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第99回:ストリーミング とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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ストリーミングの利点
最近では携帯電話でも、データ伝送速度の向上に伴なって映像や音声などのマルチメディアデータを再生できる端末が登場しています。しかし、メールなどと違って音声や動画のファイルは容量がとても大きいため、特にある程度の品質を確保したい場合には、端末がデータを取り出す方法にも一工夫が必要となります。
通常、マルチメディアデータを再生するには、端末は回線からデータを引き出し、それを再生します。このように、一度回線からデータをすべて引き出し、貯めてから再生することを「ダウンロード再生」と言います。
一方、回線から映像や音声などのデータ全部を貯めてから再生するのではなく、データを受信しながら同時に再生する方式が「ストリーミング再生」です。ダウンロード再生の場合、ネックとなるのは回線のデータ伝送速度です。なぜなら、すべてのデータを受信するまで待たねばならないため、伝送速度が遅いと再生するまでに多くの時間がかかることになります。
その点ストリーミング再生の場合だと、最初にいくらかのデータをバッファメモリに溜め込んでおき、それから再生しつつデータを確保できます。
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「データ」を「水」の流れに例えると、ダウンロードとストリーミングの違いがわかりやすいかもしれない。ダウンロード再生では、溜まったデータを完全に貯めてから利用する。ストリーミング再生では、溜まったデータを逐次利用することができる
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もし、映像を再生する速度よりもデータを読み込む速度の方が速ければ、ユーザーはデータが溜まるのを待たずにマルチメディアデータを再生することができるので、その分待つ必要がなくなり、快適に動画を閲覧することができるというメリットが生まれます。ただし、再生に必要なデータの方が、回線から送られてくるデータよりも遅い場合は、再生中に再びバッファへデータが貯まるのを待たなくてはなりません。
また、ストリーミングによってデータを製作する側にもメリットが生まれます。従来の携帯電話用マルチメディアコンテンツは、ダウンロード再生を前提にしていましたので、例えばコンテンツを提供する以前にすべて製作が完了していなければなりませんでした。いわば、映画やビデオと同じような感覚だったわけです。
しかしストリーミングでは、端末がデータを受け取りながら再生を行なうので、データができ上がっていなくても大丈夫です。例えば、ビデオカメラで写している映像をそのまま流す「生放送」(厳密には、バッファに貯めている分のタイムラグがありますが)のような携帯電話も可能になります。
また、著作者にとっては、ダウンロード再生だとデータがすべて端末上に残るため、そのデータをそのまま再利用されやすいといったデメリットがありましたが、ストリーミングの場合だと、すべてのデータが端末上で揃うとは限らないので、データが不正に流通しにくいという安心感もあり、特に映像などではストリーミング用データの方が心理的に作りやすいという傾向もあるようです。ただし、技術的には必ず再利用されないというわけではなく、あくまでも“されにくい”という比較の問題でしかありませんが。
パソコン・携帯電話とストリーミング
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動画ファイルをストリーミング・ダウンロード再生できるNTTドコモのM-stage visual対応PHS端末「Lookwalk P751v」
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ストリーミングは、パソコンなどでインターネットを使ったマルチメディアデータの再生によく使われている技術です。再生用のソフトウエアでは、「RealPlayer」「Windows Media Player」「QuickTime」などがよく使われています。
RealPlayerは、リアルネットワーク社が開発している代表的なストリーミング再生ソフトとも言える存在で、「SureStream」と呼ばれる、端末側のデータ受信速度に合わせて配信データの量を調整することができる機能を持つのが特徴です。また、Windows MediaPlayerも同様に、受け取り側の回線速度を検知し、データ配信の速度を調整する仕組みが備わっています。
携帯電話・PHSの場合だと、音楽や映像の配信サービスとしては、NTTドコモの「M-stage music」「M-stage visual」があります。M-stage visualは、先日ドコモから発表された松下通信工業製のPHSビジュアルホン「Lookwalk P751v」などでも対応しているサービスですが、このサービスでは、マイクロソフトのWindows Media Encoderで作成した動画ファイルを、ストリーミング(ASX形式ファイル)またはダウンロード(ASF形式ファイル)再生できるようになっています。
また、KDDI(au)でも、CDMA方式の携帯電話向け動画配信サービス「ezmovie」がストリーミングに対応しています。ezmovieでは、最大140KBの動画データをストリーミング再生でき、動画コーデックにはMPEG-4、音声コーデックにはMP3、QCELPを利用しています。また、このサービスでは著作権情報やテロップを動画と同時に配信できる仕組みを備えているのも特徴のひとつです。
・ ドコモ、M-stage visual対応のPHSビジュアルホン「Lookwalk P751v」
・ 第64回:M-stageとは
・ 第72回:ezmovie とは
(大和 哲)
2002/07/09 12:34
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