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第176回:タッチパネルディスプレイ とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


携帯電話にも採用されるタッチパネルディプレイ

ドコモが発売する予定の「F900iT」は、タッチパネルディスプレイを搭載するという

3月に開催されたCeBITでフィリップスが披露した「755」。タッチパネルディスプレイを搭載する
 タッチパネルディスプレイは、絵や文字が表示される画面(ディスプレイ)に、指やペンなどで触れることでスイッチを入れたり、データを入力できたりする装置です。タッチスクリーンと呼ばれることもあります。

 絵や文字が表示される画面を持っている機械では、一般的に画面とデータの入力装置が別々になっています。たとえば、パソコンではディスプレイとキーボードやマウスのような入力装置はそれぞれ別になっていますが、パソコン用のタッチパネルディスプレイを使用した場合、画面上に指を触れるとその部分にマウスカーソルが動き、マウスの代わりに入力ができるようになります。

 タッチパネルディスプレイは、パソコンとマウスのように表示されている部分と操作する部分が分離しておらず、カーソルをメニューを指で示すように直接操作できるので、操作者が機械に慣れる必要があまりないというメリットがあります。そのため、たとえば銀行のATM(現金自動預払機)のディスプレイなどのように「機械への慣れがない人に触ってもらわなければならない端末」へ導入されることが多くなっています。

 また、タッチパネルディスプレイは、画面と入力部分をまとめることができるため、省スペース化できる、というメリットもあります。たとえば、小さくまとめなければならないPDAや電子手帳でよく使われます。

 また、同様に小型の機械である携帯電話では、以前、パイオニア製のJ-フォン(現ボーダフォン)端末「DP-211」などで使われていましたし、最近ではNTTドコモが近い将来発売するというiモード端末「FOMA F900iT」でタッチパネルディスプレイを採用するとしています。

 また海外では、フィリップスがタッチパネルディスプレイを搭載したGSM端末「759」「755」「550」の3機種を発表しています。「759」および「755」はカメラ機能を搭載していて、携帯電話で撮影した画像を画面上で加工できるのですが、画像のどの部分をどのように加工するかを指定したり、あるいは、点や線を写真の上に描いたりというような操作が付属のスタイラスを使ってできるようになっています。


タッチパネルディスプレイの仕組み

 それ自体が1つのデバイスであるかのように見えるタッチパネルですが、構造的には大きく分けて2つの部分からなっています。1つは出力デバイスとしての部分です。具体的には表示部分であるディスプレイのことで、通常の液晶ディスプレイやCRTのブラウン管とまったく同じです。

 もう1つは入力デバイスとしての機構です。指やペンで触れたことを認識するために、接触を電気信号に変えるパネル部分があり、入力デバイスや入力データをコントロールするセンサー、コントローラがついています。この入力デバイスとしての部分には、指やスタイラスペンがどこにいるのか、また、画面についたのか離れたのかをチェックするための仕組みがあるわけですが、この仕組みはメーカー、製品によってさまざまな動作原理が利用されています。

 代表的な仕組みとしては、

・抵抗膜
・静電容量
・電磁誘導
・超音波表面弾性波(SAW)

などがあります。

 それぞれの方式の違いを簡単に見てみましょう。「抵抗膜」方式は、構造的にはガラス基盤と透明なフイルムにスペーサーと呼ばれる隙間を介してX方向、Y方向に電気回路が配線されるという造りになっています。フィルム上をユーザーがスタイラスペンなどで押すと、押された部分の配線がショートするので、電圧値が変わるため押された場所がわかるのです。同方式は、専用のスタイラスだけでなく、たとえば指など、押せるものならなんでもスイッチが入るという簡単さが特徴です。また、仕組み的にもシンプルなため低コストで作れるというメリットもあります。


 「静電容量」方式は、透明な導電性基盤のガラス面に電気信号を受ける物質が塗布されており、指がガラス面に近づけると電気信号をセンサーで検知するというものです。耐久性のあるパネルが作りやすいのが特徴で、タッチパネルだけでなく、ノートパソコンのポインティングデバイスであるタッチパッドなどにもよく使われている方式です。

 「電磁誘導」方式は、磁界の中を電気を通す導体が動くと電力が発生する「電磁誘導」という原理を使ったセンサーを入力デバイスに利用したものです。たとえば、スタイラスの中に磁石が入っていて、導線やコイルが埋め込まれたパネル上をこのペンが動くと、そこで発生した電気をコントローラがキャッチしてペンがどこからどこに動いたかを知ることができるのです。同方式を使ったタッチパネルは、その原理のために、ディスプレイ上の場所を指し示すために専用ペンしか使えないため、手がパネル上に載ってしまっても誤動作しないなどのメリットがあります。

 また構造上、液晶ディスプレイの場合、センサーを液晶パネルの裏に埋め込むこともできるため、他の方式がディスプレイの前に膜などをおかなければならないという点と比べて有利であるという特徴もあります。タブレットPCなどではこの方式のタッチパネルが利用されています。

 「超音波表面弾性波(SAW)」方式は、その名の通り、超音波表面弾性波というものを利用した方式です。物質には、特定の物体に応力を与えると電気分極が起こり、逆に電界を与えると、ひずみまたは応力を生ずる現象「圧電」が存在します。この現象を利用して圧電トランスデューサというデバイスを使い、タッチパネルが押されたときのひずみ(超音波)をセンサーでキャッチすることで、スタイラスでパネルに触れたことがわかる仕組みになっています。この方式では、パネル基板をシンプルに1枚の板で作るのも可能なため、光を通しやすい明るいパネルを作りたいときに有利になります。

 携帯電話用のデバイスとしては、いくつかのメーカーがこれらの方式を採用したサンプル品や製品の出荷を開始しています。いずれは「F900iT」以外にもこれらのタッチパネルデバイスを搭載する携帯電話が出てくるかもしれません。


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(大和 哲)
2004/04/20 12:42

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