的にパソコン用の無線LAN機器で、最近では家庭内無線LANとしてもよく使われているものです。他社製品との間でも互換性が保証されている「Wi-Fi認定」機器を利用して、無線でネットワークに接続している機械であれば、家庭内や企業内で使っているノートパソコンなどをそのまま持ち出して公衆無線インターネットサービスの提供エリアで利用することができます。

 この手軽さが現在のホットスポットなどの公衆無線インターネット提供サービスの流行を生み出した原因のひとつと言えるでしょう。また、このタイプの無線LAN機器は普及率が高く価格も安いため、手軽に入手することができます。

 余談ですが、無線LAN利用時にセキュリティなどの設定をしていない場合、意図しなくても提供エリアに近づいただけで誰でも無線LAN経由でインターネットが使えてしまう、などといったことが最近では時々見かけられるようです。

 一部ユーザーからは、このような場所を「野生ホットスポット」と呼ばれることもあるようですが、無線LANサービスがこのような存在になってしまうことは絶対に避けるべきなのは言うまでもありません。特に、本来の利用者にとってはセキュリティ上で大きな問題となってしまいます。

 ところで、これらの公衆無線LANを使ったインターネット接続は、データ伝送速度もIEEE802.11bの場合で最大11Mbpsと、携帯電話を利用したネットワーク(例えばFOMAの最大384kbps)に比べると非常に高速です。ただし、IEEE802.11bをはじめとする無線LAN技術は、高速移動しながらのハンドオーバー(通信先基地局の変更)などには対応していませんので、自動車などで移動しながら利用するような場合には不向きです。携帯電話のネットワークとは互いに住み分けて、ケースバイケースで利用することになるのかもしれません。

 ちなみに、IEEE802.11bという無線LANは、DS(直接拡散方式)で5MHz幅の13チャンネルを設定し、最大で11Mbpsのデータ伝送速度で通信を行なうことができます。しかし、複数の基地局(ステーション)が同じチャネルを同時に使うことはできませんので、互いの設置条件などによってはこのデータ伝送速度を確保できるとは限らず、速度低下が起こる可能性もあるなど、必ずしも公共の場所での利用にベストな方法であるとは言えません。

 現に、JR東日本がJRの駅構内で無線LANを利用するため、同じ方式を利用するモバイルインターネットサービス(MIS)が駅構内にステーションの設置を断られている、というようなトラブルもあるようです。


・ 「HI-FIBE」のホームページ(NTTコミュニケーションズ)
  http://www.hifibe.net/
・ モバイルインターネットサービス(MIS)
  http://www.miserv.net/

ノキア、モバイルIPv6による無線LANアクセスの実証実験
ドコモ、商用化に向け公衆無線LANのモニターサービスを開始


(大和 哲)
2002/04/30 13:11

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